インタープロトシリーズが開幕!エキスパートクラスは今橋彩佳選手がデビュー2戦目で初優勝!!
2021年6月21日
6月5~6日、富士スピードウェイにて「インタープロトシリーズ」開幕戦となる第1戦と第2戦が開催された。9シーズン目に突入し、レクサスIS F CCS-Rクラス(CCS-Rクラス)の4台に、トヨタGRスープラGT4によるSUPRAクラスの3台を加え、19台のエントリーとなった。第1戦と第2戦が続けて行われるIPSプロフェッショナルクラス(プロクラス)では、ウェットからドライに変わる難しいコンディションの下、2戦3クラス全てのウィナーが異なるレースとなった。
2021インタープロトシリーズ第1大会
2021富士チャンピオンレースシリーズ第2戦
開催日:2021年6月5日~6日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:富士スピードウェイ(株)、FISCO-C、MSCC
ジェントルマンドライバーたちが競うIPSジェントルマンクラス、予選ベストタイムで決まる第1戦の総合ポールポジション(PP)を獲得したのは「自分のタイムは常に無線で教えてもらっていたんですが、まわりのことは気にせずに、とにかく自分が出せるベストを尽くすことに集中しました」と語るエキスパートクラス(Eクラス)の山口達雄選手。
山口選手と0.168秒差でEクラスの永井秀貴選手が続き、ジェントルマンクラス(Gクラス)のトップは山﨑裕介選手が、2番手の八木常治選手に2秒以上の差をつけて獲得した。SUPRAクラスのトップは賞典外の堤優威選手が総合でも3番手につけるタイムで獲得、そしてCCS-Rクラスは卜部治久選手がトップにつけた。
第2戦のスターティンググリッドは、予選でのセカンドベストタイムで争われた。総合PPはやはり山口選手が獲得、2番手にはEクラスの寺川和紘選手がつけ、3番手には長井選手が続いた。Gクラス、SUPRAクラス、CCS-Rクラスのトップも第1戦と同じ顔ぶれとなった。
6月5日、12周で行われた第1戦の決勝レースは、永井選手と寺川和紘選手が激しく2番手を争う間に、好スタートを切っていた山口選手はオープニングラップだけで1秒半の差を築き、その勢いのままフィニッシュまで駆け抜けた。「スタート直後の1コーナーが下手くそなので、そこだけ気をつけて、コカコーラコーナー出たところで、もう離れたので、そこからは落ち着いて95%で走るような感じでした。クルマが決まっていましたから」と山口選手は勝利を振り返った。
Gクラスは「予選が良くなかったので、決勝でしっかり取り戻そうと、しっかりリズムを刻んで走りました」と語る末長一範選手が4番手スタートから優勝を飾った。
車両ごとにグリッドが分けられ、後方からのスタートだったにも関わらず、堤選手が総合2番手にまで上がったSUPRAクラスはHIRO HAYASHI選手が優勝、「IPSの方もマナー良く、上手い方ばかりできれいに譲ってくれたので、楽しくレースができました」と語り、総合でも6位と健闘した。
そしてCCS-Rクラスは卜部選手が2位のYoshikazu Sugaya選手以下を1周遅れにする圧巻の勝利。「長くやってきて、今回初めて今までやったことのないセットを試して、良かったのでエンジニアさんがすごく喜んでいます」とチームで掴んだ圧勝劇を語った。
翌6日に行われた第2戦の決勝レースでは、前戦に続きPPからスタートした山口選手がホールショットを決めるも、2周目の1コーナーでスピンを喫して7番手まで後退。代わってトップに立った寺川選手もまた、ファイナルラップの1コーナーでスピンしてしまう。これでEクラス大蔵峰樹選手がトップに立つも、ヘアピンでEクラス6番手スタートの今橋彩佳選手が逆転し、0.209秒差で逃げ切った。
「昨日のレースはちょっと守りに入ったので、今日は絶対に行こうと思って、ヘアピンで。最終ラップ、インから行って良かった。最高です!」と今橋選手。大蔵選手はその後、永井選手にもかわされて無念の3位に、そして山口選手と寺川選手が続いてフィニッシュした。
Gクラスは第1戦でミッショントラブルを抱えて順位を落とした山﨑選手が、優勝でリベンジを果たした。「ずっと無線で『冷静に走れ、冷静に走れ』って言ってもらえて、それで最後までしっかり走りきれました」とリベンジ達成のカギを語った。
SUPRAクラスはHAYASHI選手が2連勝。「昨日、いくつか見つかった課題をクリアできたし、セッティングも変えたんですけど、ベストラップも1秒ぐらい短縮できたので良かったです」と満足そう。CCS-Rクラスも卜部選手が連勝を飾り、「今日は同じクラスの人と、触れ合う時間を作りました」と余裕の表情で語っていた。
CCS-Rクラスに参戦した女性ドライバー、木村真弓選手はこの週末がレースデビュー戦だった。自動車ディーラーのスタッフとして勤務している彼女は、トヨタ・アクアでのラリー経験をかわれて、社内でCCS-Rのドライバーに抜擢されたそうだ。
3月からトヨタ86でサーキット走行の練習を積んだ木村選手だが、CCS-R初走行が予定されていた4日の練習走行は雨天で走ることが叶わず、予選はぶっつけ本番だったとのこと。「86での練習は単独走行だったので、ラリーも含めて他のドライバーと一緒に走るのは初めてで。チームが懸命に自分に合わせてつくってくれたクルマを無事に帰すことでいっぱいいっぱいでした」と語るも、2戦続けて3位表彰台を獲得した。
プロクラスでは、5日の予選で山下健太選手が福住仁嶺選手に0.545秒の差をつけて、第1戦のPPを獲得。「このタイム差は自分でもびっくりしました。決勝レースはいつも混戦になって、あの中で競り勝たなければ行かないんですが、このタイム差があれば、きっと逃げられると思います」と語っていた。
しかし6日の決勝は通り雨に見舞われて、路面があいにくのウェットコンディション。次第に乾いていくのは明らかながら、第1戦でドライタイヤを履いたのは1台のみ。第1戦から続けて走る第2戦を重視し、途中でタイヤを交換するドライバーが多くを占める中、山下選手がウェットタイヤのまま、ポール・トゥ・フィニッシュ。
やはりウェットタイヤのまま走り続けた坪井翔選手、ロニー・クインタレッリ選手、そして藤波清斗選手を従えた。一方、全車ドライタイヤでスタートしたSUPRAクラスとCCS-Rクラスは、片岡龍也選手と阪口良平選手が、それぞれ優勝を飾っている。
さて、問題は第2戦だ。路面はもはやウェットタイヤでは対応しきれず、交換を要する状態になっていたが、第1戦の終了後はピットに戻れず、ましてグリッド上での交換も許されず。そこで山下選手、そして5位だった中山雄一選手が下した判断は、あえてピットスタートにしてタイヤ交換をするという大胆な作戦に出た。坪井選手とクインタレッリ選手、藤波選手は無交換で第2戦に臨むこととなった。
第1戦の5周目にドライタイヤに交換し、7位でゴールしていた福住選手がオープニングラップのうちにトップに浮上し、無交換組は坪井選手とクインタレッリ選手が順位を落としていく中、藤波選手は2周目でピットイン。
一方、ピットスタートを選んだ山下選手らにとって大誤算だったのは、グリッドはクラスごと分けられ、間隔が空けられていたこと。全車1コーナーをクリアした時、上位陣は遥か彼方。1周だけで44秒もの差をつけられては、もはや挽回不可能としか言いようがなかった。
そんな状況を知る由もなく、福住選手はひとり逃げ続けて優勝、2位の関口雄飛選手も単独走行に。佐々木大樹選手と野尻智紀選手が激しい3番手争いを繰り広げたが、ここは野尻選手に軍配があがった。
「どっちに賭けるか、ってレースになると思っていて、実際に第1レース始まる前、乾くの意外に早いだろうと思ったので、頑張ってダメだったらピットに入って、第2レースに賭けるという作戦にしました。第1レースは落としたけれども、少なからずポイントを獲れたので、シリーズに向けて勝負できる第一歩になったと思います」と振り返った福住選手。
一方、第2戦は8位に甘んじた山下選手は、「第1戦でトップ走っていたからには、ピットに入るわけにはいかなかったので、ちゃんとゴールしてからピットで替えたんです。でも、SUPRAとCCS-Rがあるから、ずいぶん後ろになっちゃって。あれじゃ無理ですよね、ルール変えて欲しい。でも、第1レースは思いどおりになりましたし、悔いはないです」ときっぱり言い切ったものの、その後に第2戦の方が賞金が多いと改めて聞かされ、表情をこわばらせてもいた。
SUPRAクラスでは平中克幸選手が、CCS-Rクラスでは松井孝允選手が優勝と、終わってみれば2レース、3クラスすべて異なるウィナーが誕生するという、プロクラスでは珍しい結果となった。
フォト/石原 康、小竹 充 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部