第24回JAF鈴鹿グランプリは岩佐歩夢選手が優勝!逆転で初のスーパーフォーミュラ王座確定に

レポート レース

2025年11月26日

2025年のシリーズチャンピオンが決定する全日本スーパーフォーミュラ選手権の最終ラウンド。前回の富士大会で濃霧の影響によりキャンセルとなった第10戦の代替戦が組み込まれ、異例の1大会3レース制とタイトスケジュールに。今大会には「瑶子女王杯」が冠され、より一層ヒートアップしたタイトル争いを一目見ようと連日多くの観客が足を運び、3日間で6万9200人を動員した。「JAF鈴鹿グランプリ」のタイトルがかかった第12戦は、岩佐歩夢選手(TEAM MUGEN)がポール・トゥ・ウィンを飾り、最終戦までもつれたタイトル争いを制して2025年のシリーズチャンピオン確定となった。

瑶子女王杯
2025年全日本スーパーフォーミュラ選手権 第12戦
第24回JAF鈴鹿グランプリ

開催日:2025年11月21~23日
開催地:鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)
主催:NRC、SMSC、ホンダモビリティランド株式会社

スーパーフォーミュラ最終戦の舞台となった鈴鹿サーキットには多くのファンが詰めかけた。なお、2025シーズンを通した公式戦の合計来場者数が26万3900人となり、昨シーズンに記録した過去最高の20万9600人を上回り、2シーズン続けて過去最高の来場者数となった。
場内のJAFブースにも多数のモータースポーツファンやJAF会員が訪れ、ジュニアライセンスやキッズ・Eスポーツドライビングシミュレーターなど多彩なコンテンツを楽しんでいた。
会場ではキャリアイベント「JAFウィメン・オン・トラック in 鈴鹿」が実施され、モータースポーツ業界の仕事に関心を持つ女性が、実際のレース運営現場での多様な職種や業務内容を見学していた。

予選

 最終戦を迎えた鈴鹿サーキットは連日青空が広がる好天に恵まれ、土曜日は朝8時00分から第11戦の予選が行われた後、わずか1時間20分ほどというインターバルを挟んで10時05分から第12戦の予選が立て続けに行われた。サポートレースを経てやや異なるコンディションで予選が進む中、安定の速さを見せたのは岩佐選手だった。1分36秒027をマークし、Q1のA組でタイトル争いを繰り広げる牧野任祐選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)に0.456秒差をつけ、トップでQ1を突破する。

 続くB組では金曜日の専有走行から好調さを示す佐藤蓮選手(PONOS NAKAJIMA RACING)が1分36秒244でトップ通過を決めた。タイトル争いに名を連ねる太田格之進選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、野尻智紀選手(TEAM MUGEN)、坪井翔選手(VANTELIN TEAM TOM’S)も難なくQ2にコマを進めた。

 Q2では岩佐選手が全体ベストタイムを刻み、1分35秒910でトップタイムを記録。第11戦に次ぐ堂々のポールポジションを獲得して計6点を稼いだことで、ランキング首位を走る坪井選手に8.5点差にまで詰め寄った。2番手には0.063秒差で野尻選手が続き、TEAM MUGENは2戦連続で最前列を独占。3番手は第11戦がイゴール・オオムラ・フラガ選手、第12戦が佐藤選手とPONOS NAKAJIMA RACINGの2台が分け合う形となった。ポイントリーダーの坪井選手は2戦連続でQ1を何とか突破したものの、第12戦は7番手とランキングを争うライバルの中では後方のグリッドとなった。

 なお、2戦連続ポールポジションと絶好のスタートポジションを手にした岩佐選手だが、第11戦決勝では、1周目の逆バンクでフラガ選手と接触しリタイア。このレースは野尻選手が今季初優勝を飾った。代替開催となった日曜日の第10戦では、牧野任祐選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がポールポジションとなったが、フラガ選手がスタートでトップを奪い取り、そのままスーパーフォーミュラ初優勝を飾った。

 これにより注目のチャンピオン争いも混沌とし始め、JAFグランプリのタイトルがかかる第12戦を前に、王者候補は4人に絞られ、ランキング首位の坪井選手は116.5点、牧野選手と太田選手は107点の同点で続き、岩佐選手は104点の4番手に後退したが、逆転の可能性は十分にある状況。緊張感はより一層高まっていった。

 この展開にJAFの坂口正芳会長は「昨日そして本日の第10・11戦でスーパーフォーミュラ年間チャンピオンの行方は混沌として参りました。この晴天のもと、今季最終戦にふさわしい、素晴らしいレースになること、皆さんとともに期待したいと思います」と挨拶し、第24回JAFグランプリの開会宣言が行われた。

安定した速さでラップを刻み、Q2でも全体ベストタイムを記録した岩佐歩夢選手(TEAM MUGEN)。
ポールポジションを獲得してランキング首位を走る坪井翔選手にプレッシャーをかけた岩佐選手。
第24回JAFグランプリの開会を宣言するJAFの坂口正芳会長。
大会へは名誉総裁の瑶子女王殿下が御成りになった。日曜日のスタートセレモニーに御臨席された際には、JAF坂口会長と談笑のご様子も。

決勝

 31周で争われた最終戦は、スタートで岩佐選手が首位を守り1コーナーに入っていくが、後方ではフラガ選手が野尻選手をかわして2番手に。牧野選手と太田選手もその2台に続く傍ら、「ホンダ陣営とペース差があったので、(チャンピオンを獲るために)何かしないと! と思いスタートか1周目に賭けていた」という坪井選手は、1~2コーナーにかけて果敢な動きを見せたものの、やや膨らむ形で9番手にポジションを落とした。

 今回の最終戦では1周目からピットインすることができるため、上位勢では野尻選手を含む3台がオープニングラップを経てピットインを遂行。トップを走る岩佐選手とは異なる戦略を採ることが推測された。すると、2周目には坪井選手も動きを見せるが、素早いピット作業で野尻選手の前でコースに復帰することに成功。ここから歴代の王者対決により熱戦が繰り広げられる。タイヤに熱の入った野尻選手は、S字コーナーまでに一気に前との距離を縮め、その後も各所でプレッシャーをかけていくが、坪井選手はブロック。ピットを済ませたグループの中での1位を守り切る。

 ここに応戦したのはチャンピオンを狙う太田選手だった。6周目にピットに入ると、ピットレーン出口にピットが近いということもあり、さらにミスがない作業で坪井選手の前で送り出すことに成功。グングンと後方を引き離して、ピットを済ませたグループの首位を奪う。その動きを見ていたTEAM MUGENは7周目に首位を走る岩佐選手のピットを済ませ、太田選手の前で合流させる。さらに同タイミングで入ったフラガ選手も太田選手の後ろでコースに復帰し、ピットを済ませたグループの中では坪井選手は4番手につける形となった。

 すると、10周目のAstemoシケインで野中誠太選手(KDDI TGMGP TGR-DC)と大湯都史樹選手(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)が接触し、大湯選手のマシンがグラベルゾーンにストップ。これにより、セーフティカー(SC)が導入されると、ピット作業を終えていない10台が一気にピットへとなだれ込んだ。

 ここで展開が左右されることとなり、自身初優勝を狙う佐藤選手は3番手、チャンピオンの可能性を残す牧野選手は4番手でコースに復帰。14周を終えてリスタートが切られると、さらにレースは動き、フラガ選手が牧野選手を1コーナーでパスし、その後前を走る太田選手と佐藤選手の2番手争いも激化。17周目には佐藤選手が2番手に浮上し、チャンピオンから遠ざかってしまう。

 その後方ではギリギリでタイトルの可能性を残していた坪井選手も、阪口晴南選手(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)にパスされ、ひとつポジションを下げた。

 レース後半の上位争いはこう着状態となり、岩佐選手はファイナルラップでオーバーテイクシスムを作動させてラストスパートをかけ、見事首位を守り切ってチェッカーを受けて今季2勝目をマーク。参戦2年目にして大逆転でチャンピオンを手にし、マシンから降りると歓喜の雄叫びを挙げ、ドライバーにとっては憧れでもあるJAFのトロフィーを手にした。

 岩佐選手はレース後の会見で「勝てない時期が前半戦で続いて、やっと第8戦SUGOで勝てましたが、結果的にシーズン2勝でチャンピオンということを考えると、レースをフィニッシュした時にしっかり表彰台にいたことが大きかったですね。今後はチャンピオンという肩書き、日本一という肩書きをしっかりと活かせるような進み方をしていきたいです」とうれしさを口にした。

 レースの結果、2位は佐藤選手が続きベストリザルトを獲得。3位には、終盤に「マシンの挙動がおかしい」と無線を入れチャタリングの症状を訴えていた太田選手が何とかしのぎ切って表彰台を獲得。だが、タイトル争いには敗れる形となり、マシンを降りた後は終始悔しそうな表情と涙を流す場面も見られた。また坪井選手は8位でチェッカーを受け、2年連続でのスーパーGTとのダブルタイトル獲得は叶わなかった。

 2025年のドライバーズタイトルは岩佐選手が手にすることが確定、チームタイトルはDOCOMO TEAM DANDELION RACINGが連覇確定を達成。ルーキー・オブ・ザ・イヤーは第10戦で初優勝を挙げたフラガ選手が輝き、2025年シーズンのスーパーフォーミュラは幕を閉じた。

3位となった太田格之進選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)は、チャンピオンを逃した悔しさから涙を流す場面も見られた。
初優勝を狙った佐藤蓮選手(PONOS NAKAJIMA RACING)だったが届かず2位入賞。
佐藤選手の猛追を振り切って今季2勝⽬となるトップチェッカーを受けた岩佐選手。チェッカーフラッグを振るのはJAFの野津真生専務理事。
今シーズン前半は勝てない時間が続いたこともあり、渾身の2勝目となった岩佐選手。
JAF坂口会長よりJAFグランプリトロフィーが授与された、JAF鈴鹿グランプリウィナーの岩佐選手。
第12戦表彰の各選手。
2025年のシリーズチャンピオンが確定となった岩佐選手。参戦2年目での悲願成就となった。
シリーズ表彰式。左から2位確定の坪井翔選手(VANTELIN TEAM TOM’S)、1位確定の岩佐選手、3位確定の太田選手。
「チーム全員が去年から同じ方向を向いて全力を尽くしました。それが形になってすごく自信にもつながりました」とチームへ感謝のコメントを残した岩佐選手。
チームチャンピオンは、太田選手と牧野任祐選手が所属するDOCOMO TEAM DANDELION RACINGに確定。
第10戦で初優勝を飾ったイゴール・オオムラ・フラガ選手ルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた。

PHOTO/遠藤樹弥[Tatsuya ENDOU]、吉見幸夫[Yukio YOSHIMI] REPORT/三家香奈子[Kanako SANGA]、吉田知弘[Tomohiro YOSHITA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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