豊富な雪に恵まれた東日本ラリー開幕戦は激戦区BC-1を黒岩満好/安東貞敏組が制す!

レポート ラリー JAFWIM

2025年2月18日

国内ラリー冬の風物詩として知られる「Rally of Tsumagoi」が、2025年JAF東日本ラリー選手権の第1戦として、今季も2月7~9日に群馬県嬬恋村のホテル軽井沢1130にヘッドクォーターとサービスパークを設置して開催された。近年の暖冬によって過去、雪不足に悩まされることもあったこのラリーだが、今季はラリーウィークに大雪が降り、一転して多すぎる雪への対応に苦慮するラリーとなった。

2025年JAF東日本ラリー選手権 第1戦
2025 FIA International Rally
Rally of Tsumagoi 2025

開催日:2025年2月7~9日
開催地:群馬県嬬恋村
主催:TMSC、M.O.S.C.O.

 当初、このラリーではすっかりお馴染みの「Kadokai Panorama」と「Omae Suzaka」、ふたつのステージを2日間で計9本走るアイテナリーが組まれていたが8日、土曜日は前夜に降り積もった雪の除雪作業がスタート前に必要となり、スタートを遅らせたことからSS4・5がキャンセルとなった。

 更に嬬恋村は土曜の夜も大雪注意報が発令されるほどの降雪があったため、翌日の日曜も再びスタートがディレイ。SS6がキャンセルされ、両日ともに3本ずつを走る6本のSSで勝敗が競われた。

2025シーズンのRally of Tsumagoiは、近年のこのラリーではなかった大雪で参戦クルーたちにとっては良好(?)なコンディションの下、スノーラリーを満喫できた(左)。ヘッドクォーターが設けられたホテル軽井沢1130にサービスパークも設置。もちろん、サービス内もほぼ全面が雪に覆われていた(右)。

BC-1クラス

 BC-1クラスは参加18台と大激戦区となったが、地元・嬬恋村在住のドライバー、黒岩満好選手が毎年、圧倒的な速さを見せていることから今回のラリーも断トツの優勝候補に挙げられていた。しかし、ラリー前夜に降った雪は黒岩選手をもってしても如何ともしがたく、SS1「Omae Suzaka1」を奪取したのは5番目にスタートした千明正信/林浩次組。先頭スタートで雪掻き役を強いられた黒岩/安東貞敏組は0.3秒遅れの2番手からスタートとなった。

 千明/林組はTOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge 2024のE-4クラスでGRヤリスを駆ってチャンピオンを獲ったが、今回のラリーにはスバル・インプレッサWRX STIを投入。SS2「Kadokai Panorama1」でも連続ベストタイムを狙うが、ステージ後半のパノラマラインで暴風雪のため、視界が効かずペースダウン。黒岩/安東組に4.7秒差をつけられ、首位を明け渡してしまう。

 黒岩/安東組は2度目のOmae SuzakaとなったSS3でもSS1から6.7秒のタイムアップを遂げて連続ベストをマーク。千明/林組も2番手タイムで食らいつくが、その差は9.6秒へと拡大して1日目を終了した。SS2までは黒岩/安東組に5.1秒差の3番手につけていた大橋智樹/船木淳史組は、SS3でただでさえ視界が効きにくい場面でフロントガラスが曇るトラブルのため、大きくタイムダウン。村里尚太郎/御纏喜美子組が代わって3番手に浮上するも、首位との差は20.4秒と厳しい展開となる。

 明けた日曜日は、この日最初に予定されていたSS6「Omae Suzaka4」がキャンセル。SS7「Kadokai Panorama3」からのスタートとなったが、黒岩/安東組は3.3秒差で千明/林組を下して首位を堅持。SS8「Omae Suzaka5」 では唯一5分を切るタイムでライバルたちを突き離すと、最終のSS9「Kadokai Panorama4」も制して逃げ切った。

 千明/林組はSS9 でドライビングをミス。バックギアを使ってしまい、セカンドベストで上がった村里/御纏組に詰め寄られたが、土曜で稼いだマージンが効いて、4.7秒差で2位を死守した。

 終わってみれば今季も“嬬恋マイスター”にふさわしい強さを見せた黒岩選手だが、「昨日は3本とも全部、雪掻き役をやった感じで大変でした(笑)。今年はワダチの外側の雪の深さが例年と違って掴めなくてドライビングが難しかったです。Omae Suzakaで5分切れなかったというのは、ちょっと記憶にないですね」と土曜は悪戦苦闘を強いられたことを明かした。

 続けて「ただ今日は雪の感じが良くなってクルマもパワーかかったし、走りやすかったです。道は狭かったけどいつも以上のフラットな路面で、昨日のラッセル状態とは大違いでしたね。最後のSS9は攻め過ぎないように慎重にゴールまでクルマを運びました」と日曜の走りを振り返った。

 一方、2位の千明選手は「今日のOmae Suzakaはなぜかクルマが前に出ていかなかった。Kadokai Panoramaの1本目は、ちょっと様子見し過ぎでしたね。最高の路面だったけど、1本めと2本目の路面が違い過ぎてジャンクションを回り切れなかったです」と、ミスを認めつつも、「今回は“レジェンド”に1本勝つことができたし、その差は詰められたんじゃないかと思うので、いつか追い越したいです」と、そう遠くない将来のリベンジを誓った。

 嬬恋初挑戦で3位を獲得した村里選手は、「どっちの道もスピードレンジが高い道で楽しめました。今年は地区戦を追う予定なので、初戦から良いポイントが獲れて良かったです」と今後を見据えていた。

BC-1クラス優勝は、三菱・ランサーエボリューションⅨを駆る黒岩満好/安東貞敏組。
BC-1の2位はスバル・インプレッサWRX STIを操る千明正信/林浩次組(CHIGIRA MOTORSPORTS)が獲得 (左)。ランエボ7をドライブする村里尚太郎/御纒喜美子組が3位に入った(右)。
BC-1は左から、2位の千明/林組、優勝した黒岩/安東組、3位の村里/御纒組が表彰された。

BC-2クラス

 BC-2クラスは、JAF全日本ラリー選手権のJN4クラスに参戦する筒井克彦選手が、全日本ではJN1クラスで鎌田卓麻選手のコ・ドライバーを務める松本優一選手とのクルーでスズキ・スイフトスポーツを駆って参戦。また、JAF全日本ダートトトライアル選手権のD1クラスに参戦する佐藤史彦選手が、コ・ドライバーの伊東美紀選手とともにトヨタ・セリカでエントリーしてきた。更にオーストラリアの若手、アブラハム・タケット選手も、元全日本JN4チャンピオンのコ・ドライバー、本橋貴司選手と組んでスイフトで参戦した。

 ラリーが始まると、タケット/本橋組がSS1で2番手の佐藤/伊東組に15.7秒差をつけるベストを奪取。タケット/本橋組はSS2でも再び佐藤/伊東組を下して、日本のスノーラリー初走行とは思えない圧巻の走りを見せ、佐藤/伊東組に25.4秒のマージンを作ってラリーを折り返した。

 日曜に入ると、最初のSS7では佐藤/伊東組が2.6秒差でタケット/本橋組を下して今回のラリー初のベストを奪い、その差を僅かながらも詰める。さらにSS8では、タケット/本橋組がブレーキをロックさせてしまい、エンジンがストール。それまでのマージンを吐き出してしまい、逆に3.5秒のビハインドで最終のSS9に臨むことになった。しかし逆転を期したタケット/本橋組はコースオフを犯してここでもタイムロス。逆転は果たせず、2番手のままフィニッシュとなった。

 優勝した佐藤選手は、「30秒近く開いていたので逆転の事は考えずに淡々と走っていたら、優勝が転がり込んできました。今日は走りやすかったけど、途中からツルツルの路面とフカフカの路面がミックスしたような状況になりました。多分、オーストラリアにはないような日本特有の路面だったので、タケット選手には難しかったんじゃないかな」と相手を労った。

「雨のダートラで時々ある、踏んでも進まない路面をレインタイヤで何とかしていく感じに似ていたので、結果的にはダートラの経験が活かせました。ともかく、“絶対ぶつけない”という最重要のミッションを達成できて良かったです(笑)」と、最後はホッとした表情を見せた。

トヨタ・セリカで参戦した佐藤文彦/伊東美紀組(HAPPY LIFEラリーチーム)がBC-2クラスを制した。
BC-2は優勝した佐藤/伊東組が表彰を受けた (左)。オーストラリアから参戦して3位に入ったドライバーのアブラハム・タケット選手と、佐藤選手がラリー後に健闘を称えあった(右)。

BC-3クラス

 BC-3クラスでは、丸山高康/丸山未知可組がドライブするダイハツ・ミラがSS1で大きく遅れ、スバル・ヴィヴィオの平井孝文/北山真吾組もメカニカルトラブルで早々にリタイア。中山透/多比羅二三男組が駆るトヨタ・ヤリスが序盤から独走態勢を築いた。

 中山選手は2024シーズンのRALLY JAPANには4WDのGRヤリスでエントリーしたが、嬬恋では前輪駆動のヤリスで参戦。スタックのリスクが高い、雪が降り積もったステージを走り切って無事、土曜を走り切る。日曜では復活した丸山組にデイベストは譲ったものの、優勝を果たした。

「上りも何とか上れたし、思ったほど大変な路面ではなかったですよ。完走第一で最後までラリーを楽しめました」とは中山選手。「このラリーは去年までGRヤリスで出ていたので、FFでは自分でも初めてのスノーラリーでした。ただヤリスが実にバランスが良くて、アンダーやオーバーを出すこともなく、ニュートラルな特性で走れるクルマだったので、そのコントロール性の凄さに最後まで助けられましたね」とラリーを振り返った。

 数年前に45年ぶりというラリー復活を果たした中山選手は、コ・ドライバーの多比羅選手とともに60歳を優に超える大ベテランだが「今、二人合わせて135歳なんで、何歳までラリーに出られるかチャレンジしてみようと思っています(笑)。とりあえずこのラリーは来年以降も多比羅さんと参戦します」と、スノーラリーへの再挑戦を早くも誓っていた。

BC-3クラスは中山透/多比羅二三男組(LSCR RALLY TEAM)が駆るトヨタ・ヤリスが勝利を納めた。
BC-3は中山/多比羅組、優勝したクルーが表彰された。

フォト/大野洋介、田代康 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部

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