ベテランが大挙した新設JG8クラス。NDロードスター・ワンメイク状態の新激戦区は、斉藤邦夫選手がまず一勝!
2021年4月8日
全日本ジムカーナ選手権が栃木県のツインリンクもてぎ南コースで開幕した。昨年の同大会はコロナ禍により中止を余儀なくされたが、今季は無事開催され、クラス区分変更に伴う選手のクラス移行や車両の乗り換えが相次ぎ、会場は新たな雰囲気に包まれていた。
2021年JAF全日本ジムカーナ選手権第1戦
「もてぎスーパースラローム2021」
開催日:2021年3月28日
開催地:ツインリンクもてぎ南コース(栃木県茂木町)
主催:SHAKE DOWN
2021年の全日本ジムカーナ選手権も開幕を迎え、3月28日、栃木県茂木町のツインリンクもてぎ南コースでシリーズ第1戦「もてぎスーパースラローム2021」が開催された。昨年も開幕戦を受け持った同大会だが、新型コロナウイルス感染症の影響により中止を決定。今季も開幕戦にカレンダーされたが、感染拡大防止策を徹底して無事開催にこぎ着けた。
今大会の決勝コースレイアウトは、これまでの全日本戦とは異なる新たな試みが実施された。それは、JG10クラス専用コースが別に用意されたことで、今大会ではJG10クラスとそれ以外のクラスで、一部のコースレイアウトが異なる2種類のコースが提供されていた。
オートマチック限定免許で運転できる2輪駆動のP・PN・AE車両を対象にしたJG10クラスは、サイドブレーキのハンドレバーを持たない車種もあることから、ターンを省いたシンプルなコースを採用。それでもコース前半は8の字を主体とした中低速、後半はスラロームとターンを中心とした低中速と難易度の高い設定に変わりなく、いかにボトムスピードを高めるのか、ロスの少ないライン取りがリザルトを左右することとなった。
雨模様を示していた天気予報通り、午前中の第1ヒートは曇り/ドライ、午後の第2ヒートは雨/ウエット路面というコンディションで競技が開催された。各エントラントは”1本目勝負”を予想して、第1ヒートから果敢なアタックを披露。そのなかで最も注目を集めたクラスが1600cc以下の2輪駆動(FF、FR)のPN車両を対象にしたJG8クラスだった。
2021年の全日本ジムカーナ選手権はクラス区分が変更されたことから、多くのドライバーが車両変更およびクラス変更を実施していたが、その中でも、昨年までのPN1クラスに相当するJG8クラスには、経験豊富なドライバーたちが他のクラスから移行していた。
昨年までBRZでPN3を戦い「以前から、1500ccのロードスターに乗ってみたかった」と語るベテランの川北忠選手や、SA車両のEK9シビックで戦ってきた一色健太郎選手は「2019年にタイトルを獲得できたので、自分の中ではシビックをモノにできたという感触がありました。何度か乗る機会があって、とても乗りやすかったので1500ccのロードスターを選びました」と語るように、JG8クラスにはチャンピオン経験者が続々集結した。
そんな状況で素晴らしいパフォーマンスを見せ付けたのが、2020年のPN1クラスチャンピオンであるベテラン斉藤邦夫選手だった。第1ヒートは「すべてのコーナーで突っ込みすぎた」と語る小林キュウテン選手がマークした1分11秒307を基準にタイム争いが展開されるなか、川北選手が1分11秒239をマークして暫定トップに浮上した。
しかし、この日の主役となったのは最終出走者の斉藤選手で「今年はチャンピオン経験者が増えましたからね。面白くなってきたけど……大変です」と語りながらも、唯一の1分10秒台をマークして逆転で第1ヒートの首位に浮上。第2ヒートは降雨によるウェット路面となったため、各クラスでタイム更新ならず、第1ヒートのリザルトで勝敗が決した。「基本的にはいつも1本目で勝負しているので、予定通りに走れました。他のクラスと比べてもいいタイムが出せたので合格点ですね」と語る斉藤選手がJG8クラスを制した。
注目を集めたJG10クラスでは、コペンやスイフトスポーツ、さらにポルシェ・ケイマンなどがエントリー。そこで第1ヒートを制したのが、昨年までSA・SAX1クラスを戦っていた若手期待の織田拓也選手で、1分01秒019の好タイムをマークした。
「スイフトに乗り変えたいと思っているなか、クラスができたのでAT車にしました。慣れていない部分もありましたが、うまく走れたと思います。ターンがなくても十分に楽しめました」と語るように、ターンを廃した専用コースを攻略してJG10クラスの初ウイナーに輝いた。
1600ccを超える2輪駆動(FF、FR)のPN車両を対象にしたJG7クラスでは、新型コロナウイルス感染症の影響により2020年の活動を見合わせていた河本晃一選手が復帰を果たしたほか、FD2シビックの工藤典史選手がスイフトスポーツにスイッチ。様々なトピックスがある中で最も注目を集めたのは、やはり2020年のPN2クラスで4連覇を果たした山野哲也選手と2019年のPN1クラス王者である小俣洋平選手による一騎打ちだった。
仲川雅樹選手がマークした1分11秒624がターゲットタイムとなるなか、まず、小俣選手が1分10秒239を計測。続いて山野選手がアタックを行うものの、1分10秒520で僅かに届かず、第2ヒートは雨の影響でタイムが上がらず、第1ヒートのタイムで順位が決した。
「もてぎ南は得意なんですけど、金曜からうまく行っていなかったので、セッティングを変えました。ミスもあって危なかったけど、何とかタイムを出せました」とはJG7クラスを制した小俣選手。一方、2位に惜敗した山野選手も「敗因は特にない。持ち玉を全部使い切った。ベストは尽くせたと思う」と、清々しい表情を見せていた。
1600~2000cc以下の2輪駆動(FR)のPN車両のうち、FIA/JAF公認発行年またはJAF登録年が2012年1月1日以降の車両で争われるJG6クラス。「ランサーも4年乗ったし、タイトルも獲れたので新しいクルマに乗りたかった」と語るPN4王者の野島孝宏選手がロードスターRFでエントリー。PN3チャンピオン西野洋平選手やベテラン天満清選手など上位勢との対決が注目される中、第1ヒートで素晴らしいアタックを披露したのが、昨年は新型コロナウイルス感染症の影響で活動休止していた2019年PN3王者のユウ選手だった。
ユウ選手は「86に長く乗ってきてやり尽くした感はありますし、ロードスターRFはしっかりセットアップすれば速くなりそうだと思ってクルマを変更しました。1年ぶりの競技でしたし、練習もあまりできなかったので、詰め切れていない走りでしたね」と語りながらも1分11秒493をマークして、第1ヒートは暫定首位に浮上した。
その後も有力選手がアタックするものの、「クルマの仕上がりは悪くなかったけどライン的に難しかった」と語る天満選手が3番手、「クルマとクラス変更の初戦で2位は悪くなかった」と語る野島選手が2番手、そして最終走者の西野選手は「タイムではユウ選手に勝っていたので手応えはあったんですけどね。ギリギリを狙っていたので攻めすぎました」と語るようにパイロンペナルティで17位に低迷。
その結果、「序盤でミスをしたので”終わった~”と思っていたんですけど、結果的に勝てました。生タイムで負けているので課題はありますが、ラッキーです」と苦笑いするユウ選手が、さらなる激戦区に生まれ変わったJG6クラスを制した。
昨年までのPN4クラスに該当するJG5クラスには、話題のGRヤリスが数多くエントリー。2020年にいち早くGRヤリスを投入した片山誠司選手を筆頭に、数多くのタイトル獲得経験を持つベテラン茅野成樹選手、そして折茂紀彦選手とダブルエントリーで朝山崇選手、若手の有望株、奥井優介選手など数多くのドライバーがGRヤリスにスイッチしていた。そんなJG5クラスで圧倒的なパフォーマンスを見せたのが奥井優介選手だった。
先頭スタートで朝山崇選手が叩き出した1分10秒453に多くのドライバーが届かない状態で、「走り込んでセッティングも煮詰めてきたので勝つつもりで来ました」と語る21歳の奥井優介選手が1分09秒161をマーク。「嬉しいけど、まだ実感が湧かないですね。JG1クラスとあまり変わらないタイムだったので、2本目がドライならオーバーオールで勝ちたかった」と語る奥井優介選手がオーバーオールでも3位に入るタイムでJG5クラスを制し、自身の全日本初優勝そして、GRヤリスにも全日本初優勝をもたらした。
1600cc以下の前輪駆動のSA・SAX車両を対象にしたJG4クラスでは、昨年までPN3クラスを戦ってきた若林隼人選手が、久々にEF8 CR-Xに乗り換え、第1ヒートで1分10秒562をマーク。先頭スタートの若林選手が基準となったが、誰一人として1分10秒台の壁を破れず、「FF車は4年間のブランクがありましたが、PN車両のBRZで丁寧な運転をしていたおかげでうまく走ることができました」と語る若林隼人選手がJG4クラスを制した。
1600ccを超える前輪駆動のSA・SAX車両で争われるJG3クラスでは、2番手スタートの佐野光之選手が第1ヒートで計測した1分11秒400が基準となったが、若林拳人選手が1分9秒901という驚異的なタイムを叩き出して暫定トップに浮上した。
DC2インテグラからスイフトスポーツにスイッチしたSA・SAX2クラス王者・高江淳選手も、このタイムを目標にアタックを試みるものの、「インテグラで3連覇したので、4年目は新しいクルマで戦いたいと思いましたが、まだ煮詰めきれていない状態。それに第1ヒートは足回りに問題があったことに気付きましたし、サイドターンのタイミングも掴みきれていない」とのことで、パイロンペナルティを受けたこともあって最下位に低迷した。
この結果、若林拳人選手が優勝。「ベストラインが分からない状態でしたが、イメージ通りに走れました。今まで開幕戦ではいい成績に繋がってなかったイメージなんですけど、タイトル獲得に向けて良いスタートが切れました。高江選手が新しいマシンに手こずっている間にしっかりポイントを重ねていきたいと思います」ということで、JG4クラスでは若林隼人選手、JG3クラスでは若林拳人選手が優勝し、兄弟ダブル優勝を果たした。
後輪駆動のSA・SAX車両と2輪駆動のSC車両で争われるJG2クラスでは、SC車両のS2000を駆る広瀬献選手が1分10秒095をマークして暫定トップに浮上した。SA・SAX車両とSC車両の混走になったこのクラス。昨年の最終戦ウィナーである広瀬選手のタイムは高い壁となり、なかなか破られなかった。
SA車両のエキシージで最後に出走した昨年のSA・SAX3チャンピオン、久保選手も「軽量で改造範囲の広いSC車両に対して、SA車両は厳しいけれど、どこまで挑めるのかチャレンジしたい」と語りながらも、1分11秒732で2番手に留まり、「昨年の最終戦からエンジンの仕様を変更しました。スタートで失敗したり、ターンで止まったりしましたが、何とか初戦を勝てて良かった」と語る広瀬選手がJG2クラスでウィナーに輝いた。
4輪駆動のSA・SAX車両、SC車両で争われるJG1クラスで主導権を握ったのは、SA車両のランサー・エボリューションⅩを駆る菱井将文選手だった。「2本目は雨やから、1本目で決まると思ってて、1本目は逆に『置きに行き』過ぎた」と語る菱井選手は、最初に1分09秒台を切る1分08秒980をマークして第1ヒートでは暫定首位に浮上していた。
しかし、「SC車両が相手になってくるので、シビアな戦いになると思います。満足の行く走りではなかったけど運が良かったね」と語る、昨年のSA・SAX4クラス王者・津川信次選手がSA車両のランサー・エボリューションXで1分08秒903をマークし、約コンマ07秒差でベストタイムを更新した。対して、2020年のSCクラス王者・西原正樹選手は、SC車両のインプレッサで最終走者となり「シフトミスをしたのでロスをした」と語るように1分09秒825に留まり3番手。4駆ターボの最速決定戦となったJG1クラスは「開幕戦の気温の低い時期に勝てたのが大きいね」と語る津川選手が、まず一勝を挙げた。
フォト/小竹充、廣本泉、JAFスポーツ編集部 レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部
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