2020年全日本カート選手権チャンピオンインタビュー Part.2

インタビュー カート

2021年1月22日

東地域と西地域に分かれて各5戦を競い合い、東西統一競技会で雌雄を決する全日本カート選手権FS-125部門とFP-3部門。ライバルが多い部門を制したそれぞれのチャンピオンたちに2020シリーズを振り返ってもらった。

■津野熊凌大選手(つのくまりょうだい/16歳/Scuderia Sfida) 2020年全日本カート選手権FS-125部門チャンピオン

——FS-125部門のチャンピオンが確定したのは、もてぎでの東地域第5戦。西地域を5戦全勝ですでに終了していた津野熊選手は、その場にいませんでした。チャンピオンが決まるレースの様子を、どのようにチェックしていましたか?

「自宅でタイミングモニターのネット中継を見ながら(他にチャンピオンの可能性を残している洞地遼大選手の)順位を確認していました。その前のクラスから中継を見ていたんですが、決まるかどうかを考えてずっとドキドキしていました」

「(予選の)1周目が終わった時に洞地選手が順位を下げていて、そのあとずっと洞地選手は追い上げてきたけど、フェアリングペナルティとかもあって最後まで順位が分からなくて……。結果を待っていたんですけど、カート専門誌の方が速報(ツイッター)でチャンピオンが決まったと書いてくださっていて、それを見て分かりました」

「うれしかったけれど、その場にいないでチャンピオンが決まったので、あまり実感はなかったですね。やっぱり東西統一競技会が終わるまで、実感はちゃんと味わえなかったです」

——2019年は同じ部門で3位表彰台が1回のみでした。2020年になって今年はイケるぞと感じたのはいつですか?

「第2戦の御殿場大会で優勝したくらいですね。開幕戦はちゃんとチェッカーを受けての優勝ではなくて、赤旗中断での優勝だったので、あまり実感が湧かなくて。自信もそんなにつかなかったんですけど、御殿場大会はブッチ切りで優勝することができて、それがすごく自信になりました」

——そこからレースを重ねるにつれて、落ち着きと貫禄がどんどん増してくるように見えました。

「神戸大会(第3戦)くらいまでは予選ヒートを落としてしまって(決勝の)ポールが獲れてなくて、自分ですごく焦りとかあったんですけど、中山大会からはレースを落ち着いて組み立てられるようになってきて、そこからは予選でポールを獲ってきっちり優勝できるようになりました」

「そう変われたのは、やっぱりメカニックの人としっかりコミュニケーションを取って、自分から積極的に意見を交換することで、毎回クルマのセッティングや走りを煮詰めていけるようになったことが、一番大きな要因だと思います」

——2020シリーズで、ここまでのベストレースは?

「僕は神戸大会のレースが一番印象に残っています。神戸大会が一番苦しい状況で、鎌苅一希選手が予選から速くて、もう決勝の最初しかチャンスがないと思っていました。そこから自分の思うようにレースを組み立てられた内容(序盤の逆転から逃げ切って優勝)だったので、すごく印象に残りました」

——2020シリーズに何点を付けますか。

「80点くらいですね。(マイナス20点は)まだ焦りがあったり、自分の中では落ち着いていると思っていても、レースになると気持ちだけが先に行ってしまったりしたこともあったので。走りだけでなく、自分のメンタルとか気持ちの部分も鍛えていかないとダメだなと思います」

——2021年の活動予定は、もう決まっていますか。

「まだ決まってないです。希望としては、OK部門にステップアップしたいと思っています。限定Aライセンス(の資格)を取れたので、スーパーFJやF4の練習もしていきたいと思います」

「僕はレースを始めた頃からスーパーGTとスーパーフォーミュラのふたつのチャンピオンを獲ることが夢なので、そこに向かって頑張りたいです」

——津野熊凌大選手とはどんなドライバーなのか、レースファンに向かって紹介してください。

「とにかく毎戦勝ちだけを狙って、守りの姿勢に入らず、常に攻めて戦うっていうが僕のスタイルだと思っていて、タイムトライアルから全部1位を獲ってやろう、という気持ちでどのレースも戦っています」

「憧れのドライバーは、山本尚貴選手です。最後まで諦めない、あの戦い方がとても好きです。自分もみんなに好かれるような、マナーの面も含めて後輩に『ああいうドライバーになりたい』と言われるような選手を目指したいです。これから上のクラスにステップアップしていっても、チャンピオンを獲れるように頑張りますので、応援をお願いします」

■中村仁選手(なかむらじん/14歳/Formula Blue TKC) 2020年全日本カート選手権FP-3部門チャンピオン

——東西統一競技会の決勝を2位でゴールした時の気持ちを教えてください。

「事前にポイントを計算していたので、この順位でチャンピオンは獲れるなと思って、安心しました。もちろん優勝は狙っていたけれど、決勝の途中から少しペース的に苦しくなってきて、ちょっと守りに入る方向性というか、なるべく無理しないで走りました」

「マシンを降りてから、周りの人たちに『おめでとう』とか『いいレースをありがとう』とか、お祝いの言葉をたくさんもらいました。チャンピオンの実感はまだぜんぜん湧いていなくて、後日レースを動画で見返して実感を得ようかなと思います」

——全日本選手権は2020年が初めての参戦でした。同じヤマハKT100Sエンジンのレースでも、ローカルレースと全日本は違いましたか?

「ローカルのレースはみんなで楽しくやろうっていう雰囲気なんですけど、こっちの全日本は、もちろん楽しい雰囲気もあるんですが、少し硬めの雰囲気があります。それぞれ違う雰囲気があって、僕はどちらも好きです」

——2020シリーズは6戦で優勝3回、表彰台5回という成績でした。この一年に何点を付けますか。

「60点か70点くらい。けっこう自分のダメなところが出たレースもいっぱいあったので、そのくらいがちょうどいいのかなと思います。その一方で、(ミスがあっても)修正していけるっていう面で、自分の良さを出せたシリーズだったとは思います」

「FP-3部門を一年間経験して、周りを見る力とか、冷静にレースをすることとかの大切さを学びました」

——2020年はヤマハのドライバーサポートプログラム『Formula Blue』の一員として全日本に参戦しました。そのことにプレッシャーはありましたか?

「始めはかなりプレッシャーを感じましたけど、楽しくレースすることを一年間の目標にしていたので、後半はあまりプレッシャーを感じずに走れるようになりました」

——FP-3部門で刺激を受けた選手はいましたか?

「角陽向選手です。常に速さを持っているし、今回のレースでも、一旦沈んでもちゃんと順位を取り戻せるっていうのが凄いと思います」

——上のクラスのレースを見て、どう感じましたか?

「自分もあんなレースをしたいなって憧れを持ちました。いろんなところでバトルが起きていて、自分じゃできないなっていう抜き方とかバトルの仕方があったので、すごいと思いました」

——来年の活動予定はもう決まっていますか?

「まだ決まっていません。できれば全日本のFS-125部門に出たいと思っています」

——将来の夢を教えてください。

「僕はフォーミュラというより、どちらかというとハコ車のレースが好きなので、ハコ車のレースのトップカテゴリーに出られたらいいなと思っています。十代でフォーミュラに乗っていい成績を残して、そこから状況に応じて資金などを集めて、上のクラスに出ていけたらな、と思っています。もちろん甘い話ではないですけれど、どんどん上に進んでいけたらな、と思います」

——レースファンの方々に向かって、自己アピールをお願いします。

「最終戦の鈴鹿でも落ち着いて走ることができましたし、もちろん焦ってしまう時もあるんですけど、それを落ち着かせてリカバーできるドライバーだと思います。今後は2020年以上に飛躍できるように、みなさんのサポートが必要になると思います。自分でも精進していきますので、ご協力をよろしくお願いします」

フォト/小竹充 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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