天候激変の丹後半島ラリーは、最終SSの雨が逆転劇を演出!
2021年9月10日
JAF中部・近畿ラリー選手権は、全日本ラリーのステージを舞台とする近畿ラウンドの一戦、「丹後半島ラリー2021」が8月に行われた。
2021年JAF中部近畿ラリー選手権第5戦
2021年JMRC近畿SSラリーシリーズ第3戦
TRD RALLY CUP by JBL 2021 第5戦
「丹後半島ラリー2021」
開催日:2021年8月21~22日
開催場所:京都
主催:FERIAS
2021年JAF中部・近畿ラリー選手権は、全8戦で開催されることが決まっている。愛知県で開催される予定だった第3戦は、現在12月に開催する方向で延期調整中だが、これまですでに3戦が開催された。そして事実上シリーズ4戦目となるラリーが、8月21~22日に京都府北部、丹後半島を舞台に開催された。
今回の舞台となる丹後半島は、5月に全日本戦及び併催となったJAF中部・近畿ラリー選手権でも使用された林道が今回もSSとして使用される。5月の時は地方選手権でも全日本と同じ距離を走り、SSトータルは120kmだったが、今回は2本の林道を使用し、セクション1で南に下った後に、セクション2では逆走で駆け上がってくる合計4本のSSで争われた。4本と言えども、トータル距離は45km。地方選手権としては、1本のSSの距離が長い設定になったと言えよう。
夏の暑い中、いかに集中力を切らさずに走り切るか、がポイントになってくるが、加えて今回のラリーでは、当日の天候が大きく勝負を分ける結果になった。セクション1は完全にドライ。しかしサービスを挟み、セクション2をスタートする時点ではまだ雨は降っていなかったが、先頭ゼッケンがSS4をスタートする頃から大粒の雨が降り出し、コースは一時、“川”と化す場所もあるほど、ヘビィウェットとなった。その後、雨は小康状態となったものの、結果的には、後半ゼッケンではSS3からウェット路面を走る形となったため、走るタイミングが勝敗の行方を左右する結果となった。
今回争われる4本のSSは5月にも使用されたこともあり、その時の優勝者が大本命であることは揺るぎない。DE-1クラスでは5月に大江毅/田中大貴組が優勝しているが、その大江組はSS2で5番手の伊藤淳郎/吉田和德組に16秒の差をつけ、セクション1を終わった時点で23秒以上のマージンを築いて、トップで折り返した。しかし、超ドライタイヤで臨んだSS4は、「まるでスリックタイヤで雨を走っているようで、どうすることもできなかった」(大江選手)と、ベストタイムで走ったAki HATANO/小坂典嵩組から何と33秒も遅れてゴール。結果3位に終わってしまった。
優勝したのはこのSS4で大逆転したHATANO組。「セクション1はやられまくりだったので、セクション2ではリアのエア圧を上げて臨んだのが、良かったみたいです。こちらはラリータイヤだったので、雨のSS4は、ライバルはもっと滑るだろう、と思って焦らず攻めました。このGRヤリスはTGRラリーチャレンジ仕様なので、完全ドライだと勝てなかったかもしれませんが、ウェットはうまく走れたと思います。色々と収穫のあるラリーとなりました」と、HATANO選手は優勝を喜んでいた。
DE-2クラスは5月に優勝している山田啓介/山本裕也組に、リタイヤを喫した昨年のチャンピオン、廣嶋真/廣嶋浩組がリベンジマッチに挑んだ。SS1では山田組がベストタイムを出したものの、柴田哲郎/山下恭平組と廣嶋組がコンマ差で続く。さらにSS2では中野啓太/森井康貴組が、山田組をピタリとマークし、優勝争いに名乗りを上げてきた。そして続くSS3では中野組が総合ベストのタイムで走り切り、山田組に遂に1秒差まで迫った。
ウェット路面になったSS4では、お互いドライタイヤでの勝負となったが、結果は山田組がベストタイムで逃げ切り、優勝を果たすことになった。「ここのコースは、アンジュレーションが少なく、クルマを思い切り動かせる好きなコースです。前回同様、セッティングもうまく決まっていました。セクション2はドライタイヤでのウェット路面に少し苦しみましたが、最後はドライビングでカバーできての優勝だと思いますので、勝てて良かったです。このままチャンピオンが獲れれば、嬉しいですね」と山田選手は最後に笑顔を見せていた。
一方、2位に敗れた中野選手は、「前回の丹後も2位。今回はドライなら勝てるかなと思ったんですが…。でもSS3でオーバーオールを獲っての2位は、自分でも凄いと思っています。でも、面白い勝負ができたのは良かったですけど、やっぱり勝ちたかったですね」と対照的に複雑な表情を見せていた。3位は廣嶋組が入ったものの、「今回の敗因は色んな意味で準備不足でした」と無念の一戦に。4位は柴田組が入賞し、シリーズ3位をキープした。
DE-5クラスも、5月の覇者田中潤/北田稔組がSS3までをベストタイムで走り、2番手につける山本雄紀/橋本美咲組を18秒リードした。完全ウェットになったSS4は山本組がスーパータイムを叩き出したが、それまでのマージンが効いた田中組が逃げ切って、今季3勝目をあげた。
「前回のいなべでセッティングに得るものがあり、試してみたらうまくハマりました。SS3は出走順から10kmぐらいはドライだったので、他の選手より有利に走れたのが大きかったですね。最後はガッツリやられましたけどね(笑)」と田中選手。2位に敗れた山本選手は、「ドライはイマイチだったのですが、ウェットにセッティングが合ってたんでしょうね」と悔やまれる一戦に。3位は開幕戦優勝の中井育真/馬瀬耕平組が入ったが、「セクション1でアンダーに苦しみました。何がアカンのでしょうね」と悩んでいた。
DE-6クラスは、洪銘蔚/村山朋香組と、高田幸治/田波宏組の一騎打ちとなった。SS3で高田組が3秒逆転し、トップを奪うと、洪選手の闘志に火がついた。「SS4のスタート前、気合いが入って、“絶対負けない宣言”しました(笑)。気持ちを入れて走ったので逆転できたと思います」と優勝を射止めて、最後は笑顔でラリーを終えた洪選手。
一方、敗れた高田選手は、「CVTでは相手選手の方が1日の長があるみたいで、その差でしょうか。SS2で前走車に追いついた不利もありました。最後はリタイヤしたらポイントがなくなるので、JMRC近畿SSラリーシリーズのチャンピオン獲得のため、絶対完走しないとダメだと思って走りました」と、ラリーを冷静に振り返っていた。なおチャレンジクラスは2年ぶりの国内ラリーという、元全日本チャンピオンの川名賢/前川富哉組が、欧州のラリー参戦を控えた一戦で、圧勝を果たしている。
TRD RALLY CUP by JBL 2021 第5戦
辻井利宏ヴィッツが、悲願のシリーズ初優勝を達成
今回が最終戦となるTRD RALLY CUPは、すでに前戦のグラベルラリー、「四国のてっぺんラリー」で2クラスとも、チャンピオンが決まっている。CUP-2クラスはそのチャンピオンに輝いた岩田晃知/増田好洋組が4本のSSすべてでベストタイムを出す貫禄の優勝。
「ここのコースはハイスピードで面白かったですね。コンディションが大きく変わる中、走り切ることできての優勝にホッとしています。ただ台数が少なく、ライバルがいなかったのはちょっと寂しいです。来シーズンはもっと盛り上がってほしいですね」と岩田選手はシーズンを振り返っていた。
CUP-1クラスはチャンピオン不在の一戦となり、シリーズ2位を巡る争いが注目された。逆転でその2位を狙うのは辻井利宏/新井敏弘組だ。辻井選手は、コ・ドライバーの新井選手のアドバイスも効いて、今回はベストタイムを連発。終わってみれば3本のSSでベストを奪う快走で優勝を決めた。
ランキング2位は逃したものの、このシリーズで初優勝を飾った辻井選手は、「クネクネした道は嫌いだったんですが、今日のコースは、新井選手のアドバイスもあって苦にはならなかったです。自分では無理と思ってブレーキかけると、“行けるのに”って言われて、あぁ、行けるんだというのが分かったのが何回かあって、その言葉を信じて攻めたことで走りにも自信がついてきました。これでラリー北海道も出たくなってきました」と終始、笑顔を見せていた。
フォト/山本佳吾、山口貴利 レポート/山口貴利