天候に翻弄された神戸大会、FS-125部門とFP-3部門のウィナーはともに初優勝!
2021年4月20日
全日本カート選手権の西地域第2戦が4月17~18日に開催された。ウェットコンディションの中、FS-125部門では酒井仁選手(LUCE MOTOR SPORTS)が初優勝を飾り、FP-3部門では中村海斗選手(Formula Blue Team Nagao)がやはり初優勝。同時開催のジュニアカート選手権を含め、全4部門のうち3部門で地元・兵庫県勢のドライバーが勝利を手にする結末となった。
2021年JAF全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門 西地域第2戦
2021年JAFジュニアカート選手権 FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門 西地域第2戦
開催日:2021年4月17~18日
開催地:神戸スポーツサーキット(兵庫県神戸市)
主催:KSC
2021シリーズ開幕戦から4週間、舞台を兵庫県・神戸スポーツサーキットに移して行われた西地域第2戦。決勝日は空気がキンと冷えて強く冷たい風が吹き、4月中旬らしからぬ底冷えの一日となった。しかも朝には晴れていた空を、やがて不穏な雲が覆い始める。
そして決勝の途中で、心配されていた雨が降り出した。晴れ→曇り→小雨→本降り→曇り→横殴りの雨→晴れ……。目まぐるしく移り変わる天候に、各部門のレースは思わぬ展開を迎えることとなった。
FS-125部門には16台が参加。そのタイムトライアルでは、今季西地域へ戦いの場を変えた酒井選手がトップタイムをマーク。0.092秒差の2番手は安藤哉翔選手(ONE POINT)。加藤大翔選手(HRS JAPAN)と卜部和久選手(TEAM EMATY)のルーキーふたりが3・4番手に続いた。
酒井選手は予選も順調に先頭のまま走り切り、決勝をポールから発進することとなった。だが、午後に入ってサーキットを強い雨が襲い、コースはフルウェットの状態に。雨は決勝の開始前に上がったのだが、26周のレースは予選とまったく異なるコンディションで行われることとなった。
決勝が始まると、酒井選手の背後に安藤選手が迫る。6周目、安藤選手が先頭へ。再び顔を出した太陽に照らされて濡れたコースから水蒸気が立ち上る中、待望の初勝利を目指す安藤選手は、0.9秒ほどのリードを築いて10周目に突入した。ところが、そのバックストレッチで安藤選手が急に失速。チェーントラブルで駆動力を失ったマシンをエスケープゾーンに止め、安藤選手は天を仰いだ。
これでトップに戻った酒井選手は、約3秒のリードを着々と広げて快走。最終ラップの最終コーナーを慎重に立ち上がると、両手でガッツポーズを披露して、全日本2年目で初表彰台・初勝利のチェッカーをくぐった。
酒井選手の後方では、山口大耀選手(HRS JAPAN)に9番グリッドの加納康雅選手(TIGRE)が追い付き猛チャージを仕掛けたのだが、加納選手は無念のスピン。ポジションを守り抜いた山口選手が2位となった。
序盤戦の3位争いの最中にスピンを喫して後方集団に転落した最年少13歳の加藤選手が、ファステストラップをマークしながら猛追を演じて3位に入賞。表彰台の3席には開幕戦と異なる顔ぶれが並んだ。
開幕戦から3台増の19台が参加したFP-3部門では、14歳のルーキー中村選手がポテンシャルを爆発させた。ホームコースの一戦に必勝を期して臨んだ中村選手は、ドライコンディションの予選で、同じ兵庫県勢の森岡真央選手(Ash)に残り2周で逆転を許して決勝のポールを奪われた。
すると中村選手は、少し前の降雨でウェットコンディションに変わった決勝が始まるや、スタート直後にポールの森岡選手をパスしてたちまち独走を開始。やはり序盤で森岡選手をかわした脇万葉選手(TEAM EMATY)をぐいぐいと引き離していく。
中盤から再び降り始めた強い雨も、中村選手の障害とはならず。ライバルたちを0.8秒近くも上回るベストタイムで独走を続けた中村選手は、26周のレースで約18秒ものリードを築く完全なワンサイドゲームで初優勝を果たした。
中村選手と同じ14歳の脇選手は、単独走行で26周を走り切って2位のままフィニッシュ、デビュー2戦目で初表彰台をつかんだ。その後方では、開幕戦を制した舟橋弘典選手(HIRAIPROJECT with Ash)が森岡選手に迫ったが、舟橋選手は降り出した雨に足元をすくわれスピン。森岡選手が3位となり、表彰台にはルーキーの3名が並んだ。
同時開催のジュニアカート選手権・西地域第2戦。FP-Jr部門の決勝が始まる時の天気は曇りだったが、雨雲レーダーは数分後の降雨を告げていた。ここでギャンブルに出たのが、3番グリッドの女性ドライバー佐藤こころ選手(チームナガオ)。出走10台のうち、ただ一人レインタイヤを装着してドライコンディションでの戦いに挑んだのだ。
20周のレースがスタートすると、佐藤選手は当然のように最下位に落ち、ひとり置き去りにされていく。ところが、7周目あたりにポツポツと雨粒が落ち始め、数周後にはドシャ降りに。賭けに勝った佐藤選手はたちまち前のマシンに追い付き、次々と抜き去っていく。そして15周目にはトップを独走していた松本琉輝斗選手(チームナガオ)もパスして先頭に立ち、あっという間に引き離した。
レースは17周目が終わるところで赤旗が提示されて終了、成立。独走の佐藤選手がこの部門3勝目、ホームコースの神戸大会2連覇を飾ることとなった。2位は松本選手。3位は序盤に松本選手とトップ争いを繰り広げた伊藤聖七選手(Ash)だった。
そして唯一ドライコンディションで行われたFP-Jr Cadets部門の決勝は、今年から西地域に移ってアウェーの戦いに挑んでいる酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)と、今季初出場の山代諭和選手(チームナガオ)のマッチレースとなった。
ふたりの戦いは折り返し点を過ぎたあたりからヒートアップし、激しくポジションを入れ替え合う白熱のバトルが繰り広げられた。迎えた最終ラップ、酒井選手が4コーナーでアウト側から山代選手をパスして先頭へ。だが、最終コーナーで山代選手が酒井選手のインを急襲し、13回に及んだトップ交代劇にケリをつけた。この部門5度目のスポット参戦の山代選手は、地元で初優勝だ。
目の前の西地域1勝目をあと一歩で獲り逃した酒井選手は、涙をぬぐって2位表彰台に。山代選手と同じ、地元・兵庫県勢の白石庵選手(HRS JAPAN)が3位に入賞した。
フォト/JAPANKART レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部