酒井龍太郎選手が第3戦で悲願のOK部門初勝利を飾る! 第4戦では皆木駿輔選手が優勝

レポート カート

2025年6月25日

国内カートレースの最高峰たる全日本カート選手権 OK部門の2025シリーズ第3戦/第4戦が6月14~15日、モビリティリゾートもてぎ北ショートコース(栃木県茂木町)で開催。第3戦では酒井龍太郎選手が緊迫のマッチレースを制して悲願の初優勝を飾り、第4戦では皆木駿輔選手がライバルの消えたレースを独走して今季1勝目を獲得した。

2025年JAF全日本カート選手権 OK部門 第3戦/第4戦
2025年JAFジュニアカート選手権 ジュニア部門/ジュニアカデット部門 第3戦/第4戦(ラウンドシリーズ1)
2025 AUTOBACS GPR KARTING SERIES

開催日:2025年6月14~15日
開催地:モビリティリゾートもてぎ北ショートコース(栃木県茂木町)
主催:ホンダモビリティランド株式会社、GPR

 三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキット南コースでの全日本カート選手権2025シリーズ開幕から約1か月、OK部門はモビリティリゾートもてぎ北ショートコースで今季2度目の大会を迎えた。この大会ではOK部門とジュニア選手権 ジュニア部門/ジュニアカデット部門(ラウンドシリーズ1)の第3戦/第4戦が行われるのだが、注目を浴びたのはGPR KARTING SERIESの1クラスとして同時開催されるShifter。スーパーGTなどで活躍中のプロドライバー平手晃平選手が、新生チームCVSTOS Racing ANEST IWATAから参戦してきたのだ。

 加えて大会初日、土曜日のパドックには近日の設立を目指して準備が進んでいる一般社団法人日本カート協会の代表理事に就任予定の山本尚貴氏も視察に来場。ドライバーズブリーフィングの会場では平手選手、Shifterに参戦中の松田次生選手、大会レースディレクターの塚越広大氏と4名で楽しそうに歓談し、四輪ビッグイベントの会場のような華やぎのある景色がカートコースで見られることとなった。

CVSTOS Racing ANEST IWATAから平手晃平選手がShifterに本格参戦し、今大会の大きなトピックとなった。
一般社団法人日本カート協会の代表理事に就任予定の山本尚貴氏が視察のために会場を訪れた。
Shifterに参戦する平手選手と松田次生選手、GPRレースディレクターの塚越広大氏、日本カート協会の山本氏と、そうそうたるメンバーが集まった。

全日本カート選手権 OK部門 第3戦/第4戦

 栃木県はすでに梅雨入りを迎え、もてぎは大会初日の午後から本降りの雨に見舞われた。だが、その雨は決勝日の9時ごろにほぼ止み、20度を越える気温とも相まってコースコンディションは急速に好転。OK部門の公式練習ではウェットタイヤ装着車とスリックタイヤ装着車がほぼ半々でコースインする状況にまで路面が乾き、タイムトライアル(TT)以降のOK部門は全車がスリックタイヤを履いての出走になった。

 そのTTでは酒井龍太郎選手が38秒032のトップタイムをマークし、2大会連続で第1レースのポールを獲得する。2番手には0.061秒差の皆木選手が、3番手には0.086秒差の三村壮太郎選手が続いた。4番手は中野駿太選手。5番手となったのは、今大会がデビュー戦の手塚大雅選手だ。

ポールポジション賞は酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)に贈呈された。

 22周の第3戦決勝は、手に汗握るマッチレースとなった。ポールの酒井龍太郎選手はトップをキープしたまま発進。その0.5秒ほど後方に皆木選手がつけてラップを重ねていく。ふたりのペースは3番手の三村選手以下を大きく上回り、このトップ争いについていける選手はいなかった。

 事態が動いたのはレースが3分の1を過ぎたころ。皆木選手がトップとの差をじわりと詰めたかと思うと、その次の周に酒井龍太郎選手を一発でかわして先頭に立った。追う立場になった酒井選手は、0.3秒ほどのギャップで皆木選手に食らいついていく。

 その戦況は、レースが残り3分の1を切っても変わる気配を見せない。昨年ここで両レースを制した皆木選手の、もてぎ大会3連勝か……。そんな気配が漂い始めた残り2周、酒井龍太郎選手が皆木選手との間隔をわずかに縮めたのだ。

 そして迎えた最終ラップ。皆木選手は勝負どころのコーナーでインを締め、勝利への足固めを始めた。すると右180度ターンの第6コーナーで、イン寄りのラインを取って進入した皆木選手の、わずかに空いていたさらにインに、酒井選手がマシンを滑り込ませた。トップ交代、そして酒井龍太郎選手は残り2分の1周を守り切った。

 昨年のもてぎ大会ではOK部門デビュー2戦目をトップでゴールしながら、ペナルティで勝利を喪失。それ以降もOK部門ではことごとく勝利の女神に見離され続けてきた。そんな酒井龍太郎選手にようやく訪れた、トップカテゴリーでの初優勝。コントロールラインをまたぐ瞬間、感極まった酒井龍太郎選手は両手でヘルメットバイザーを覆った。

 事前テストでの好調ぶりから本命視される声が多かった皆木選手は、0.08秒差で2位。単独走行の三村選手が3位フィニッシュで今季初表彰台を獲得。中野選手は接近する酒井仁選手から逃げ切って4位となった。

OK部門 第3戦優勝は酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)。
参戦2年目となるOK部門で念願の初勝利を挙げた酒井龍太郎選手。「最終ラップの前の周にダメ元くらいの勢いで猛アタックしてなんとか追いつけました。最後は絶対ブロックされると分かっていたんですけど、その隙を狙おうと思っていて、いけたので良かったです。必ずイン側に隙があることを願っていきました」とコメント。
2位は皆木駿輔選手(Drago CORSE)、3位は三村壮太郎選手(K.SPEED WIN)。
OK部門 第3戦の表彰式。左から2位の皆木選手、1位の酒井龍太郎選手とミツサダ PWG RACINGのチーム代表、3位の三村選手。
第3戦でファステストラップをマークした選手に贈られるえんてれ賞は、38.021秒を記録した皆木選手が獲得。

 第3戦決勝のベストタイム順で決まった第4戦のグリッドは、皆木選手がポール、酒井龍太郎選手が2番手に。2列目には中野選手と佐藤佑月樹選手が、3列目には三村選手と松井海翔選手が並ぶこととなった。そして26周の第4戦決勝は、スタート直後にレースを決定づけるハプニングが待っていた。

 スタートでは中野選手が2番手に上がり、トップの皆木選手に続いた。ピタリ一丸でバックストレッチを進んだ中野選手と酒井龍太郎選手は、中野選手のアウト側後部と酒井龍太郎選手のイン側前部が横に並ぶ形で第3コーナーへの進入を迎えた。

 その瞬間、酒井龍太郎選手のマシンがアウト側に吹っ飛び停止、酒井龍太郎選手はその場でリタイアとなった。第3戦で唯一、皆木選手と同等のスピードで走って勝利した選手が、わずか1周目の序盤で消えてしまったのだ。

 トップ皆木選手と2番手中野選手の間隔はじわじわと開いていく。すると7周目の終わりに、中野選手に対してメインポストで黒旗が提示された。危険行為で失格の判定を受けた中野選手は、車検場にマシンを入れてレースを終了。代わって2番手に上がった酒井仁選手と皆木選手のギャップは、すでに3秒以上になっていた。それでも皆木選手は毎周のようにリードを広げながら、独りゴールへと疾走していく。

 チェッカーの瞬間、皆木選手のアドバンテージは9秒以上に達していた。もてぎマイスター皆木選手の完全勝利、そして1年ぶりの優勝だ。酒井仁選手はレース中盤からペースが降下。それをパスした三村選手が単独走行の2位でフィニッシュして連続表彰台をゲットした。

 チェッカー間際のコース上でギャラリーの視線を釘づけにしたのは、実は3番手集団だった。佐藤選手、松井選手、澤田龍征選手……と8台がズラリ一列に連なったこの集団は、表彰台の最後の一席を巡ってにわかに戦いをヒートアップさせ、もつれ合いながら激闘を繰り広げたのだ。この肉弾戦を勝ち抜き3位でチェッカーを受けたのは佐藤選手。4番手でゴールした澤田選手は接触に対するペナルティで5秒を加算され、酒井仁選手が4位、松井選手が5位でレースは決着した。

 OK部門は全10戦のうち4戦を終え、酒井仁選手が84点でポイントリーダーの座をキープしている。それに続くのは69点の皆木選手。54点の中井悠斗選手と53点の佐藤選手が4・5番手につけている。チャンピオンシップの行方は、まだ不透明なままだ。

OK部門 第4戦優勝は皆木選手(Drago CORSE)。
「序盤で食われないように逃げちゃおうと思いました」と、後続のペースを気にしていた皆木選手。「そこから独走になって、気持ち的には楽になりました。それでも速いスピードでレースを終えたかったし、抜いちゃうと今後にもつながらないと思ったんで、ここは自分の仕事だと思って(速さを維持して)走っていました」
2位は三村選手(K.SPEED WIN)、3位は佐藤佑月樹選手(YAMAHA MOTOR Formula Blue)。
OK部門 第4戦の表彰式。左から2位の三村選手、1位の皆木選手とDrago CORSEのチーム代表、3位の佐藤選手。
第4戦でファステストラップをマークした選手に贈られるえんてれ賞は、38.241秒を記録した皆木選手が獲得。

ジュニアカート選手権 ジュニア部門 第3戦/第4戦(ラウンドシリーズ1)

 12台が出走したジュニア選手権ジュニア部門のラウンドシリーズ1では、開幕2連勝中の坂野太絃選手が圧巻のスピードを見せつけた。坂野選手はTTで最速タイムを叩き出しながら、雨上がりのデリケートな路面コンディションで黄旗提示中にコースアウトを喫し、3番目までのタイムを抹消されて後方の11番手に埋没した。第3戦のポールシッターとなったのは井ノ瀬喜仁選手だ。

ポールポジション賞は井ノ瀬喜仁選手(ハルナカートクラブ)に贈呈された。

 18周の第3戦が始まると、坂野選手はさっそく追い上げを開始。だが、気が逸ったか2周目にコーナーをオーバーランして再び後方のポジションに下がった。ところが、坂野選手の本領発揮はここからだった。再び追撃を開始した坂野選手は、折り返し点で5番手にまで上がり、その2周後にはトップ3の位置まで浮上。12周目にはいよいよ2番手にやってきた。

 そして15周目、5番グリッドからトップに立っていた飯田一仁選手を無理なくパスした坂野選手は、クラス違いのような速さであっという間にリードを広げ、10台抜きの独走で3連勝を果たした。飯田選手は終盤にポジションを下げ、2位は林樹生選手のものに。3位表彰台には3台抜きの島津舞央選手が立つこととなった。

ジュニア部門 第3戦優勝は坂野太絃選手(Peak Performer with THISTLE)。
11番グリッドからのスタートながら、目が覚める速さでトップまで登り詰めた坂野選手。「追い上げ中にオーバーランしたときは一瞬焦ったけれど、そこから気を取り直して追い上げることができました」
2位は林樹生選手(HIROTEX RACING with IMPUL)、3位は島津舞央選手(ERS with SACCESS)。
ジュニア部門 第3戦の表彰式。左から2位の林選手、1位の坂野選手とPeak Performer with THISTLEのチーム代表、3位の島津選手。

 坂野選手のスピードは、第4戦でさらに際立つ。ポールから22周のレースをスタートすると、1周0.5秒ほどのペースでリードを広げながら爆走。問答無用の独り旅で、圧巻の開幕4連勝を遂げた。2位は再び林選手。そこにあと一歩まで迫った今村昴星選手が3位となった。

ジュニア部門 第4戦優勝は坂野選手(Peak Performer with THISTLE)。
「チームに「負けるドライバーになるな」と言われたことが速さの原因だったと思います」と振り返る坂野選手。疲れた表情を見せながらも「ミスもあまりなかったので、良かったなと思います」と4連勝を達成。
2位は林選手(HIROTEX RACING with IMPUL)、3位は今村昴星選手(Vitec Racing)。
ジュニア部門 第4戦の表彰式。左から2位の林選手、1位の坂野選手とPeak Performer with THISTLEのチーム代表、3位の今村選手。

ジュニアカート選手権 ジュニアカデット部門 第3戦/第4戦(ラウンドシリーズ1)

 17台が出走したジュニアカデット部門。第3戦では、ポールの阿部瑠緯選手がスタート直後に3番手まで後退したものの、序盤のうちに先頭へ復帰すると、トップ争いを抜け出して独走。フル参戦2年目で待望の初優勝をつかみ取った。4台一列で展開されたセカンドグループの戦いは、久田朱馬選手の2位フィニッシュで決着。序盤にトップも走った小林尚瑛選手が3位を得た。

ジュニアカデット部門 第3戦優勝は阿部瑠緯選手(ミツサダ PWG RACING)。
チームで勝ち取った優勝と語る阿部選手は「昨年はトップでゴールしてペナルティで優勝できなかったことがありましたが、今回は落ち着いてレースができ、優勝できて良かったです」と喜びの笑顔を見せた。
2位は久田朱馬選手(ガレージC)、3位は小林尚瑛選手(Ash)。
ジュニアカデット部門 第3戦の表彰式。左から2位の久田選手、1位の阿部選手とミツサダ PWG RACINGのチーム代表、3位の小林選手。

 ユン・イサック選手のトップ快走で幕を開けた第4戦では、3台一列の先頭集団に、やがて6番グリッドからスタートした阿部選手が加わってきた。接戦をくぐり抜けてトップに立った阿部選手は、さらに揉み合う3台を引き離し、単独走行のフィニッシュで堂々の2連勝を達成した。2位はこのレースも久田選手。ポールスタートのユン・イサック選手は初優勝こそ逃したものの、3位でチェッカーを受け2年目の初表彰台に立った。

ジュニアカデット部門 第3戦優勝は阿部選手(ミツサダ PWG RACING)。
阿部選手が2連勝。「すごくうれしいです。あと、監督たちに本当に感謝です。自分は焦ると遅くなっちゃうので、焦るなと自分に言い聞かせながら良いレースができたと思います」
2位は久田選手(ガレージC)、3位はユン・イサック選手(LUCE MOTOR SPORTS)。
ジュニアカデット部門 第4線の表彰式。左から2位の久田選手、1位の阿部選手とミツサダ PWG RACINGのチーム代表、3位のユン・イサック選手。

Rok CUP JAPAN RokSHIFTER 第3戦/第4戦

 同時開催のShifterには、開幕2連勝の井出七星翔選手が欠場したものの7台が出走。その第3戦では、5番グリッドから挽回してきた伊藤聖七選手が中盤にトップへ浮上して初優勝を獲得。これは伊藤選手の16歳のバースデーウィンだった。2位はポールスタートの中里龍昇選手。注目の平手選手はTTで3番グリッドをゲット。スタートでのポジションダウンを挽回して3位表彰台を獲得した。

Shifter 第3戦優勝は伊藤聖七選手(Ash)。
ポイント狙いで手堅い走りをしていた伊藤選手だったが「3番手に上がって優勝が見えてきたんで、勝てて良かったです。次のレースも2連勝を狙います。気を抜くことなく次に臨みたいですね」と語った。
2位は中里龍昇選手(Tony Kart R.T.J.)、3位は平手選手(CVSTOS Racing ANEST IWATA)。
Shifter 第3戦の表彰式。左から2位の中里選手、1位の伊藤選手とAshのチーム代表、3位の平手選手。

 第4戦では、ポールの中里選手が序盤から独走態勢を固めて初優勝を飾った。伊藤選手は1ポジションアップの2位、田崎脩馬選手が3位でフィニッシュ。平手選手はレース途中でマシンにダメージを負って車検場にマシンを入れ、リタイアに終わっている。

Shifter 第4戦優勝は中里選手(Tony Kart R.T.J.)。
「第3戦は勝つことができなかったんですが、第4戦ではうまく逃げられて勝つことができました。けっこう疲れました。初優勝はめちゃくちゃうれしいです。次の大会でも逃げられるように頑張ります」と中里選手。
2位は伊藤選手(Ash)、3位は田崎脩馬選手(Tony Kart R.T.J.)。
Shifter 第4戦の表彰式。左から2位の伊藤選手、1位の中里選手とTony Kart R.T.J.のチーム代表、3位の田崎選手。

PHOTO/今村壮希[Souki IMAMURA]、長谷川拓司[Takuji HASEGAWA]、JAPANKART REPORT/水谷一夫[Kazuo MIZUTANI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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