ツインリンクもてぎで人気の耐久レース“Joy耐”の、ナンバー付登録車両による新レースが初開催!
2021年7月9日

ツインリンクもてぎを舞台とする参加型耐久レース“Joy耐”。一昨年以来、21回目の開催となった2021年は、より手軽に参加できる自動車登録番号標付車両(ナンバー付登録車両)によるレース『もてぎJoy耐チャレンジ』が新設された。13台のトヨタ・ヴィッツとマツダ・ロードスターが出走し、180分先の初代チャンピオン獲得を目指して、しのぎを削った。
2021もてぎEnjoy耐久レース“Joy耐”
2021もてぎJoy耐チャレンジ
開催日:2021年6月26日
開催地:ツインリンクもてぎ(栃木県茂木町)
主催:株式会社モビリティランド、M.O.S.C.
2001年の初開催以来、プロ、アマチュア問わず数多くのドライバーたちが参戦する「もてぎEnjoy耐久レース“Joy耐”」。誰でもレースの世界に入門しやすい耐久レースとして、ツインリンクもてぎを代表する人気イベントに成長している。
そんなJoy耐に、さらに参加しやすいようにと今年新設されたのが、ナンバー付登録車両で争われる『もてぎJoy耐チャレンジ』だ。本家Joy耐はN1・N2車両によって11クラスが7時間で争われるのに対し、Joy耐チャレンジはナンバー付登録車両で、各車両のワンメイクレースの規定を基準とした5クラスに分類。
時間も本家の半分以下、手ごろな180分(3時間)で争われ、本家の前哨戦も兼ねて土曜日に予選と決勝が開催される1dayイベントとしている。さらに参加台数を本家の最大90台よりもグッと絞り45台とすることで、コースにトラフィックができにくい環境を整えて、初心者でも安心して走れるように配慮するなど、より参加しやすいように工夫されている。
記念すべき初レースには、Netz Cupヴィッツレースで使用されていたNCP131型ヴィッツによるVitzクラスと、ロードスター・パーティーレースⅢ規定に準じるロードスタークラス、そしてAll Othersクラスという、前述の2クラスと86/BRZ、Lotusを加えた4クラス以外に属するナンバー付登録車両によるクラスの3クラスに、13台の精鋭たちが集まった。最も参加台数を集めたVitzクラスが7台、ロードスタークラスの4台、All Othersクラスの2台が、180分後の栄誉を賭けてレースに挑んだ。
まずは午前中に行われた公式予選。数々のカテゴリーで言われるように、ストップ&ゴーの抜きにくいツインリンクもてぎで勝利するには、予選での順位も重要だ。そんな予選はAドライバーのタイムで決勝のグリッドを確定していくかたちがとられた。
オーバーオールタイムでポールポジションを獲得したのは、富士チャンピオンレースシリーズのロードスターカップ仕様のND型ロードスターで参戦してきた、All Othersクラスの23号車・石垣博基選手。ロードスタークラスのトップはパーティーレースⅢにも参戦する16号車・上田純司選手。0.363秒差で20号車・OBARA KENICHI選手が続いた。Vitzクラスはロータスクラブでエントリーした24号車の並木重和選手が、2番手の157号車・佐藤純一選手を1秒以上離すトップタイムをマークした。


そして本家の予選が進む中、Joy耐チャレンジにエントリーするエントラントの準備は進み、午後の決勝の時間が迫ると、エントラントたちは30分かけて、車両をグリッドへと進めた。コース上では車両の最終チェックはもちろん、記念撮影などアットホームな風景も。まさに、みんなで楽しむ耐久レース!これこそ名を体で表すイベントだと感じる。
そんなエントラントたちで賑わうグリッドもスタートの14時が近づくにつれて、各車両にスタートドライバーたちが乗り込み、緊張感が張りつめてくる。Joy耐チャレンジではレギュレーション上最大3人のドライバーが登録可能で、2回以上のピットインが義務付けられている。
燃費の関係上、燃費走行をしたとしても1回は満タン給油を必要とするのも特徴だ。給油量に制限はないが、基本ノーマルタンク仕様の公道走行可能なナンバー付登録車両で争われるため、純正タンクの給油量がその車両の最大値。しかも、給油をした場合は10分間のピット滞在義務が発生する。
さらに、給油は安全面を考慮してサーキット指定のパドック内ガソリンスタンドで行わなければならないため、給油のピットタイミングがライバルたちと重なると、ガソリンスタンドで給油待ちの渋滞が発生してしまい、タイムロスにもなりかねない。ピットインと給油のタイミングが大きく勝敗を分けるのだ。


そしていよいよスタートの時。マーシャルカーに先導されてローリングスタートの隊列を組み、レースはスムーズなスタートを切った。ブルーシグナルとともに飛び出したのはPPの23号車を駆る石垣選手。車両規定の違いでエアロパーツを装着できることもあり、総合2番手の16号車、上田選手をどんどん引き離していく。
23号車の石垣/佐藤文昭/山本謙悟組は「燃費は事前に計算した通りに34ラップを消化して32リッターだったので、安心して走れました」と佐藤選手が語ったとおり、総合トップを一度も譲らない完璧なレースを展開し、ポール・トゥ・ウィンによる初代総合チャンピオンに輝いた。

16号車がクラストップでスタートしたロードスタークラスは、序盤から激しい三つ巴の展開。オープニングラップから3周は3台によるテール・トゥ・ノーズの超接近戦となった。3周目、最終ヴィクトリーコーナを慎重に立ち上がる16号車に対し、20号車のOBARA選手が速度を乗せたラインで立ち上がる。そして見事なブレーキングで16号車を差し切りクラストップに浮上した。
そんな2台のバトルを後方から伺っていたのが、128号車の野村純選手。野村選手も虎視眈々と16号車の隙を狙うが、隙をつかれてもきっちりインを閉める16号車の前にはなかなか出ることができない。その後、周回遅れが発生すると20号車と16号車の距離が徐々に開いていった。
スタートからしっかり燃料を使い切ってタイムを削りに行くロードスタークラスの各車。膠着状態は28周目まで続いたが、トップの20号車が先陣を切ってピットイン。これでトップに浮上した16号車は、ギリギリまで燃料を使い切る作戦のようだ。
ドライバーが代わった20号車は、和光博紀選手が2分34秒台のタイムで周回を重ねるが、16号車は2分33秒台で周回し、アンダーカットを狙う。そして16号車は37周目にピットイン。レースは間もなく半分の90分を迎えようとする頃だった。16号車に続くように、クラス2番手を走っていた128号車もピットに向かった。
そして、上田選手から井尻薫選手へと託された16号車は128号車をパスし、トップに浮上。スーパー耐久にも参戦している井尻選手はここから2分32秒台を連発、ぐいぐいと2番手以下を離して独走態勢に入っていった。
20号車は42周目にピットインし、和光選手から再度OBARA選手へ。これで規定ピットイン回数を消化し、ゴールまで一気に駆け抜ける作戦だ。一方、序盤でトップ3台に水をあけられてしまった84号車の西岡善知/SHIGA TAKUYA/平山直弥組だったが、中盤にきてクラス3番手争いに加わってくる。
西岡選手が早めの31周でピットインし、平山選手へ燃料満タンでバトンタッチ。平山選手がタイムを揃え、徐々に3番手を走る128号車を追い詰めていった。そして、128号車が2度目のピットインでドライバー交代を終わらせるタイミングで、84号車が3番手へポジションアップに成功し、さらに前を行く20号車を追いかける。
このままの順位でフィニッシュかと思われたロードスタークラスだが、最後にドラマチックな展開が待っていた。レースも残りわずか1分、2番手を快走していた20号車がガス欠となり、ダウンヒルストレートエンドに力なく車両を停めてしまったのだ。
これでロードスタークラスの順位が決まり、ロードスタークラスの初代チャンピオンは、最後の15分で井尻選手から上田選手に交代し、「井尻さんと練習走行を重ねる中できちんと燃費を計算して出してくれていたんですが、それが想定通りで驚きました」と上田選手も驚く、磐石のレース運びを見せた16号車。
2位には「最終ラップにガス欠症状が出てしまい、惰性でなんとかゴールできました」とSHIGA選手が厳しかったレース終盤を振り返った、84号車の西岡/SHIGA/平山組が入賞。
3位は128号車の畠山淳也/加賀誠/野村組。N-ONEオーナーズカップにも参戦している畠山選手は「終わってみて半分くらい燃料が余っていたので、次はここら辺を調整して再チャレンジしたいですね」とすでに2回目の挑戦に目を向けていた。

そして、Vitzクラスではもうひとつの熱戦が繰り広げられた。いきなり動いたのはクラス3番手スタートの628号車、堀内秀也/松木知/稲垣之浩組。スタートを務めた稲垣選手が「速いふたりにしっかり走ってもらって勝とうという作戦です!」とオープニングラップでいきなりピットロードへ。序盤早々にピットイン回数義務をひとつ消化する。
628号車とは対照的に「序盤はとにかく引き離して行こうと一生懸命走りました。僕はしっかりヴィッツに乗っていましたが、他の二人は雨のときに1回練習したくらいでしたから」とクラス2番手以下を突き放したのは、クラストップからスタートした24号車の大ベテラン、並木選手だ。2周目にはVitzクラスのファステストラップとなる2分35秒700をマーク。そして、早めの17周目にピットイン、鈴木泰貴選手に交代した。
ここでトップに躍り出たのは予選4番手から追い上げてきた、この日がレースデビュー戦という6号車の中村優樹選手。オープニングラップで前を行く157号車の佐藤純一選手をかわすと、2分40秒台を揃える燃費走行でトップを追走してきた。そんな6号車はピットインをぎりぎりまで粘る作戦に賭ける。
6号車は、100分を過ぎた38周目にピットイン。次を託された沖ノ井宣隆選手は、このピットインで3番手まで順位を落とすも、他車のピットインが繰り返される中で再びトップに浮上する。本当のトップが見えない中、Vitzクラスは計時上での激戦が続いた。
大きな動きが出たのは残り20分を過ぎた頃。トップを快走する6号車が、最終ドライバーの佐茂憲明選手に交代した時だった。ここで、すでに最終ドライバーの松木選手に交代を終えていた628号車がトップに浮上。そして6号車は佐茂選手が規定走路外走行で30秒間のペナルティストップを課せられてしまい、万事休す。
3番手を走る24号車の鈴木貴大選手には十分なマージンを稼いでいたために、6号車は2番手で復帰となり、そのままフィニッシュ。沖ノ井選手は「僕らの作戦で2位は十分な結果だと思います」と満足そうだった。一方、628号車は95分頃にピットインを済ませ、見えない相手を追いかけるレースを制した形だ。「ブレーキにバイブレーションが出てきたのが不安でした」という松木選手だったがフィニッシュラインを駆け抜けて、初代Vitzクラスチャンピオンを獲得した。





フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部