筑波連戦に異変あり!? 波乱が吹き荒れたD1グランプリ第3戦&第4戦!

レポート ドリフト

2021年7月2日

6月26~27日に2日間連続で2戦を開催するD1グランプリの第3戦と第4戦が筑波サーキットコース2000で行われた。

2021 D1グランプリシリーズ第3戦&第4戦 2021 TSUKUBA DRIFT
開催日:2021年6月26~27日
開催地:筑波サーキットコース2000(茨城県つくば市)
主催:株式会社サンプロス

 参加台数28台が登録されていたD1グランプリ筑波ラウンドだが、うち2台が前日練習および当日朝の練習走行でトラブルを起こしてしまい、事前リタイアという波乱の幕開けとなった。

 審査区間は年初に行われた2020年シリーズ最終戦の時よりもスタートラインを50m以上前進させ、またコースアウト縁石上にはスポンジバリアが置かれて、コースアウトを厳しく審査する方針となった。このスポンジバリアは視覚的にも圧迫感があり、苦戦するドライバーも多かったようだ。

 しかし、苦戦は選手だけではなかった。今回は運営側にも大きな問題が発生していた。D1グランプリの最大の特徴であるD1オリジナル・スコアリング・システム(DOSS)が、予選の途中から電波受信エラーを頻出。得点が計測できない状態で戻ってくる車両が続出したのだ。

 その原因は不明で、またこの対策に時間がかかり、結局は事態が解決せずにDOSSは使わず、2012年までの方式「審判員による審査」に変更された。4組の予選のうち最初のA組はDOSS計測ができていたのでそのまま進行し、途中で不調となったB組は最初からやり直し、以降はすべて審判員審査の方式が採られた。

ピットロードとの位置関係で比較すると、スタート地点は昨シーズンの最終戦より前進している。加速距離が短いため、最終コーナーを抜けたあたりで5速に入るようなギア比にセットアップされている車両がほとんどだった。
最終コーナー出口から1コーナーまでのストレートが前半の審査区間。スポンジバリアを縫いながらコンクリートウォールに寄せる迫力は抜群。振りの回数から「3発」と呼ばれ、1コーナー到達時の最高速度は150km/hオーバーだ。
S字コーナーから第1ヘアピンまでが審査区間の後半となり、コースに沿って引かれた白線の内側までが有効、コースアウトは減点。また中央は指定アウトゾーンで、これより内側を通過するとその度合いに応じた減点となる。
DOSSの不調により昔ながらの審判員審査となった。審判員長の神本寿氏(写真奥)と、ゲストに招待されていたレーシングドライバーの飯田章氏(D1ジャッジライセンス所有)が担当。コントロールタワー2階にある管制室のモニターをフルに使っての審査は、長い審査区間でも的確に判断できるので好都合だと言える。

 予選を兼ねる単走では番狂わせが起こる。GRスープラの川畑真人選手(Team TOYO TIRES DRIFT)、VR38改シルビアの植尾勝浩選手(VALINO)、そして去年の筑波を制してシリーズチャンピオンに輝いた小橋正典選手(LINGLONG TIRE DRIFT Team ORANGE)らが予選落ちしたことだろう。

 単走優勝は、昨年の筑波ラウンド2連戦で優勝&準優勝を獲得した中村直樹選手(MUGEN PLUS team ALIVE VALINO)。シルビアに搭載された2JZ-GTE改3.1Lは絶好調で、レブリミッターとアンチラグの炸裂音のコンビネーションはD1マシンの中でも独特で、筑波サーキット全体に響きわたる迫力だった。

単走優勝は、昨年の第7戦筑波ラウンドで予選1位、総合優勝を果たした中村直樹選手。エンジン仕様は当時と同じ2JZ改3.1Lで、3.4L時代に比べてトラブルなしの絶好調ぶりを発揮。
続く追走トーナメントでは小橋正典選手と対決し、リアタイヤがビード落ちしてフィニッシュまで辿り着けず敗れてしまった中村選手。スタート直後の接触でホイールにヒビが入り、スローパンクしたとのことだ。

 単走優勝をした中村選手は、総合でも上位に食い込むことは必至と思われていたが、追走トーナメント1回戦で小橋選手と対決して敗退してしまう。

 健闘が目立ったのはVR35改を搭載したインフィニティQ60の蕎麦切広大選手(TEAM SHIBATA SAILUN TIRE)。今年からD1デビューの24歳が、自身最高の準決勝に進出。惜しくも敗れたが第4位となり、今後の活躍が期待できる。

 そしてDOSS不調に続くもうひとつの波乱が発生した。DOSS問題の対処に時間がかかりすぎ、競技終了予定時刻の17時までに決勝戦が終わる見込みが立たなくなったのだ。準決勝が終わると日没サスペンデットの宣言が出され、この時点で最終順位が確定。決勝進出の2名は単走の順位の上位が、優勝ということに決定した。なお、獲得ポントは同一とされた。

 追走優勝した内海彰乃選手(TEAM SAILUN TIRE)はD1グランプリ創世記から出場している名物ドライバーで、優勝は2018年の最終戦お台場ラウンド以来2回目。惜しくも戦わずして2位となった松井有紀夫選手(Team RE雨宮 K&N)は2020年に4ローターエンジンを搭載してからの最上位獲得となった。

追走優勝を飾った内海彰乃選手は関西を代表するエキスパートドリフターで、D1グランプリではマシン製作をこなすプライベーターでもある。
内海選手の2JZ改3.4Lを搭載するS15シルビアは、ほとんど熟成の域に達しているだろう。来季はマシンをGRスープラに変更するという。
第3戦の優勝は内海選手、2位は松井有紀夫選手、3位は横井昌志選手、4位は蕎麦切広大選手、5位は末永直登選手、6位は高橋和己選手、7位は田中省己選手、8位は小橋選手、9位は中村選手、10位は末永正雄選手。

 日曜に行われた第4戦も依然としてDOSSエラー問題が解決せず、引き続き審判員審査が続行された。この日は台風5号が関東に迫る中で天候が心配されたが、競技終了まで雨の影響はなく、路面は終始ドライコンディション。コースレイアウトは前日と同じく、参加台数は28台。

 予選得点は前日の第3戦より全体的にレベルアップし、前日2位の松井選手が圧倒的な高得点を叩き出して単走優勝を勝ち取った。

RE雨宮がつくりあげた至高の3ローター時代には何度か単走優勝している松井選手。4ローターに変更してからパワー特性の違いでやや苦戦していただけに、この単走優勝には喜びを爆発させた。
松井選手は強大なパワーを味方にしてついに単走優勝を遂げた。RX-7はハイスピードコースとの相性も良いようで、区間速度は他選手を圧倒していた。

 そして追走トーナメント。今大会は屈指のハイスピードコースゆえに追走2台の接触が多かった印象だったが、波乱とも言える接触がベスト8で起こった。

 高橋和己選手(TMS RACING TEAM SAILUN TIRE)と末永正雄選手(NANKANG TIRE DRIFT TEAM D-MAX)の対戦で末永正雄選手が高橋選手に追突し、高橋選手が修復不能となったため、末永選手にペナルティが科せられて失格。高橋選手は次に出走できないため、準決勝の対戦相手の小橋選手は不戦勝で決勝に進出することに。

 しかし、このとき高橋選手のチームはベスト4の対戦に備えて懸命に修復作業を続けており、ここで起きる問題は「直るのならそもそも末永選手のペナルティによる失格はなく、入れ替えた2本目に間に合わなければ逆に高橋のリタイア」ということ。

「直らないからこそのベスト8不戦勝であり、ベスト4に進出してはならない」というのが規則となっている。高橋選手の陣営はしぶしぶ納得したが、接触による非のバランスと、ダメージや修復時間などは今後のD1グランプリを考えると再考する必要がありそうだった。

 さらに決勝戦でも接触による波乱が起きた。横井昌志選手(NANKANG TIRE DRIFT TEAM D-MAX)が後追いで先行の小橋選手に追突してしまい、小橋選手が走行不能に陥ったのだ。ここでは横井選手が非を認めて2本目をキャンセル。結果、小橋選手の優勝で幕を閉じた。

 連戦の筑波はDOSSの不調、接触による不戦敗など、エントラントには納得しづらい問題が発生し、今後の運営について熟考しなくてはならない問題が浮き彫りとなったラウンドだったと言えよう。

小橋選手は昨年の第8戦では予選1位、総合優勝を遂げ、筑波は得意と思われたが、前日の予選は不通過。そこからの巻き返しと、全域にわたるマシンの速さ(トラクションの高さ)は圧倒的だった。
小橋選手が勝因として挙げたのはサスペンションの改良で、テインと共同開発しているGセンサーを使った走行中の可変減衰力調整のテストが成功しつつあるとのこと。
第4戦の優勝は小橋選手、2位は横井選手、3位は高橋選手、4位は田中選手、5位は松井選手、6位は中村選手、7位は川畑真人選手、8位は末永正雄選手、9位は蕎麦切選手、10位は畑中真吾選手。

フォト/SKILLD川﨑隆介 レポート/SKILLD川﨑隆介、JAFスポーツ編集部

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