FIA世界モータースポーツ評議会、ドリフト車両の世界統一車両規則「DC1」を承認

ニュース ドリフト

2020年3月12日

3月6日に今年1回目のFIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)が開催され、FIAドリフト委員会においてまとめられたドリフト車両規則が提出され承認を得ることになった。

 2020年最初のFIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)がスイス・ジュネーブで開催され、新型コロナウイルス感染症への対応の表明や、各カテゴリーにおける2020年以降の方向性に関わる決議が行われた。

 新型コロナウイルス感染症への対応は、FIAメディカル委員会のジェラール・サイヤン教授の発表によれば、FIAクライシスセルを設立し、ここでは2日ごとに世界の最新情報を収集し展開を検討。加盟するクラブとプロモーターと共に状況と影響を注意深く冠ししながら、各政府やWHO世界保健機構を含む関係当局の助言に従うことを表明した。

 F1世界選手権やWEC世界耐久選手権については2020年や2021年に関する技術規定や競技規定の議論がなされ、FIAシングルシーター委員会では、第2世代となるフォーミュラ4車両に関する方向性が示された。ドライバーを守る安全装置「Halo」を装着した新車両の使用が2021年から利用可能となることと、すべてのF4選手権に対して2023年末まで移行期間を設定することも明らかにされ、これらが完了することで、FIAシングルシーターピラミッドすべてにHalo導入がなされることになる。

 WRC世界ラリー選手権に対しては、2022年から導入される予定の、「Rally1」車両を頂点とした新たなクラスと技術規則の承認がなされ、エンジン規則やハイブリッド技術、安全セルなどに関する最終的な詳細については、継続して議論されることが明らかにされた。

 そして、大きなニュースとしては、FIAドリフト委員会で検討を重ねてきた、ドリフト競技における統一車両規則が承認されたことだろう。

 FIAがドリフト競技に対する興味を隠していないことはかねてよりお伝えしているとおりで、日本で開催されてきたドリフト世界一決定戦「FIAインターコンチネンタル・ドリフティング・カップ(FIA IDC)」は、2017年の第1回にはFIAジャン・トッド会長が来日したことも記憶に新しい。FIAドリフト委員会も新設されており、ル・マン勝者にしてドリフトの造詣も深い飯田章氏が委員長を務めている。

 飯田委員長の下、とりまとめられた統一車両規則は「DC1ドリフト車両」と呼ばれ、その草案が世界モータースポーツ評議会に提出され、3月6日に承認を得ることになった。これまで各国、各ASNまたはプロモーター毎に異なる車両規則を統一化することはエントラント、プロモーター、そして観客にとって大きな影響をもたらすことが予想される。

 飯田委員長は「この規則は長い間、常に強く求められてきたものです」「これまでエントラントは参加するシリーズを選択し車両を作ってきましたが、その車両が他のシリーズで使えるかどうかはわからない状態でした」と、現状を説明。そして「まだまだこのスポーツは発展途上です。複数のシリーズに参戦を希望しても、それぞれの規則に適合した異なる車両を制作するコストを負担できるエントラントはまだまだ少ない」とも指摘する。

 新しい規則はこうしたエントラントに対し、車両制作や複数のシリーズへ参加するプロセスを大幅に低減するものであり、このスポーツの普及と拡大を担うFIAドリフト委員会として行なう最初の措置である、とも語った。

 また、FIAテクニカルディレクターのジル・サイモン氏は、飯田委員長同様のメリットを指摘しつつ、加えて「安全性についてFIAスタンダードを徹底的に浸透させること」もまた目標の一つであるとしている。ローカルイベントや草の根大会における安全性への懸念は就任直後の飯田委員長も指摘していたことでもある。

 このDC1ドリフト車両は、各ドリフトシリーズのトップクラス、いわゆるプロクラスを念頭に検討されたものだという。サイモン氏は「既に存在するトップレベルの車両の多くはこの規定を既に満たしているか、または微小な修正で合致すると信じている」とコメントしており、既存の車両規則を意識した規則であることが強く伺える内容となっている。

 今回の車両規則はプロクラスを前提にしたもので、これから来年に渡りFIAドリフト委員会はセミプロフェッショナル、そしてアマチュアクラスに至るまで統一車両規則の検討を続けてゆくという。こちらの規則がどのような形であり、方向性を目指しているかについては今のところFIAからのコメントは発表されていない。

 こうした車両規則の統一化が世界のドリフト競技、そして日本で開催されている複数のドリフトシリーズにどのような影響を及ぼしてゆくか、統一規則案がドラフトから完成形に至るまでの課程を含め、注視しておく必要があるだろう。

ワーキンググループから委員会に昇格しているFIAドリフト委員会。初代委員長を務めることになったのは、レーシングドライバーにしてドリフトにも造詣が深い飯田章氏。
第1回と第2回は東京・台場、第3回は茨城県の筑波サーキットコース2000で開催されたFIA IDC。第4回以降については、新たなプロモーターの入札が開始されている。
また、FIAからは、昨年11月にイタリア・ローマで開催されたFIAモータースポーツゲームスの第2回大会が10月23~25日にフランスで開催されることも発表され、「Drifting Cup」では新たなDC1ドリフト車両が参加できることも明らかにされている。

フォト/堤晋一、SRO Motorsports Group、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部

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