WRC第4戦ポルトガルはTOYOTA GAZOO Racingのエルフィン・エバンス選手が優勝、勝田貴元選手はベストリザルトを獲得!

レポート ラリー

2021年5月27日

FIA世界ラリー選手権(WRC)第4戦が、ファフェのビッグジャンプが名物のポルトガルで開催された。ドライコンディションでの今季初のグラベルラリーはサバイバルラリーの様相を呈する中、TOYOTA GAZOO Racingの活躍が光る一戦となった。

2021年FIA世界ラリー選手権(WRC)第4戦 ラリー・ポルトガル
2021 FIA World Rally Championship Round 4 Vodafone Rally de Portugal

開催日:2021年5月20日~23日
開催地:ポルトガル・マトジニョス周辺

 2021年のFIA世界ラリー選手権(以下、WRC)第4戦「ラリー・ポルトガル」が5月20日~5月23日、ポルトガル北部のマトジニョス周辺を舞台に開催された。ヤリスWRCで参戦中のTOYOTA GAZOO Racing(以下、TGR)は、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組が今季初の総合優勝を達成。セバスチャン・オジェ/ジュリアン・イングラシア組が総合3位入賞を果たし、オジェ/イングラシア組はドライバーおよびコ・ドライバー選手権の、TGRはマニュファクチャラー選手権のそれぞれ首位を堅持した。そして、TGRの若手ドライバー育成プロジェクト、TGR WRCチャレンジプログラムによりWRCに参戦している日本人ドライバーの勝田貴元/ダニエル・バリット組は、デイ2では昨季のチャンピオン、オジェ/イングラシア組と総合3番手争いを展開するなど、目覚ましい走りを見せて総合4位入賞、ベストリザルトを更新した。

 今季初のグラベルラリーとして注目を集める中で、幸先の良いスタートを切ったのはヒュンダイのオイット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ組であった。i20クーペWRCを武器に3本のSSウィンを獲得し、21日のデイ1を総合首位でフィニッシュした。対するTGR勢はエバンス/マーティン組がタナック/ヤルヴェオヤ組から6秒差の総合2番手につける。しかし、先頭スタートで路面の掃除役「砂利掻き」を強いられたオジェ/イングラシア組が総合5番手に留まり、セットアップが自分に合っていないと感じた、と語ったカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組はタイヤに問題も発生し総合6番手と苦戦。その中で素晴らしい走りを披露したのが、勝田貴元/バリット組。3本のSSで4番手タイムをマークするなど安定した走りで、トップから15.4秒差の総合4番手でデイ1を終えた。

 翌22日のデイ2ではロバンペラ/ハルットゥネン組がSS14の出走前にマシントラブルで、さらに首位のタナック/ヤルヴェオヤ組も同SSでリヤサスペンションのトラブルでリタイアするなど、サバイバルラリーが展開された。その中でコンスタントな走りを披露したのがエバンス/マーティン組で、2本のSSウィンも獲得して後続に10秒以上の差をつけて、デイ2で首位に立った。2番手はヒュンダイのダニ・ソルド/ボルハ・ロザダ組で、オジェ/イングラシア組が3番手に浮上。勝田貴元/バリット組はオジェ/イングラシア組にこの日始めのSS9で抜かれるも食らいつき、2本のSSで3番手タイムを奪取するなど、3番手争いを展開。デイ1と変わらず4番手なものの、オジェ/イングラシア組に僅か1.5秒差まで迫った。

 結局、23日のデイ3で首位のエバンス/マーティン組がさらに3本のSSウィンで後続を引き離し、自身通算4勝目となる今季初優勝を遂げた。デイ1で出遅れたオジェ/イングラシア組もソルド/ロザダ組に続いて3位を獲得し、ドライバーおよびコ・ドライバー選手権の首位をキープ。そして、日本のモータースポーツファンにとって今戦最大のトピックスとなったのが、勝田貴元/バリット組の活躍にほかならない。オジェ/イングラシア組を相手に激しい3番手争いも経験した勝田貴元選手は「この週末はいい戦いができたと思います。難しいラリーで、どのステージも非常にトリッキーでした。決して楽な週末ではなかったですし、特に最終日は自分にとって厳しいものでしたが、それでもキャリア最高の結果で走り終えることができました」と語るように、見事4位入賞を果たした。

 WRCでの日本人ドライバーの4位入賞は、2001年、キプロス・ラリーでスバル・インプレッサWRCを駆って新井敏弘選手が達成して以来、約20年ぶりの快挙となった。今季の勝田貴元選手は開幕から3戦連続で総合6位に入賞するほか、第3戦のクロアチアでは2本のSSウィンを獲得するなど、着実なスキルアップが窺える。今戦も、TGRのワークスクルーたちを凌駕するタイムを記録するSSもあり、本人も「トップドライバーたちと一緒に戦えたことも嬉しく思います。以前と比べれば確実に一歩前進したと思います」と手応えを掴んでいる様子だが、「まだまだ改善すべきことは多いので、正しい方向に進み続けるために、これからも努力し続けます」と更なる飛躍を目指す姿勢は変わらない。

 このプログラムでインストラクターを務め、かつてはTGRのドライバーであったユホ・ハンニネン氏も「タカは急速に成長しています。これまでのラリーでも安定したタイムを記録してきましたが、今回はさらに大きく前進したと思います。今年の開幕戦からの好成績も自信につながり、スピードと安定性の両方が底上げされていきました。今回、表彰台争いに加わり、総合4位でフィニッシュしたことで、彼が前途有望であることを改めて確信しました」と高い評価をしている。今後もWRCで活躍する日本人ドライバーとして、勝田貴元選手の走りは要注目となるであろう。

前戦クロアチアでは「非常に痛手だった」と語った最終SS最後のコーナーでのミスで2位となったエバンス/マーティン組だが、今季初優勝でリベンジを果たした。
今季のグラベルラリー初戦となったポルトガルは、今季からコントロールタイヤを任されたピレリのグラベル用タイヤの実戦デビューにもなった。
前戦で空力パッケージをアップデートしたヤリスWRCはパワーと信頼性を向上させた新エンジンを投入。オジェ/イングラシア組が砂利掻きを強いられた5位から3位に上がった原動力にもなったであろう。
同日に開催された全日本ラリー選手権第5戦ラリー丹後では、父の勝田範彦選手が総合2位を獲得。極東の日本とヨーロッパ西端のポルトガルで、勝田親子の活躍が輝いた。

フォト/TOYOTA GAZOO Racing レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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