ウィナーが変わる波乱のSUGO3戦、FIA-F4のチャンピオン争いは混迷!

レポート レース

2021年9月22日

6大会・全14戦で争われるFIA-F4選手権の第4大会が9月11~12日にスポーツランドSUGOで開催された。併催のメインレースであるスーパーGTが、昨年はコロナ禍によりサーキットを限定して開催したため、FIA-F4もスポーツランドSUGOでの開催は2年ぶりとなった。これによりSUGOで初めてレースをするドライバーもおり、経験の差が極端に表れることなく、随所で激しいバトルが繰り広げられていた。

2021 FIA-F4選手権 第8戦/第9戦/第10戦
(2021 SUPER GT Round5内)

開催日:2021年9月11~12日
開催地:スポーツランドSUGO(宮城県村田町)
主催:株式会社菅生、SSC、株式会社GTアソシエイション

 メーカー育成ドライバーの活躍が目立つ昨今のFIA-F4だが、レースウィークの木曜と金曜に行われた専有走行では4セッションすべてで非育成ドライバーがトップとあって、これまでの3大会とは異なるレース展開となることも大いに予想された。しかしいざ予選となると、ベストタイムでは小出峻選手が、セカンドベストタイムでは木村偉織選手がトップ。いずれもHondaフォーミュラ・ドリーム・プロジェクト所属のドライバーだ。

「前半にタイムが出せなくて少し焦っていましたが、徐々にマシンとタイヤのフィーリングが良くなってきたところで赤旗が出ちゃって……。逆にそれで後半はしっかり位置取りができたことで、自分のペースでタイムを出せました。このコースではオーバーテイクが難しいので、まずはレース1でスタートから逃げられたらいいなと思っています」とは、第8戦でポールポジション(PP)を獲得した小出選手のコメント。

「事前のテストや練習で大体序盤にタイヤが来る傾向があったので、そのあたりにピークを持っていきました。セカンドベストは出せたのに、その直後に赤旗が出てしまって、自分本来のアタックはできませんでした。赤旗とかは運なので仕方ないですけど、それまでの予選の組み立て方、取り組みに関しては今シーズンいちばんいい予選でした」と、木村選手は意識して予選に取り組んでいたことを明らかにした。

 第8戦決勝レースでは、PPの小出選手に続くトップ5が伊東黎明選手、木村選手、荒川麟選手、そしてポイントリーダーの野中誠太選手。伊東選手以外はメーカー育成ドライバーだが、ルーキーでもある松澤亮佑選手が6番手につけて注目された。

 1台がフォーメーションラップで始動できずにやり直しとなった第8戦は1周減で競われることに。小出選手が好スタートを切って後続を寄せつけなかったのに対し、伊東選手は木村選手にかわされて3番手に後退。

 早々に独走態勢へと持ち込んだかに見えた小出選手は、木村選手と伊東選手が競い合っているのを背後に、なかなか差を広げられずにいた。逆に5周目からは木村選手が伊東選手を振り切っていよいよ小出選手に近づいていった。

 だがそれも10周目まで。ラストスパートを小出選手がかけると同時に、今度は伊東選手が木村選手に最接近。最後はコンマ18秒差にまで迫った伊東選手だったが逆転には至らず。その間に小出選手は木村選手に2秒近い差をつけ、初優勝を飾ることとなった。

「自分のペースをしっかりつくって油断なく最後まで走れたのが良かったです。シリーズ前半戦はうまくリズムが合わなかったので、ここからしっかり切り替えて巻き返していきます」と小出選手。なお4位から6位は、荒川選手、野中選手、松澤選手と、予選の順番と変わらず。

第8戦優勝は小出峻選手(HFDP/SRS/コチラレーシング)。
第8戦の表彰式。左から2位の木村偉織選手、1位の小出選手、3位の伊東黎明選手。
第8戦インディペンデントカップ優勝は鳥羽豊選手(HELM MOTORSPORTS F110)。
第8戦インディペンデントカップの表彰式。左から2位のDRAGON選手、1位の鳥羽選手、3位のHIROBON選手。

 上位6人の顔ぶれが第8戦と一緒となった第9戦決勝レース。しかしフロントローの木村選手と伊東選手の背後に松澤選手が続いて「表彰台を目指します」と強く意気込みを語っていた。そして4番手以降は小出選手、荒川選手、野中選手という順に。

 ここでは木村選手と伊東選手が好スタートを切ったのに対し、松澤選手は出遅れて小出選手の先行を許す。その小出選手がS字カーブでダートに足を落としたことから、松澤選手は再逆転を狙うも、前に出るまでには至らなかった。トップ争いは一時、木村選手と伊東選手による一騎討ちの様相を呈したものの、後続からペースに勝る小出選手、さらに松澤選手が次第に差を詰めていく。

 そんな中、8周目の馬の背コーナーでコースアウトした車両があったことから、セーフティカー(SC)が3周に渡って導入され、上位の間隔が一気に凝縮されてしまう。SC解除後はまず木村選手が絶妙のリスタートを決め、伊東選手の逆転を許さず。その一方で、次の周のストレートでは松澤選手が小出選手を突くほどに迫ったものの、しっかりガードを固められてしまう。同じ周のSPコーナーでは、7番手を走っていた野中選手が後続のチャージを避けようとしてオーバーシュートし、ひとつ順位を落としていた。

 伊東選手と木村選手の激しいバトルは最後まで続いたものの、木村選手が辛くも逃げ切りを果たして3勝目をマーク。ここまでポイントリーダーだった野中選手は鈴鹿大会からの苦戦もあって、ポイントランキングでは木村選手に並ばれることとなった。

「伊東選手のスタートが良かったのでちょっとまずいかなと思いました。でもスタートラインから1コーナーまで距離は短いですし、SUGOのイン側はちょうど路面も悪いので、抜かれないだろうと。それからは自分なりにドライビングをまとめて、このコーナーだけ守れば大丈夫だろうって考えながら、マネジメントもしたりして走っていました。チャンピオンは意識していますけど、野中選手が前にいるか後ろにいるかコントロールすることはできないので、自分のパフォーマンスを最大限に出し切ることに常に集中していきます」と木村選手。

 一方、インディペンデントカップはここまで鳥羽豊選手が2連勝で、「第1レースでSUGOではスタートがすべてだとわかったので、今回も全集中して決めることができました。それが勝因です。3連勝狙います」と高らかに語っていた。

第9戦優勝は木村選手(HFDP/SRS/コチラレーシング)。
第9戦の表彰式。左から2位の伊東選手、1位の木村選手、3位の小出選手。
第9戦インディペンデントカップ優勝は鳥羽選手。SUGO大会2連勝となった。
第9戦インディペンデントカップの表彰式。左から2位のHIROBON選手、1位の鳥羽選手、3位のDRAGON選手。

 日曜日の第10戦決勝レースは、第8戦でファステストラップを記録していた木村選手がPP。伊東選手が3戦連続で2番手につけ、以下、小出選手、野中選手、荒川選手、松澤選手という順でグリッドに並んだ。

 ここでも木村選手はスタートを決め、伊東選手を従えて1コーナーでのホールショットに成功。そこに野中選手、小出選手が続いた一方で、松澤選手は荒川選手に抜かれてしまう。このあたりはレース経験の差なのだろうか。トップ4台は連なり合う形で3周目に突入するも、またもやSCが導入される。これが8周目まで続き……。

 リスタート後に何より衝撃的だったのは、トップを走る木村選手に対し、ジャンピングスタートのペナルティとしてドライビングスルーが発せられたことだった。やむなく木村選手は11周目にピットイン。これで伊東選手が待望のトップに躍り出る。その後ろには、10周目に小出選手をかわしていた野中選手が。伊東選手にプレッシャーをかけるまでには至らずとも、それまで陥っていた苦境から、ようやく脱した格好となった。

 逃げ切って初優勝を飾った伊東選手は「嬉しいです! ただ、木村選手のジャンプスタートに気づくことができなかったので、そこは意識していかないとという反省点はあるんですが、それまでそのポジションにいたから優勝という結果が得られたのですごく良かったです。後半の野中選手のペースが良くて僕もプッシュしていたんですが、その一方で昨日の2レースである程度近づいても抜けないというのは、僕が体感して一番理解していたので、落ち着いてレース運びができました」と素直な印象を述べていた。

 野中選手は今回の2位で再び単独のランキングトップとなり、「最後はうまく方向性も見えてきて、アジャストすることができました。今週、いまひとつ調子が良くなくて、いろいろ悩んでいたんですが、前の2レースの中で試してまとめて、今日のレースにうまく合わせられたかなと。木村選手の後退は正直、運が良かっただけですが、今日のレース内容、自分の走りやクルマの方向性は価値があると思うので、最後の2大会に向けてはすごくいい方向にあります」と語っていた。

 インディペンデントカップは、トップ発進の鳥羽選手が1周目の4コーナー進入で追突されるハプニング。これでトップに立ったDRAGON選手を、なんとか持ち直した鳥羽選手が追いかけたものの、あと一歩のところで逆転ならず。DRAGON選手は「でも、今週に関しては鳥羽さんの方にスピードがあったので、なにもなかったらそのまま離されちゃったでしょうね」と正直な胸の内を明かした。ランキングトップは、SUGO大会で3位、2位、3位を獲得したたHIROBON選手が依然キープし続けている。

第10戦優勝は伊東選手(OTG DL F4CHALLENGE)。
第10戦の表彰式。左から2位の野中誠太選手、1位の伊東選手、3位の小出選手。
第10戦インディペンデントカップ優勝はDRAGON選手(ZAP SPEED F110)。
第10戦インディペンデントカップの表彰式。左から2位の鳥羽選手、1位のDRAGON選手、3位のHIROBON選手。

フォト/石原康 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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