小橋正典選手が今季4勝目。最年少シリーズチャンピオンに王手!
2020年11月19日
第4戦&第5戦のオートポリス大会から2週間のインターバルを経て、第6戦はエビスサーキットで開催された。第1戦&第2戦が開催された南コースではなく、D1グランプリシリーズ初となる西コースが舞台となった。
2020 D1グランプリシリーズ第6戦 エビス大会
開催日:2020年11月14~15日
開催地:エビスサーキット西コース(福島県二本松市)
主催:株式会社サンプロス
第6戦が開催されたエビスサーキット西コースは、年2回開催の「ドリフト祭り」等で使用され、普段はドリフト走行にほとんど開放されておらず、ほとんどの選手がD1グランプリマシンで初走行となる。そんな今回、1コーナーアウト側には特設観客席が組まれ、迫力のある走りが間近で見られた。
審査コーナーはメインストレートをスタートして、1コーナーから3コーナー。セクター1に入ってからすぐのアウトゾーン(はずすとマイナス3ポイント)、1コーナーのインクリップ(はずすとマイナス2ポイント)の通過指定が選手たちを苦しめた。進入速度は130~160km/hで、予選通過者は150km/h以上といった状況だ。
この審判員長考案のゾーン指定は木曜日の夕方に発表されたので、選手たちはわずかな試走の中で攻略しなくてはならない厳しい戦いを強いられた。今回のゾーン設定は今年開催のどのコースよりもチャレンジングで難易度が高く、有力選手までもが姿を消すこととなる。セクター1の満点25ポイントを獲れた者はごくわずかで、セクター3のインクリップをはずす選手が多かった印象だ。
金曜日の自主練習走行日、土曜日のD1ライツ終了後の短い公式練習を経て、いよいよ本戦が開幕。単走優勝は松山北斗選手(FAT FIVE RACING)で、進入速度159km/hの98.79点を獲得。ちなみに以前に練習用マシンで西コースを走行したことがあり、その時は勢いあまって横転したそうだ。続く2位の小橋正典選手(LINGLONG TIRE DRIFT Team ORANGE)は進入速度157km/hで98.76点と僅差だった。
松山選手は齋藤太吾選手率いるファットファイブレーシングからのエントリーながら、自費購入の車両によるプライベーター。D1グランプリには2015~2017年まで参戦した後に2年間休止し、GRス―プラで今年から復活した。普段は一般企業に勤務するサラリーマンだ。
決勝戦はシリーズランキングトップの小橋選手と2番手の横井昌志選手(NANKANG TIRE DRIFT TEAM D-MAX)が対戦。先行の横井選手が97点(99点だったが軽いコースアウトでマイナス2)、後追いの小橋選手が96点に後追い点5点をプラスして結果97:101。小橋選手が4ポイントアドバンテージを稼ぐ。
入れ替えて小橋選手が先行97点を出すと横井選手も97点で追走し、後追い点4点を獲得。またも97:101となり、決勝戦では久しぶりのサドンデス(延長戦)突入となった。
この時、小橋選手の後追いの印象のほうが良かったのか、2本目が終わると審査結果が発表される前に勝負あったと判断して席を立つ観客も少なくなかった。しかし、サドンデスの発表を受け両車がタイヤ交換に入ると慌てて席に戻ることとなり、会場は少しの間ざわめいたが、すぐに最後の瞬間を前して静寂に包み込まれた。
サドンデス1本目、後追いの小橋選手が狙いすましたと言わんばかりにセクター1でトップスピードから同時振りを見せた。危険を通り越して、もはやこれは先行の残像ではないかと思えるシンクロした進入だ。両車の角度が揃っていること、なおかつ減速タイミングが同じでないとクリップ手前で衝突することになる。しかし小橋選手はそれをやってのけた。すべてのセクターで距離をキープすると会場は大いに沸き、審判員は今回もっとも高い後追いポイント「10」を与えたのだった。
そして入れ替えた2本目、横井選手の後追いは決して悪くなかったが、小橋選手の気迫を見た直後では、あれを上回れないことは誰の目にも明らかだった。小橋選手は今季4勝目を挙げた。「今の状態で勝てるとは思えない。研究しなくては」と表彰式での横井選手のコメント。昨年度チャンピオンにこう言わせるとは28歳の小橋選手恐るべし。
これで小橋選手はシリーズ124ポイント、2番手の横井選手は92ポイントと、その差は32ポイントとなり、小橋選手がチャンピオン獲得に有利な展開となった(優勝ポイントは25、単走優勝が4ポイント)。残すは2021年1月30~31日に開催される最終戦デュアルファイナルの筑波大会。昨年チャンピオンの横井選手がここでついた32ポイント差を逆転し3連覇を果たすか、今年絶好調の小橋選手がこのままシリーズを制して最年少チャンピオンとなるのだろうか?
「今回のエビス西コースはD1初開催ですが、ここをシリーズ戦に組み入れている他団体とは大きく違う攻め方を要求しました。とはいえ、対抗するつもりではなく、D1グランプリが西コースでやる意義を見出すために考え、1セクターのアウトゾーン、セクター3のインクリップを設置したわけです」と語るのは、審判員長、そしてコース設定を行った神本寿氏。
「スタートラインは前日開催のD1ライツより30mくらい後方に下げたので、セクター1の進入速度はシリーズ屈指のハイスピードコースとして知られるオートポリスとそう変わらないと思います。トップは160km/hを超すと思いますよ」
「オートポリスが進入区間に重きを置けなかったことを省みて、D1グランプリが求めてきたドリフト本来が持つカッコ良さ、ハイスピードからの一気に角度をつけるモーションの早さ、いわゆる“パキン感”ですね、そこからいかに角度を維持したまま長距離を飛ばしてコーナリングしていけるかを選手に対して要求したのです。難しくしているのではなく、日本のドリフトのカッコ良さを世に見せつけてもらおうと純粋に追求しただけです」
「観客席がセクター1に近いこともあり、随一の迫力を味わっていただけると思います。さらに言えば、これは来季におけるエビス西コースの運用を見越してのコース設定なのです」と、D1グランプリのさらなる発展を願うコース設定だったことがうかがえる。
フォト/SKILLD川﨑隆介 レポート/SKILLD川﨑隆介、JAFスポーツ編集部
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