砂塵と格闘してきた記録・全日本ダートトライアル選手権の王者たち
2020年4月29日
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未舗装路を攻めるダートトライアル競技には、二度と同じ路面コンディションでは走れない、”一発勝負”の醍醐味に魅せられた選手が多く参戦している。ここでは名だたる全日本ダートトライアラーの全日本タイトル獲得回数を調査。王者たちの足跡を振り返ってみよう。
スピード競技の全日本選手権における優勝回数とチャンピオン獲得回数については、全日本ジムカーナ選手権を戦う山野哲也選手が2019年までに114勝、19回という記録を打ち立てている。しかし、同じスピード競技の全日本ダートトライアル選手権においても、十数回に渡ってタイトルを獲得している猛者たちが多く活躍している。
その特筆すべき存在が、ベテラン北村和浩選手だと言えるだろう。というのも、北村選手はこれまでに16回に渡ってタイトルを獲得するなど、シリーズ最多のタイトル獲得回数を誇る。
北村選手の記念すべき初タイトル獲得は1990年。改造車のトヨタ・スターレット(EP71)で3勝をマークし、CⅡクラスでチャンピオンに輝くほか、1991年にクラス2連覇を達成。1994年に三菱ランサーエボリューション(CE9A)でAⅣクラスのチャンピオンに輝くと、1998年から2000年にはスバル・インプレッサWRX(GC8)でAⅣクラス3連覇を果たすなど、4輪駆動車で活躍した。
その後も北村選手は2004年にスバル・インプレッサWRX(GDB)でN4クラス、2005年および2006年に同じくスバル・インプレッサWRX(GDB)でSA2クラスを制覇。さらに2010年から2013年には三菱ランサーエボリューション(CZ4A)でSA2クラスを4連覇したほか、2016年から2017年にもSA2クラスで連覇を果たし、2019年にSA2クラスを制したことで自身16回目のチャンピオンに輝いた。
北村選手は2020年の開幕戦で惜しくも2位につけるなど、今もなおトップ争いを左右する実力を持つだけに、タイトル獲得回数においても記録の更新が期待されている。
一方、北村選手と共にダートトライアル競技のレジェンド的な存在が、これまでに15回に渡ってチャンピオンを獲得している谷田川敏幸選手に他ならない。
谷田川選手にとって初のタイトル獲得となったのが1998年で、スバル・インプレッサWRX(GC8)で強豪揃いのCⅢクラスを制覇。2002年にスバル・インプレッサWRX(GDB)でCⅢクラスを制すると、2005年から2011年には同じくスバル・インプレッサWRX(GDB)でSC3クラス7連覇を達成した。
最高峰のDクラスに移行した2012年はランキング2位に終わったが、2013年にはスバル・インプレッサWRX(GDB)でチャンピオンを獲得。さらに2014年から2018年にかけてはスバル・インプレッサWRX(GVB)で制するなど最高峰クラスで6連覇を達成した。
2019年はシーズン途中にスバルBRZを4WDターボ化したD車両(YD3)を投入しつつもランキングは2位と惜敗。2020年の開幕戦も2位と苦戦しているが、マシンと一体になったときの谷田川選手は抜群のパフォーマンスを披露するだけに、今後の巻き返しが期待されている。
全日本タイトルを10回以上獲得しているのは現役選手だけではなく、ダートトライアル競技の長い歴史の中においては、伝説的なドライバーの活躍も記憶に新しいだろう。
1980年代後半から1990年代に活躍した粟津原豊選手も数多くのタイトルを獲得したレジェンド級ドライバー。全日本ダートラにおいては1985年のBⅡクラスで初めてチャンピオンに輝くと、1989年にAⅠクラス、1990年および1991年はCⅠクラス、1992年から1994年はAⅠクラス、そして1995年から2000年までCⅠクラスでチャンピオンに輝くなど、全日本ダートトライアル選手権で12連覇を達成。全日本ラリー選手権との二足のわらじで活躍しながら、通算13回の全日本チャンピオンに輝いている。
また、北海道のコンパクトカー・マイスターとして知られる原宴司選手も十数回に渡ってタイトルを獲得しており、1991年のAⅠクラスで初めて全日本チャンピオンを獲得して以来、2009年のN2クラスを制するまで13回の王座を獲得した。
1994年にC1クラスでチャンピオンに輝いた石井淳選手も、二桁のタイトル獲得回数を誇るタイトルホルダー。ホンダのFF車両による参戦を続けた前輪駆動マイスターで、2007年にSC1クラスでタイトルを獲得するまで、10回のチャンピオン獲得経験を持っている。
さらに「モンスター」の異名を持つ田嶋伸博選手も語り継がれるチャンピオンの一人。ダートトライアル競技で名を馳せ、海外ラリーにも参戦してきた土系競技の偉人だ。
ダートトライアル競技にド肝を抜く改造車で参戦して注目を浴びた田嶋選手。パイクスピーク・ヒルクライムやアジア・パシフィックラリー選手権の参戦を並行しながら、全日本ダートトライアル選手権で躍進。1986年のDクラスで初めてタイトルを獲得して以来、2000年にタイトルを獲得するまでの間に、通算11回に渡ってチャンピオンに輝いた。
チャンピオン獲得回数で10回以下のドライバーとしては、9回を獲得している故・大井義浩選手を筆頭に、同じく9回の荒井信介選手、そして、8回の炭山義昭選手、梶岡悟選手らが続いている。荒井選手は2020年の開幕戦京都で、北村選手や若手ドライバーと戦いながらSA・SA2クラスを制しているだけに、今後の記録更新が期待されている。
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フォト/JAFスポーツ編集部 レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部
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