FIA-F4は富士で波乱の開幕! 第1戦は木村偉織選手、第2戦は野中誠太選手が制す!!
2021年5月12日

スーパーGTと併せて開催されるFIA-F4選手権が、5月3~4日に富士スピードウェイで第1大会を迎えることとなった。このレースウィークは絶えず天候に恵まれ、最高のコンディションの中で激しいバトルが繰り広げられた。
2021 FIA-F4選手権 第1戦/第2戦
(2021 AUTOBACS SUPER GT Round2内)
開催日:2021年5月3~4日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:富士スピードウェイ株式会社、FISCO-C、株式会社GTアソシエイション
例年ならスーパーGTと併せて岡山国際サーキットから幕を開けるFIA-F4選手権だが、今年はゴールデンウィークの富士で初戦を迎えた。これはコロナ禍による急な変更ではなく、当初から予定されていたことだ。ただしエントラントの長距離移動を避けたという点において、岡山とオートポリスがシリーズカレンダーに組み込まれなかったことはまったく影響がないとは言い切れない。
第1大会のエントリーは、インディペンデントカップの11名を含んだ31名となった。今年の傾向としては、例年より圧倒的に継続参戦のドライバーが多いことだ。これは12戦開催された昨年がシーズン半ばからのシリーズ開始とあって、練習を含め十分な走り込みができなかったからというチームサイドへの配慮によるようだ。
また全日本カート選手権とスーパーFJ地方選手権のチャンピオンがひとりもステップアップしていないという異例のシーズンでもあることが、そういった状況に拍車をかけたのだろう。昨年FIA-F4で優勝を飾ったチャンピオンの平良響選手、ランキング2位の平木玲次選手は、ともにシリーズからの卒業を果たしたことで、新たな覇権争いは大接戦となることが予想された。
コンディションに恵まれた公式予選においてベストタイムでトップを奪ったのは荒川麟選手。トヨタの育成プログラムであるTGR-DC Racing Schoolから異例の抜擢を受け、他チームから移籍してきたドライバーながら、複数回にわたる走路外走行があったため、7グリッド降格のペナルティによって“幻のポールポジション”となってしまう。
繰り上がって第1戦のポールポジションを獲得したのは、活動再開となったホンダの育成プログラムのHondaフォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)から参戦の木村偉織選手。自身にとっては昨年は活動休止を余儀なくされたが、ブランクどころかさらなる成長を遂げていた。
「テストまでは本当に調子が悪くて、チームメイトからコンマ5秒ぐらい遅れる感じだったんですが、いろいろ準備とか対策して、それが形になったので良かったです」と木村選手。2番手にはチームメイトの小出峻選手がつけ、3番手はTGR-DC Racing Schoolから出場する3年目の野中誠太選手が獲得した。
そしてセカンドベストタイムによってグリッドが決まる第2戦では小出選手がポールポジションを獲得。これに野中選手、木村選手が続いて、順番こそ入れ替えたものの同じ3人が上位を独占した。
「ベストタイムでトップを獲れなかったのは悔しいですが、僅差の戦いの中でスリップが使えた、使えなかったというポジショニングの運もあったと思います。でも、コンスタントなペースでは分がありそうなので、決勝には自信を持っています」と小出選手。
予選に続いて土曜日のうちに行われた決勝レース第1戦では、非常に緊張感の伴うトップ争いが繰り広げられた。
「蹴り出しは良かったんですけど、クラッチのミートが早すぎて回転が落ち、そこから戻るのに若干時間がかかってしまいました」と木村選手。しかし、小出選手を僅差ながらも抑えて1コーナーに飛び込んでいく。その後方に野中選手が続き、伊東黎明選手が4番手ながら、ヘアピンで太田格之進選手に抜かれていた。
5周目までは8台でトップグループが形成されていたが、次の周のヘアピンで伊東選手を清水英志郎選手がかわして5番手に浮上すると、グループはふたつに分かれてトップは4台で競われるように。それぞれコンマ差で続いていたが、スリップストリームに使える距離ではギリギリなく、さりとて前に仕掛け損なって後ろから迫られるのを意識して嫌っていたようではあった。
一方セカンドグループでは、荒川選手が奥住慈英選手を抜いて7番手に浮上。8周目にはファステストラップも叩き出す。その勢いで11周目に荒川選手が6番手に上がることになる。ペースが思うように上げられない伊東選手は、12周目に奥住選手にもかわされていた。
中盤から大きく動いたセカンドグループに対し、トップグループでは13周目の1コーナーで小出選手がアクションをかけたのみ。しかし、それもブレーキロックで姿勢を乱して木村選手を攻略ならず。逆に野中選手が迫らんばかりの勢いだったが、辛くもポジションダウンを回避した。
逃げ切った木村選手は初優勝で「カートを卒業したのが2015年。そこから資金的な事情でレースができなくて、最後の砦としてSRS(-Formula)を受けました。なんとか受かっても昨年はコロナでレースできなくて、ようやく手にした優勝です。優勝自体も7年ぶりで本当に嬉しいです。決して楽なレースじゃなくて、後ろからのプレッシャーはすごくて、ワンミスが命取りだったので、そういう意味ですごい大変なレースでした。これで自信につながります」と語っていた。
2位は「精神的にかなりきついレースで、最後にプッシュして追いつけるかなと思ったんですが、1コーナーでリアをロックさせたのが痛かったです」という小出選手。しかし「明日は僕がポールからのスタートなので、明日は僕が優勝します」と語っていた。3位は野中選手で「ひとつもミスが許されない勝負の中で、もう一段階上のレベルで運転できないと優勝できないなっていうのを実感しました」と反省しきり。
インディペンデントカップでは、昨年のTCRジャパン・サンデーシリーズのブロンズクラスチャンピオンであり、40歳になったばかりのHIROBON選手がリードする展開から始まるも、急きょ代役参戦となったDRAGON選手が終盤になって急接近。ラスト2周の1コーナーでDRAGON選手の逆転を許し、HIROBON選手は初陣を飾れず。
「HIROBONさんも上手な方で、ジェントルマン同士のバトルとしては見せるレースができたと思います」とDRAGON選手。




日曜日の早朝に行われた第2戦決勝レースで、誰より好スタートを切ったのが2番手の野中選手だった。これに続こうとした小出選手だったが、後続の木村選手が1コーナーでブレーキロック。追突されて大きく順位を落としてしまう。この間に野中選手が一気にリードを広げることとなった。
オープニングラップ終了時の2番手は太田選手で、その後ろは荒川選手、清水選手、奥住選手、伊東選手という順。しかし太田選手は2周目の1コーナーで荒川選手にかわされたばかりか、3周目に清水選手との接触があり、スピンを喫してしまった。
そういった後続のバトルもあって一時は逃げかけていた野中選手だったが、4周目を過ぎたあたりから荒川選手のペースが勝るようになり、徐々に差が詰まっていく。7周目には完全にテール・トゥ・ノーズ状態へ。しかし、荒川選手の強烈なプレッシャーに屈することなく、野中選手は逃げ切りに成功。3年目にして初優勝を飾ることとなった。
「やっと勝つことができました。課題だったスタートもうまく決めることができて、いったんは後ろを離していけたんですけど、荒川選手のペースも良くて。でも、今まで苦しいレースをたくさん経験してきたので、そこはあんまり気にせずミスをしないようにと、自分の力を最大限引き出すことに集中しました。本当にホッとしています、チェッカー後はけっこう泣いていました」と野中選手。
そして2位の荒川選手は「速さに関しては今回十分示せたと思うので、よく言われ続けてきた『荒川らしいミス』さえしなければ。しっかりやることはやって、次は勝ちます」と次戦の鈴鹿に向けて必勝宣言も。そして3位は初表彰台となった清水選手で「1コーナーでドーンと来られてクルマは大丈夫かなと思いましたが、バランスは変わらなかったのでけっこう頑張りました」と笑顔で語っていた。この結果、TGR-DC Racing School勢が表彰台を独占。4位は小川颯太選手、5位が奥住選手で、6位が伊東選手となっていた。
一方、第1戦優勝の木村選手は件の接触に対し、ドライビングスルーペナルティを課せられたため25位に終わり、小出選手も22番手にまで後退後、7位にまで戻すのがやっとだった。
またインディペンデントカップでは、今度こそHIROBON選手の逃げ切りが成功し、「今日はもう逃げるだけ逃げよう、『どうせ後半来るやろな』と思って。実際、DRAGON選手はけっこう来ていましたね。これからは若者をやっつけるのを目標にしていきます」と語っていた。






フォト/遠藤樹弥、吉見幸夫 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部
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