ル・マン・ハイパーカー「GR010 HYBRID」がついにお披露目。2021年WRCに参戦するヤリスWRCの新カラーリングも明らかに

ニュース レース ラリー

2021年1月22日

TOYOTA GAZOO Racingが1月15日、2021年FIA世界耐久選手権(WEC)に投入するル・マン・ハイパーカー「GR010 HYBRID」を参戦体制と共に発表。同時に2021年FIA世界ラリー選手権(WRC)に投入する「ヤリスWRC」の2021年新カラーリングを発表した。

 2020年WECでドライバーズ部門およびチームズ部門でタイトルを獲得したTOYOTA GAZOO Racing、そして2020年のWRCでドライバーズ&コ・ドライバーズチャンピオンを輩出したTOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチームが2021年の体制を明らかにした。

 まず、2021年に合わせて「ハイパーカー」カテゴリーを新たに設定するWECでは、前述のとおり、同規定に合わせたニューマシン「GR010 HYBRID」を投入する。同マシンはル・マン・ハイパーカー(LMH)レギュレーションに則ったプロトタイプカーで、680PSの3.5L V6ツインターボエンジンで後輪を駆動させ、272PSのモータージェネレーターユニット(MGU)を前軸に配置することで、4輪駆動のパフォーマンスを発揮する。

 エクステリアは開発中の次世代「ハイパーロードカー」を彷彿とさせるシルエットで、市販車と競技車両の強い繋がりを示すGRの文字をコンセプトに新しいカラーリングを採用。2021年のWECではシーズン中に特定の車体パッケージを持ち込むことが禁止されていることから、ダウンフォースが求められるテクニカルコースから、低ドラッグが要求される高速コースまで同じ仕様で戦えるようにするべく、高性能な流体力学ソフトウェアと風洞を使用しながら最先端のエアロダイナミクスを開発している。

 加えて、WECプロジェクトの開始以来初めてリアのMGUを廃して、フロントアクスルだけにMGUを組み込んだことも特徴で、リアブレーキは油圧のみで作動するようになっている。レギュレーションに組み込まれたコスト削減の一環により、GR010 HYBRIDは従来の主力モデルTS050 HYBRIDと比較して車両重量が162kg重くなったほか、パワーも32%絞られたことから、ル・マンのラップタイムは10秒ほど遅くなる見込みだという。

 さらにWECでは、バランス・オブ・パフォーマンス(BoP)が2021年から初めて導入され、エネルギー使用量や車両重量を規定して車両パフォーマンスがコントロールされることから、スクーデリア・キャメロン・グリッケンハウスやバイコレス、さらにLMP1マシンで参戦を予定しているアルピーヌといったライバルとの接戦が予想されるが、すでにTOYOTA GAZOO Racingは二度のGR010 HYBRIDのテストプログラムを実施している。

 2021年のドライバーラインナップも充実しており、2019-2020年シーズンのチャンピオンであるマイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス組が7号車のステアリングを握り、2020年のル・マン24時間レースを制したセバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー組が8号車を担当するという実績ある体制となっているだけに、2021年WECでもTOYOTA GAZOO Racingが導入する二台のニューマシンがタイトル争いの主導権を握るに違いない。

 一方、WRCで活躍するTOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチームに関しても、前述のとおり、2021年WRCに参戦するヤリスWRCの新しいカラーリングを発表した。

 ヤリスWRCは、これまでに17回の優勝を獲得し322回のSSトップタイムを奪取した実績あるマシンで、2021年のカラーリングは、GRヤリスのような市販車と競技車両の強い繋がりを示す「GR」の文字をコンセプトする新意匠を採用した。

 WRCは、2022年から新しい技術規定を採用するため、現行のヤリスWRCにとっては2021年が最後のシーズンとなるものの、2021年からワンメイクでタイヤを供給するピレリに合わせて引き続き開発を続け、ヤリスWRCの改善を図っていくようだ。

 気になるチーム体制については、すでに発表されているとおり、トミ・マキネン氏に代わって、かつてドライバーとして活躍していたヤリ-マティ・ラトバラ氏が新たにチーム代表に就任したニュースは記憶に新しいだろう。

 そのほか、2020年ドライバーチャンピオンのセバスチャン・オジェ/ジュリアン・イグラシア組が1号車を担当し、惜しくもタイトルを逃したエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組が33号車をドライブ。若手期待のカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組が69号車で参戦するなど豊富な実績を持つ2020年のメンバーが残留している。

 加えて、TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムに参加する日本人ドライバーの勝田貴元選手も、2020年に引き続きダニエル・バリット選手とコンビを組んで、ヤリスWRCの18号車で参戦する。

 WRCは2021年1月21〜24日にフランスおよびモナコ周辺で2021シーズンが早くも開幕する。2021シーズンの最後には待望のWRC日本ラウンド「ラリー・ジャパン」も開催される予定となっているだけに、2021年もTOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチームの動向に注目したいものだ。

2021年WECのLMHレギュレーションに則った「GR010 HYBRID」。チーム本拠地ドイツ・ケルンのエンジニアと、日本の東富士研究所のハイブリッドパワートレインチームが一体となって開発され、フロントに配したMGUはアイシンAWとDENSOが共同開発した。
TOYOTA GAZOO Racingは、WECの新規定に対応するべく3日間に及ぶ集中的なテストプログラムをすでに2回実施している。WEC開幕戦は3月のセブリングを予定している。
2021年WRCは旧型ヤリスでの参戦となったTOYOTA GAZOO Racing WRT。GR010 HYBRIDや、WRC参戦で得た知見を活かして開発した市販車GRヤリスとの強い繋がりを示す「GR」の文字をコンセプトとした新カラーリングでチーム5年目の2021シーズンに挑む。
2021年はこれまでアンバサダーを務めてきたヤリ-マティ・ラトバラ氏がチーム代表に就任。前任のトミ・マキネン氏はトヨタ自動車のモータースポーツアドバイザーに就任する。
TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムでWRCをヤリスWRCで戦ってきた勝田貴元選手は、コ・ドライバーのダニエル・バリット選手と2021年もWRCに参戦する。

フォト/TOYOTA GAZOO Racing レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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