FP-3部門西地域最終戦は急転直下の展開!森岡真央選手が初優勝!!
2021年9月16日
全日本カート選手権・西地域第5戦が岡山県・中山カートウェイで開催され、FP-3部門では予想外の展開が続いた末に森岡真央選手(Ash)が初優勝。FS-125部門では加藤大翔選手(HRS JAPAN)が接近戦を制して2勝目を遂げた。
2021年JAF全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門 西地域第5戦
2021年JAFジュニアカート選手権 FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門 西地域第5戦
開催日:2021年9月11~12日
開催地:中山カートウェイ(岡山県和気町)
主催:株式会社山陽スポーツランド
2021年全日本カート選手権のFS-125部門とFP-3部門は、東西各地域で5戦ずつを行った後、東西統一競技会で一年間を締めくくるシリーズ構成になっている。今回のレースは西地域ラストの一戦。東地域はまだ第3戦しか終了しておらず、西地域勢はふた足先に地域戦を終え、東地域の残り2戦の動向を見守りながら東西統一戦に備えることとなる。
戦いの舞台はシリーズ最西端の地、岡山県の中山カートウェイ。コースの全長は740mとシリーズ中もっとも短く、決勝の周回数は30周にも及ぶ。例年、体力面でも厳しい戦いが繰り広げられる、手強い一戦だ。
すべての計時セッションが行われる大会2日目の空模様は、終日曇り。真夏の厳しい暑さは和らぎ、立っているだけで汗だくになるようなことはなくなった。体力面で不安を抱える選手たちにとって、この気候はひとつの安心材料になったことだろう。
今大会最多の22台が出走したFP-3部門は、ドラマチックな結末となった。決勝のポールについたのは森岡選手。その横に並んだのは今季初参戦の森川貴光選手(HIRAI PROJECT with Ash)だ。
フロントローの2台はポジションキープでレースを開始し、タンデム走行のままラップを重ねていく。レースが中盤に入ると、そこに中村海斗選手(FormulaBlue Teamナガオ)が接近、20周目に森川選手をかわしてトップ追撃の役目を引き継いだ。さらに7番グリッドから脇万葉選手(TEAM EMATY)が快足を飛ばして先頭集団に急接近、残り4周で森川選手を抜いて3番手に浮上した。
レース大詰めの優勝争いは、森岡・中村・脇・森川の4選手がぴたり一列に連なっての接近戦だ。その最後尾を走る森川選手は、速さではかなわない面々に先行されて苦境に立たされながら、大逆転を諦めていなかった。一縷の望みを託すのは、ハイペースで追い上げてきた2・3番手が前に仕掛ける時に生まれるであろうチャンスだ。
その森川選手の読みはズバリ当たった。最終ラップ、タイトな右ヘアピンの2コーナーで、中村選手と脇選手が勝利を狙って前に勝負を仕掛ける。すると立ち上がりで、トップ3はもつれ合いながら失速。その横を森川選手がするすると抜けていく。トップでチェッカーを受けた森川選手はウィニングランで何度もガッツポーズを繰り返し、車検場でマシンを降りると感激のあまり泣き崩れた。
2016年、2018年のFP-3部門(当時は地方選手権として開催)チャンピオンに輝きながら、2020年は苦闘の一年を送った森川選手。今季は夫人の出産と育児でここまでレース参戦を見送り、それがひと段落ついたところでの復帰戦だった。森川選手の劇的なカムバックウィンに、会場は祝福ムードに沸いた。
だが、ドラマはまだ終わっていなかった。レース後の再車検で、森川選手はエンジンのスキッシュが規定より0.02mm狭かったとして、まさかの失格裁定を受けたのだ。
「スキッシュはちゃんと測定してきたけれど、カーボンが予想以上に溜まったのかもしれません。違反は違反だけれど、性能にはほとんど影響のない値だし、狙ったとおりのレースができたし、すごく楽しかったので、僕はポジティブな結果だと受け止めています」と森川選手。
代わって勝者となったのは、2番手でゴールした森岡選手。デビューイヤーの今季、たびたび目覚ましい速さを示してきた21歳の俊英の初優勝だ。2019年と2020年には妹の泉美選手が中山大会2連勝を達成しており、森岡家としては中山3連勝を飾ったわけだ。
激闘を演じた中村選手と脇選手は3・4番手でチェッカーを受けたのだが、フロントフェアリングのペナルティで順位を下げ、2位は大井偉史選手(Ash)、3位は今季初参戦の藤井亮輔選手(TEAMぶるーと)のものとなった。また、西地域のポイントランキングは今回4位の中村選手が首位を守っている。
出走13台のFS-125部門の決勝は、折り返し点に達しても全車が一列につながったまま周回を続ける、実力伯仲の戦いとなった。やがてそこから抜け出したのは、酒井仁選手(LUCE MOTOR SPORTS)と加藤選手だ。
この対決は、残り5周で逆転に成功した加藤選手に軍配が上がった。ジュニア時代、FP-Jr部門に参戦していた2019年にもここ中山でのレースを制している加藤選手は、会心の逆転劇で今季2勝目を果たし、西地域のポイントリーダーの座をキープして東西統一競技会に臨むこととなった。酒井選手は3勝目こそ逃したものの、今季3度目の表彰台で西地域ランキング2番手につけている。
3位は山口大耀選手(HRS JAPAN)。このレースウィークは不振にあえぎタイムトライアルと予選では9番手に留まったが、あきらめずセットアップを煮詰めた結果、決勝でようやく思いどおりに走ってくれるマシンを手に入れ、6台抜きで表彰台の一角をつかみ取った。初ポール獲得の宮本颯斗選手(TEAMぶるーと)は5位。13台全車が4秒強の間にチェッカーをくぐる、見応えのあるレースだった。
同時開催のジュニアカート選手権・西地域第5戦。FP-Jr部門では大集団の熱戦を制して武藤雅奈選手(TAKAGI PLANNING)が自身2勝目、今季初勝利を飾った。2位には田邊琉揮選手(TAKAGI PLANNING)が入り、TAKAGI PLANNING勢が1-2フィニッシュ。ポールから発進して前半戦の主導権を握った松本琉輝斗選手(チームナガオ)は3位でレースを終えた。
FP-Jr Cadets部門では澤田龍征選手(Eiwa Racing Service)と澤田賢征選手(Eiwa Racing Service)の兄弟対決が繰り広げられ、弟の龍征選手が初優勝。賢征選手はチェーントラブルでリタイアとなった。昨年の中山大会以来となる2度目のスポット参戦の大倉正真選手(RKT WINNER)は、一年ぶりのジュニア選手権で目覚ましい成長を見せて2位を獲得。ポイントリーダーの酒井龍太郎選手(ミツサダPWG Racing)は、前日のトラブル続発と直線スピード不足に悩みながら、5番グリッドからの3位フィニッシュで苦しかったレースウィークをまとめた。
フォト/JAPANKART レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部