Audi Team Hitotsuyama篠原拓朗選手、TCRJ最終戦富士でサタデー&サンデーのダブルタイトル確定!
2021年1月8日
2019年からスタートしたTCRジャパンシリーズは国際規格のTCR車両を使ったスプリントレース。スーパーフォーミュラと併催されて2年目を迎えているが、第7戦富士大会にもサタデーシリーズ/サンデーシリーズ第6戦が併催され、ともに最終戦を迎えた。
2020 TCR Japan Saturday Series Round 6/2020 TCR Japan Sunday Series Round 6
開催日:2020年12月18~20日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:富士スピードウェイ(株)、FISCO-C
TCRジャパンシリーズの第6戦が、スーパーフォーミュラと併せて12月19〜20日に富士スピードウェイで開催された。第5戦までに、サタデーシリーズのオーバーオールは篠原拓朗選手、サンデーシリーズのブロンズクラスはHIROBON選手のチャンピオンが決まっているが、サタデーシリーズ・ブロンズクラス、サンデーシリーズ・オーバーオールのタイトルは未確定。それぞれのラストバトルにどんな結末が待つのかが注目された。
通常は土曜、日曜ごとに予選と決勝レースが行われるフォーマットだが、今回は土曜の早朝に2回連続で予選が行われた。時期が時期だけに、冬の強烈に冷たい空気がエンジンをキンキンに回した結果、サタデーシリーズの予選では従来のレコードタイムを2秒4も更新して、篠原選手がポールポジションを獲得する。
篠原選手は「まさか、まさかの55秒台です! サクセスウェイトを積んでいなければ『出るかなぁ~』っていうタイムだったんですが、コンディションにも恵まれたおかげで、自分でもビックリしています」と語った篠原選手は、もちろんサンデーシリーズでも最速タイムを記してみせた。
2番手は、両シリーズともHIROBON選手が獲った。しかし、「1台だけ速くて追い付けない(苦笑)。ストレートだけ速いというわけじゃなく……。ただ、自分としてもセクター2をずっとミスっているので、もうちょっとイケそうな手応えはあったんだけどなぁ……」と、篠原選手に差を付けられたことを、不甲斐なく感じていたようだ。
一方、サンデーシリーズのランキングで篠原選手に1ポイント差で続いていた松本武士選手は、サタデーシリーズこそ大蔵峰樹選手に続く4番手ながら、サンデーシリーズでは3番手とあって一縷の望みをつなぐことになっていた。しかし、松本選手は「ハッチバックのクルマは、どうしてもストレートが辛くて、鈴鹿とか、特に富士では差は明らか。自分でも良くやった方かと思います」と、少々諦め気味ではあった。
サタデーシリーズ第6戦の決勝は、コースの一部に小雨がぱらつき、引き続き凍てつくようなコンディションでの戦いとなった。冬季のレースということでフォーメーションラップはすべて2周。しかし、その最中に、自己最上位からスタートするはずだった大蔵選手がスピン。最後尾スタートを余儀なくされていた。
決勝で好スタートを切ったのは篠原選手。1コーナーにトップで飛び込み、その後方ではHIROBON選手と松本選手の激しいつば迫り合いが勃発する。2コーナーで前に出た松本選手に対して、続くコカコーラコーナーでHIROBON選手が抜き返す。その激しい攻防を続ける間に篠原選手は逃げる展開となり、1周目を終えた時には2秒7の差が付いてしまう。篠原選手は、その後も徐々に後続との差を広げていった。
3周目を過ぎると、HIROBON選手は単独走行となり、今度は松本選手と塩谷烈州選手のバトルが激しくなる。そして、9周目のコカ・コーラコーナー。塩谷選手がノーズ一つ前に出たところで、松本選手と揃ってオーバーランしてしまう。これで下野璃央選手と大蔵選手が一気に近付き、3番手争いは4台の集団となる。
それまでの激しい追い上げで勢いに乗る大蔵選手は、10周目のストレートで下野選手をパス。なおも続いた激戦は、僅差ながらも塩谷選手が松本選手を抑えることとなった。もちろん、その間にも篠原選手は逃げまくり、サタデーシリーズ5勝目をマークした。
「コカ・コーラコーナーと100R、高速コーナーが続くところは自信持って攻めていきました。いきなり差を広げることができたので、最初は慎重に、そこからちょっとずつペースを上げていきました。でも、やっぱりスタート決められたのが、いちばん大きいですね。自分のペースで走れるので」とはポール・トゥ・ウィンの篠原選手。
そして、ブロンズクラス優勝はオーバーオールでも2位のHIROBON選手。気になるサタデーシリーズ・ブロンズクラスのタイトルの行方だが、クラス4位でフィニッシュした下野選手が、HIROBON選手をわずか1ポイント上回って、ブロンズクラスのチャンピオンを確定。TCRジャパンシリーズに初めて女性チャンピオンが誕生することになった。
下野選手は「レースを重ねるごとクルマにも慣れて、だんだん乗りこなせるようになって、最終的にクラスのチャンピオンという結果で終われて嬉しいです。鈴鹿ではオーバーオール優勝もできました。来季は未定ですが、TCRをもう1年やれたらいいなと思っています。現在はGTも目標にしているんですが、いずれ世界で戦いたいです。WTCRに女性だけのクラスができるという話があるので、出たいです、狙ってます!」と力強く語ってくれた。
サンデーシリーズの決勝では、篠原選手に一矢報いるべく、HIROBON選手がロケットスタートを決めてトップで発進を果たす。しかし、篠原選手は少しも遅れず続き、2周目のヘアピンで並び、ダンロップコーナーで完全に前に出ることに成功する。
「そんなに悪いスタートじゃなかったのに、HIROBON選手がすごくて、やられてしまったんですが、ペースには自信があったので、自分の得意なところを見極めて、一発で仕留められたのは良かったですね」とは篠原選手。その後も逃げ続けて4勝目を挙げ、サンデーシリーズの王座も獲得した。総合2位はHIROBON選手、総合3位は松本選手。今度は背後につけていた塩谷選手、下野選手、大蔵選手を最後まで封じこんだ。
サタデーシリーズとサンデーシリーズのオーバーオールでダブルタイトル獲得となった篠原選手は、「目標は全戦優勝だったんですが、それは達成できなくて悔しいですけど、トラブルとかアクシデントがなければ……という感じでした。何より速いクルマを用意してくれたのが大きくて、チームにはすごく感謝しています。スピードに関しては自分も自信を持っていて、クルマのポテンシャルを最大限に引き出せたことが、結果に繋がったんだと思います。来シーズンはまだ決まってませんが、今後の目標としてWTCRにスポットでもいいから挑戦してみたい、という思いがあります」と語っていた。
また、サタデーシリーズ・ブロンズクラスのタイトルを1ポイント差で逃したHIROBON選手は「サンデーだけじゃなく、両方とも獲れればもっと良かったんですが、シーズン通した戦いはすごく面白かったです。まぁ前半はクルマが全然アカンかったけど、乗り換えてからは! 最初から乗れてればもっとねぇ……(笑)。でも、それはしゃあないですね。一度は総合優勝できたけどタナボタみたいな感じだったので、100%満足できた年ではなかったけど、来季も継続予定なので今後こそ! って感じです」と語ってくれた。
フォト/石原康 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部