PN2小俣洋平選手、圧勝! 北海道・スナガワで全日本ジムカーナ選手権がついに開幕

レポート ジムカーナ

2020年9月3日

3月29日にツインリンクもてぎで開幕を予定しながらも、新型コロナウイルス感染症の影響で中止や延期が続いていた2020年のJAF全日本ジムカーナ選手権がついにスタート。北海道のオートスポーツランドスナガワを舞台にSA・SAX4を除く8クラスの成立で開幕した。

2020年JAF全日本ジムカーナ選手権第5戦
2020年JMRC北海道SPARCOアウティスタジムカーナシリーズEXラウンド
「北海道オールジャパンジムカーナ」

開催日:2020年8月22~23日
開催地:オートスポーツランドスナガワ ジムカーナコース(北海道砂川市)
主催:C.S.C.C.、AG.MSC北海道

 8月22~23日、北海道砂川市にあるオートスポーツランドスナガワ ジムカーナコースにおいて、全日本ジムカーナ選手権第5戦「北海道オールジャパンジムカーナ」が開催され、約5か月遅れで全日本ジムカーナがシーズン開幕を迎えた。

 8月8~9日の全日本ダートトライアル選手権に続いて開催された北海道における全日本選手権。今大会においても入場ゲートでの検温や問診票の提出を筆頭に、マスク着用および手指の消毒、「北海道コロナ通知システム」への登録、ドライブスルーでの参加受付など新型コロナウイルスの感染拡大防策が実施された。

 今大会では全日本選手権の出走台数は71台に留まったが、JMRC北海道シリーズが併催され、合計85台が出走した。それでも各ドライバーは土曜の公開練習から激しいアタックを披露。決勝となる日曜には真夏の太陽にアスファルトが焦がされる中で、各クラスでは第1ヒートから激しいバトルが展開されていた。

 ダートトライアルコースと隣接するオートスポーツランドスナガワのジムカーナコースは、ハイスピードなコースジムカーナとパイロンジムカーナを組み合わせたレイアウトを持つことで知られているが、今大会の決勝コースレイアウトは、前半ではコース部分、フィニッシュ手前にはパイロン区間を設定した全日本選手権の定番レイアウトを採用。

 コース区間では、外周を大きく回るハイスピード設定ではなく、例年に比べて内周を多く使う設定となった。パイロン区間では1本パイロンのフルターン2か所を含む、やや入り組んだ設定となり、抑えるべき個所でいかに抑えるか、そして正確な走りを実践することが攻略のポイントとなった。

会場入口では手指消毒や検温、体調確認を実施。追跡システムへの登録も徹底された。
ドライブスルー方式の公式受付をボードで促す競技オフィシャル。フェイスガードを装着。
受付では参加者は乗車したまま、閉じた窓越しに運転免許証と競技ライセンスを提示する。
決勝コースレイアウト。例年の外周を繋いだ高速設定ではなく、タイトコーナーが連続した。

 レースウィークは気温や路面温度が上昇し、決勝日も午前中は強い日照を伴う晴天となった。午後には雲がコースを覆ってきたが、多くのドライバーが第2ヒートでのタイムアップは難しいと考えていたようで、第1ヒートから緊張感のあるバトルが展開されていた。

 中でもスリリングな攻防が展開されたのがPN2クラスだった。

 2019年のPN1クラスでタイトルを獲得し、今季よりPN2クラスへのチャレンジを開始した小俣洋平選手が気を吐き、1分37秒080をマークして第1ヒートを制した。これに続いたのが2019年にPN2クラスで3連覇を果たした山野哲也選手で1分37秒395をマーク。3番手以下は1分38秒台となり、トップ争いは小俣選手VS山野選手の一騎打ちとなった。

 運命が決まる第2ヒートで主導権を握ったのは、クラスを変更したことにより、今シーズンは比較的早いタイミングで出走することになった小俣選手だった。

 気温と路面温度の上昇により、多くの選手が第2ヒートで失速する中で、小俣選手は1分36秒821をマークして、第1ヒートのベストタイムである自己タイムを自ら更新してみせた。これに対して最終出走者の山野選手は1分38秒325とタイムダウン……。

 この結果、小俣選手の勝利が確定。クラス前半で出走を追えた小俣選手は落ち着きなく戦況を見守っていたが、勝利が確定した瞬間、タイヤメーカーのスタッフと共にPN2クラスでのデビュー戦初優勝の喜びを分かち合っていた。

「1本目は前半でミスしたので走りは良くなかったんです。気温が上がっても対応できるようにシミュレーションはできていたので、2本目に修正することができれば、タイムが上がるとは思っていました。今年は山野選手と勝利を分け合うことになると思っているので、先に勝てたことは良かったですね」と冷静に分析する小俣選手。

 2位に惜敗した山野選手も「今回は完敗です。条件的に勝てるパッケージではなかったけど、やれることは全てやりました。小俣選手は荒削りだけど器用な選手。新たなライバルが出てきたので今後の戦いが楽しみです」とのことで小俣選手の勝利を称えていた。

昨年のPN1チャンピオン小俣洋平選手。今季はアバルト124スパイダーでPN2に参戦。
金曜の練習走行、そして日曜の決勝でも苦戦を強いられた100勝王者・山野哲也選手。
第2ヒートの最終走者山野選手はベスト更新ならず。小俣選手がデビューウィンを飾った。
PN2表彰台。優勝は小俣選手、2位は山野選手、3位は仲川雅樹選手、4位は工藤典史選手。

 PN1クラスでは2018年にクラス2連覇を果たしているロードスター使いの斉藤邦夫選手が圧巻の走りを披露した。第1ヒートで唯一の1分36秒台をマークすると、第2ヒートでそのタイムを更新できるドライバーは現れず、斉藤選手の開幕戦優勝が決まった。

「スナガワでは1本目が決勝タイムになることが多いので、セオリー通りに1本目から勝負に行ってイメージ通りの走りができました。今年は全戦有効だから1戦もポイントを落とせないので、開幕戦で勝てたことは良かった」と斉藤選手はホッとした表情を見せた。

 PN3クラスで幸先の良いスタートを切ったのは、FD2シビックからロードスターRFに乗り換えて、PN3クラスで全日本選手権に復活してきた松本悟選手。1分38秒691を叩き出し、第1ヒートをトップフィニッシュして存在感を示した。

 クラス前半で出走した松本悟選手は、第2ヒートではタイムダウン。同じくロードスターRFに乗り換えてPN3クラスに移ってきた松本敏選手は、第1ヒートでは2番手につけていたが、第2ヒートではタイムアップを果たせず終い。

 そして、ロードスターRF使いとして知られる天満清選手を始め、BRZの川北忠選手やトヨタ86使いの2019年PN3チャンピオン西野洋平選手らもタイムを上げられず、松本哲選手の2017年開幕戦もてぎ以来の優勝が決まった。

「1本目で勝負が決まるとは思っていました。攻め過ぎると失敗に繋がるので、マージンを取って走りました。結局、失敗したんですけど、他の選手も失敗していたみたいなので、自分はダメージが少なかった分で優勝できたんだと思います。結果として開幕戦で勝てたし、十分に戦えることが分かったので良かったですね」と松本悟選手は静かに振り返った。

 全日本スナガワ大会では久々にクラス成立となったPN4クラスでは、野島孝宏選手が第1ヒートで唯一の1分36秒台をマーク。第2ヒートではライバルたちもタイムアップを果たすものの、1分36秒台に届かずに野島選手が開幕戦で勝利を飾った。

 沖縄の実力者、石原昌行選手や若手期待の奥井優介選手を相手に、第2ヒートはパイロンタッチを喫するもののベテランらしい横綱相撲を展開した野島選手。「参加台数が少ないのでクラスが成立するかどうか不安でした。成立したからには勝ちたいと思ってましたが、1本目にイメージ通りに走れたので良かったです」と笑顔で語った。

PN1は斉藤邦夫選手が第1ヒートのタイムで逃げ切り優勝。3年連続のスナガワ制覇に。
PN1クラス表彰台。優勝は斉藤選手、2位は地元の米澤匠選手、3位は小林規敏選手。
PN3はロードスターRFで全日本に復活した松本悟選手が第1ヒートのタイムで優勝。
松本悟選手は2017年以来の優勝。2位松本敏選手、3位天満清選手と続き、ロードスターRFが表彰台を独占した。
茅野成樹選手が不参加だったPN4クラスは野島孝宏選手が第1ヒートのタイムで優勝した。

 2020年より従来のSA車両のほか、SAX車両も加わることとなったSA・SAX1クラスでは2019年のSA1クラス王者である一色健太郎選手がトップ争いを支配した。

 2019年SA1ランキング2位の小武拓矢選手は、スナガワが学生時代のホームコースということで優勝候補と目されていたが、小武選手は第1ヒートからパイロンペナルティで下位に低迷。クラス最終走者の一色選手は唯一の1分37秒台で第1ヒートを制覇し、続く第2ヒートでは誰一人1分37秒台に届かず、一色選手が逃げ切りの優勝となった。

「相手(小武選手)がパイロンタッチしたので勝てた部分もありますが、”生”タイムでは負けていたので2本目は強気のセッティングに変更しました。足回りをあえて曲げにくい方向にしたんですけど、フィーリングはとても良かったですね。チャンピオンを目指して1戦ずつ戦いたいですね」とのことで、一色選手には今後に繋がる開幕戦となった。

 SA・SAX2クラスでは、2019年にSA2クラスで2連覇を達成している”沖縄魂”でおなじみの高江淳選手と水野俊亮選手が一騎打ちを展開した。まず、第1ヒートで水野選手が1分38秒台の壁を破って1分37秒593をマークすると、クラス最終出走の高江選手が1分37秒339で上回り、僅差ながら第1ヒートを制覇した。

 第2ヒートでも多くのドライバーがタイムアップを果たせず、高江選手が第1ヒートのタイムで優勝した。「クルマが本州にあり手元になかったので、この半年間はまったく練習できてませんでした。土曜になって感覚を取り戻せましたが、決勝1本目は気負い過ぎてミスしてました。今年は4戦しかないので1戦の価値が大きい。開幕戦で勝てたのは大きいですね」と語る高江選手。8月末にはオートポリスで86/BRZレースのエキスパートクラスでのレースデビューも控えているそうだ。

 SA・SAX3クラスで幸先の良いスタートを切ったのは、2019年のSA3ランキング2位の久保真吾選手。1分37秒135を叩き出して第1ヒートを制覇した。第2ヒートでは、電気系トラブルで第1ヒートは4番手と出遅れていた渡辺公選手が、1分37秒307で2番手にジャンプアップするものの僅かに届かず、久保選手が逃げ切りの優勝を決めた。

 自身の勝利が確定した瞬間、パルクフェルメで喜びを爆発させた久保選手は「今回はパイロン区間が難しいので無理をしないように走らないといけなかったんです。でも、1本目はミスをしてしまいました。それで焦ったこともあって2本目も同じミス(笑)。走りの内容としては『0点』に近いけど、このクラスは渡辺選手が速いので、1戦でも落とすとタイトル争いは厳しくなります。なので開幕戦で勝てて本当に良かった」と振り返った。

SA・SAX1クラスは第1ヒートでブッちぎりのタイムを叩き出した一色健太郎選手が快勝。
SA・SAX1表彰台。優勝は一色選手、2位は島田昌典選手、3位は織田拓也選手、4位は合田尚司選手。
SA・SAX2クラスは第1ヒートで僅差で水野俊亮選手をかわした高江淳選手が逃げ切り優勝。
クルマに乗れない期間が長かった沖縄の高江選手だが、勝負勘をしっかり取り戻した。
SA・SAX3クラスは久保真吾選手が第1ヒートのタイムで優勝。渡辺公選手を振り切った。

 SCクラスでは、第1ヒートは1分35秒688をマークした牧野タイソン選手に続いて、大橋渡選手が1分35秒506でトップに浮上する。特に大橋選手は公開練習から調子が良く、SCクラスのチャンピオン経験者たちが1分35秒台の一騎打ちを展開した。

 第2ヒートでのタイム更新が難しい雰囲気が漂う中で、第2ヒートでは2019年にSCクラスで3連覇を果たした西原正樹選手が躍進。第1ヒートこそ1分37秒台でクラス4番手に留まっていたが、岡本尚史選手とのダブルエントリーによりクラス先頭走者となっていた西原選手が第2ヒートで1分34秒410をマークして、暫定トップにジャンプアップした。

 第2ヒートのトップ争いは一気に1分34秒前半の勝負へとヒートアップ。第1ヒートで2番手につけた牧野タイソン選手はパイロンタッチでトップ争いから脱落。一方、第1ヒートを制した大橋選手も第2ヒートでタイムアップを果たしたが、1分34秒769で約コンマ3秒届かず2位に惜敗。西原選手が開幕戦を制した。

「今年の長いシーズンオフはほとんど走れなかったし、金曜の練習走行と土曜の公開練習でも調子が悪かった。それで本番の1本目に新しいセッティングを試すことになったんだけど、マトモに走れる状態じゃなくて(笑)。2本目に金曜のセッティングに戻したことで、何とかタイムアップすることができたんだ。完璧じゃなかったけど、相手の伸びが少なかったことで勝てた感じ。今年は全戦有効で“捨て試合”がないから、緒戦で勝てたのは良かったね」とのことで、西原選手は安堵の表情を見せていた。

 今シーズンは、PN2クラスの河本晃一選手や、ロードスターRFに乗り換えてPN3のタイトル争いにリベンジするはずだったユウ選手らが不在となる中で、事実上の開幕戦となったスナガワでは、各クラスで全日本選手権にふさわしいバトルが展開された。

 新型コロナウイルス感染症の先行きが見えないだけに、今後も不透明な部分も多いが、2020年の全日本ジムカーナ選手権は全戦有効の短期決戦としてようやくスタートした。

週末を通じて不調だったSC西原正樹選手が第2ヒートで大逆転。ベテランの意地を見せた。
SC表彰台。優勝は大逆転の西原選手、2位は惜敗の大橋渡選手、3位は高橋和浩選手。
土曜には全日本ジムカーナ選手会(AJGA)の今季初となるミーティングが行われた。
併催のR-Ecoクラス表彰台。優勝は西山直登選手、2位は森本里美選手、3位は三好翔太選手。
併催のR-1クラス優勝は梶靖博選手。2位の佐野勝也選手との差は僅か約コンマ2秒!
併催の86/BRZクラス優勝は山口武人選手、2位は高野一徳選手、3位は山内見音選手。

フォト/加藤和由、廣本泉、JAFスポーツ編集部 レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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