木村偉織選手が第3戦、荒川麟選手が第4戦を制し、ドライバーランキングトップの野中誠太選手に追駆

レポート レース

2021年9月1日

本来、5月末にスーパーGTの第3戦が鈴鹿サーキットで行われるはずだったが、延期となり、8月21~22日に無事、開催される運びとなった。併催されるサポートレースのFIA-F4選手権の第3戦と第4戦も行われた。この時期のレースは猛暑に見舞われることが多いが、こと土曜日はどんよりした空模様で、気温も平年以下。日曜日も昼からは強い陽が射すようになったが、早朝に行われたFIA-F4の決勝レースは、土曜とほぼ変わらぬ状況での戦いとなった。

2021 FIA-F4選手権 第3戦/第4戦
(2021 SUPER GT Round3内)

開催日:2021年8月21~22日
開催地:鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)
主催:KSCC、SMSC、株式会社モビリティランド

 鈴鹿で開催されたFIA-F4選手権は第3戦、第4戦と銘打たれているが、すでにツインリンクもてぎで第5~7戦も行われている。ここまでの5戦は、第1戦こそ木村偉織選手が優勝を飾っているが、以降のレースはTGR-DC Racing School所属の野中誠太選手が連勝街道まっしぐらとなった。

 しかし、今回の鈴鹿サーキットは木村選手ら、Hondaフォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)所属のドライバーにとっては、SRS-Formulaで鍛えられたホームコースとあって、野中選手の連勝阻止を誓っていたのは言うまでもない。

 土曜日早朝に行われた予選は、未明まで降り続いていた雨が路面に残るも、ライン上はほぼドライ。計測は30分間ゆえに、後半は完全に乾くコンディションとなった。

 そんな状況の中、開始からわずか7分間で赤旗中断。インディペンデントカップのポイントリーダーであるHIROBON選手がデグナーでスピンを喫した後、セルモーターの故障で再始動できなかったためだ。その直前に、ひとり2分8秒台に入れてトップに立っていたのは木村選手だった。

 残り18分強で再開されると、トップを奪ったのは荒川麟選手。2~4番手は小出峻選手、太田格之進選手、木村選手とHFDP勢がずらりと並ぶ。次の周に木村選手がトップを奪い取るも、ラスト2周のアタックで野中選手がトップに。しかし、ラストアタックで木村選手のトップ再奪還となった。その結果、ベストタイム、セカンドベストタイムともに木村選手がトップとなり、Wポールポジションを獲得した。

「なんとか2戦とも獲れました。赤旗は出るだろうと毎回のことなので予想していましたが、それで早めにアタックできるよう内圧も合わせていました。ただ、思いのほか赤旗が出るのが早くて。後半に長く走れたのは良かったんですが、トヨタ(TGR-DC Racing School)勢が後半にフォーカスしたセッティングだったのか、どんどん上がってきて。すごくしんどい状態だったんですけど、最後まで諦めずに一発出そうと思って、まとめきってタイムが出せました」と木村選手。

ここまで全5戦が行われ、4連勝の野中誠太選手はドライバーランキングもトップを独走。それを阻止すべく、各ドライバーたちは反撃の狼煙を上げた。

 第3戦決勝レースのグリッドはその木村選手を先頭に、野中選手とチームメイトの荒川選手、そして太田選手と小出選手が続き、6番手が伊東黎明選手。スタート直前に大粒の雨が降り始めたため、スタートは10分間ディレイとなる。

 雨はすぐ止んだが、問題はタイヤの選択。雨雲レーダーでは強烈な雨雲の接近を伝えている。上位陣は動じなかったものの、インディペンデントカップのジェントルマンドライバーたちのほとんどがレインタイヤに交換した。

 レースはセーフティカー(SC)スタートとなり、2周の先導の後に戦いの火蓋が切って落とされる。1コーナーへの飛び込みこそ順位変動はなかったものの、超接近状態であったため、リスタートからの1周だけでめまぐるしい順位の入れ替わりに。

 トップの木村選手が早くも1秒3のマージンを稼いでいたのとは対照的に、野中選手、太田選手、荒川選手、小出選手、そして伊東選手は混戦状態。しばらくポジションをキープしながらにらみ合いが続くも、5周目から再び雨が降り始め、ラップタイムがガクンと落ちる。ただし、ウェットタイヤを履いていたドライバーにとって、恵みの雨になるほどでもなく……。

 この雨で勢いづいたのが太田選手だった。6周目の1コーナーで野中選手をかわして2番手につけると、7周目の130Rではアウトから木村選手をも抜き去っていく。しかし、太田選手にとって不運だったのは、その直後にシケインで接触があり、1台がストップしたことからSCが再び導入されたこと、そして雨が止んでしまたことだった。

 残り1周でレースは再開され、上位は一列になって木村選手はヘアピン、スプーンで太田選手に並んで、130Rのアウトからトップ返り咲きに成功。太田選手もシケインで仕掛けたが、ガードをしっかり固められてしまう。

 これで木村選手が2勝目を挙げ、太田選手は2年ぶりの優勝ならず2位。小出選手が3位でHFDP勢がホームコースで表彰台独占を果たす。続いてゴールしたのは野中選手だったが、リスタートの際に計測ライン前での追い越しがあったため、40秒の加算で28位に降格。繰り上がっての4位は清水英志郎選手が獲得した。

「見ている方はたぶん、めちゃくちゃ面白い展開だったと思うんですが、やっている方としては2度と味わいたくないレースでした。最初のころはまだ雨が降っていて、ちょっと怖いぐらい。毎周コンディションが変わっていて、さっきの周は全開で行けたのに、今の周はすごく手前でブレーキ踏まなきゃいけないとか、合わせ込みが難しかったです」と木村選手。

 インディペンデントカップではHIROBON選手が総合27番手、クラス10番手スタートから3勝目をマーク。ドライタイヤの選択が功を奏し、総合でも10位につけて1ポイント獲得となった。

「まわりはみんなウェットタイヤだったけど、トップ集団は全部ドライだと聞いていたので、『行けるやろ』と。ツイていましたね」とHIROBON選手は笑顔がこぼれた。

第3戦優勝は木村偉織選手(HFDP/SRS/コチラレーシング)。
第3戦の表彰式。左から2位の太田格之進選手、1位の木村選手、3位の小出峻選手。
第3戦インディペンデントカップ優勝はHIROBON選手(Rn-sports Andare)。
第3戦インディペンデントカップの表彰式。左から2位の齋藤真紀雄選手、1位のHIROBON選手、3位の碓井ツヨシ選手。

 第4戦決勝レースは木村選手、荒川選手、野中選手、小出選手、太田選手と5番手までの顔ぶれは順番こそ異なれど、第3戦と同じだったのに対し、6番手につけたのは元嶋成弥選手だ。

 木村選手に勝ると劣らぬスタートを決めたのは野中選手で2番手に浮上し、逆に荒川選手は小出選手にも抜かれ、4番手に後退する。今度は木村選手が逃げることなく、後続も一列で連なっていく。誰も仕掛けることなく、しばらく様子を見ようというのは明らかだった。

 そんな中、5周目のS字で止まった車両があり、SCが2周にわたって導入される。リスタート後にレースは一気に動いた。1コーナーで野中選手が木村選手を抜きにかかるが、硬いガードに阻まれたばかりか接触もあり、2コーナーでオーバーシュート。さらに続いていた小出選手もスピンアウト。これで荒川選手が2番手に躍り出る。

 さらにバトルは続き、リスタート直後に元嶋選手にかわされていた太田選手が、9周目の1コーナーで3番手に順位を戻していた。そのバトルのみならず、木村選手と荒川選手のトップ争いも最後まで続いたが、ともに逃げ切りに成功。木村選手の連勝かと思われたものの、野中選手との接触が危険行為と判定され、5秒可算で5位に降格。

 繰り上がって荒川選手が参戦2年目の初優勝を飾り、太田選手が3戦連続の2位に。そして3位で元嶋選手は、初めて表彰台に立つこととなった。

「去年から勝てそうで勝てないレースが何回もあったので、今回は棚ぼたですけど、勝ったことは素直に嬉しいです。粘り強く、ちゃんと後ろに着いていったのが、ああいう結果につながったので、良かったです。次はポールから優勝できるように頑張ります!」と荒川選手。

 一方、先のアクシデントで順位を落とした野中選手は、その後のバトルで直前を走る車両がスピンし、回避行為でまたも順位を落とす羽目に。7位には甘んじたものの、ランキングのトップは死守。

「今週の結果は、ある意味、試練だと思って。後半戦は切り替えて、戦っていきたいと思っています」と野中選手。

 インディペンデントカップでは、佐藤セルゲイビッチ選手が今季初優勝。最後尾スタートだったHIROBON選手が、またも激しい追い上げを見せ、SCランも利して背後まで詰め寄ったものの、佐藤選手が逃げ切りに成功。

「SCで一気に差が詰まったんですが、SC明けに要所だけガードできれば、引き離せないにしても勝てるかな、と気持ちを切り替えました。会心の勝利です」と佐藤選手。

第4戦優勝は荒川麟選手(TGR-DC RS トムススピリットF4)。
第4戦の表彰式。左から2位の太田選手、1位の荒川選手、3位の元嶋成弥選手。
第4戦インディペンデントカップ優勝は佐藤セルゲイビッチ選手(結婚の学校フィールドモータースポーツ)。
第4戦インディペンデントカップの表彰式。左から2位のHIROBON選手、1位の佐藤選手、3位の今田信宏選手。

■Porsche Carrera Cup Japan 第5戦/第6戦

第5戦Proクラス優勝は小河諒選手(SHOWA AUTO with BINGO RACING)。続く第6戦も優勝を果たした。
第6戦Proクラスの表彰式。左から2位の近藤翼選手、1位の小河選手、3位の上村優太選手。

フォト/石原康、遠藤樹弥 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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