菅生サートラ開幕戦でCT4松橋豊悦選手が3サーキット完全制覇に向けて好発進!

レポート サーキットトライアル

2025年5月29日

「JAFカップオールジャパンサーキットトライアル」が誕生したことで『日本一』への目標も生まれ、各地で盛りあがりを見せている“サートラ”ことサーキットトライアル。3月に筑波サーキットで行われたJAFカップ初代ウィナーも参戦する、2025年JAF菅生サーキットトライル選手権の開幕第1戦は強烈な風と時折現れる強い陽射しの下での開催となった。太陽が顔を見せると一気に上がり、45℃まで上がった路面温度はひとたび雲が陽射しを遮れば著しく低下する。コンディションの把握が非常に難しい一戦となった。

2025年 菅生サーキットトライアル選手権 第1戦
(2025 SUGOチャンピオンカップレースシリーズRd.2内)

開催日:2025年5月10~11日
開催地:スポーツランドSUGO(宮城県村田町)
主催:(株)菅生、SRSC

 2025年5月1日で開業50周年を迎えたスポーツランドSUGOは今季開幕を前に、路面の全面改修でリフレッシュ。JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権をはじめとしたビッグレースも開催される、FIAとJAFの公認を受けているサーキットだ。エスケープゾーンの狭さなどから、度々“魔物が棲む”と呼ばれるが、この改修でそのスリリングさに磨きがかかったと、多くのドライバーが言葉を残した。

 今回の一戦が開催された2025 SUGOチャンピオンカップレースシリーズRd.2で併催した、2025 GSTR GRAND PRIX F110 CUP Rd.2に参戦するHELM MOTORSPORTSを指揮し、FIAインターナショナルシリーズ スーパーGTのGT300クラスなどにも挑んでいる平木湧也選手は新路面について、「全体的にグリップは高くなっていると思います。似たような気象条件で比較した場合、ラップタイムが2秒近く上がっています」と期待を寄せていた。

 一方、サートラのドライバーたちに聞くとグリップが上がったが故に、コーナリング速度も上がったそうだ。今までの感覚で走るとブレーキが余ったり、ブレーキを詰めていくと今度はグリップの限界値が急に来たりなどするとのこと。長年SUGOを走ってきたドライバーをもってしても、新路面に対して初戦では手探り状態のようだ。

インターナショナルレーシングコースの路面が全面再舗装されたスポーツランドSUGO。新しい路面はギャップもなく、グリップも向上したと参戦したドライバーたちは語っていたが、初戦なだけに攻めどころは模索中の様子だった。

 全長約3.6㎞という長さとエントリー19台ということを鑑みて、成立した4クラス一斉にコースイン。日産GT-Rと、同じ日産製のマーチやマツダ・デミオといったコンパクトカーが同時にアタックすることになった。パワーがあるCT1クラスとCT4クラスにおいてはいかにクリアラップを確保するかが重要になり、パワーで劣るCT5クラスとCT6クラスにおいてはいかに格上の車両を先行させながらアタックをするかがポイントとなる。

 高低差約73m、最終コーナーから駆け上がるホームストレートのダンロップアーチまでの勾配は10%! ジェットコースターのようにスリリングなコースをいかにロスなく駆け抜けるかが重要だ。ドライバーたちが口々に話するのはセクター1の重要性。特に3コーナーからハイポイントコーナーまでの区間で、アクセルを抜かずに走り切るかが大切とのことだ。

 ドライバーたちは参加受付開始を前に続々とSUGOに集結。併催された2025年JAF Formula Beat地方選手権 第4戦や2025年JAFもてぎ・菅生スーパーFJ選手権 第2戦なども開催される中、出張車検による公式車検が行われた。

高低差が大きいSUGOでパワーが低い車両をドライブする時は特に、セクター1の走り方が重要になるそうだ。
ドライバーたちはパドックに着くとゼッケン貼りなど、粛々と参戦準備を始める(左上)。公式車検は各ドライバーのパドックをオフィシャルが巡る出張車検。安全面を中心に行われた(右上)。パドックでのドライバー同士の談笑は、サートラの日常風景。この中でサーキットのコンディションなどの情報交換もされる(左下)。コースイン直前にはホイールナットの増し締めでチェック。タイヤの空気圧確認なども重要だ(右下)。

CT1クラス

 排気量と駆動方式の制限がないB車両で競うCT1では、二連覇中で日産GT-Rニスモを駆る芦名英樹選手がHEAT1のスタートとともに、真っ先にコースイン。芦名選手は計測1周目で1分33秒台をマークし、2番手にはGRMNヤリスをドライブする奥山武選手がつけるが、佐々木和毅選手がGRヤリスを操って計測3周目に2番手を奪取した。

 芦名選手は早々にピットへ戻ってクーリングに入り、佐々木選手は数周アタックしたが、やはりピットに戻って様子を伺う展開となった。3番手の奥山選手は果敢にアタックを続けるも、佐々木選手のタイムは上回れずにHEAT1が終了した。

 トップに立った芦名選手は「去年までは白いGT-Rに乗っていたんですが、今年はノーマルのニスモで参戦しました。前回の練習では(1分)32秒前半まで出ているので、そこがターゲットタイムです。ただ、気温が上がってしまっていることと、混走であることからタイム更新は難しいかもしれません」と予想した。

 続けて新路面について、「ブレーキが全部余ってしまっている感じです。プラス10m奥でブレーキングしないといけないのかな…… と思っています」と、まだアジャストできていない様子だった。

 勝負のHEAT2はHEAT1のタイム順でコースインしていくため、4クラス総合トップタイムの芦名選手が最初にコースイン。後続に追いつく前に勝負を決めたい芦名選手は、計測1周目から全開アタックを敢行してトップタイムを更新! 目標としていた1分32秒台へと押し上げた。

 2周目もアタックを続けた芦名選手だったが、すでにタイヤがヒートアップしてしまったのかタイムは伸びず、早々にピットへ帰還。一方、2番手の佐々木選手は計測4周目でベストタイムを更新。続く5周目でも更にベストを更新し、2番手を確実なものとした。

 優勝した芦名選手は「1本目での失敗をしっかり修正できました。ブレーキングもシフトポイントもちゃんと変えられたこともあって、32秒台も出せました。日産好きの応援してくれる方も来ていたので、『かっこいいところを見せてやろう』と思って走りました(笑)。」と満足そうな表情を見せた。

 そして「去年に比べて冷静に走れたのも良かったです。目の前の課題をひとつずつクリアできました。今シーズンは仕事の都合がつけば全戦出る予定です。秋保温泉で美味しい料理と温泉を楽しめるように頑張りたいですね」と、今季も盤石の王座防衛に向け、最初の一歩を踏み出した。

CT1クラスは芦名英樹選手(nismo車の35)が日産GT-Rニスモを駆って優勝した。
CT1の2位はGRヤリスを操る佐々木和毅選手(ツーシステムwith K&Yヤリス)が獲得した。
CT1は左から、2位の佐々木選手と優勝した芦名選手が表彰台に上がった。

CT4クラス

 SUGOと筑波、そして岡山国際サーキットで開催されているJAFサーキットトライアル地方選手権。今季その3シリーズ全てのCT4クラス制覇を狙っているのが、松橋豊悦選手。2024シーズンのSUGOは4戦4勝で満点チャンピオンを獲得している。更に、3月に開催された岡山国際と、前週に行われた筑波での開幕第1戦を制してSUGOにやってきた。

 2400cc以下で2WD、国内メーカーのB車両で競われるCT4はHEAT1からやはり、スズキ・スイフトスポーツを駆る松橋選手が先導していく展開となった。計測2周目から1分36秒台に突入し、翌周に1分36秒114を松橋選手は記録した。しかし、自身が持つコースレコード、1分35秒463には1秒近く及ばず。

 走行後に松橋選手は、「路面改修を期待して走ったんですがヌルヌルで、自分には合いませんでした。今まで鳴いたことがなかったんですが、タイヤがすごく鳴くんですよね。あと、最終コーナーでクルマが横に数10cmずれたりするので、凄く怖いんです。前の走行がフォーミュラだったこともあってなのかもしれません。特にターンインして荷重がかかった時のグリップが、ちょっと信用できない感じですね」と、まだ新路面に手を焼いている様子だった。

 一方、2番手争いはGR86とスバルBRZによるバトルとなった。門馬勇人選手がGR86を操って計測2周目に記録した2番手タイムを、BRZをドライブする林幸夫選手が追いかける。しかし、まだ新路面にアジャストしきれない林選手は3番手以上にタイムを伸ばすことができず。最後の計測7周目でベストを更新するが、門馬選手には届かなった。

 HEAT2でも自ら打ち立てたレコードに対し、ストイックに勝負をしかける松橋選手。計測1周目で早々に1分35秒台を記録してクーリング。そして3周目に勝負に出たが、クールダウン中の車両に会い仕切り直し、翌周に再度アタック。最終コーナーの進入で一瞬の躊躇があったものの、レコードに0.088秒差に迫るトップタイムを記録して優勝を確実なものとした。

 その後方ではHEAT1から続く、門馬選手と林選手による2番手争いがヒートアップ。門馬選手がベストを更新できあぐねているところに、林選手が着実に迫っていく。計測6周目のアタックで1分40秒台に飛び込んでベストタイムを更新すると、翌周には1分39秒525を記録して門馬選手から2位の座を奪い取る。このタイムで林選手が0.09秒差で2位に飛び込んだ。

 松橋選手は優勝を決めた走りについて、「最終コーナー手前までコースレコードよりコンマ1秒上回っていたんですが、最終コーナーの進入でチキってしまって更新できませんでした」と反省するも、「これでSUGOは7連勝中! 今年は勝って卒業したいですね。再来週の岡山を勝って開幕戦から全戦優勝を目指します」と、次なる目標を明かした。

 一方、2位につけた林選手は「新しい車両にして2回目の走行なんですが、やっとコツを掴み始めた感じですね。シフトタイミングで悩んでいたんですが、皆さんのお知恵も拝借して無事(1分)40秒を切ることができました。ECUもノーマルなんでまだまだ上がる余地はあると思っています。次戦の目標は38秒までもっていきたいですね」と意気込んだ。

松橋豊悦選手(N-TEC BSスイフト)がスズキ・スイフトスポーツをドライブしてCT4クラスで優勝した。
CT4でスバルBRZを操る林幸夫選手(映像研びーあーるぜっと)が2位を奪取した。
CT4の3位を獲得したのはGR86を駆る門馬勇人選手(プロμ86)。
CT4の表彰台には左から、2位の林選手、優勝した松橋選手、3位の門馬選手が登壇した。

CT5クラス

 CT5は1600cc以下の2WDで国内メーカーのB車両が集う。このクラスはSUGOと筑波、岡山国際共通のクラス区分に統一されて以降、SUGOではシリーズが成立していなかった。今季の開幕を迎え、日産・ノートeパワーニスモSとマツダ・ロードスターでサーキットトライアルを楽しむ湯崎伸選手による声がけの下、4台のノートが集結してクラス成立となった。

 HEAT1からトップタイムをマークしたのは、SUGO経験者である湯崎選手。しかし、湯崎選手でも新路面には苦戦したようで、ベストを記録したのはファイナルラップの7周目だった。

「皆さんに『SUGOで遊ぼう!』とお声がけさせていただき、応えてもらいました」と、湯崎選手はCT5成立の経緯を明かした。コース攻略については、「まだまだ掴み切れていないです。SUGOはロードスターで走り込んでいたので、ノートの走り方を模索しながら走っている感じですね」と、ノートに合った攻略法を探っていた。

 2番手にはなんと、SUGO初走行の太田高之選手が湯崎選手のタイムに迫った。HEAT2で確実にタイムアップが予想される太田選手の奮闘に、湯崎選手の楽勝ムードも一変してしまう。

 HEAT2での湯崎選手はゆっくりとした走り出し。序盤は自分のスペースを見つけながら、様子見しながらのアタックを行う。その後、クーリングラップを終え、勝負に出たのは後半だった。計測4周目にはトップタイムを更新する。

 しかし、太田選手も1秒以上ベストを更新して湯崎選手に追いすがる。ふたりの優勝争いが濃厚となり、最終アタックは太田選手が先に入った。湯崎選手がHEAT1に記録した1分46秒97を0.278秒上回るが、この時点での湯崎選手のベストには僅かに届かず2番手が確定。そして、湯崎選手はファイナルラップにもう1度アタックを敢行すると、1分46秒058! トップタイムを自ら更新して開幕戦を締めくくった。

 発起人として面目躍如の勝利となった湯崎選手は、「目標としていたタイムにはちょっと届きませんでした。最後の最後でタイムが出ているのも課題です。ちゃんとフレッシュなうちにタイムを出せないといけないですよね」と、反省をまず口にした。

 更に「第2戦はカローラレビンが参戦してくるというので、実績ベースのタイムでは5秒以上違うから厳しいと思います。ただ、今年はノートのみんなでSUGOに参戦しようと始めたので、シリーズ全戦参戦を目標に頑張ります」と、今季の目標を語った。

 一方、2位に入った太田選手は「とにかく運と練習ですね。今日はコーナーを覚えながら走ったので、最終戦に向けて着実にタイムを上げていければいいですね。SUGOは高低差があって荷重移動で楽しく曲げられるんですが、その気持ち良さにのって走っちゃうとタイムが出ないんですよね。とにかく楽しいサーキットでした」とSUGO初走行の感想を語った。

 次戦は新たな挑戦者が登場する気配も漂うCT5がシリーズ初成立しそうなことは、楽しみなところだ。

日産・ノートのワンメイクとなったCT5クラスの優勝は湯崎伸選手(モースポNTEC十手ノート)が獲得した。
CT5の太田高之選手(DXLNPC東京Ntecノート)が2位入賞を果たした。
CT5は左から2位の太田選手と優勝した湯崎選手が表彰台に上がった。

CT6クラス

 CT6は1500cc以下の2WDで国内メーカーのB車両によって争う。筑波で開催された2025年JAFカップオールジャパンサーキットトライアルでCT7クラスを制した坂本大知選手を筆頭に、コンパクトカーと軽自動車が入り混じって競われた。

 HEAT1のトップタイムをマークしたのはダイハツ・カプチーノのターボパワーと軽量ボディ、そして異質なライン取りを活かしてSUGOを駆け抜けた“レジェンド”吉崎久善選手。2番手につけたトヨタ・ヤリスを駆る熊本壮一郎選手に3秒以上もの大差をつけた。

「今日は昨年チャンピオンの堀(知海)選手が出ていないので、なんとか勝ちたいと思っています。まだまだ新しい路面に慣れてはいないので、2本目もタイムを上げられそうですね。縁石も変わってしまったので、気温よりも慣れの方でタイムが上げられそうです」と、吉崎選手はHEAT2でのタイムアップに手ごたえを掴んでいる様子。

 坂本選手が操るPN車両のロードスターは本来CT7クラスということもあり、ストレートでのスピード差はいかんともしがたい状態で3番手止まり。HEAT2に入ると吉崎選手は有言実行でトップタイムを更に約0.7秒更新し、まさに無双状態での勝利となった。

 走行後、吉崎選手は「自分のベストタイムを更新できました! ギヤに合わせて走らないとパワーバンドを外してしまうので、他のマシンと大きくラインが異なるんですよね。特に4コーナーは早めにインについて、その後孤を描くようにアウトまでしっかり膨らむようにしています。今年は筑波とSUGOでマシンが壊れないように、皆勤賞を目指します」と異質なライン取りの理由も明かした。

 一方で、2位に入った熊本選手は「最近ちょっと吉崎さんのタイムに近づいていたので、チャンスがあるかと思ったんですが、吉崎さんからカプチーノの調子が良くなったと聞いてやっぱりダメだと思いました(笑)。雨が降ってくれればひっくり返せると思いますが、今年は天気頼みですね」と、好調の吉崎選手にお手上げの様子だった。チャンピオン不在のCT6、次なる展開にも期待したい。

CT6クラスはダイハツ・カプチーノを駆る吉崎久善選手(DXLカプチーノ参号機)が優勝を果たした。
トヨタ・ヤリスをドライブする熊本壮一郎選手(GRシュポルト千葉EDヤリス)がCT6の2位に入った。
CT6の表彰台には左から2位の熊本選手、優勝した吉崎選手が登壇した。

フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部

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