ホンダが2021年をもってパワーユニットサプライヤーとしてのF1参戦終了を発表
2020年10月9日
10月2日、モータースポーツ界を揺るがす発表がなされた。ホンダが2021年シーズンをもって、F1へのパワーユニットサプライヤーとしての参戦を終了することを発表。「2050年カーボンニュートラルの実現」を目指すためのリソース配分への転換も明らかにした。
フォーミュラレースの最高峰シリーズ、FIAフォーミュラ1世界選手権(F1)で活躍するホンダは、10月2日にパワーユニットサプライヤーとしてのF1への参戦を2021年をもって終了することを発表。将来の自動車業界におけるパワーユニットやエネルギー領域での研究開発に経営資源を重点的に投入する方針も明らかにした。
ホンダがF1への参戦を開始したのは1964年で、1965年に初優勝を獲得した。その後も1968年までホンダはオリジナルマシンで参戦してきたが、アメリカで導入されたマスキー法をクリアすべく、1969年よりF1での活動を休止した。
ホンダが再びF1への参戦を開始したのは1983年で、エンジンサプライヤーとしてF1へ復帰し、1986年にはウイリアムズがコンストラクターズタイトルを獲得。
1987年にネルソン・ピケがドライバーズタイトル、ウイリアムズがコンストラクターズ部門で2連覇を達成すると、その後も1988年のアイルトン・セナ/マクラーレン、1989年のアラン・プロスト/マクラーレン、1990年のセナ/マクラーレンと二冠を達成するなど、ホンダはF1で黄金期を築くことに成功した。
1992年を最後に第2期のF1活動を終了したが、2000年にホンダは3度目となる、F1への復帰を果たし、エンジンサプライヤーとしてBARにエンジンの供給を開始したほか、2005年にはBARを買収してフルワークスチームとしての参戦を開始した。
その後もホンダは2008年までF1の最前線で活動してきたが、世界的な景気の後退をうけ、2008年の活動を最後にホンダは第3期F1活動を終了していた。そして、ホンダの第4期F1プログラムがスタートしたのは2015年。マクラーレンにハイブリッド型パワーユニットへの供給を開始したことは記憶に新しい。
当初は厳しい戦いが続いたものの、航空機エンジン技術の活用などオールホンダの総合力を発揮することで高い競争力を実現し、レッドブル・レーシング、スクーデリア・アルファタウリが上位争いを展開。2019年に3勝をマークしたほか、2020年には第10戦終了時点までに2勝を獲得するなど素晴らしいパフォーマンスを見せていたが、前述の通り、2021年を最後にF1での活動を終了することになった。
ホンダの次なるターゲットは最重要課題である環境への取り組みで、持続可能な社会を実現するために「2050年カーボンニュートラルの実現」へチャレンジ。カーボンフリー技術の中心となる燃料電池車(FCV)、バッテリーEV(BEV)など将来のパワーユニットやエネルギー領域での研究開発に重点を置くという。
今年4月には「先進パワーユニット・エネルギー研究所」を設立しており、今後はF1で培ったエネルギーマネジメント技術や燃料技術、そして研究開発の人材も同様にパワーユニット・エネルギー領域に投入し、将来のカーボンニュートラル実現に取り組む予定だ。
この決断について、ホンダの八郷隆弘社長は下記のようにコメントした。
「F1では優勝という目標を達成でき、一定の成果を得ることができました。その力をこれからは、パワーユニットとエネルギーのカーボンフリー化、“カーボンニュートラル実現”という新しいフィールドでの革新に注ぎます。これはF1同様に大変難しいチャレンジであり、社会とともに取り組んでいくべき大きなチャレンジとなります。本日の発表は“カーボンニュートラル実現”という新たな挑戦に向けた決意表明でもあります」。
「ホンダは創業以来モータースポーツへの挑戦を通じて技術の進化と技術者の育成、そして、勝利を目指す熱い情熱を育んできました。レース活動はホンダのDNAです。これからも熱い想いを持って参戦しているカテゴリーのNo
.1を目指し、チャレンジすることに変わりはありません」ということで、カーボンフリーの技術競争においてもトップ争いを演じるに違いない。
なお、F1での活動に関しては2021年を最後に終了するものの、アメリカのインディカーシリーズや日本のスーパーフォーミュラ、スーパーGT、さらに国際シリーズのWTCRなど既存のモータースポーツ活動は継続する予定となっているだけに、今後も各地のサーキットでホンダの活躍が見られることだろう。
いずにしても2020年のF1は7戦を残すほか、2021年には、よりパフォーマンスを高めたパワーユニットを投入する予定。ホンダの八郷社長も「レッドブル・レーシング、スクーデリア・アルファタウリとともに、さらなる勝利を目指して最後まで全力で戦い抜きます」と宣言しただけに、第4期F1プロジェクトを締めくくるホンダ勢の活躍に注目したい。
フォト/本田技研工業 レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部