全日本33年目のPN1井上賢二選手とフル参戦1年目の21歳BC1伊藤眞央選手が全日本ジムカーナ初優勝

レポート ジムカーナ

2025年7月4日

今年は全8戦が組まれている全日本ジムカーナ選手権は、後半戦突入となる第5戦が6月21~22日に北海道砂川市のオートスポーツランドスナガワ ジムカーナコースで開催された。

2025年JAF全日本ジムカーナ選手権 第5戦「北海道オールジャパンジムカーナ」
開催日:2025年6月21~22日
開催地:オートスポーツランドスナガワ ジムカーナコース(北海道砂川市)
主催:C.S.C.C、AG.MSC北海道

 選手権クラスに81台、併催されたJMRC北海道WinmaXジムカーナシリーズEXラウンドに10台の計91台がエントリー。各クラスのシリーズランキング上位選手がほぼ顔を揃え、各クラスで熱い戦いが繰り広げられた。

 天候は、土曜日は曇り空だったものの、日曜日になると朝から雨が降り、第1ヒートは各所でウォータースプラッシュ状態になるほどのヘビーウェットだったが、雨がやんだ第2ヒートは路面が乾き始め、一部のレコードラインに水たまりが残ったものの、ほぼドライ路面へと変わっていった。そのため、すべてのクラスで第2ヒートのタイムが勝敗を決める一発勝負となった。

全日本ジムカーナ選手権の北海道ラウンドにも多くのエントラントが参加。JAFブースも設けられていた。
この大会は、SDGsを考慮してカーボンオフセット事業に協力して開催された。会場内ではカーボンオフセットへの参加が呼びかけられていた。
日曜日は朝から降雨。ヘビーウェットでの競技開始となった。
今回も選手らによるパレードランやファンとの触れ合いの機会が提供されていた。
島を利用したサーキットコースと、広いエリアのパイロンコースがミックスされたコース。ウェット路面を想定して外周のストレート区間を極力少なくし、ゴール手前には3回連続の180度ターンを設定するというテクニカルコースをレイアウトとされた。第1ヒートはミスコースやパイロンペナルティに泣く選手も少なくなかった。

PE1クラス

 PE1クラスは、スーパー耐久シリーズ参戦のために第4戦 赤門を欠場した山野哲也選手(アルピーヌ・A110R)が、野島俊哉選手とのダブルエントリーのため路面コンディションが悪い先頭ゼッケンでのスタートとなりながらも、両ヒートでベストタイムをマーク。「第6戦の奥伊吹もレースと日程が重なってしまうため欠場となりますが、シリーズチャンピオンを獲得する上でも貴重な1勝を挙げることができたと思います」と、今季3勝目を飾った。

 2位には、山野選手と同じくレース参戦のため第4戦を欠場した野島選手が入賞。開幕戦以来となるワンツーフィニッシュを飾った。3位には今季2勝を挙げている大橋政哉選手(アルピーヌ・A110R)が入賞し、シリーズポイントでは山野選手に1点差でランキングトップの座を守った。

PE1クラス優勝は山野哲也選手(EXEDY71RS A110R)。
他カテゴリー参戦と重なり欠場が多くなる今シーズンの山野選手にとって、貴重な一勝となった。
2位は野島俊哉選手(EXEDY71RS A110R)、3位は大橋政哉選手(DLFG-LFWμA110R)。
PE1クラスの表彰の各選手。

PE2クラス

 PE2クラスは、第1ヒートをトップと0.133秒差の2番手で折り返した河本晃一選手(マツダ・ロードスターRF)が、路面が乾き始めた第2ヒートでは「何が起こるか分からないパッチワークの路面でしたが、路面に裏切られることを前提にした走らせ方がうまくハマったと思います」と、クラス唯一となる1分16秒台のタイムをマーク。シリーズを独走する今季4勝目を獲得した。

 2位には「結果的に、難しい路面コンディションに走りを合わせることができませんでした」という、第1ヒートトップの高屋隆一選手(スバル・BRZ)が入った。高屋選手とダブルエントリーの瓜本琴葉選手が、「今回はタイムが高屋さんに0.071秒差まで迫ることができてうれしい反面、届かなかったことがすごく悔しいです」という3位に入賞した。

PE2クラス優勝は河本晃一選手(CP2.BSロードスターRF)。
「ウェットコースになって、ストレート区間が短くなったことも、僕のクルマにとっては有利だったと思います」と勝因を語る河本選手が優勝を飾った。
2位は高屋隆一選手(BSぢっぷすNT☆CP2BRZ)、3位は瓜本琴葉選手(BSぢっぷすNT☆CP2BRZ)。
PE2クラスの表彰式。左から4位の大川裕選手、2位の高屋選手、1位の河本選手、3位の瓜本選手、5位の伊藤大将選手。

PN1クラス

 第1ヒートは中部地区の金澤和幸選手(トヨタ・ヤリス)がベストタイムを奪ったPN1クラスは、その金澤選手が第2ヒートでタイムダウン。クラス2番目に出走した井上賢二選手がマークした1分16秒240がターゲットタイムになったが、最後までタイムを更新する選手が現れず、井上選手が全日本初優勝を飾った。「ジムカーナを始めてから37年、全日本やJAFカップにスポット参戦していた時から数えると33年目で初優勝することができました。自分自身が一番驚いています(笑)」と井上選手。

「テクニカルセクションでシフトダウンをミスしてしまい、サイドターンがうまくできませんでした」という朝山崇選手(トヨタ・ヤリス)が0.264秒差の2位、「勝負には負けてしまいましたが、第2ヒートは水たまりを気にせずドライのつもりで走り切ることができたので、満足しています」という阪本芳司選手(トヨタ・ヤリス)が、トップと0.473秒差の3位になった。

PN1クラス優勝は井上賢二選手(ワコーズ☆アクティブ☆ヤリス)。
「自分自身が一番驚いている」という井上選手がライバルに僅差で逃げ切り、悲願成就となった。
2位は朝山崇選手(DLETP速BPFヤリスITO)、3位は阪本芳司選手(エリアスポーツヤリス71RS)。
PN1クラス表彰の各選手。

PN2クラス

 今シーズンから本格的に全日本を転戦する藤井裕斗選手(マツダ・ロードスター)が2勝を挙げているPN2クラスは、第3戦 TAMADAで全日本初優勝を飾った永川悠太選手(マツダ・ロードスター)が第1ヒートのベストタイムを奪う。

 第2ヒートになると、第1ヒートでパイロンペナルティが加算されて下位に甘んじたが、タイム的には2番手相当を走っていた北海道の米澤匠選手(マツダ・ロードスター)がマークした1分14秒537がターゲットタイムとなる。この米澤選手のタイムがなかなか更新されない状況が続く中、第1ヒート3番手の藤井選手が、後半セクションでタイムを伸ばして米澤選手を逆転、今季3勝目を獲得した。

 2位には「第2ヒートは思いのほかグリップが低かったです」という米澤選手が入った。「今季、なかなか表彰台に上がれず苦しかったので、ホッとしています。後半戦、巻き返しできるように頑張ります」という中田匠選手(マツダ・ロードスター)が3位となった。

PN2クラス優勝は藤井裕斗選手(BSコサWmEBRロードスター)。
「自分の気持ちをしっかりコントロールすることができたと思います」という藤井選手が優勝を飾った。
2位は米澤匠選手(シンシアDLSOロードスター)、3位は中田匠選手(DLクスコWm小倉ロードスター)。
PN2クラスの表彰式。左から4位の小林規敏選手、2位の米澤選手、1位の藤井選手、3位の中田選手、5位の大江光輝選手。

PN3クラス

 PN3クラスは、第1ヒートをパイロンペナルティで終えたユウ選手(トヨタ・GR86)が、第2ヒートは「路面の濡れたところと乾いたところがパッチワークのようになっていましたが、攻めるところと抑えるところをしっかりとコントロールしました」とクラス唯一となる1分13秒台のタイムを叩き出し、逆転優勝。第3戦 TAMADAからの3連勝を決めた。

 第1ヒートでも2番手タイムをマークしていた遠藤貴郁選手(マツダ・ロードスター)が「セッティングを大きく変えたことがプラスになりました」と2位に入った。遠藤選手に0.077秒差の3位には「最後までしっくり来なかった」という川北忠選手が入賞した。

PN3クラス優勝はユウ選手(BS DRONE☆ GR86)。
3連勝となったユウ選手は「タイヤと路面のマッチングも良かったと思います」とコメント。セッティングが合ったことも勝因のひとつになったようだ。
2位は遠藤貴郁選手(陶マDLプロμロードスターRF)、3位は川北忠選手(ORC DL ロードスター)。
PN3クラスの表彰式。左から4位の安藤祐貴選手、2位の遠藤選手、1位のユウ選手、3位の川北選手、5位の久保真吾選手、6位の大坪伸貴選手。

PN4クラス

 PN4クラスは、「2戦連続表彰台を逃したのは、ここ最近では記憶にない」と、第3戦 TAMADAで5位、第4戦 赤門で4位に終わった津川信次選手(トヨタ・GRヤリス)が、第1ヒートはクラス唯一の1分12秒台、第2ヒートでもクラス唯一となる1分11秒台のタイムを叩き出し、今季3勝目を獲得した。

 2位に、「今シーズンはクルマと自分の走りがうまく噛み合わない状況が続いていたのですが、前戦あたりから少しずつ噛み合うようになってきました。まだまだ探っている部分があるので、モヤっとしていますけどね。70%くらいはクルマと会話できるようになったと思います」という上本昌彦選手(トヨタ・GRヤリス)が入賞。「まだまだ新型のGRヤリスとリンクできていない部分が多いので、後半戦に向けてセッティングを煮詰めていきます」という松本敏選手(トヨタ・GRヤリス)が3位となった。

PN4クラス優勝は津川信次選手(DL☆BRIDE☆URGヤリス)。
ライバルを置き去りにする速さを見せつけて優勝を飾った津川選手。
2位は上本昌彦選手(ルブロスK1レイズDLヤリス)、3位は松本敏選手(ADVICS☆DLURGヤリス)。
PN4クラス表彰の各選手。

BC1クラス

 BC1クラスは、第1ヒートのベストタイムを奪った山越義昌選手(ホンダ・シビック)が第2ヒートでもベストタイムを更新。だが、第1ヒートはパイロンペナルティで幻のベストタイムとなった伊藤眞央選手(ホンダ・インテグラ・タイプR)が、山越選手のタイムを約1秒更新するベストタイムをマークした。「金曜日の時点で日曜日の天候が怪しくなってきたので、土曜日に東京にいた友人にウェット用のタイヤを2本飛行機の預け手荷物で運んでもらいました。結局、ウェット用は使わなかったんですけどね」と笑う伊藤選手。21歳の若手ドライバーが、全日本出場6戦目で全日本初優勝を掴んだ。

 2位にベテランの山越選手、3位には「路面コンディションが不安定な中で、ちょっと慎重に走りすぎてしまいました」という小武拓矢選手が入った。

BC1クラス優勝は伊藤眞央選手(YHセラ桐生SPMインテグラ渦)。
第1ヒートのパイロンペナルティをものともせず、第2ヒートでベストタイムを叩き出した伊藤選手が全日本初優勝。
2位は山越義昌選手(BS茨中磨摺セラ渦シビック)、3位は小武拓矢選手(シンシアYH和光スイフトS+)。
BC1クラスの表彰式。左から2位の山越選手、1位の伊藤選手、3位の小武選手、4位の成瀬悠人選手。

BC2クラス

 BC2クラスは、第4戦 赤門で今季初優勝を飾った若林拳人選手(ロータス・エキシージ)が、両ヒートを制する走りで今季2勝目を獲得した。

 今季3勝を挙げ、今回は第1ヒートを若林選手と0.27秒差の2番手で折り返した広瀬献選手(ホンダ・S2000)は、第2ヒートで若林選手のタイムを0.315秒上回ってゴールしたものの、パイロンペナルティが加算されて幻のベストタイムに。広瀬選手が4位になったことにより、シリーズポイントは若林選手と広瀬選手のふたりが同点でトップに並ぶ結果となった。

 2位には「今年からリヤタイヤのサイズを太くして、トラクション向上を狙いました。少しずつうまくセッティングが合うようになってきました」という藤井雅裕選手(マツダ・RX-7)が入賞。第1ヒートのミスコースをリカバリーした渡辺公選手(ホンダ・NSX)が3位となった。

BC2クラス優勝は若林拳人選手(BS若自速心コ犬ZRエキシージ)。
ミスコースやペナルティが相次ぐ荒れ気味の展開となる中、両ヒートで着実にタイムを刻んだ若林選手が優勝。
2位は藤井雅裕選手(BPF☆TY☆マジックRX-7)、3位は渡辺公選手(BSリF犬T3OSペトロNSX)。
BC2クラス表彰の各選手。

BC3クラス

 第1ヒートは菱井将文選手(トヨタ・GRヤリス)がパイロンペナルティ、奥井優介選手(トヨタ・GRヤリスGRMN)がミスコース、大橋渡選手(スバル・インプレッサ)が「タイヤ温存のため、第1ヒートはスルーしました」と出走をキャンセルするという荒れた展開となったBC3クラス。第2ヒートで菱井選手が「第1ヒートで失敗していたので、第2ヒートは少しマージンをとって走りました」と言いながらもベストタイムを更新。

 第2ヒートの奥井選手は「ほぼほぼうまく走れたと思うんですけど、届きませんでしたね」とトップに0.397秒差の2位。第2ヒートの一発勝負にかけた大橋選手は「思いのほか路面が食ってくれませんでした。特に水たまりのあとはダメでしたね。完全に作戦が失敗しました」と3位に終わった。

BC3クラス優勝は菱井将文選手(BS・クスコGRヤリス)。
第1ヒートのパイロンペナルティでの反省を踏まえた着実な走りで第2ヒートを制し優勝した菱井選手。
2位は奥井優介選手(DL☆速心LFW☆茨トヨヤリス)、3位は大橋渡選手(DLプレジャーインプレッサ)。
BC3クラス表彰の各選手。

PHOTO/CINQ、成田颯一[Souichi NARITA] REPORT/CINQ、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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