FS-125部門でタイトル争いをリードする酒井龍太郎選手が早くも5勝目を挙げた

レポート カート

2025年7月9日

全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門2025シリーズの折り返し点となる第5戦/第6戦が6月28~29日、シリーズ最北の地、スポーツランドSUGO国際西コース(宮城県村田町)で開催された。FS-125部門では、第5戦で4番グリッドからスタートした服部颯空選手が初優勝を達成。第6戦では酒井龍太郎選手がスタートでトップに浮上して今季5勝目を飾った。

2025年JAF全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門 第5戦/第6戦
2025年JAFジュニアカート選手権 ジュニア部門/ジュニアカデット部門 第5戦/第6戦(ラウンドシリーズ2)

開催日:2025年6月28日~29日
開催地:スポーツランドSUGO国際西コース(宮城県村田町)
主催:SSC

 全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門の2025シリーズは、早くも5大会全10戦の中間地点に突入。シリーズ中もっとも北に位置する開催地、SUGO国際西コースで第5戦/第6戦が開催された。サーキットはコースの再舗装を受けてグリップが向上、昨年からのタイムアップが期待できる状況だ。

 決勝日のサーキットは快晴。まだ6月だというのに気温は30度を越え、真夏を思わせる暑さに包まれている。来場者の体調を考慮して、パドックの片隅には「キンキン号」と名付けられたマイクロバスを車内に冷房が効いた状態で配置。誰でも自由にこの中で涼めるようにされていた。

 最初の走行セッションである公式練習の前に行われたのが、オフィシャルを対象としたSUGO大会恒例のレスキュー講習会だ。コースマーシャルたちがメインストレート上のコントロールライン付近に集まり、コース上で倒れたドライバーの救出手順をレクチャー。作業員を含めた人間の安全確保や救助対象者を担架に載せる方法などを実践確認し、レース運営のさらなる安全に備えていた。

2月ごろに路面の張替え作業が行われた国際西コース。グリップが向上した新たな路面でのコースレコード更新にも期待がかかった。
熱中症予防のためにパドックに用意されたキンキン号。ドライバーはもちろん、オフィシャルも涼を求めて活用していた。
セッションが始まる前にオフィシャルを対象とした救出訓練を実施。要救助者を担架に載せるためのシミュレーションが行われた。

全日本カート選手権 FS-125部門 第5戦/第6戦

 FS-125部門には18台がエントリー。タイムトライアル(TT)で39秒718のトップタイムをマークしたのは、SUGOをホームコースとする宮城県のカートショップSuper Racing Junkie!の木幡直生選手だった。それに僅差で続いたのは小熊孝誠選手と服部選手。開幕4連勝中の酒井選手は4番手と、やや意外なポジションに留まった。

 第5戦の予選では、酒井選手がスタートでふたつ順位を上げてトップ木幡選手の後ろにつけたのだが、レースに入っても酒井選手のペースは思わしくなく、徐々に木幡選手から引き離されていく。一方、好調の小熊選手は酒井選手をパスして2番手に上がると、じわじわと木幡選手を追い詰め、最終ラップの一撃でトップの座を奪ってゴールして決勝のポールを手に入れた。それに続いて木幡選手と酒井選手がゴール。やや遅れて服部選手が4番手でチェッカーを受けた。

 決勝は22周。各車がエンジンをかけメインストレート上のグリッドから離れると、1台がトラブルで停止して赤旗が出され、ローリングは仕切り直しに。2度目のローリングもうまく加速のタイミングがそろわず、セカンドグリッドの木幡選手に警告の白黒旗が出された。これに動揺したか、木幡選手はオープニングラップに若干ラインを乱して6番手までドロップし、酒井選手が2番手、服部選手が3番手に上がった。

 ここからは小熊、酒井、服部の3選手によるトップ争いに発展する。3台はやや間隔を空けた状態で先頭集団を形成し、4番手以降を引き離しながら周回を重ねていった。静かな攻防に動きが起きたのは、レースが終盤に入った17周目。酒井選手が勝負所の4コーナーで意を決して小熊選手のインに飛び込んだ。だが、酒井選手が小熊選手のマシンに乗り上げて、2台はストップ。ともに再スタートは切ったのだが、小熊選手は間もなく車検場に戻ってレースを打ち切り、酒井選手は最後尾に陥落した。

 目の前のアクシデントをうまく回避してトップに立った服部選手は、1秒強のアドバンテージをキープしながら残り6周を走り切り、右手でナンバー1サインを掲げてチェッカーをくぐった。2023年最終戦デビューの服部選手が、はるか福岡県から宮城県まで遠征してのレースで、待望の初優勝をつかみ取った。

 服部選手から約1.4秒後れてルーキーの片岡陽選手が2位でフィニッシュし、初表彰台を獲得。最年少13歳の森谷永翔選手が木幡選手の追走を振り切って、やはり初表彰台となる3位に入賞した。

FS-125部門 第5戦優勝は服部颯空選手(C.O.B-Kart)。
昨年に九州からの遠征を始め、念願の表彰台を獲得した服部選手。「まさかてっぺん獲れるなんて、驚きとホッとした気持ちが重なっています」と第一声。「前の接触で驚いてちょっと動揺したんですが、そこからは少し後ろを気にしながら、とにかく前に行こうと思って走っていました」と無欲の勝利を収めた。
2位は片岡陽選手(YAMAHA MOTOR Formula Blue)、3位は森谷永翔選手(ERS with SACCESS)。
FS-125部門 第5戦表彰の各選手。

 第6戦の予選ではオープニングラップで酒井選手がトップに浮上し、小熊選手もポール木幡選手の前へ。2周目には小熊選手が酒井選手をかわして先頭に立ち、酒井選手に逆襲のチャンスを与えないまま走り切って2戦連続の決勝ポールを手に入れた。2、3番手は酒井選手と木幡選手。服部選手はスタート直後に順位を下げ、さらに序盤のバトルで複数の後続に先行を許し、10番手のゴールに終わった。

 迎えたこの大会最後のレース、第6戦決勝。ここまで小熊選手のペースに及ばず苦しい戦いが続いていた酒井選手は、スタートに活路を見出そうと決意していた。ローリングの隊列に灯されていたレッドライトが消えてレースが始まると、酒井選手はするするとイン側にマシンを寄せて1コーナーに入り、その立ち上がりで小熊選手に並びかけると、2コーナー手前でトップに立つことに成功、逆転優勝への第1ミッションをクリアした。

 4周目、酒井選手の真後ろに貼りついていた小熊選手が、わずかに走りを乱して酒井選手から遅れを取った。さらに小熊選手が後続からのチャージを押さえることに腐心する間に、酒井選手は全力疾走で逃げを打った。5周目、酒井選手と小熊選手のギャップは1秒。以前の状況なら、小熊選手はここから早々に酒井選手を追い詰めていくはずだった。だが、今回は事情が違った。

 実は酒井選手は第5戦決勝のアクシデントでシャシーにダメージを負い、その打開策としてギャンブルともいえる大幅なセッティング変更をマシンに施して最後のレースに臨んでいた。それが功を奏して、小熊選手とのスピードの差は前より小さくなっていた。小熊選手は酒井選手にじわじわと接近していくのだが、なかなかテールを捕らえるまでには至らない。

 逃げる酒井選手と追う小熊選手。2台のギャップは、10周目0.7秒、15周目0.5秒。バトルこそ起こらないものの、それはふたりの静かな死闘だった。最終ラップ、酒井選手は0.5秒強のリードを保ってコントロールラインを通過した。逃げ切り成功だ。今季5勝目は、苦境を乗り越えてつかんだ価値ある1勝だった。酒井選手はチェッカーを受けると感極まった様子で右拳を握り、喜びをかみしめながらゆっくりとウィニングランを回った。

 小熊選手は酒井選手から0.397秒遅れてフィニッシュ。自己最上位タイの2位にはなったが、それも初優勝の絶好のチャンスを逃した無念の慰めにはなるまい。続いて木幡選手が単独走行でゴールし、地元でのレースを3位表彰台で締めくくった。

 ポイントレースは、酒井選手が181点でライバルたちを大きくリード。元田心絆選手が131点、片岡選手が124点でそれに続いている。次の新潟大会(第7戦/第8戦)で酒井選手がチャンピオン争いに決着をつけることができるのか、注目が高まる。

FS-125部門 第6戦優勝は酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)。
「木曜日の練習からペースが今イチない状態で、苦しい一週間でした」と吐露した酒井選手。第6戦では狙いどおりのスタートを切れたものの、「ペースが上がらず苦しい状況だったんですが、ひとつ勝つことができて、この前のOK部門の初優勝よりうれしいくらいです」と今シーズン5勝目を手に入れた。
2位は小熊孝誠選手(HRT)、3位は木幡直生選手(Super Racing Junkie!)
FS-125部門 第6戦表彰の各選手。

全日本カート選手権 FP-3部門 第5戦/第6戦

 FP-3部門のエントリーは、タイトル争いの渦中にあるランキングトップ2にスポット参戦勢などを交えた、14~16歳の7台。西日本からのエントリーもあり、顔ぶれはバラエティに富んでいる。そのレースで速さを見せつけたのが山代諭和選手だった。山代選手はまずTTで再舗装された路面を利して42秒685の新コースレコードを叩き出すと、第5戦の予選では1周目から独走して決勝のポールを獲得した。

 第5戦の決勝ではローリングがうまくそろわずスタートがやり直しになる間にアクシデントで2台が姿を消し、5台でレースが始まった。すると、オープニングラップの4コーナーで2番グリッドの石野弘貴選手が山代選手をパスしてトップの座を奪った。2番手に後退した山代選手は反撃を急ぐことなく、石野選手の真後ろにつけてひたひたとラップを消化していく。

 そして22周のレースが折り返し点を過ぎた13周目、ようやく山代選手が動いた。1コーナーで石野選手を抜き返してトップに復帰だ。「前に出ても引き離す自信がなかった」と言う山代選手だが、その言葉とは裏腹に、ラップを重ねるたびリードは開いていく。ゴールの瞬間、山代選手のアドバンテージは2秒以上に広がっていた。堂々の独走で2勝目獲得だ。

 石野選手は山代選手の逆転こそ許したものの、トップ快走から自己最上位更新の2位でフィニッシュして存在感を見せつけた。3位はポイントリーダーの國岡光貴選手。4番グリッドからスタートすると序盤に地元勢の飯野暁介選手をかわし、その飯野選手との接近戦を制してポイント獲得圏内の3位に滑り込んだ。

FP-3部門 第5戦優勝は山代諭和選手(quaranta sei YRT with GEMINI)。
山代選手は昨年のSUGOで苦戦していただけに「優勝できてとてもうれしいです」と喜びをあらわに。「スタートで順位を落としたんですが、2番手だったので大丈夫だと思っていました。まずは3番手以降を引き離そうと思ってトップの後ろについていきました」とレースを振り返った。
2位は石野弘貴選手(TIGRE)、3位は國岡光貴選手(ガレージC)。
FP-3部門 第5戦表彰の各選手。

 午後の第6戦に入ると、山代選手の優位は一層盤石なものになった。予選では16周で後続を3秒半も突き放して先頭のままゴール。決勝ではオープニングラップで群れを抜け出すと、そのリードをじわじわと拡大しながら周回を重ね、危なげのない独走劇で3勝目を飾った。前回の神戸大会では、2レース目で最終ラップの最終コーナーまでトップを走りながら、後続に追突されて目前の連勝を失った山代選手。その無念を払拭する文句なしの2連勝だった。

 2番グリッドからスタートした石野選手は、3番手以下を引き離しながら単独走行で酷暑の22周をしっかりと走り切って、2戦連続の2位フィニッシュ。4番グリッドからスタートで3番手に浮上した國岡選手は、中盤に飯野選手の逆転を許したものの、これを抜き返すと追いすがる飯野選手を振り切ってゴールし、今回も貴重な3位20点を手にした。

 第6戦を終えてのポイントランキングは、國岡選手が160点で首位の座をキープ。山代選手がこの大会で満点の70点を獲得して國岡選手に2点差と迫り、チャンピオン争いは白熱の様相を呈してきた。

FP-3部門 第6戦優勝は山代選手(quaranta sei YRT with GEMINI)。
「神戸で2連勝できなかった悔しさをここで晴らすことができて良かったです」と山代選手。「後ろに追いつかれたらマズいなと思って、最後まで自分のベストを出せるように走っていました。シリーズポイントはまだトップとギャップがあるので、次の新潟大会でも絶対に勝ちたいと思います」と意気込みを見せた。
2位は石野選手(TIGRE)、3位は國岡選手(ガレージC)。
FP-3部門 第6戦表彰の各選手。

ジュニアカート選手権 ジュニア部門 第5戦/第6戦(ラウンドシリーズ2)

 同時開催のジュニアカート選手権ラウンドシリーズ2では、ジュニアカデット部門が成立に至らず、ジュニア部門の第5戦/第6戦が開催された。エントリーは6台と決して多くはないのだが、暫定ポイントランキングのトップ5が顔をそろえ、チャンピオン争いの上では重要な一戦になった。

 その第5戦では、決勝を前に思わぬ事態が起こった。他を圧倒する独走で予選を制してポールとなった中野貴介選手が、ダミーグリッド入場の制限時間に間に合わず失格となってしまったのだ。

 これで実質的なポールとなった2番グリッドの織田大和選手は、1周目から後続を引き離して独走のまま16周を走り切り3勝目を獲得した。2位には単独走行の本田羽選手が入賞。ポイントゲットの最後の一席を懸けた3番手争いは3台のバトルになったのだが、序盤に最後尾まで後退した島津舞央選手がワンチャンスを活かして前の2台をパスし、3位フィニッシュに成功した。

ジュニア部門 第5戦優勝は織田大和選手(RF AOYAMA)。
思わぬ形で事実上のポールとなった織田選手は「勝ててうれしいです。独走もできてすごく楽しかったです」と総括。「第6戦で中野選手と争う形になったとしても、僕が勝ちます!」と勝利への欲をむき出しにした。
2位は本田羽選手(Ash)、3位は島津舞央選手(ERS with SACCESS)。
ジュニア部門 第5戦表彰の各選手。

 第6戦では無事にポールから発進した中野選手だったが、本来の速さは見られず序盤からポジションを下げていく。代わってトップに立った高橋聖央選手は、18周レースの7周目に突然スピードを失ってストップ。スタートで2番グリッドから5番手に下がったところから挽回を続けてきた織田選手が高橋選手から先頭の座を引き継ぐと、一気に後続を吹き離して4勝目を遂げた。織田選手は新東京大会(第1戦/第2戦)に続く2連勝達成だ。

 織田選手に続いたのは、今回がジュニア部門初参戦の兼田麗生選手。最後尾の6番グリッドから逆襲を演じ、ホームコースで2位入賞を果たした。中野選手は序盤に戦列を去り、本田選手が3位となった。

 シリーズランキングは、未勝利ながらここまで全戦でポイント獲得の本田選手が122点で首位をキープ。織田選手が116点までポイントを伸ばして2番手に浮上。島津選手が94点で3番手につけている。

ジュニア選手権 第6戦優勝は織田選手(RF AOYAMA)。
「ペースがめちゃくちゃあったので、ぜんぜん焦らなかったです」という織田選手が4勝目を獲得。「めちゃくちゃいい気分です。トップ独走になってからはミスしないことだけを考えて走っていたら、良いタイムで安定して走ることができました」とSUGO大会を制覇した。
2位は兼田麗生選手(Super Racing Junkie!)、3位は本田羽選手(Ash)。
ジュニア部門 第6戦表彰の各選手。

PHOTO/長谷川拓司[Takuji HASEGAWA]、JAPANKART、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/水谷一夫[Kazuo MIZUTANI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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