STANLEY CIVIC TYPE R-GTが11台抜きでGT500勝利、seven × seven PORSCHE GT3Rが逆転でGT300初優勝
2025年10月27日
10月17~19日にオートポリスで3時間レースとして開催されたスーパーGTシリーズ第7戦。GT500クラスは今季優勝のないホンダ勢が予選で下位に沈むも、序盤で燃費走行に徹したSTANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任祐組)が、中盤にトップを奪って独走態勢を築き圧勝。GT300クラスではトップを走行していたCARGUY FERRARI 296 GT3(ザック・オサリバン/小林利徠斗/澤圭太組)が終盤に燃料補給のためにピットインした隙を狙い、今季より参戦のseven × seven PORSCHE GT3R(ハリー・キング/藤波清斗/近藤翼組)がトップを奪って初優勝を果たした。
2025 SUPER GT Round7 AUTOPOLIS GT 3HOURS RACE
開催日:2025年10月17~19日
開催地:オートポリス(大分県日田市)
主催:APC、株式会社GTアソシエイション、株式会社オートポリス
最終戦のひとつ前のラウンドとなるオートポリスでは、これまで搭載していたサクセスウェイトが半減となり、中盤戦で苦戦した車両が従来の性能を出しやすくなることも多い。一方でオートポリスはスムーズなコーナリングが多いコースであり、ウェイト差はあまり出にくいという。むしろ気をつけたいのは路面のタイヤへの攻撃性で、今回の3時間レースではいかにタイヤを労わるかが課題となりそうだ。
九州地方は10月半ばになっても気温が高く、平野部では連日30度を超える日が続いていた。高地の阿蘇外輪山に位置するオートポリスは5度ほど低く、18日の公式練習が始まった9時過ぎは曇り時々晴れの天候で気温24度、路面温度31度と、湿度は高いものの過ごしやすいコンディションとなった。しかしセッション途中から雨が落ち始めウェットコンディションになるなど、不安定な天気に。
予選
公式予選は曇りでコースはややウェット。気温21度、路面温度23度と朝よりも冷えたコンディションの14時45分に始まった。GT300クラスのQ1 A組のセッションではSUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)のフロントから火が出てコース脇にストップ。これで予選の進行は15分遅れとなっている。
続くB組のセッションから雨がポツポツと落ちてきた。Q1を突破した18台のうちBRZを除く17台が上位グリッドを狙うQ2では、CARGUY FERRARI 296 GT3(ザック・オサリバン/小林利徠斗/澤圭太組)の小林選手が2戦連続のポールポジションを獲得。2番手にVENTENY Lamborghini GT3(小暮卓史/元嶋佑弥組)、3番手にHYPER WATER INGING GR86 GT(堤優威/平良響/卜部和久組)がつけ、ポイントリーダーのLEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟/黒澤治樹組)、seven × seven PORSCHE GT3R(ハリー・キング/藤波清斗/近藤翼組)が続いた。
GT500クラスのQ1では、Modulo CIVIC TYPE R-GT(伊沢拓也/大草りき組)の大草選手がトップタイムをマークしたものの、他4台のシビック勢はタイヤと路面コンディションのマッチングに苦戦し、トップ10入りを果たせずQ2への進出はならなかった。
雨量が増えたQ2では、終盤激しい雨の中MOTUL AUTECH Z(千代勝正/高星明誠組)の千代選手がトップタイムをマークするも、直後にNiterra MOTUL Z(佐々木大樹/三宅淳詞組)の佐々木選手がそれを更新してポールポジションを獲得。NISMOの2台がフロントローに並ぶことになった。
逆転タイトルを狙うENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/福住仁嶺組)、KeePer CERUMO GR Supra(石浦宏明/大湯都史樹組)、TRS IMPUL with SDG Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット組)、Deloitte TOM’S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ組)、ポイントリーダーのau TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太組)が続いた。
決勝
GT500クラス
気温22度、路面温度25度という曇りコンディションで、雨予報は出てはいるがまとまった雨は降らなさそうだった。13時16分に3時間のレースはスタート。直後の1コーナーでKeePer CERUMO GR Supraの大湯選手にTRS IMPUL with SDG Zのバゲット選手が接触。大湯選手はスピンを喫し最後尾までポジションを落とすことになった。
序盤、フロントローからスタートしたNISMOの2台のZが3位以下を引き離す。やがてポールスタートのNiterra MOTUL Zの佐々木選手がMOTUL AUTECH Zの高星選手との差を開き始めた。12周目の1コーナーで9番手スタートだったリアライズコーポレーション ADVAN Z(松田次生/名取鉄平組)の松田選手が、Modulo CIVIC TYPE R-GTの伊沢選手に並びかけ、3コーナー手前で2台は接触。
松田選手はコースオフしてタイヤバリアにクラッシュしたが、フロントにダメージを負いリタイアとなった。これでフルコースイエロー(FCY)からセーフティカー(SC)が導入。11周目に2.7秒あったトップの佐々木選手のマージンは一気になくなってしまった。
隊列を整えてSC先導でレースは再開され16周完了でリスタートとなった。ここで4番手につけていたDeloitte TOM’S GR Supraの笹原選手がENEOS X PRIME GR Supra、MOTUL AUTECH Z、そしてNiterra MOTUL Zを捕らえ、28周目の1コーナーでトップに立つ。28周目の1コーナーでNiterra MOTUL Zに並びかけたMOTUL AUTECH Zの高星選手はブレーキをロックさせコースオフ。タイヤにフラットスポットをつくりピットインせざるを得なくなり上位争いから脱落した。
スタートから1時間が経過した33周で4番手のENEOS X PRIME GR Supraが最初のピットイン。今回は給油を伴うピット作業が2回義務づけられている。34周で3番手のau TOM’S GR Supra、そして35周目にトップのDeloitte TOM’S GR Supraと2番手のNiterra MOTUL Zがピットインをすると、12番手スタートのSTANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任祐組)の山本選手がトップに立った。
山本選手は最初のスティントを40周まで引っ張りピットインし、牧野選手へ交代して11番手でコースへ戻った。1回目のピット作業が終わるとトップはKeePer CERUMO GR Supraの大湯選手で、これをWedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南組)、Deloitte TOM’S GR Supra、au TOM’S GR Supraが追う。
さらにARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8(野尻智紀/松下信治組)、Astemo CIVIC TYPE R-GT(塚越広大/小出峻組)が続く形となった。そして驚くことにSTANLEY CIVIC TYPE R-GTの牧野選手が57周目には順位を5番手へ上げていた。一方、3番手を争っていたDeloitte TOM’S GR Supraの笹原選手とau TOM’S GR Supraの坪井選手は、57周目のAstemoコーナー(第1ヘアピン)で接触するなど、同じTOM’Sの2台が激しいバトルを演じた。
スタートから1時間45分が経過した58周でトップのKeePer CERUMO GR Supraが2回目のピットイン。61周でトップに繰り上がったDeloitte TOM’S GR Supraがピットインすると、STANLEY CIVIC TYPE R-GTの牧野選手がトップに。その牧野選手も選手64周でピットインしたが、この作業ではリアタイヤのみを交換して時間を短縮し、3番手でコースに戻った。
そして69周までに上位の2台が2回目のピットに入ると、牧野選手はトップに。さらに10秒ほど遅れてARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16(大津弘樹/佐藤蓮組)の佐藤選手とModulo CIVIC TYPE R-GTの大草選手がつけ、ホンダがトップ3を独占していた。そしてすでに2回目のピット作業を終えていたTOM’Sの2台がそろってイレギュラーのピットイン。ペースが落ちたことでフロントグリルについた雑草などを取り除いたが、2台とも結果的にはピットガレージに収められてしまった。
終盤はホンダのトップ3に変わりはなく、牧野選手が2番手争いを演じる2台との距離を広げて完全な独走態勢に。最終盤の101周目の100RでModulo CIVIC TYPE R-GTの大草選手が2位を奪い102周でチェッカー。STANLEY CIVIC TYPE R-GTが今季限り(来季はプレリュードを投入予定)で役目を終えるシビックの今季初優勝を成し遂げ、シビックが表彰台を独占した。STANLEY CIVIC TYPE R-GTは最初のスティントを山本選手がタイヤを労わりながら長く担当し、残りの2つのスティントを牧野選手が攻めて走った。日産とトヨタのトラブルもあったが、ホンダファンを歓喜させる作戦勝ちのレースだった。
GT300クラス
GT300クラスは、スタート直後の1コーナーで5番手スタートのseven × seven PORSCHE GT3Rが7番手に順位を落としたが静かなスタートを切った。ポールスタートのCARGUY FERRARI 296 GT3の小林選手は、徐々に後続との距離を引き離し10周目には2番手に5.7秒の差をつけていたが、GT500車両のアクシデントでFCYからSC導入となるとそのマージンが消えてしまった。
15周完了でリスタートするとしばらくは2番手のVENTENY Lamborghini GT3の元嶋選手が頑張ってトップの小林選手に離されずにいたが、やがて小林選手が引き離して28周で早めにピットインしてオサリバン選手に交代した。元嶋選手も次の周、3番手のHYPER WATER INGING GR86 GTの堤選手、4番手に順位を上げたUNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI(片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン組)もスタートから1時間が経過した30周でピットイン。
上位陣がピットインを済ませた32周目には12番手スタートのグッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也組)がトップに立ち最初のスティントを42周まで引っ張りピットイン。すると最初のピットワークでCARGUY FERRARI 296 GT3のオサリバン選手の前でコース復帰していたVENTENY Lamborghini GT3の元嶋選手がトップに立った。
中盤はこの2台がテール・トゥ・ノーズでクラスをリード。56周で元嶋選手が、62周でオサリバン選手が2回目のピットインを済ませると、追い上げていたseven × seven PORSCHE GT3Rのキング選手がトップとなった。そのキング選手が65周でピットインをすると、代わりにトップに立ったVENTENY Lamborghini GT3の小暮選手に対し、FCY中の速度超過によりドライブスルーのペナルティが命じられ66周でペナルティを消化した。
これで再びフェラーリのステアリングを握った小林選手が、小暮選手に15秒差をつけた独走トップに立つことになった。しかし勝負はこれで終わらない。何と今度は小暮選手と小林選手に対し、黄旗区間での追い越し行為があったということで、2台に対しドライブスルーのペナルティが命じられた。
76周で2台がペナルティを消化すると、小林選手はキング選手の直前、トップでコースに戻り、小暮選手は3番手でコースに。小林選手はキングとの差を徐々に引き離して行ったが、最終盤の89周で緊急ピットイン。スプラッシュの給油を済ませコースに戻ったが、キング選手の後方2番手へドロップすることになった。
3時間のタイムレースは95周でチェッカー。今季スーパーGTに新規参戦したseven × seven PORSCHE GT3Rが初優勝を遂げた。2位はCARGUY FERRARI 296 GT3、3位はVENTENY Lamborghini GT3だった。ポイントリーダーのLEON PYRAMID AMGは6位でランキングトップを死守、リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ/平手晃平組)が4位に入り、LEON PYRAMID AMGとのポイント差をわずか1.5点差に縮め、タイトル争いは9台に絞られた。
最終戦は11月1〜2日にモビリティリゾートもてぎにおいて300kmレースとして開催される。GT500クラスでは石浦宏明選手、伊沢拓也選手、松田次生選手がこのレースをもってSUPER GTから引退を表明しており、タイトル争いも含めて注目の一戦となる。
PHOTO/石原康[Yasushi ISHIHARA]、遠藤樹弥[Tatsuya ENDOU]、吉見幸夫[Yukio YOSHIMI] REPORT/皆越和也[Kazuya MINAKOSHI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
RECOMMENDED > おすすめ記事

GT500ファイナルラップの逆転劇でリアライズコーポレーション ADVAN Zが9年ぶりに優勝し松田次生選手が25勝目!
2025年9月26日

GT500スープラの連勝を止めたのはMOTUL AUTECH Z! GT300はCARGUY FERRARI 296 GT3が逆転で初優勝
2025年9月3日

富士のスプリント戦でGT500はスープラが上位を独占、GT300はD’station Vantage GT3が2レース制覇
2025年8月8日

残り3分でまさかのアクシデント!? DENSO LEXUS RC F GT3が逆転優勝
2025年8月6日