新たなFIAカテゴリー「フォーミュラリージョナル」が富士スピードウェイでついに開幕!
2020年8月18日
全日本フォーミュラ3選手権に代わるミドルフォーミュラによる新カテゴリー「フォーミュラリージョナル・ジャパニーズチャンピオンシップ(FRJC)」がついにスタート。ここでは新シリーズの概要とFRJ車両の乗り味を、開幕戦レポートと共にお届けする。
FORMULA REGIONAL JAPANESE CHAMPIONSHIP Round1/2/3
(ザ・ワンメイクレース祭り2020富士内)
開催日:2020年8月1~2日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:富士スピードウェイ(株)、FISCO-C
全日本フォーミュラ3選手権とヒエラルキー的には同様の位置付けとなる新カテゴリー「フォーミュラリージョナル・ジャパニーズチャンピオンシップ(FRJC)」。本来なら6月に幕を開けるはずだったが、コロナ禍の影響で大幅にリスケジュール。予定通り6大会全14戦で開催されることになり、8月1~2日に富士スピードウェイで開幕した。
旧全日本F3との最大の相違点は、すべてワンメイクとされていることだ。シャシーは童夢F111/3、エンジンはアルファロメオ製のATM-ARF3Rを搭載。1750ccの直4ターボエンジンは、270PSを絞り出すから、旧全日本F3車両を10PS超える。その一方で、車両重量は670kgと旧全日本F3車両より100kg程度重い。
そういった要素からストレートは速いものの、動きはダルという印象が強く、実際すでにスタートを切っているアジアのレースを経験したドライバーは、そういった評価を下している。ただ、FRJ車両に関して若干その印象を変えているのが、まずはタイヤだ。
フォーミュラリージョナル・アジアの経験者であるDRAGON選手によれば、「基本的な動きは同じなんですが、FRJのダンロップタイヤのパフォーマンスがとても高いので、クルマの性能を引き出すにはダンロップさんの方が特性に合っていて良いと思います」という。
また「FRアジアの車両ってステアリングがめちゃくちゃ重いって聞いてましたが、FRJ車両は童夢さんの技術力で軽くなっていて、これだったらジェントルマンドライバーでも大丈夫です」と語るのは阪口良平選手。
さらにレースの中で明らかになったのは、昨今のフォーミュラカーはピタリと背後につけるとダウンフォースが抜けて、バトルしにくいという傾向が強いが、FRJ車両ではそれほどでもないということ。それを身をもって体感してくれたのが阪口晴南選手だ。
8月1日のレース1でスタートに遅れてトップを明け渡したものの、接近戦の後に逆転を果たしているからだ。「ダウンフォースはあるんですが、今までやっていた全日本F3に比べると少なく感じるので、あまりにも背後が不利すぎるということはないですね。FIA-F4に近い感じで接近戦ができるし、スリップストリームもきちっと効くので、面白いレースになるクルマだと思います」とは晴南選手。
さて近年は、レースシリーズに「レースディレクター」を設定する傾向が増しているが、FRJCではそれを一人が担当するのではなく、複数名によるレースディレクションメンバーが担当。チームとして、レースがコントロールされることとなっている。
そのうちスポーティング担当の宮沢紀夫氏によれば、「テクニカルな部分で言うと、スタンダードはスタンダードですよ。国際規格での車両ですから、特別なことはありません」とのことだが、既存のFR車両が抱えていたステアリング等の「症状」が、日本の技術力で解消されたのは、賞賛に値すると言えるだろう。
また「シリーズとしては、もちろんステップアップのカテゴリーです」と語るのは、競技運営全般を担当する高谷克実氏。ただ、今回参加した13名のドライバーのうち、7名が50歳以上のジェントルマンドライバーであったが、その背景にはコロナ禍も影響しているという。「国内のドライバーと共に、海外のドライバーも呼び込みたいという思いもあって、結構問い合わせもあったのですが、今はこんな状況ですから……」とも高谷氏。
実際、前出のDRAGON選手によれば、「本当はアメリカ人の若手を走らせる準備をしていたんですが、来られないということで、代わりに僕が出ているという現状なんです。なので第2ラウンド以降、来日できるという事になれば交代することになります」とのことである。より活況を呈することを期待する意味でも、一早いコロナ収束が望まれる。
さて、今大会では、8月1日の土曜に2回の予選とレース1、レース2、8月2日の日曜にレース3を行うフォーマットとなったが、これは次ラウンドのSUGOにも共通しており、以降は2レース開催となる予定だ。
1回目の予選でレース1、2回目の予選でレース2のグリッドが決まり、レース3のグリッドは2回目の予選のセカンドベストでグリッドを決定する。開幕戦では「昨日から調子が良かったので、想定通りのタイムを出せました」と語る晴南選手が、3レースすべてポールポジションを獲得。2番手には、レース1は篠原拓朗選手、残る二つのレースは高橋知己選手が付けていた。
土曜のレース1ではスタートで金丸ユウ選手にトップを譲った晴南選手だったが、3周目のヘアピンで逆転。早々に独走体制へと持ち込んだ。金丸選手も単独走行となった一方で、篠原選手と古谷悠河選手、そして阪口良平選手の間では、最後まで緊張感のあるバトルが繰り広げられた。古谷選手はカート出身のルーキー、他の二人は久々のフォーミュラながら、互角の戦いを繰り広げた辺りはFRJCの懐の広さも感じさせた。
記念すべきオープニングのレース1をほぼ10秒差で勝ち抜いた阪口晴南選手は、「最初のレースで最初のウィナーになれて、すごく嬉しいし、光栄な事だと思います。スタートした瞬間に自分のダメな所を理解したので、次は修正できると思います」と語っていたが、まさにレース2ではそんな展開になった。
スタートを決めた阪口晴南選手はオープニングの1周だけで1秒6の差を付けると、後はひたすら逃げていく事に。実に16秒差での圧勝となった。「ずっとフルプッシュして走っていて、クルマも良かったし、ドライビングも良かったと思います」と晴南選手。その後方では金丸選手と高橋選手、篠原選手が2番手を競い、7周目に篠原選手が前に出た。
レース3でも阪口晴南選手のワンマンショー状態に変化なし。「クルマのバランス的に前半が厳しかったので、そこはちょっと改善すべきポイントだったと思います」と語りながらも、11秒差で3連勝を飾っている。
2位は高橋選手が獲得。「FRJCが始まった年に出させてもらって、皆さんの記憶、記録に残るレースができたことはとても嬉しいです。次のSUGOがスーパーGTと重なっていて出られないんですが、出られるレースは全戦勝ってチャンピオンになれるように頑張ります。この選手権がもっと盛り上がればいいですし、とにかく伸び代のある選手権だと思うので、楽しみにしています」とは阪口晴南選手。
50歳以上のドライバーを対象にした「マスターズクラス」も設けられ、3レース共に植田正幸選手が予選トップ。レース1では今田信宏選手を背後に置き、逃げ切りなるかと思われたが、「自分のミス」で10周目のGRスープラコーナーでスピン。今田選手ばかりか、三浦勝選手にも抜かれてしまう。「速いフォーミュラに乗るのは初めてなので、勝てて嬉しいです」とは今田選手。
レース2では、レース1をオルタネーターのベルト切れから出走できなかったDRAGON選手が主役となる。4番手スタートながら、1周で植田選手の後ろに付け、11周目の1コーナーで逆転を果たした。「セットアップの違いで、植田さんはストレートが速くて苦労しましたが、焦らず行って勝てて良かったです」とはDRAGON選手。
レース3のマスターズクラスもトップ発進の植田選手だったが、1周目のダンロップコーナーで今田選手にかわされてしまう。今田選手はやがてDRAGON選手の接近を許すも、まったく動じることなく、そのまま逃げ切って2勝目をマーク。「レース1はラッキーな勝利ではありましたが、それで付いた自信がレース3で活かされました。速い方々がいる中で勝てて、凄く嬉しいです」とは今田選手だ。
フォト/石原康、はた☆なおゆき レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部