2020年全日本カート選手権チャンピオンインタビュー Part.1

インタビュー カート

2021年1月21日

コロナ禍でシリーズ開催に大きな影響を受けた2020年の全日本カート選手権。最高峰OK部門は5か月の過密スケジュールの中で行われ、カート新時代を予感させる新たなチャンピオンが誕生した。

■渡会太一選手(わたらいたいち/16歳/Drago CORSE) 2020年全日本カート選手権OK部門チャンピオン

——OK部門チャンピオン獲得、おめでとうございます。

「この(もてぎ大会の)レースでチャンピオンになれる可能性があることは、決勝前に知りました。ただ、どうやったらチャンピオンが獲れるのかまったく分かっていなかったので、いつもどおり優勝を目指しながら走るだけでした」

「(第8戦を)2位でゴールしたら、チームの人たちが喜んでいたんで、『あ、チャンピオンなのかな?』と思いました」

——2020シリーズ開幕の御殿場大会では4位/9位と、結果があまり振るいませんでした。

「あの大会ではマシンのセッティングもあまり良くなかったし、大会初日の土曜日に降った雨で自分もマシンとうまく噛み合わなくて……、タイムトライアルの時点でかなりポジションを落としてしまいました」

「そこから第1戦も第2戦も追い上げのレースになってしまったんですけれど、2019年の自分と同じで追い上げるのがヘタクソだったんで、そこでつまずいてしまった形です」

——第3戦からは怒涛の5連勝でした。チャンピオンを獲れる手応えはいつ感じ始めましたか?

「茂原大会(第3戦/第4戦)で2連勝した時に『今年はイケるのかな?』とは思っていました」

「印象に残っているのは、やっぱりSUGO大会の第6戦ですかね。あのレースは予選でペナルティを受けて10位まで落ちてしまって、そこから追い上げるレースになったんですが、前半でかなりもたついてしまってトップと5秒以上の差があったんです。その時点では正直、自分でも優勝は無理かなと思ったんですけど、そこから自分の強みでもあるタイヤマネジメントでうまく巻き返すことができたレースでした」

——今の時点で2020年の自分に点数を付けるとしたら?

「80点くらいですかね。御殿場大会のレースでは苦戦したし、今回(第8戦)のレースも自分ではあまり良くなかったと思うので、そこがマイナス20点です。勝ってチャンピオンを決められなかったことが一番悔しいですね」

——2020年の渡会選手は、2019年と何が違っていたのでしょう?

「2019年までの自分は1回ポジションを落としたらすぐ慌ててしまって、なかなか取り返せないようなことがずっと続いたんですけど、2020年は1回落としてもかなり冷静でいられるようになりました。その冷静さが、タイヤマネジメントの部分にもいい影響を及ぼしているのかな、と思います」

——『渡会選手はあんなに速いのに、最後までタイヤをもたせてしまう』という驚きの声をよく耳にします。その走りの秘密は、どこにあるのですか?

「自分の走りでやっているのは本当にシンプルなことなんです。自分はクリッピングポイントまででタイムを稼ぐドライバーなんで、あまりタイヤを横方向に使わないことを意識しています。それによってタイヤもかなりもつことが分かったというか、もともとあったこの走り方を、周囲の人たちのアドバイスでだんだん理解して、今のように走れるようになってきました」

——2019年は、渡会選手が先輩たちからタイヤマネジメントの技術を学んで上達してきました。それが2020年は、荒尾創大選手や平安山良馬選手といったルーキーが速さを見せて、それを渡会選手が技術で上回る、という展開になりました。上手さで優位に立つ者と、速さでそれを追う者の立場が、2020年は入れ替わったように感じます。

「2019年だったら許されることも、2020年は許されなくなっている感じですね。OK部門2年目になって、ルーキーたちの走りから自分が学ぶことも多いですし、自分が壁となってルーキーたちを抑える立場になって、ルーキーたちには絶対負けないぞという気持ちで戦ってきました」

「荒尾選手や平安山選手には正直、驚かされました。タイムトライアルでも常に上にいるし、だからといってレースで落ちてくるわけでもない。今回(第8戦)のレースでも、自分が2番手に上がった瞬間に、トップにいた荒尾選手はいつものパターンで落ちてくるかなと思ったんですけれど、落ちてきませんでした。今回は本当にやられたなって印象でした」

——今の自分にまだ足りないものとは?

「やっぱり、抜くことはできるんですけど、相手を抑える技術が足りてないなと思いました。今回も抜いても抜き返されてしまうようなレースだったので、やっぱりその点は自分がまだまだ甘いなと思います」

「自分の理想の走りに比べて、今は60パーセントくらいのところでしょうか。カートを極められてきてはいるんですけど、やっぱりまだまだ課題が多くあるので、そこを修正していけば理想の自分に到達できるのかな、と思います」

——四輪を目指すのであれば、カートの最高峰でチャンピオンを獲った今、ステップアップには非常にいいタイミングだと感じます。

「ここまでカートで成績を出すことができて、やっぱり自分自身も四輪を目指したいと思っています。この先のことはまだ自分でも分からないんですが、2021年はオーディションを受けて、次の年に四輪に上がれたら、というのが今のプランですね。そこからスーパーGTなど国内のトップカテゴリーで戦えるようになりたいです」

「ただ、僕はカートが大好きなんで、四輪を目指しながらも、佐々木大樹選手のようにカートも同時に続けていけたらな、と思っています。佐々木選手と三村壮太郎選手は僕が尊敬しているドライバーで、あのふたりにはいつも驚かされますし、佐々木選手は四輪でもカートでも常に速いですよね。僕自身もああいう存在がいることによって、カートをやりたいなって気持ちになれるんで、自分もふたりのような存在になれたらな、と思っています」

——渡会太一選手とは、どんなドライバーでしょう。

「よく言われるんですけど、レースが終わってヘルメットを脱いだらぜんぜん違う人が降りてきた、と(笑)。まあ、カートで走ってる時は常に真剣だけれど、カートを降りた時はフレンドリーな感じのキャラクターでいたいです」

「学校生活との両立は、いろいろ工夫しながらうまくやれていると思います。学校も僕のレースのことは理解してくれています。ただ、学業の方はあんまり良くなくて、それがレースにも出ているのかもって、ちょっと思ったりするんですけどね(笑)」

フォト/遠藤樹弥 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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