九州ラリー地区戦シリーズ第2戦は、佐賀のターマックを舞台に激戦が展開!

レポート ラリー

2021年7月8日

JAF九州ラリー選手権は6月19~20日に3か月ぶりに再開され、国の特別史跡である佐賀の吉野ヶ里遺跡を持つ同歴史公園を拠点として開催された。

2021年JAF九州ラリー選手権 第4戦
2021年JMRC九州ラリーチャンピオンシリーズ 第4戦
TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge joint cup 九州シリーズ第4戦
TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge cup in 吉野ヶ里
第33回FMSCマウンテンラリー2021

開催日: 2021年6月19~20日
開催場所: 佐賀
主催: FMSC

 今年のJAF九州ラリー選手権は、全7戦が予定されているが、4月の第2戦と5月の第3戦は、九州地区でも福岡県を中心に新型コロナウイルス感染症の拡大の動きが見られたため、開催延期を決定。今回の第4戦が、3か月のインターバルを置いたシリーズ2戦目として開催される運びになった。

 福岡モータースポーツクラブ(FMSC)が主催するFMSCマウンテンラリーは今年で33回目を数えるが、ラリーの開催は佐賀県の神埼市、吉野ヶ里町をエリアとする形が、近年はすっかり定着している。ヘッドクォーター、サービスは広大な吉野ヶ里歴史公園の一角にある駐車場に設けられている。今回のラリーは同公園からも程近い、福岡県との県境をなす脊振山系の山岳路が舞台となった。

 SSはターマックの林道が2本で、4.61kmの「Thousand Cherry」は、狭くタイトなコーナーが続く林間のステージ。もう1本の「Sazanka Reverse」4.60kmは、見通しの効くワインディングが続き、アベレージスピードもThousand Cherryより上がるステージで、特に後半は速度の乗るダウンヒルが続く、チャレンジングなコースだ。今回の地区戦は2セクション制で、この2つのステージを、それぞれ4本ずつ走る。計8本のSSの総距離は36.84kmと、走り応えも十分だ。

国の特別史跡である吉野ヶ里遺跡のある、広大な吉野ヶ里歴史公園内の駐車場にHQならびにサービス会場が置かれた。
梅雨時の開催とあって天候が懸念されたが、レッキが行われた土曜から晴天が続き、ドライコンディションが保たれたまま、最後まで競技は続けられた。

 RH1クラスは7台の参加があったが、昨年、圧倒的な成績でチャンピオンを獲得した藤本大典選手は開幕戦に続いて今回も欠場。今年は活動休止のようで、このクラスの“顔”とも言えるトクオワークスカラーのマシンが姿を見せないのは寂しい限りだが、「このままで終わらせるつもりはありません」とは同チームの徳尾慶太郎監督。お馴染みのカラーリングが中盤以降はシリーズを賑わせてくれそうだ。またこのクラスのトップドライバーとして知られる城戸新一郎選手も会場に姿を見せ、「GRヤリスを準備中です」とコメント。その動向も気になるところだ。

 しかし、こうした常連組の姿こそなかったものの、今回のRH1クラスは、なかなかの顔触れが集まった。まず全日本ラリー選手権にフィットで参戦中の小川剛選手がGRBインプレッサでエントリー。そして、1980~1990年代の全日本ラリー選手権で九州を代表するトップドライバーとして活躍した山口修選手が、当時、コンビを組んでいた一人である大ベテランの小宮新一選手をコ・ドライバーに招いて、復活してきた。このクラスにはCC4Aミラージュで全日本ラリー通算3勝を挙げた廣川慎一選手も一昨年から参戦しており、全日本優勝経験者が3人も集うという激戦区となった。

 注目のSS1では、昨年の終盤戦からシリーズに復帰した阪本寧/境健一組が、2番手に並んだ久保慶史郎/美野友紀組と、山口/小宮組に3秒の大差をつけてまず飛び出す。しかしSS1の再走となるSS3では開幕戦を制した津野裕宣/大庭正璽組が、この日最初となるベストを奪取。ペースを掴んだ津野組は続くSS4、SS5も制し、阪本組を1秒差に従えてトップに躍り出た。

 しかしSS6では阪本組がベストを奪って0.1秒差まで迫るとSS7も連取して逆転。最終SSを前に1.3秒のリードを築いた。その最終のSS8はこの日、4度目の走行となるSazanka Reverse。ここで津野組は自身がマークしていたステージ最速タイムを0.4秒削り取るが、阪本組は自身のベストを更新できず、3番手。土壇場で逆転した津野組が開幕2連勝を飾った。注目の全日本組は小川選手が4位でフィニッシュしたが、廣川選手はリタイヤ。山口選手はSS7で3番手に浮上するなど、驚くべきスピードを見せたが、最終のSS8でマシントラブルにより、リタイヤ。惜しくも表彰台を逃した。

RH1クラスは最後までバトルが白熱したが、最終SSを制した津野裕宣/大庭正璽組が、逆転を果たして開幕2連勝を飾った。
RH1クラス優勝の津野/大庭組。「元々はCP9Aのランサーに乗っていたんですが、クラッシュしてしまって、この2~3年はコ・ドライバーをやってました。今年からドライバーとして復活しましたが、エボXでドライの道を走るのは今日が初めてだったので、1周目は様子見ほど落としてはいませんが、タイヤもドライで走るのは初めてということもあって、クルマの感触を掴みながら走って、2周目からプッシュできた感じでした。ドライバーもクルマも、Thousand Cherryの方が得意だったので、そのSS7でやられて、もうダメかなと思いましたけど、最後のSazanka Reverseで勝てたのは、運転手じゃなくてクルマが頑張ってくれたんだと思います(笑)。もう言い訳ができないクルマなので、もう少し速く走らせるようにして、今年はチャンピオンを狙っていきたいと思います」(津野選手)。
完全復活を印象付ける走りを見せた阪本寧/境健一組だったが、最終SSで逆転を許し、2番手に甘んじた。
RH1クラス表彰の各クルー。

 RH2クラスは7台が参加した。本命は、開幕戦でクラス優勝とともに総合でもベストタイムをさらうという快挙を達成した窪啓嗣/藤口裕介組の86だ。そのスピードは今回も健在で、4本のSSを終えたセクション1の時点で、早くも2番手のAKIRA/竹原静香組に22.6秒のマージンを作る。ラリー後半もペースを緩めなかった窪組は8本のSSすべてでベストタイムをマーク。SS5でAKIRA組が大きく遅れたこともあって、最終的には1分以上の大差をつけてクラス2連勝を飾った。しかし、総合ベストは今回はRH1クラスの津野組に譲って、3位でフィニッシュとなった。

RH2クラスは開幕戦を制した九州期待の若手、窪啓嗣/藤口裕介組が、今回も全SSベストと、ライバルに付け入る隙を与えず、圧勝した。
RH2クラスで快勝の窪/藤口組。ベスト連発の窪選手は、「今日はSS1から様子を見つつも、飛ばせたと思います。タイヤだけ中古だったので心配でしたが、思ったより喰ってくれたので、安心して踏めました。ただ、さすがに午後は特に下りがきつくなったので、途中からタイヤを温存する運転に変えて何とか持たせました」と振り返った。「今年から86で出ていますが、改めて、よく曲がるクルマだな、と実感しましたね。動きも安定していて、アクセルを踏んで唐突にリアがブレイクすることもないので、今日もしっかり踏んで行けました。師匠の(牟田)周平さんがセットしてくれたクルマも凄く乗りやすいので、このままの仕様で行きたいと思います。今年はともかくシーズンで勝つということを第1目標にしているので、まず地区戦でしっかり結果を出して、次のステージに繋げていきたいと思います」。
RH2クラスの2位には昨年の全日本チャンピオンの竹原静香選手をコ・ドライバーに迎えたAKIRA選手が入賞した。
RH2クラス表彰の各クルー。

 一方、RH3クラスはRH1クラスに劣らぬ接戦となった。まずラリーをリードしたのは今季初参戦となったSADAKEN/久木野理恵組。SS1、SS2と連取し、全日本でも、その速さが注目を集めているヤリスのスピードを見せつける。しかしSADAKEN組は続くSS3でまさかのリタイヤ。これでラリーは開幕戦の覇者である豊田智孝/松葉謙介組と、その開幕戦で終盤まで首位を独走していながらリタイヤに終わった江藤享平/大西慧組によるマッチレースとなる。

 両者は互いにベストを奪い合うバトルを展開するが、江藤組はSS5での遅れが響いて豊田組が5.6秒のリードで最終SSへ。ここで江藤組は豊田組を大きく引き離すこの日4度目のベストでラリーを締め括ったが、結果は何と0.3秒届かず。ヴィッツ対決を制した豊田組が開幕2連勝と、最高の滑り出しを見せた。

0.3秒差という大接戦となったRH3クラスは、ラリーストを多く輩出しているRC大分に所属する豊田智孝/松葉謙介組が逃げ切った。
開幕2連勝達成の豊田/松葉組だが、豊田選手は、「前回もそうでしたけど、勝った気がしない」と反省しきりだった。「楽しいラリーでしたが、ライバルが失敗した所だけベストが獲れたようなものなので、走り勝った気はしませんね。僕は、雨で路面がグチャグチャになって、土砂降りで前が見えないような時にしか勝てないので(笑)、ドライになるとダメなんですよ。Sazanka Reverseの高速の下りは、もう目が追い付かなかった。やっぱり若い子は度胸があるなぁ、と思いました」と苦笑しながらラリーを振り返っていた。
終盤、怒涛の追い上げを見せた江藤享平/大西慧組だが、僅かに届かなかった。
RH3クラス表彰の各クルー。

 RH5クラスは、AT及びCVT限定の車両を対象としたクラス。ジワリジワリと人気を集めており、今回は7台が参加した。ヴィッツ2台のほか、スイフト、デミオ、アルト、フィット、ミラージュアスティと参加車両もバラエティに富む。昨年はRX-8を駆った全日本ドライバーの中西昌人選手が5戦全勝とぶっちぎりの速さを見せたが、今年はマシンをデミオにスイッチ。開幕戦は瀬戸駿一選手のRX-8に敗れて3位と、連覇に赤信号が灯った。

 瀬戸RX-8が不参加となった今回は、前戦で瀬戸組に食らいついて3本のSSベストを獲ったベテランの白𡈽辰美/國貞友博組スイフトが、SS1からベストを連取。中西組はSS5のThousand Cherryで一矢報いるも、Sazanka Reverseでは、ことごとく白𡈽組に引き離されて接近戦には持ち込めず、7本のSSでベストを奪った白𡈽組が快勝。今季初優勝を飾った。

RH5クラスは7本のSSでベストを奪った白𡈽辰美/國貞友博組が快勝した。
優勝の白𡈽/國貞組。「勝因はもちろん、中西さんがクルマを変えてくれたことです(笑)」と笑顔がこぼれた白𡈽選手。「この時期、晴れるのは珍しいので、今日は雨のセッティングをしてきたんですけど、あまりに路面が乾いていたので、途中からドライのセットに変えて走りました。負けたSSは陽が当たってる所と陰になっている所のコントラストが凄くて道が見えなかったんです。もう歳ですね(笑)。百戦錬磨の中西さんがデミオでどんなタイムを出すのか興味津々なので、これからもいいバトルをしていきたいと思います。スイフトでもう3年目になりますが、まだタイトルは獲れていないので、今年は狙いたいですね」。
今年はデミオに乗り換えてV2を狙う中西昌人/稲垣歩組はベスト1本と苦戦を強いられ、2位に留まった。
RH5クラス表彰の各クルー。
チャレンジ部門のCH1クラスは廣田敦士/小野耕平組が優勝した。

TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge cup in 吉野ヶ里

GRヤリス2台が激突したE-4クラスは
佐々木康行組が、逆転勝利を飾る

 九州地区戦に併催されるTOYOTA GAZOO Racing Rally challenge joint cup九州シリーズも、今季2戦目となる一戦を迎え、13台のエントラントが8クラスに分かれてラリーに臨んだ。中上級者を対象としたE-1、E-2、E-3、E-4の4クラスは6本のSSを走行し、初中級者対象のC-1、C-2、C-3、C-4の4クラスは4本のSSで勝敗を競った。

 ともにGRヤリスを持ち込んだ2台のバトルが白熱したのはE-1クラス。TGRラリーチャレンジの経験が長い佐々木康行選手と中嶌杏里選手のコンビに真っ向勝負を挑んだのは、奴田原文雄選手をコ・ドライバーに迎えた西村公秀選手だった。SS3まではすべて佐々木組がベストを獲るも、いずれもコンマ差の戦いが続いたこともあって、佐々木組のこの時点でのリードは僅か1.4秒。そしてSS4ではスパートを駆けた西村組が7.6秒差で佐々木組を下して首位に立った。

 しかしSS3の再走となるSS5では、今度は佐々木組がSS3の自らのタイムを20秒以上も縮めるスーパーベストを奪って西村組を逆転。最終のSS6でも同様に、前走のSS4からまたしても20秒近くも詰める激走を見せてベストをマーク。ラストの2本でGRヤリスを手なづけてペースアップに成功した佐々木組が、激戦を制して九州シリーズ今季初の1勝を獲得した。

E-4クラスでは今回がGRヤリス初ドライブとなった佐々木康行/中嶌杏里組が優勝した。
E-4クラス優勝の佐々木/中嶌組。「実戦に出るのが1年半ぶりで、クルマも新しくなったので、今回はシェイクダウンも兼ねての参戦でした。最初は加減が分からず、これくらいでいいだろう、と思って走っていたら、SS4で離されてしまったので、最後の2本で気合いを入れたら、タイムが出てくれた感じです。4WDでラリーに出るのは初めてですけど、思っていたほどはブレーキで気を遣わずに突っ込んでいけるクルマなので、まだまだ速くなれると思います」と佐々木選手。
新旧ヴィッツ対決となったE-3クラスは関東から遠征してきた細谷裕一/阿部琢哉組が優勝した。
E-2クラスは岡田登/杉原申也組が全SSベストの快走を見せて優勝した。
E-1クラスは長野から遠征の白洲剛/東山徹大組が優勝。
C-4クラスは愛知の木村友香/横居美空組が優勝を飾った。
永田純一/粕川凌組がC-3クラスを制した。
ともにNCP131ヴィッツに乗る2台の対決となったC-2クラスでは、貝原聖也/西﨑佳代子組が優勝した。
C-1クラスはアクアで参戦した井野義一/小林昭夫組が優勝した。

フォト&レポート/JAFスポーツ編集部

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