ゴールドカップレース、オートポリスで待望の開幕!
2020年9月17日

コロナ禍や災害の影響でなかなか幕を開けられずにいたオートポリスのゴールドカップレースが、本来の予定より5か月遅れで8月30日にようやく開催されることとなった。オートポリスは山中のサーキットだけに、比較的穏やかな気温の中でのレースになるかと思われたものの、まさに山の天気は変わりやすく……。最終レースのGR 86/BRZレースのプロフェッショナルシリーズには、思いがけぬエンディングが待ち構えていた。
サーキットトライアルinオートポリス2020 第1戦
開催日:2020年8月30日
開催地:オートポリス(大分県日田市)
主催:APC
「2020 ゴールドカップレース第2戦」
TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race 2020 第6戦
TOYOTA GAZOO Racing Netz Cup Vitz Race 2020 西日本シリーズ第2戦
開催日:2020年8月30日
開催地:オートポリス(大分県日田市)
主催:株式会社オートポリス、APC
24台のエントリーを集めたサーキットトライアルは、マクラーレン675LTを持ち込んだ太田智之選手がB3クラスで総合優勝を飾っている。第1ヒートで2分9秒310をマークし、2番手に4秒5もの差をつけたが、第2ヒートでは2分6秒927にまで短縮。第1ヒート4番手だったポルシェ991GT3の山内照章選手が、6秒短縮を果たして2番手に浮上していたが、さらに引き離した格好だ。
「すべてクルマのおかげです。このクルマをサーキットで動かすのは2年半ぶりだったので、第1ヒートは流して、第2ヒートでちょっと踏みました。普段はVITAとロードスターで走っているんですが、今回はレースがないのでこれで走って。次回は(VITAとの)併催ですが、今日勝ったのでもう一回出ようかと考えています」と太田選手。
B2クラスは第1ヒートでトップタイム、2分21秒062をマークしたトヨタ86の安井洋選手が逃げ切って優勝。しかし、「第2ヒートはストレートが遅くなりました。エンジンが心配です。第1ヒートもけっこうリアが滑っていて、会心の走りではなかったです。CTは今回が初めてで、10月のAP 86/BRZレースに出ようと思っていまして、その予選の練習だったんです」と安井選手。2位は第1ヒートから約2秒の短縮を果たした、ノートニスモSの橋本克也選手が獲得した。
B1クラスはRX-8の柴田柾彦選手が、第1ヒートに記録した2分26秒487で優勝。「第1ヒートの赤旗再開後に、先頭で出られたのが大きかったと思います。それまでクリアラップが取れずに苦労していて、第2ヒートもやはり取れなかったので」と柴田選手。なお、オートポリスのCTとして、初めてポディウムに上がっての表彰式が行われ、これが大好評だった。






ネッツカップヴィッツレースは、3連覇を目論む原俊平選手が貫禄のポールポジション。決勝でもスタートを決めて、後続を一切寄せつけなかった。「途中、雨に見舞われたんですが、オフィシャルの方々が、どこで降っているか教えてくれたので助かりました。今年もこの調子で頑張ります」と原選手。
2位は三浦康司選手が獲得、予選4番手からポジションキープの展開が続いていたが、5周目の1コーナーで先行車両のミスに乗じて、ジャンプアップに成功した。


86/BRZレースのクラブマンシリーズオープンクラスは、窪口綾選手が新谷隆徳選手をコンマ3秒差で従え、ポールポジションを獲得。決勝でもライバルを一切寄せつけず、オートポリスでの2年連続優勝を果たした。
だが実は「ギヤにトラブルを抱えていて、決勝前のスタート練習で失敗しちゃってエンジンのチェックランプが点いたまま」の辛勝だったことが明らかに。2位は岡田整選手が獲得、5周目に新谷選手をかわし、最後は振り切ることとなった。


86/BRZレースのクラブマンシリーズエキスパートクラスは、予選開始から間もなくセクター1で雨に見舞われるハプニングが。後半に勝負をかけていた前回3位の鶴賀義幸選手は最後尾スタートを余儀なくされてしまう。
「ただ単に運が良かったです」と語るのは、地元ドライバーの丸田敏正選手で、「ブレーキトラブルがあったので、自分の会社まで戻ってパーツを取ってきて夜中に交換して、という作業が身を結んだのと、タイムを出した後に1コーナーで大雨でしたから」と、ポールポジション獲得に満面の笑顔が溢れていた。
決勝では絶妙のスタートを切ったかに見えたが、これがペナルティの対象に。1周だけで1秒半、後続を引き離していた丸田選手はドライビングスルーを余儀なくされて、大きく順位を落とす。4周目から、代わって予選4番手だった木村建登選手がトップに立つも、終盤のペースが今ひとつ。そこに迫ってきたのが呉良亮選手。予選5番手ながら徐々に順位を上げ、8周目の3コーナーでトップに躍り出る。
「予選で失敗しちゃって、抜けるところの少ないコースなので厳しいかな、と思っていたんですが、予選で前だった人たちに案外着いていけて。こりゃチャンスあるかもと思い始めたらノッてきて、もう優勝しかないって!」と呉選手。
一方、鶴賀選手はオープニングの1周だけで9番手に浮上し、その後もオーバーテイクを繰り返し、ラスト2周で2番手へ。「やれることはすべてやれたので、良かったです。疲れましたが」とは本音に違いない。木村選手は無念の3位。


86/BRZレースのプロフェッショナルシリーズは、エキスパートクラスの予選で降った雨の影響でセクター1が生乾き状態のまま予選がスタート。開幕戦でデビューウィンを飾った川合孝汰選手が「路面温度の低いうちに」と先頭を切ってアタックするも、タイミング的に早すぎて9番手留まり。ほぼ全員が終了間際にアタックする中、谷口信輝選手を抑えて、ポールポジションを獲得したのは菅波冬悟選手だった。
「1コーナーがまだ湿っていたので、練習のようにはいかなかったんですが、切り替えてセクター3で稼ぐことができました。ベテランの谷口選手が2番手で、レースのうまい選手なんで。2018年のオートポリスは谷口選手がポールで、僕が2番手で負けたので、今回リベンジしたいです」と菅波選手。
一方、「1か所ロスして、ポール獲れなかったのは残念でしたが、フロントローからなので決勝が楽しみ。菅波がリベンジするって? そうですか、受けて立ちましょう!」と谷口選手。3番手にはエキスパートクラスから移行してきた、水野大選手がつけていた。
決勝では菅波選手と谷口選手がほぼ同時にクラッチミートするも、「1から2が入らなかったんです、チェンジミスして」と菅波選手。突然の失速にも、谷口選手はインを刺そうと右側にハンドルを切った直後とあって、するりと前に出ることに成功。その後は菅波選手も単独走行なのだが、谷口選手を追いきれず、徐々に差を広げられてしまう。
そんな最中にゲリラ豪雨が!「ペースはこっちの方が良さげだったし、周回を重ねるごとに差は広がっていったので、これは安泰だなと思っていたら、ストレートの先の方にすごいのが(笑)。『モーゼ?』みたいに、真っ白いところに飛び込んでいかなきゃいけなくなって。どうやって耐えるかって、前も見えないし」と谷口選手。それが7周目のこと。間もなくセーフティカーが導入され、8周目が終了したところで赤旗が出されてレースは終了。
3位は佐々木雅弘選手、服部尚貴選手らと激しいバトルを繰り広げた、水野選手が獲得。「ベテランの皆さんのプレッシャーを受け続けて本当に厳しいレースでしたが、ドライバーとして確実に成長できたレースだったとも思います」と水野選手は語っていた。


さて、今回86/BRZのエキスパートクラスに、全日本ジムカーナ選手権SA2クラスで2連覇を果たしている高江淳選手が出場した。今までジムカーナ一筋で活動し、もちろんレースは初めて。普段はインテグラで走っているだけに、FRの86での競技も初めてとなる。
「レースに出ようと思ったきっかけは、このオフ、ZENKAI RACINGというシミュレーター(SIM)で練習していて、コロナ禍もあったのでeスポーツもやっていて。一度もレース経験がないのに、でも全日本ジムカーナでチャンピオン経験のあるドライバーが、まぁまぁ速く走れていたから、実際にレースに出てみて速く走れれば、それだけSIMの精度も高いということになりますよね。それと沖縄に住んでいて海を越えなければ走れない、我々にはうってつけなんですよ、SIMって」と高江選手。
だが、実際に走らせてみると……。「一度、岡山の走行会で走らせてもらって、オートポリスを走るのは金曜から。実のところGがすごくって、思いどおりのラインに乗せられなくて苦戦しています。でも、だんだん慣れてきていますよ」と発言も弱め。予選でも下位に沈んではいたものの、決勝での追い上げが期待された。
強いGには耐えられるようになったものの、続いて悪戦苦闘したのがバトルだった。ご存知のとおり、ジムカーナは単独で走行する競技。終始3台で競い合っていたのだが、「始まった途端、まわりの攻め方、勝負に圧倒されていました。ずっと後ろから追いかけて、前がバトルしている隙をついて抜くつもりだったんですが、自分が抜こうとしたら、それをまた被せて阻止するというか。前も後ろも見ている感じだったんですね、えらいびっくりして」と高江選手。それでも「隙をついて、いったんは抜けたんですが、最終ラップの1コーナーで自分もミスして、また抜かれてしまいました」ということもあり、最下位での完走を果たすに留まった。
「走っている最中はプレッシャーもあって、終わった直後は不安から解放されてホッとしたんですが、終わってしばらくすると落ち着いてきたので、だんだん悔しくなって、じわじわ来ているんですけど、とりあえず無事に事故もなく終わって良かったな、と」
「ジムカーナは運転の基本とよく言われるので、レースに関しても機転を利かせればできるんじゃないかって考えていたんですが、そこは全然違っていましたね。さっそくいろんなことを考えています。ああすれば1秒速く走れたんじゃないかって」
「ただ、タイムが速くなっても決勝になると、またそこは別なので。ジムカーナはベストライン走ることに集中しますけど、レースは相手と戦いながら臨機応変にラインを変更しなければいけないので、そういう駆け引きが。速さだけじゃなくて相手と戦うための強さが必要だなって。ある程度分かっていたんですけど、実際に経験して分かりました」

フォト/皆越和也 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部