富山・イオックスアローザで最終決戦! 全日本ジムカーナPN2の超・接近戦は”100勝王者”山野哲也選手に軍配!!
2020年11月25日
2020年の全日本ジムカーナ選手権は年間4戦で再編され、シリーズ最終戦となる第8戦が、11月7~8日に富山県南砺市のイオックスアローザスポーツランドで開催された。中部地区名物のパイロンコースでは、各クラスで2020年タイトル確定の決戦が繰り広げられた。
2020年JAF全日本ジムカーナ選手権第8戦
「SUPER GYMKHANA IN IOX-AROSA」
開催日:2020年11月7~8日
開催地:イオックスアローザスポーツランド(富山県南砺市)
主催:ABC
新型コロナウイルス感染症の影響により、3月の開幕戦以降、中止や延期の措置が採られてきた全日本ジムカーナ選手権。8月下旬のオートスポーツランドスナガワで幕を開け、9月のスピードパーク恋の浦、10月の名阪スポーツランドCコースと3戦を消化してきたが、11月7日~8日にはついに4戦目となる最終戦を迎え、富山県のイオックスアローザスポーツランドでシリーズ第8戦の「Super Gymkhana in IOX-AROSA」が開催された。
今大会も関係者のマスク着用や入場ゲートでの検温、アルコール消毒液による手指消毒、問診票の提出はもちろんのこと、競技オフィシャルのマスクおよびフェイスシールド、ニトリルゴム手袋の着用が行われるなど、感染拡大防止対策を徹底して競技会が運営された。また、今大会では無観客開催となり、参加台数にも制限が設けられ、各クラスの上位ランカーを中心とした合計100名によるファイナルバトルとなった。
7日(土)の公開練習は第1ヒートが曇天ながらもドライ路面、第2ヒートは降雨に見舞われウェット路面となった。8日(日)の決勝では天候こそ回復したものの、第1ヒートは、PN部門では部分的にウェット路面が残るコンディションで、第2ヒートはドライ路面に変貌するなど、冬空にしては温暖な気候だったものの、大きく変わる路面変化にどう対応するかがポイントとなった。
この会場はスキー場の駐車場を利用したコースで、広大かつフラットな舗装路面。しかし、異なる舗装が混在する路面で、場所によっては路面μが変化したり若干の起伏もある。そのためライン選びには注意が必要で、密集を避けたクラス毎に時間を分けた慣熟歩行では、時間ギリギリまで路面を読み込む選手が多かった。
決勝コースレイアウトは、パイロン本数は少なめの比較的速度を乗せられる設定で、コース前半は曲率の緩やかな中高速コーナーを折り返し、後半には360度のターンを中心にテクニカルな低速コーナーを採用していた。場所によっては路面のグリップが変わり、第1ヒートと第2ヒートでも路面状況が変化したほか、当日は気温が低く、肌寒い状況となったことで、多くの選手にとっては第1ヒートのタイヤ選択に悩む状況となっていた。
最終戦イオックスでは、PN1クラスとPN2クラス、PN3クラス、SA・SAX1クラス、SA・SAX4、SCクラスという、実に6クラスでタイトル確定の大一番が行われようとしていた。そして、会場の注目を一身に集めたのはPN2クラスに他ならない。
同クラスでは、開幕戦のスナガワでクラス移行後いきなり勝利してみせた2019年PN1チャンピオンの小俣洋平選手と、2戦目の恋の浦と3戦目の名阪を制した「V19」を誇るジムカーナの鉄人・山野哲也選手による激しいタイトル争いがこれまで展開されてきた。
最終戦を前にしてその差は僅か5ポイントで、「リードしているといっても僅差なので厳しい戦いになると思う。タイトル獲得が自分の使命なので、仮に競技で2位になってもチャンピオンになることを優先したい」とポイントリーダーの山野選手は語る。
対して「本当は2勝して最終戦に挑むつもりでしたが、山野選手に先行されてしまいました。でも、1勝だけでは終われないので、イオックスで勝って並びたい」と追いかける小俣選手だが、”100勝王者”山野選手に「勝利を捨ててでも」と言わしめただけに、今季の小俣選手は、山野選手に苦しい戦いを強いるライバルとして十分だったことが伺える。
そして迎えた最終戦イオックス。練習走行や公開練習、決勝において両者の一騎打ちが注目されていたが、決勝で幸先の良いスタートを切ったのは山野選手だった。
小俣選手は「調整を失敗して、ドライで走ったことのないセッティングだったのでミスをしまくった」と語るように1分11秒061で2番手に付ける。対する山野選手は、1分10秒636というタイムで第1ヒートをトップフィニッシュしてみせた。
しかし、第2ヒートの小俣選手は「今日は2本目が勝負になると思っていた。2本目は1箇所ミスしたけれど、ソコソコの内容で走れたと思う」と語るように、山野選手を約コンマ5秒上回る、1分10秒193をマークして暫定トップに浮上した。
出走直前にそのタイムを聞き、小俣選手のアタックに車内から拍手を贈って第2ヒートに挑んだ山野選手。もちろん、果敢なドライビングを披露した。
「途中まではいい感じだったけど、後半でクルマを暴れさせてしまったので、小俣選手を抜けないかなぁ……と思っていた」と語った山野選手だが、最終的には小俣選手の暫定ベストを僅かコンマ03秒上回る1分10秒159で逆転し、今季3連勝を達成。山野選手は「本当に痺れる戦いだった! ありがとう」とライバル小俣選手に謝辞を贈った。
「開幕戦で小俣選手に負けてから全てが始まったんだ。クルマのセッティングにしても、マシンコントロールにしても、これ以上ないほど突き詰めた1年だった。実際、体重もベストな状態まで減量するなど、ストイックなジムカーナイヤーだったので、それだけにタイトルを獲れて良かった!」と振り返る山野選手。PN2クラスのタイトルを防衛し、自身20回目の全日本チャンピオンに輝いた。
激しいタイトル争いはPN1クラスでも同様だった。ポイントリーダーは開幕戦スナガワを制した斉藤邦夫選手で、開幕戦を欠場しながらも、2戦目の恋の浦と3戦目の名阪を制した箕輪雄介選手が7ポイント差のランキング2位で追う展開となっていた。
最終戦イオックスでは箕輪選手が1分12秒285で第1ヒートをトップでフィニッシュした。対する斉藤選手は「路面に対してセットアップが合っていなかった」と語るように、そのタイムは1分13秒308で4番手に出遅れていた。
第2ヒートでも斉藤選手VS箕輪選手のタイトル争いが注目を集める中で、素晴らしいアタックを披露したのが、第1ヒートでパイロン移動のペナルティを受けて14番手に出遅れていた森嶋昭時選手。1分11秒213を叩き出して暫定トップに浮上してきた。
対する箕輪選手は、タイムアップを果たしながらも6番手に留まってしまう。この時点で斉藤選手にPN1タイトルが確定するが、斉藤選手はチャンピオンランを4位でフィニッシュ。これにより「第1ヒートはパイロンタッチをしたけれど、第2ヒートも攻めました。自分の実力を見せられたと思います」と語るように、森嶋選手が6年ぶりに勝利した。
PN1クラスでタイトルを確定させた斉藤選手は「第2ヒートは2回ほどスライドしたけど走りの内容は悪くなかった。森嶋選手のタイムには届かなかったし、今日の結果は4位でも、チャンピオンを獲れたのが嬉しいです」と安堵の表情を浮かべていた。
PN3クラスでは、第1ヒートを上本昌彦選手が1分11秒952で暫定トップに立っていた。3戦目の名阪を制してランキング首位に浮上した2019年チャンピオン西野洋平選手は、1分12秒317をマークして2番手に続き、タイトル確定に向けて順調に滑り出していた。
第2ヒートでは多くの選手が自己タイム更新を果たすなか、第1ヒートは5番手に出遅れていた若林隼人選手が、何と1分11秒636をマークして暫定トップに浮上してきた。そして、PN3のタイトル争いは、ランキング2番手の天満清選手が2位に敗れた時点で、ポイントリーダーの西野選手のタイトル獲得が確定する展開となっていた。
西野選手の第2ヒートは4位。この結果、若林隼人選手がPN3で初勝利を挙げた。「名阪が終わった後、PN1クラスの斉藤選手のアドバイスをいただいてクルマの動きが良くなったんです。今年はチャンピオンを獲る意気込みでしたがあまり良くなかった。それだけに、最終戦で勝てたので良かったです」と語る若林隼人選手。SA車両のCR-XからPN車両のBRZに乗り換えて以降、悩み続けた若林”兄”がようやく初優勝を獲得した。
4位に留まりながらもPN3タイトルを確定させた西野選手は、「第1ヒートでミスした箇所を修正できたので、第2ヒートはイケると思ってました。本当は勝ってチャンピオンを決めたかったのですけど、それでもタイトルを獲れたので良かった」と照れた表情でタイトル連覇の喜びを語っていた。
SA・SAX1クラスは、2019年全日本SA1チャンピオン一の色健太郎選手をポイントリーダーに、中部SA1クラスと近畿S1クラスの両方で2年連続チャンピオンという偉業を成し遂げている島田昌典選手、そして、東北SA2WDクラスを2連覇しながらも全日本選手権では無冠の小武拓矢選手、という3名がタイトル争いの権利を保有していた。
最終戦イオックスで幸先の良いスタートを切ったのは、36ポイントでランキング3位に付ける小武拓也選手。1分11秒134をマークして第1ヒートをトップフィニッシュした。一方、37ポイントでシリーズ2位の島田昌典選手は1分14秒293で8番手、45ポイントで首位を走る一色健太郎選手も伸び悩み、第1ヒートを6番手で折り返した。
小武選手の勢いは第2ヒートでも衰えることなく、1分11秒019で自己ベストを更新した。タイトル争いの渦中にある島田選手は自己タイムを更新するも10位。ポイント首位の一色選手もタイム更新を果たすものの、「守りに行っても仕方がないので攻めの姿勢で走りました。でも、タイヤ選択と内圧を間違えました……」と語るように6位に低迷する。
この結果、小武選手が2ヒートを制して完全勝利した。「開幕戦で2回ともパイロンペナルティを受けたので、選手権としてはかなり厳しいになると思っていました。一色選手のリザルト次第だったので、あまりタイトル争いは意識せずに、勝ってシーズンを終えようという思いで挑みました。タイヤは低温用コンパウンドに賭けて勝負しましたが、冷静に走れたので自分の中では完璧な一戦でした。まだタイトルを獲れた実感が湧きません」と語る小武選手が、一色選手を逆転して自身初の全日本タイトルを確定させた。
これまで、他のクラスより1戦少ない、2戦が成立しているSA・SAX4クラス。タイトル争いは、菱井将文選手が名阪大会を欠場したこともあり、2戦目の恋の浦と3戦目の名阪で連勝した津川信次選手が、飯坂忠司選手に40ポイント差の首位で王手をかけていた。
最終戦イオックスの第1ヒートは、津川信次選手が1分10秒012で制覇。菱井選手はパイロンペナルティに沈んでおり、3連勝に向けて幸先の良い出だしを見せていた。第2ヒートでは、津川選手と菱井選手の一騎打ちになるかと思われたが、津川選手のタイムを上回る暫定ベストを計測してきたのは、何と高瀬昌史選手のランサー・エボⅨだった。
クラス中盤で出走した高瀬選手は1分09秒468をマークして暫定トップに浮上。ベテラン岡部隆市選手や石元啓介選手は10秒台を切れず、菱井選手は何とスピンを喫する荒れ模様。そして、ランキング2位につけていた飯坂忠司選手がここ一番の好走を見せた。津川選手を上回る1分09秒974を叩き出したが、高瀬選手には届かず2番手に終わった。
そのため、津川選手は走行中にタイトル確定を果たす展開となる。津川選手も3連勝に向けて必死のアタックを披露したが、タイムアップを果たせず3位フィニッシュ。この結果、高瀬選手の全日本初優勝と、津川選手のタイトル三連覇が確定した。
今大会ではウィーク通じて好調ぶりを見せていた高瀬選手。公開練習では「初めてのコースですし、皆さんの走りを研究してます。自分は他人のマネが上手いとよく言われるので、今回はそれが上手く行っているのかも知れません」と謙遜していた。
全日本初優勝を遂げた高瀬選手は「第1ヒートは後半でミスしました。第2ヒートは最短距離を走るように心がけて、タイムアップに成功したんだと思います。後続が凄い人たちばかりだったので、かなりドキドキしましたが、勝った瞬間はホッとしました。一度でいいから全日本で勝ちたかったので、目標がようやく叶いました!」と喜びを語った。
最終戦は3位に留まった津川選手は「第1ヒートはチャンオピオンを決めるためにペナルティを避けて走りました。第2ヒートはタイムを出しに行ったんですけどミスを連発してしまった。今年は3戦というシリーズでしたが、全戦有効なので1戦も落とせませんでした。そこで無事にタイトルを獲れたので嬉しいです」と短いシーズンを振り返った。
SCクラスは、シリーズ首位の西原正樹選手、2番手の高橋和浩選手、3番手の大橋渡選手がタイトル争いの立役者。最終戦で幸先の良いスタートを切ったのは大橋渡選手だった。
第1ヒートは西原正樹選手が6番手に沈むという番狂わせが生じる中、大橋選手が1分10秒591で暫定トップに立った。しかも、高橋選手もコンマ001秒差の2番手につけており、最終戦はプレジャーレーシングサービス勢が席巻する勢いを見せていた。
しかし、SCクラスで主役となったのは、第1ヒートを4番手で終えていた廣瀬献選手だった。4駆ターボ勢を相手に廣瀬選手は後輪駆動のS2000で参戦。第2ヒートでは1分09秒674をマークして暫定トップに浮上してみせる。そして、それ以降、このタイムは塗り替えられず、何と後輪駆動の広瀬選手がSCクラスで全日本初勝利を挙げる展開となった。
「来年に向けて前回の名阪から、12年ぶりに全日本ジムカーナにチャレンジしました。SA・SAX3クラスのタイムを意識していたので、まさかSCクラスで勝てるとは思ってませんでした。自分でもビックリしています」と語る廣瀬選手。ジムカーナを経てサーキット走行でも活躍してきた廣瀬選手は、2021年全日本ジムカーナ選手権のクラス再編を見据えて、B車両をSC車両に仕立て直して参戦。復帰2戦目にして優勝する快挙を成し遂げた。
なお、SCクラスの第2ヒートは、ポイントリーダーの西原選手が5位に終わり、シリーズ3位の大橋選手が2位となった。そして、シリーズ2位の高橋和浩選手は第2ヒートのミスコースにより第1ヒートのタイムで3位に終わったことから、西原選手がSCクラスのタイトルを確定。「今週は土曜日の公開練習からクルマを合わせ切れずに調子が悪かった。今年は4戦しかなく、落とせない中で2勝できたので、悪くはないシーズンだったね」と、SCクラス4連覇の喜びを語った。
PN4クラスでは、前戦の名阪で3連勝を挙げた野島孝宏選手がすでにタイトルを確定させている。最終戦では野島選手が第1ヒートから素晴らしい走りを披露し、1分09秒097で第1ヒートを制した。第2ヒートでは野島選手のタイムは更新されず、そのまま第1ヒートのタイムで野島選手が優勝した。
「今回は4連勝を狙ってました。第2ヒートでもタイムアップを目指していたんですけどね。最後のターンを失敗しちゃって。いやーカッコ悪い」と語る野島選手。シリーズ4戦で4勝を挙げ、満点チャンピオンを確定させている。
SA・SAX2クラスでは、3戦目の名阪を制した若林拳人選手が1分09秒654のベストタイムを計測、前戦で今季のタイトルを確定させている高江淳選手が2番手に続いていた。第2ヒートも若林拳人選手の勢いは続き、1分09秒607とベストタイムを塗り替えた。高江選手もタイムアップを果たすものの、1分09秒台を破ることはできずに2位に惜敗した。
若林拳人選手は「今年は2戦だけの参戦でしたが、高江選手に勝つことを目標にしていたので、名阪から2連勝できて、気持ち良くシーズンを終えられそうです」と喜びを語り、PN3クラスを制した兄の若林隼人選手とともに、兄弟そろって最終戦を制した。
2位に惜敗したとはいえ、SA・SAX2クラスのタイトルを確定させて高江選手は「今日は完璧に走れたんですけどね。若林選手に引き離されてしまった。タイトルを獲得したけれど微妙な気持ちです……」と、初タイトル獲得を成し遂げた鈴鹿南を思わせる複雑な表情で最終戦イオックス大会を振り返った。
SA・SAX3クラスでは、1分12秒130で渡辺公選手が第1ヒートを制した。一方、前戦の名阪で3連勝を果たし、最終戦を待たずしてチャンピオンを確定させている久保真吾選手は「来年に向けて、新しいセッティングを試してみました」とのことで、1分12秒978に伸び悩み、第1ヒートを3番手で終えていた。
続く第2ヒートでは、タイムダウンで4番手に後退した渡辺選手を横目に、安部洋一選手が1分11秒701で暫定ベストをマーク。しかし、後続の最終走者・久保選手が1分11秒528で逆転に成功。4連勝で2020年を締めくくった。久保選手は「第2ヒートもセッティングを変えずに走りました。みんなタイムアップしていたし、感触も良かったので思いっきり走りました。得意なコースではないんですけど勝てたから良かったです」と、満点チャンプ確定に笑顔を見せていた。
フォト/谷内寿隆、廣本泉、JAFスポーツ編集部 レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部
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