トップカテゴリーのレーシングドライバーがカートレースに参戦するワケとは?

インタビュー カート

2024年7月26日

7月13~14日に開催された全日本/ジュニアカート選手権と併催の、GPRのShifter 第5戦/第6戦には、今シーズン初戦からフル参戦している松下信治選手のほか、スーパーGTで活躍する松田次生選手がスポット参戦を果たしている。彼らレーシングドライバーがなぜカートに挑むのか、その理由を探ってみた。

 カートレースが行われる鈴鹿サーキット南コースのパドックは、いつもと違った雰囲気に包まれていた。そこにはファンに求められた写真撮影にも気軽に応じ、全日本/ジュニアカート選手権の盛り上がりにひと役買っていた、松下信治選手と松田次生選手の姿があったからだ。

 松下選手は2023年からひと足先にShifterに参戦しており、今季はポイントリーダーに立つ活躍を見せている。そして松田選手は今大会で初参加のShifterながら好走を披露。そんな松田選手と松下選手に、レースウィークのパドックでインタビューする機会を得た。両ドライバーの言葉に耳を傾けてみよう。

 ともに少年時代はカートに打ち込む生活を送り、四輪レースの頂点に上り詰めたドライバーたちは、今なぜ再びカートレースに参戦するのか? また久々に体験したカートはどんなものだったのだろうか?

スーパーGTの現場とは違った表情を見せる松田次生選手と松下信治選手。同じShifterクラスに参戦する者同士、会話も弾んでいた。

松田次生選手(ハラダカートクラブ with NEXT BIRTH)

「ちゃんとしたカートレースに出るのは24~25年ぶりですかね? 正直キツいです、スーパーGTの方が100倍くらいラクだと思います。カートのレーシングスーツは通気性が悪くて……、エアコンをつけてほしいくらいです(笑)」と、開口一番に冗談交じりでインタビューに応じてくれた松田選手。

 カートを改めて始めた理由を尋ねてみると「前からトレーニング用にミッションつきのカートが欲しいと思っていて、それがたまたま手に入ったんです。で、乗ってみたらShifterってこんなに面白いのかって思って、そこから火がついちゃった感じですね」ときっかけを語る。

「トレーニングという意味では、ただ走るよりレースに出た方がメンタルも含めていい勉強になるのかなと思っています。GTカート部(ロニー・クインタレッリ選手が発起人となって立ち上がったGTドライバーのトレーニングの集い)ではウェイトが重い僕は絶対勝てないけれど(笑)、ここでは僕はノーウェイトで1.5~2kgオーバー。乗れるカートといったらこれしかなかったんです」

「シミュレーターのレースではぶつかってももう一回できるけれど、カートは自腹を切ってやっているので、おのずと真剣になります。お金がいろいろかかって大変な面はあるけれど、今はこういうセットアップをするんだとか、昔とは全然考え方が違うんだとか、さまざまな発見があります」と、真剣に取り組みながら新たな刺激も受けている様子がうかがえた。

「今、僕は45歳だけど、OK部門の現役カーターたちに近いタイムで走れているのは、まだ引退しなくても大丈夫だなって、ホッとする感じですね(笑)。勝つのは正直難しいでしょうけれど……。そんな中で松下選手がチャンピオンを獲れたらすごいよね。話は変わるけど、ロニーさんは8月中旬の御殿場のGPR合同テストに参加するみたいで、そこで10番以内に入ったらレースに出ようって言ってましたよ」と明かしてくれた。

フリー走行ではウェットコンディションの影響もあってタイムに苦しんでいたが、ドライになると48.540秒をマークし、トップに0.064秒差まで迫った。決勝は第5戦が7位、第6戦が5位と健闘を見せる。

松下信治選手(Tony Kart R.T.J.)

「本業のレースだとスタート前や決勝前に緊張するじゃないですか。テストでは感じない緊張感がレースにはあって、アスリートが試合でしか感じない緊張感をもっと味わいたくてShifterに出始めました」と松下選手は参戦の理由を教えてくれた。

 続いてもうひとつの理由は“体力”だと言う。「一番体力的にキツいのがShifterですね。若い子がいる中で、プライドがあって負けられないという気持ちもあるし、頑張るんですよ。そうすると発見もあって、ジュニアのころに気づかなかったことに今さら気づいたりして、すごく勉強になっています」と、カートレースではさまざまな収穫があるそうだ。

「今でもカートの現役の子たちと肩を並べて走れて、意外と自分は悪くないなと思うし、厳しい言い方をすれば、今のカートのレベルは僕たちの時代と比べてどうなのってことも正直考えさせられます。予選では毎回鈴木悠太選手と井出七星翔選手に前に行かれてしまっているんで、まずそこで勝ちたいですね」と悔しさを漏らす。

「レースには自信があって、リアのタイヤが減ったなとかのセンサーは経験のある自分に分があると思います。ただ、今のカートの子たちは、僕が14~15歳のころよりはるかに頭がいいと感じました。逆に言うと考えすぎで、僕らのころの方がパッションがあったのかなとは思います」と時代の変化を分析。

「スーパーGTとかに出ているドライバーが、もっとカートレースに来てくれたらなって思っています。OK部門の第3戦で佐藤蓮君がいきなりスポットで出て優勝したじゃないですか。マジですごいなって思いましたよ。四輪のサーキットにいるときより顔がめっちゃ楽しそうで、生き生きしてましたからね」と言う松下選手自身も楽しそうだった。

Shifter 第6戦終了時点で139ポイントのランキングトップに君臨している松下選手。第2戦、第4戦、第6戦を優勝で飾り、それ以外もすべてで表彰台を獲得する活躍を見せている。

フォト/今村壮希、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

ページ
トップへ