第89回ル・マン24時間レース、7号車小林可夢偉選手が悲願のル・マン初勝利

レポート レース

2021年8月25日

8月21~22日にフランスのサルト・サーキットで開催されたル・マン24時間レースで、TOYOTA GAZOO Racingの7号車マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス組が悲願の初優勝を獲得した。2位の8号車と共に、2台のGR010ハイブリッドがワン・ツー・フィニッシュを成し遂げ、TOYOTA GAZOO Racingが伝統の大会を4連覇した。

2021年FIA世界耐久選手権(WEC)第4戦
第89回ル・マン24時間レース
89 Edition des 24 heures du Mans Race (24 Hours)

■開催日:2021年8月18~22日
■開催地:サルト・サーキット(フランス・ル・マン)

悪天候の中、ヘビーウェット路面でスタートした24時間レース。幕開けと同時に8号車は他車の追突によりスピンを喫する事態が発生。最後尾からの追い上げる展開となった。
最終スティントは、7号車は小林可夢偉選手、8号車は中嶋一貴選手が担当。2台がタイミングを合わせてラストピットを終え、ランデブー走行でチェッカーフラッグを受けた。
第89回大会を制したのはTOYOTA GAZOO Racingの7号車。2位は8号車でワン・ツーを達成。総合3位には2周遅れでアルピーヌ・エルフ・マトムートの36号車が入った。

 2021年のFIA世界耐久選手権(WEC)第4戦「第89回ル・マン24時間レース」が8月21~22日、フランスのサルト・サーキットで開催され、TOYOTA GAZOO Racingで7号車を駆るマイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス組が悲願の初優勝を獲得した。

 また、セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー組の8号車が2位入賞を果たし、2台のトヨタGR010ハイブリッドがワン・ツー・フィニッシュを達成。TOYOTA GAZOO Racingが伝統の24時間レースで4連覇を成し遂げた。

 2018年にTS050ハイブリッドで初優勝して以来、ル・マン24時間レースで3連覇を果たしているTOYOTA GAZOO Racingは、ハイパーカー規定が導入された2021年シーズンのWECでニューマシンであるトヨタGR010ハイブリッドを投入した。

 開幕戦「スパ-フランコルシャン6時間レース」(ベルギー)で8号車がデビューウインを獲得すると、第2戦「ポルティマオ8時間レース」(ポルトガル)でも8号車が連勝。7号車が2位につけてTOYOTA GAZOO Racingがワン・ツー・フィニッシュを達成していた。

 第3戦「モンツァ6時間レース」(イタリア)では7号車が今季初優勝を獲得。デビューイヤーのトヨタGR010ハイブリッドは、これまで安定して抜群のスピードを披露しており、ル・マン24時間レースでも、ウィーク初日から素晴らしい走りを見せていた。

 8月15日に行われたテストデー。8号車がトップタイムを叩き出すと、18日の公式練習では7号車が1回目、8号車が2回目の走行で一番時計をマーク。同日の予選でも7号車がトップタイムを計測し、19日に行われた4回目の公式練習でも8号車がトップタイムを刻んだ。

 スターディンググリッドを決するハイパーポールセッションでは7号車がトップタイムを叩き出してポールポジションを獲得。8号車も2番手タイムをマークして、2台のトヨタGR010ハイブリッドが決勝グリッドのフロントローに並ぶこととなった。

 21日は決勝日。現地16時にウェットコンディションで伝統の大会がスタートした。ところが、TOYOTA GAZOO Racingの8号車は、スクーデリア・キャメロン・グリッケンハウスの708号車に追突されたことにより、オープニングラップで最後尾まで後退してしまう。

 そのトラブルを回避した7号車は、そのまま首位をキープして後続とのリードを拡大。一方、猛追を見せていた8号車も、スタート時の雨が止んで路面がドライと変わった16周目には2番手に浮上し、TOYOTA GAZOO Racing勢が早くもワン・ツー体制を形成した。

 しかし、7号車は2度のパンクで予定より早いピットストップを強いられたほか、5時間後には8号車もパンクに見舞われてイレギュラーなピットインを強いられた。6時間後には激しい雨が降り始めたことから、LMP2クラスのマシンにアクシデントが発生してしまう。

 これによりセーフティカーが導入されたものの、TOYOTA GAZOO Racing陣営はインターミディエイトタイヤに交換したほか、路面が乾き始めたらすぐにスリックタイヤに交換するなど、巧みなピット戦略を駆使することでワン・ツー体制を形成していた。

 折り返しの12時間を経過してからも、TOYOTA GAZOO Racingの2台はレースを支配していた。ところが、チェッカーまで残り6時間を切った頃に予想外のトラブルが発生。8号車に起きた燃焼システムのトラブルにより、予定より短い間隔で給油のピットを実施した。

 このトラブルにより、給油しても計画の周回をこなせないという状況となったが、給油間隔を短くしながら解決策を練り続け、ドライバーがコースの決められた場所で特定のセッティングを施すことにより、予定していた周回数を走行できるようになったのである。

 その後は首位を快走する7号車にも燃焼システムのトラブルが発生したが、8号車と同じ対策を行うことで迅速に対応。引き続き7号車が首位、8号車が2番手というワン・ツー体制を維持しながら残りの周回を重ねていった。

 最終スティントは7号車が小林選手、8号車は中嶋選手がドライバーを担当し、最終ピットでは2台がタイミングを合わせ、7号車を前にしてピットアウト。その後は日本人ドライバーがランデブー走行を重ねながら、22日の16時過ぎにチェッカーフラッグを受けた。

 過去のル・マン24時間レースでは、速さを見せながらも勝利を逃してきた7号車がついに初優勝し、2020年大会の勝者である8号車が2位に入賞。2台のトヨタGR010ハイブリッドがワン・ツー・フィニッシュを達成し、TOYOTA GAZOO Racingが大会を4連覇した。

「ル・マンの勝者として、ここにいるというのは最高の気分です。ここに至るまでに何年も何年も様々な経験を経てきましたし、その中には本当に辛いものもありました。ル・マンで勝つためには運が必要だと感じていましたが、今日も運が必要でした。終盤の7時間は生き残るために死力を尽くして戦う必要があり、とても難しい作業でした。通常であればそこでレースは終わりでしたが、チームが本当によくやってくれて、なんとか最後まで走りきることができました」とは7号車ドライバーの一人である小林選手のコメント。

 2周差の2位に終わった8号車ドライバー、中嶋選手も「勝利を挙げた7号車のクルーとチームに最大の祝福を贈ります。この勝利はチームの勝利であり、8号車もその一員として、とても嬉しいです。7号車は年何も運に見放されてきましたが、やっと勝利を手にしました。彼らはル・マンウイナーにふさわしいです」と賛辞を贈った。

 なお、星野敏/藤井誠暢/アンドリュー・ワトソン組のドライビングで、LMGTEアマクラスに参戦した日本のチーム、D-STATION RACINGの777号車、アストンマーティン・バンテージAMRはクラス6位で完走。さらに日本人ドライバーとして木村武史選手がステアリングを握ったケッセル・レーシングの57号車フェラーリ488GTE Evoは、スタートから9時間後にエンジントラブルに祟られてリタイアすることとなった。

 また、イノベーティブカーとして特別枠で出走したアソシエーションSRT41の84号車オレカ07には手動運転装置が装備され、青木拓磨選手が参戦して総合32位で完走した。

 FIA WOMEN IN MOTORSPORTの活動でLMP2クラスに通年参戦しているリシャール・ミル・レーシングチーム1号車は、タチアナ・カルデロン/ソフィア・フレールシュ/ベイスク・フィッセール組が揃ったが、フレールシュ選手がクラッシュに巻き込まれ、5時間後の74周でリタイアすることとなった。

総合優勝(371周):マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス組
TOYOTA GAZOO Racing(7号車)トヨタGR010 HYBRID
総合2位(369周):セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー組
TOYOTA GAZOO Racing(8号車)トヨタGR010 HYBRID
2020年はWECのドライバーチャンピオンを獲得した小林可夢偉選手。ル・マン24時間レースの制覇も悲願だっただけに、チェッカーフラッグまで気の抜けない走行となった。

フォト/TOYOTA GAZOO Racing レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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