APG大会は若手が大活躍で新時代到来の予感。ベテランも表彰台獲得の大健闘を見せて対抗!
2021年7月14日
静岡県のハイスピードコース、オートパラダイス御殿場で全日本カート選手権OK部門の第3戦/第4戦が開催。第3戦では荒尾創大選手(TONYKART RACING TEAM JAPAN)が今季初優勝を果たし、第4戦では清水啓伸選手(Drago CORSE)が悲願の初優勝を遂げた。
2021年JAF全日本カート選手権OK部門 第3戦/第4戦
開催日:2021年7月10~11日
開催地:オートパラダイス御殿場(静岡県小山町)
主催:RTA、APG
開幕戦、鈴鹿大会から約1か月半のブランクを置いて行われた今季2度目の大会。オートパラダイス御殿場で全日本カート選手権の最高峰部門が開催されるのは、2020年に続き2回目となる。
オートパラダイス御殿場にはハイスピードコースとテクニカルコースの2種類のコースレイアウトがあり、この大会で使用されるのは全長1006mのハイスピードコースの方だ。2020年の同コースでの大会では体力面の厳しさに悲鳴を上げる選手が続出。今回も夏真っ盛りの一戦で、ハードなレースになることが予想された。
5月の鈴鹿大会では参加台数の多さから2台が予選落ちとなったのだが、今回の大会のエントリーはコースの最大出走台数ちょうどの34台で、予選落ちはなし。予選ヒートもグループ分けを行うことなく実施される。
7月に入ってCOVID-19は日本各地で感染者数の拡大が収まらず、その防止対策の一環として、この大会は無観客で開催されることとなった。
大会はOK部門通例の2DAY開催。7月10日にタイムトライアルと第3戦の予選が、11日に第3戦の決勝と第4戦の予選・決勝が行われる。サーキットは大会前日まで雨に見舞われたが、夜半に雨は止み、2日間の走行セッションは蒸し暑い曇り空の下で行われた。
ABの2グループに分かれて行われたタイムトライアルでは、ルーキーの佐野雄城選手(BirelART Access Racing)がトップタイムをマーク。昨年、ここでの大会で2連勝を飾った三村壮太郎選手(Croc Promotion)が2番手につけ、ふたつの予選ヒートのグリッド最前列に14歳の最年少ドライバーと30歳のベテランドライバーが並ぶこととなった。
3番手は2020ランキング3位の荒尾選手。ダンロップ勢では朝日ターボ選手(MASUDA RACING)が4番手で最上位に。予選グリッドの前2列にタイヤメーカー3社のユーザーが出そろった。3番手に相当するタイムを記録した高橋悠之選手(BirelART Access Racing)は走路外走行でベストタイム抹消のペナルティを受け、6番手となった。
続いて行われた第3戦の予選では、三村選手がエンジン始動に手間取り、最後尾からのスタートとなるハプニング。このヒートを制したのは高橋選手。スタート直後にトップを奪った朝日選手を3周でかわすと、一気に2番手以下を突き離し、第3戦決勝のポールを獲った。2番手ゴールは5番グリッドから浮上の佐々木大樹選手(TONYKART RACING TEAM JAPAN)だ。
3、4番手は荒尾選手と洞地遼大選手(K.SPEED WIN)。平安山良馬選手(TEAM EMATY)が21番グリッドから朝日選手の後ろ、6番手に上がってきた。三村選手は追い上げ届かず17番手。スタートで順位を下げた佐野選手は2番手争いの際にスピンしてリタイア、決勝は32番グリッドからのスタートとなった。
一夜明けて、第3戦の決勝。28周の戦いでは、ゴールに向かって刻々と戦況が変わっていった。まず、初動に優れるダンロップを履く朝日選手が2周目にトップへ。間もなくそれを抜き返して先頭に戻った高橋選手だが、レースが折り返し点を過ぎたところで立て続けに4台の先行を許すと、残り7周でチェーントラブルにより戦列を去った。また、トップグループの中にいた洞地選手と清水選手も、この時点でトラブルのためマシンを止めている。
後半戦の優勝争いは荒尾選手、平安山選手、佐々木選手の3台だ。19週目、悲願の初優勝に意欲を燃やす平安山選手がトップへ。すると、23周目に荒尾選手が再逆転。佐々木選手も平安山選手をかわしたことで、トップ荒尾選手の背後にはややギャップが開いた。荒尾選手はこの0.4秒ほどのリードを保ったまま最後まで走り切り、今季1勝目を遂げた。
平安山選手は佐々木選手を抜き返して2位となったが、「ペースは自分がいちばん良かった。勝てたはずのレースで勝てなくて悔しい」と落胆の表情だ。3位の佐々木選手に続いて、鈴木斗輝哉選手(K.SPEED WIN)と遠藤照剛選手(Rosa Drago CORSE)が4、5位に。三村選手が10台抜きで7位となった。
第4戦の予選では、またも佐野選手がローリング中にストップしてDNSに。佐野選手は第3戦決勝でもトラブルでリタイアしており、この大会でまだチェッカーを受けられていない。このヒートは三村選手が独走してポールを獲得した。その後方では4台が一丸となり、高橋選手、荒尾選手、清水選手、佐々木の順でチェッカーを受けた。
迎えたこの大会最後の戦い、第4戦決勝。28周のレースは三村選手の好発進で始まった。トップの座をキープしてスタートした三村選手は、7周目あたりから後続を引き離し始めると、背後のギャップをたちまち1秒以上に広げた。だが、三村選手はこのレースの主役となることはできなかった。
代わって主役に躍り出たのは、4番グリッドから発進した清水選手だ。セカンドグループの大集団を序盤で抜け出した清水選手は、チームの先輩でもある三村選手をひとり追い、そのリードを急速に削り取っていく。そしてレースが折り返し点を迎える頃には、三村選手を目の前に捕らえた。
ここで4周ほど三村選手の後ろに着いて抜きどころを探った清水選手は、19周目に自信のある8コーナーで三村選手のインを急襲。横並びの攻防を制して最終コーナーで先頭に躍り出ると、一気にリードを広げ、最後の10周を独走で駆け抜けた。OK部門2年目の16歳が、ついにつかんだ初優勝だ。
さらに14番グリッドから急浮上の鈴木選手も三村選手を捕らえ、2位の座をもぎ取った。これでブリヂストン勢の1-2フィニッシュだ。3位でチェッカーを受けた三村選手は、マシンを降りるとヨコハマのスタッフに「すみません、リアを使いすぎました」とひと言。それでもヨコハマに1年ぶりの表彰台をもたらした。4位もヨコハマ・ユーザーの山田杯利選手(PONOS HIROTEX)。こちらは10番グリッドからの6ポジションアップで、ファステストラップもマークした。
セカンドグリッド発進の高橋選手は、スタート直後に失速して中段に埋もれ、ゴールは9位。グリッド最後尾からスタートした佐野選手は、26ポジションアップの大躍進で8位フィニッシュ。BirelARTワークスの先輩と後輩は、大会の最後にようやく結果を残すことを許された。だがそれも、初日の輝きを思えば慰めにはなるまい。
主役の座が二転三転したAPG大会は、こうして幕を閉じた。第4戦までを終えてのポイントリーダーは、厳しい戦いを3位と6位でまとめて113点にポイントを伸ばした佐々木選手。そこに89点の荒尾選手と88点の鈴木選手が続いている。次なる戦いは2か月後、千葉県・茂原ツインサーキットが舞台だ。
フォト/JAPANKART レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部