全日本ラリーJN5クラスとJN6クラスのタイトルが早くも確定!

レポート ラリー

2021年9月22日

全日本ラリー選手権第9戦「RALLY HOKKAIDO」が9月10~12日に、北海道帯広市を拠点に開催された。今年は、2001年に国際格式として開催された「インターナショナルラリーイン北海道」を経て、2002年に日本初のFIAアジア・パシフィックラリー選手権(APRC)「ラリー北海道」が初開催されてから20年の節目にあたる。

2021年FIA International Rally
2021年JAF全日本ラリー選手権第9戦「RALLY HOKKAIDO」

開催日:2021年9月10~12日
開催地:北海道
主催:AG.MSC北海道

 全日本ラリー選手権第9戦は当初、20周年記念大会として帯広市駅前通りでのラリーショーやセレモニアルスタートなど、観客と一緒に大会を盛り上げる応援イベントを予定していた。だが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、まん延防止等重点措置が大会日程の9月12日まで延長されたことを受け、無観客での開催を決定。

 さらにまん延防止等重点措置が緊急事態宣言に変わったことを受け、大会のスケジュールを変更。当初は105.21kmを予定したSS走行距離を86.04kmに短縮し、これまでの「RALLY HOKKAIDO」の中で最もコンパクトなラリーとして開催された。

 規模が縮小され、クラス別得点の係数も1.5から1.2となった今年のRALLY HOKKAIDOだが、国内で最もタフで速いラリーは今年も健在。各クラスのタイトル争いも終盤戦に入り、2日間に渡り熱い戦いが繰り広げられた。

新型コロナウイルス感染症の感染予防対策として無観客で開催されたRALLY HOKKAIDO。サービス会場への入場はドライブスルー方式が採られ、接触感染を避けつつ、検温や手指の消毒が実施された。
十勝幕別温泉グランヴィリオホテルで行われたJAFセーフティー講習会。参加クルー全員を対象とし、トラブル発生時の対応から主催者が行う一連の行動まで、相互理解や連携を深めるための有意義な講習となった。
JAFセーフティー講習会の冒頭では、JAFモータースポーツ部の村田浩一部長が挨拶。
クルーからは競技中のアクシデントについて意見も交わされ、この講習会に参加者した全員がセーフティに対する意識の向上に努めた。

 第2戦「新城ラリー」以降、ヨーロッパのラリーで武者修行する新井大輝選手が5戦ぶりに出場したJN1クラスは、その新井大輝/小坂典嵩組と、新井敏弘/田中直哉組が、SS1とSS2でコンマ1秒単位を争う親子対決を展開する。この2組の戦いに、前戦のカムイでトヨタGRヤリスでの初優勝を飾った勝田範彦/木村裕介組がSS3から参入。

 そのSS3では勝田選手が新井大輝選手に0.9秒差をつけトップ、SS4では新井敏弘選手が勝田選手に0.5秒差をつけトップと、激しいトップ争いが繰り広げられるが、SS5で新井敏弘/田中組はエンジンルームから突然出火し、無念のリタイア。新井大輝/小坂組もSS3からエンジンに不調をきたし、レグ1は勝田/木村組が新井大輝/小坂組に9.2秒差をつけトップで折り返した。

 レグ2に入っても新井大輝/小坂組のエンジン不調は解決せず、逆にレグ1を3番手で折り返した鎌田卓麻/松本優一組に激しく追いかけられる展開に。その中、勝田/木村組はレグ2を快走し、今季2勝目を獲得。

 今回はレグ1でのアクシデントが多く、5位に終わったシリーズポイントリーダーの福永修/齊田美早子組との有効ポイント差を勝田/木村組が10.6点差に縮めた。2位には、鎌田/松本組の追撃を2.1秒かわした新井大輝/小坂組が入賞した。

JN1クラス優勝は勝田範彦/木村裕介組(GR YARIS GR4 Rally)。
JN1クラスの表彰式。左から2位の新井大輝/小坂典嵩組、1位の勝田/木村組、3位の鎌田卓麻/松本優一組。

 JN2クラスは、レグ1の序盤から上原淳/漆戸あゆみ組が快走。前戦のカムイでは、トップに立った次のSSでリタイアという不運に泣き、昨年のRALLY HOKKAIDOでも終盤までトップを快走しながらも、最終SSでドライブシャフトを折損してリタイアを喫した上原選手だったが、今回はトップを死守する走りでフィニッシュ。

 上原/漆戸組は前戦と昨年のリベンジをしっかりと果たした。2位にはシリーズランキング2番手の中平勝也選手、3位には同3番手の中村英一選手が入賞。今回はスーパーGTとスケジュールが重なったためにこのラウンドをスキップしたシリーズランキングトップのヘイキ・コバライネン/北川紗衣組とのポイント差を縮め、逆転チャンピオンの可能性を残した。

JN2クラス優勝は上原淳/漆戸あゆみ組(メディトランセDLシャフトシビックユーロ)。
JN2クラスの表彰式。左から2位の中平勝也/島津雅彦組、1位の上原/漆戸組、3位の中村英一/大矢啓太組。

 JN3クラスは、加納武彦/横手聡志組や竹内源樹/木村悟士組が次々と駆動系トラブルで戦線離脱する中、前戦のカムイを制した21歳の大竹直生/藤田めぐみ組が快走。レグ1をトップで折り返し、レグ2は軟質路面に強いウェットタイヤを投入した曽根崇仁/竹原静香組と長﨑雅志/秋田典昭組に追い上げられるものの、初日で築いたマージンをしっかりと活かした大竹/藤田組が逃げ切り、今季2勝目を獲得。

 シリーズランキングもトップに浮上した大竹/藤田組。一方、2番手をキープし、残りのターマックラウンド2戦で逆転チャンピオンを狙う曽根/竹原組は、最終SSで駆動系トラブルにより痛恨のリタイア。そして2018年の同大会で最終SSまでトップを快走しながらも、ゴール500m手前で痛恨のリタイアを喫した長﨑選手が、「因縁の最終SSでベストタイムを獲得できました」と2位でフィニッシュした。

JN3クラス優勝は大竹直生/藤田めぐみ組(ADVAN KTMSヌタハラRS86)。
JN3クラスの表彰式。左から2位の長﨑雅志/秋田典昭組、1位の大竹/藤田組。

 JN4クラスは、前戦のカムイを制した香川秀樹/松浦俊朗組が、レグ1で4本のSSを制する走りで快調にトップを快走する。その香川/松浦組を、第5戦丹後で優勝を飾っている須藤浩志/新井正和組が追いかける展開となったが、レグ2も香川/松浦組が2本のSSでベストタイムを奪う走りで優勝。カムイに続きグラベル2連勝を飾った。

 2位には「レグ2はセッティングを変えて挑んだけど、タイムに結び付きませんでした」という須藤/新井組が入賞。3位には、前戦でリタイアを喫したシリーズランキングトップの西川真太郎/本橋貴司組が、今度はしっかりとペースを守り3位でフィニッシュ。自身初となるシリーズチャンピオンに王手をかけた。

JN4クラス優勝は香川秀樹/松浦俊朗組(DLテインBRIG鋳造魂JPCシビック)。
JN4クラスの表彰式。左から2位の須藤浩志/新井正和組、1位の香川/松浦組、3位の西川真太郎/本橋貴司組。

 JN5クラスは、このラウンドでタイトルが決まる可能性がある天野智之/井上裕紀子組が、ラリー序盤から後続とのリードを広げる走りで快走。その天野/井上組を追うシリーズランキング2番手の小川剛/梶山剛組だが、この2組の戦いに今回が全日本ラリー参戦2戦目となる25歳の笠原彰人/宗片さおり組が割って入る展開となった。

 かつてRALLY HOKKAIDOの拠点となった音更町で生まれ育った笠原選手は、小学生の頃からRALLY HOKKAIDOのサービス会場に足を運び、「いつかは自分も走ってみたい」と、ラリーに憧れを持ったドライバーだ。

 レグ2に入っても天野/井上組のペースは落ちず、トップをキープしたままフィニッシュ。優勝とともにレグ別得点もトップの3点を獲得し、天野選手が8年連続13回目、井上選手が12年連続14回目のシリーズチャンピオンを確定させた。2位には、レグ2で小川/梶山組の猛追をかわした笠原/宗片組が、憧れのラリーで2位表彰台を獲得した。

JN5クラス優勝は天野智之/井上裕紀子組(豊田自動織機・DL・ヴィッツ)。
JN5クラスの表彰式。左から2位の笠原彰人/宗片さおり組、1位の天野/井上組、3位の小川剛/梶山剛組。
早々とJN5クラスのドライバーチャンピオンを確定させた天野選手と、コ・ドライバーチャンピオンを確定させた井上選手。

 JN6クラスは、今シーズンの全日本ラリーに初出場して以来、破竹の5連勝でシリーズランキングトップを驀進する吉原將大選手が、このラリーでも序盤から後続を大きく引き離す走りでフィニッシュ。今シーズンのシリーズチャンピオンを、無傷の6連勝で確定させた。2位は「クルマのセッティングがカムイよりも良くなってきた」という海老原孝敬/山岸典将組が入賞した。

JN6クラス優勝は吉原將大/石田裕一組(KYB DLアップガレージYaris)。
JN6クラスの表彰式。左から2位の海老原孝敬/山岸典将組、1位の吉原/石田組、3位の水原亜利沙/高橋芙悠組。
シリーズ6連勝と圧倒的な速さでJN6クラスのドライバーチャンピオンを確定させた吉原選手。
OP-XCクラス優勝は平塚忠博/鈴木裕組(SMaSH・HiluxRevo)。
OP-XCクラスの表彰式。1位の平塚/鈴木組。

FIA International Rally総合優勝は今井聡/安東貞敏組(SATOSHI IMAI)。
FIA International Rallyの表彰式。左から2位の金藤公人/宇野祐哉組、1位の今井/安東組、3位の吉谷久俊/高田新二組。

フォト/CINQ、加藤和由、中島正義、山口貴利、JAFスポーツ編集部 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部

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