海外で腕を磨いた堂園鷲選手がFS-125部門で全日本選手権初優勝!

レポート カート

2021年5月7日

全日本カート選手権・東地域第2戦が、ゴールデンウィーク真っ只中の千葉県・新東京サーキットで開催された。FS-125部門では13歳の堂園鷲選手(Energy JAPAN)が、FP-3部門では19歳の佐久間宇宙選手(YRHKS)が、ともに初優勝。同時開催のジュニアカート選手権FP-Jr部門では、10歳の女性ドライバー松井沙麗選手(BEMAX RACING)が通算3勝目を飾った。

2021年JAF全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門 東地域第2戦
2021年JAFジュニアカート選手権 FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門 東地域第2戦

開催日:2021年5月3~4日
開催地:新東京サーキット(千葉県市原市)
主催:RTA

 新東京サーキットで全日本カート選手権が行われるのは2015年以来、6年ぶりのことだ。前回の大会でFS-125部門のウィナーとなったのは、今やF1ドライバーとなった角田裕毅選手。この時は最後尾の20番グリッドから追い上げての逆転優勝だった。

 その新東京サーキットは2020年、現役レーシングドライバーでもある井出有治氏がオーナーに就任して新体制でリスタートを切っている。今回の大会では、井出氏が大会組織委員を務め、さらに山本左近氏も副競技長に名を連ねて、カート出身の元F1ドライバーふたりが大会役員として久々の“全日本・新東京大会”をサポートする豪華な布陣となった。

 決勝日のサーキットは強い陽光に照らされ、5月初旬にして初夏のような暑さに。そのため、熱中症対策としてレース後の車検場での給水が認められることとなった。

 FS-125部門では、予選ヒートで4~7台が常に大きな先頭集団を形成して活発なバトルが展開されたのだが、ここで波乱が起きた。戦いを優位に進めた堂園選手こそ問題なくトップを得たのだが、2・3・4番手でゴールした野沢勇翔選手(Formula Blue エッフェガーラ)、梅垣清選手(ガレージC)、浅見謙心選手(BirelART Access Racing)が、ホットな戦いの代償として5秒加算のペナルティを受けることに。さらに、開幕戦ウィナーの伊藤祐選手(ガレージC)も7番手でチェッカーを受けながらペナルティの対象となり、有望視された選手の多くが決勝のグリッドを下げる事態となったのだ。

 ポールの堂園選手は、強力なライバルたちが真横や真後ろのグリッドからいなくなったことにも勇気を得て、トップのまま30周のレースを発進すると、序盤からじわじわと後続を引き離していく。堂園選手のリードは、毎周わずかずつだが着実に広がり、11周目にはついに1秒差を超えた。

 さらに全力疾走を続ける堂園選手は、やがてリードを2秒弱まで拡大。終盤には疲れが出てややペースが鈍ったものの、それもピンチを招くほどのものでもなく、堂園選手は単独走行のまま最後まで走り切った。2019年にジュニアカート選手権FP-Jr部門のチャンピオンに輝き、2020年はFIAカーティングアカデミートロフィーに参戦してヨーロッパで腕を磨いた期待の新鋭が、全日本デビュー2戦目で初優勝を達成だ。

 ポール・トゥ・ウィンで満点の35点を獲得した堂園選手は、ポイントランキングも東西総合の首位に浮上。さらに、この大会の特別な賞典として、シーズン末のFIA-F4テストドライブに招待される新東京フォーミュラースカラシップを手にした。

 表彰台の残る2席には、この部門2年目の選手たちが立った。2位は上野晴紀選手(チームエッフェガーラ)だ。予選5番手ゴールからの繰り上がりで決勝を2番グリッドからスタートすると、そのポジションを譲ることなく30周の長いレースを走り切り、これまで7位だった自己最上位を大きく更新して初表彰台を手に入れた。ただし本人は「スタートで出遅れたし、途中でミスもあった」と、まだまだ納得していない様子だった。

 予選のペナルティを克服して3位入賞を遂げたのが浅見選手。10番グリッドから8周で4番手までポジションを上げると、さらに中盤にも1台を抜いて、こちらも初めての表彰台をゲットした。「(初表彰台で)だいぶ自信にはなったけれど勝てたレースだったので、悔しいです」と浅見選手。

優勝の堂園鷲選手は「X30(エンジン)で初めての優勝だったので、うれしいです。スタートでできるだけ離して独走できればと思っていたけれど、バトルにならなくてよかったです。後半は手が疲れてきて集中力も途切れてしまったけれど、最後の2~3周で自己ベストのタイムを出すことができました。予選で前の方にいた選手たちが(決勝のグリッドでは)下がってくれたので、決勝はちょっと楽になりそうだな、と思いました。30周のレースは長かったです」とレースを振り返った。
FS-125部門の表彰式。左から2位の上野晴紀選手、1位の堂園選手、3位の浅見謙心選手が登壇。

 FP-3部門の決勝は、佐久間選手と西薗勇太選手(TECORSA & triple@faRson-9R-olc)をグリッドの最前列に据えて、28周の戦いのスタートを切った。まず先頭に立ったのが2番グリッドの西薗選手。だが、西薗選手は予選までの精彩を欠き、やがてじりじりと順位を下げていった。

 代わって目覚ましい追い上げを見せたのが、開幕戦のウィナー村田悠磨選手(SPS川口)。10番グリッドから9周で2番手まで上がると、その翌周には佐久間選手もかわしてトップまで上り詰めた。しかし、村田選手の速さも逃げを打つまでには至らず、その背後には佐久間選手をはじめとする後続がずらりと連なり、先頭集団は一時8台にも達した。

 そんな中、佐久間選手は後ろのマシンとの攻防もこなしながら、逆転のチャンスを虎視眈々とうかがっていた。その時が来たのは残り2周。最終ラップの逆転は難しいと踏んだ佐久間選手は、27周目に入ったストレートエンドで17周に渡ってレースをリードした村田選手をパスし、トップに戻る。村田選手もすぐ反撃に出たのだが、その攻防の隙を突いて、8番グリッドから追い上げてきた柳沼光太選手(ガレージC)が村田選手の前に出た。

 かくして佐久間選手が熱戦を制し、タイムトライアル・予選・決勝すべて1位で2年目での初優勝を達成した。2位の柳沼選手は初表彰台獲得。村田選手はあと一歩で2連勝を逃したが、トップ快走からの3位フィニッシュで今季の躍進を改めて印象付けた。

「去年からFP-3部門を始めて、最高でも2位で悔しい思いをしてきたので、新東京でしっかりパーフェクトウィンができてうれしいです」と悲願の初優勝を遂げた佐久間宇宙選手。「決勝は逃げとバトルの両方を想定していたんですが、バトルの展開になりました。村田選手が抜いてきた時に、自分が単独で出していたタイムより村田選手の方が速かったので、その後ろに着いていきました。3番手に下がった時も、自分のマシンの速さには自信があったので、絶対に前に戻れると思っていました」
FP-3部門の表彰式。左から2位の柳沼光太選手、1位の佐久間選手、3位の村田悠磨選手が登壇。

 同時開催のジュニアカート選手権・東地域第2戦。FP-Jr部門では、鈴木恵武選手(RT-APEX)がスタートでポールの岡澤圭吾選手(HRT)をかわして先頭に立つと、そのまま独走に持ち込み、この部門2戦目で初優勝を飾った。2番手を走る岡澤選手には終盤、白井京之介選手(Astech)が襲いかかったが、ここは岡澤選手が競り勝ち、開幕戦の優勝に続く2位入賞を果たした。3位の白井選手は、これが初表彰台だ。

 開幕戦を圧勝した遠藤新太選手が欠場したFP-Jr Cadets部門は、松井選手と坂野太絃選手(EDO Marine Racing Team)の一騎討ちとなった。スタートでは2番グリッドの坂野選手が先行。すると、ポールの松井選手は残り6周まで待ってトップに戻り、最後の激しいバトルも制して今季初優勝、通算3勝目を果たした。坂野選手は悔し涙の2位。デビュー戦の木内翼選手(YRHKS)が、関口瞬選手(B-MAX Jr.brioly racing)との長い接近戦をものにして3位となった。

 また併催のNTC CUPシリーズYAMAHA SUPER SS第2戦では、勝俣康太選手(WELLSTONE)がポール・トゥ・ウィン。石井鉄也選手(WELLSTONE)が3番グリッドから2位、今澤和弘選手(Team TKC)が6番グリッドから3位に入賞した。

「誰かの後ろに着いて走っている時は必死なので周回数が減るのもあっという間なんですけれど、ずっとトップで走る24周は長かったです。久しぶりの優勝だったので、ゴールの時はめちゃくちゃうれしかったです。新東京はストレートが長いし風も吹いていたので、逃げ切ることは無理だと思っていたけれど、独走で勝ててうれしいです」と優勝を喜ぶ鈴木恵武選手。
FP-Jr部門の表彰式。左から2位の岡澤圭吾選手、1位の鈴木選手、3位の白井京之介選手が登壇。
昨年から頭角を現した松井沙麗選手が優勝。「開幕戦が勝てなかったので、ここから先は全部勝ちにいきます。とりあえず、ひとつ勝ててうれしいです。後半まではトップの人に着いていって3番手以下を引き離そうと思っていました。最終ラップの6コーナーでインを空けちゃったのはダメだったけれど、そこから思っていたとおりにクロスを取ることができてよかったです」
FP-Jr Cadets部門の表彰式。左から2位の坂野太絃選手、1位の松井選手、3位の木内翼選手が登壇。

フォト/JAPANKART レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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