佐藤樹選手、2戦連続のポール・トゥ・ウィンでもてぎ・菅生スーパーFJのチャンピオンを射止める!

レポート レース

2021年9月30日

全5戦で争われる「もてぎチャンピオンカップレース」は、早くも第4戦を迎えてシリーズは佳境に差し掛かった。酷暑が続いた8月から一変して、9月になってからは降雨が続き、「低温注意報」が出されていたほどだったが、このレースウィークも例外ではなく……。初日の土曜日は、雨が降ったりやんだりを繰り返していた。日曜日も同様との予報は外れ、雨こそ降らなかったものの、ようやくドライコンディションの戦いの中で調子を取り戻した者もいれば、逆に崩す者もいて、まさに一筋縄ではいかないバトルが繰り広げられていた。

2021 もてぎチャンピオンカップレース第4戦
開催日:2021年9月4~5日
開催地:ツインリンクもてぎ(栃木県茂木町)
主催:株式会社モビリティランド、M.O.S.C.

 もてぎ・菅生スーパーFJ地方選手権は、第4戦と第5戦の2レース開催。また、FJ協会の定める全国転戦シリーズの、「スーパーFJジャパン・チャレンジ」とのダブルタイトルとして行われた。 なお、予選・決勝とも土曜、日曜に完全に分けられていた。

 土曜の第4戦予選は小雨降る中、それぞれ計測1周目を終えた直後に、コース上で停止した車両があり、赤旗が出されてしまう。中断の間に雨足が増したこともあり、限りなく一発勝負となった。ポールポジション(PP)を獲得したのは、ここまで2連勝を飾り、ランキングのトップに立つ佐藤樹選手。「雨が強くなるという予報だったので、早めに出せて良かったです」と、ここ一番での集中力も強くアピールした。

 2番手はランキングでも2番手の伊藤慎之典選手が、3番手は前田大道選手が獲得。この一戦でフォーミュラカーレースデビューを果たした、昨年の全日本カート選手権OK部門チャンピオンの渡会太一選手は7番手となった。

佐藤樹選手(群馬トヨペット リノアED)の速さは、濡れた路面でも変わらず。唯一となる1分13秒代のタイムを記録して、もてぎ・菅生スーパーFJ第4戦のポールポジションを獲得した。

 第4戦決勝は引き続きの雨模様。佐藤選手が後続を一歩も寄せつけずに、ポール・トゥ・ウィンを達成し、念願のタイトルに王手をかけた。「理想に近いレースができたし、ラップタイムも安定していて、いつもよりミスなく走れました」と満足そう。2位は終始単独走行だった伊藤選手で、3位は予選6番手から順位を上げてきた四倉悠聖選手。注目の渡会選手はスターティンググリッドと同じ7位でデビュー戦を終えた。

もてぎ・菅生スーパーFJ第4戦は、PPの佐藤選手が危なげなくホールショットを決めると、そのまま3連勝を達成した。
もてぎ・菅生スーパーFJ第4戦の表彰台。左から2位の伊藤慎之典選手、優勝した佐藤選手、6番グリッドから追い上げた、3位の四倉悠聖選手が登壇した。
2台が参戦したもてぎ・菅生スーパーFJのジェントルマンクラス。第4戦は予選トップの伊勢屋貴史選手(アルビ☆あやし眼科☆10V.ED)が逃げ切ってクラス優勝を果たした。

 日曜の第5戦予選は、ドライコンディションが保たれた中、それぞれ徐々にタイムを上げていく展開に。佐藤選手が4戦連続でPPを獲得した。「もうちょっと(タイムを)上げられたかなと思うんですが、全戦ポール獲得で良かったです。4位に入れば(チャンピオン)確定となるんですが、もちろん勝って決めたいです」と佐藤選手はチャンピオン獲得に向けて意気込んでいた。

 2番手は渡会選手が獲得し、このレースウィークで初めてドライタイヤを装着して、なおの結果は適応力の高さを示したか。3番手は第4戦に続いて前田選手が獲得した。

 決勝では、フロントローの佐藤選手、渡会選手ともに出遅れ、ふたりの間を前田選手がすり抜けていく。だが、佐藤選手は3コーナーで早々とトップを奪還、逆に前田選手は130Rで伊藤選手にもかわされてしまう。一方、渡会選手は3周目には3番手まで挽回したものの、ファイナルラップにコースアウトして5位でフィニッシュとなった。

 一方、後続のバトルを尻目に、佐藤選手は徐々に差を広げていき、後続との差を2秒3差まで広げて4連勝を達成。そしてタイトルを確定させた。「嬉しいんですけど、理想の走りができなかったので、そういう悔しさもありますね」とは、なんとも贅沢な悩み。昨年までカートレースを戦っていた18歳は、まずひとつ頂点をつかむこととなった。

佐藤選手の今季はここまで全戦でPPを獲得し、2位だった初戦以外は4連勝とその強さを見せつけて、最終戦を残してチャンピオンを決めた。
もてぎ・菅生スーパーFJ第5戦の表彰台には左から、第4戦からひとつ結果を上げた2位の四倉選手、チャンピオンの佐藤選手、3位にはランキング2番手の伊藤選手が登壇した。
第5戦のGクラスは大貫直実選手(グレード1スズバンF109)が逆転勝利。第4戦優勝の伊勢屋選手と勝利を分け合った。

 佐藤選手が見事、今シーズンのチャンピオンを決めたこの連戦で、注目のドライバーがフォーミュラカーデビューを果たした。渡会太一選手は昨シーズン、全日本カート選手権の最高峰部門であるOK部門で、スーパーGT GT500クラスでも活躍する佐々木大樹選手と争い、チャンピオンを獲得したドライバーだ。

 今シーズンもひき続きOK部門に参戦を続ける傍ら、鈴鹿サーキットを中心にフォーミュラーカーの練習走行を重ねた渡会選手は、ようやくデビューの機会を得ることができたそうだ。

 第4戦、予選は「赤旗が出てしまったので、最初の1周が勝負だったんですが、そこでミスしてしまって、タイムを出すことができませんでした」と7番手を獲得。決勝ではスタートでひとつ順位を上げたものの、2周目のS字で「鈴鹿のS字と違ってもてぎはしっかりブレーキングをするのですが、突っ込み過ぎてしまいました」とコースアウト。それが黄旗区間だったため、ドライビングスルーペナルティを課せられるも、終盤のリカバリーで7位まで追い上げた。

 第5戦、自信があるドライコンディション下での予選で2番グリッドを獲得。しかし、「トップとの差はコンマ8秒ぐらいあるので、決勝までにうまく修正できたら、と思っています」と納得はいかない様子だった。決勝は「発進は良かったのですがギアを入れられなくて」と出遅れ、4番手まで退くも、3周目の2コーナーで3番手に浮上。その後、四倉選手と激しい攻防を見せたがファイナルラップ、4コーナーでのコースアウトが響き、5位でゴールするのが精いっぱいだった。

「練習ではこれほど他のクルマと接近して走れませんし、レースに出て得たものは沢山ありました。タイヤの温め方とか2周目くらいまでの速さは、カートで得た経験を活かせて強みになることが分かったんです」と反省ばかりではなく、自身の良いところも発見できたという渡会選手。次戦の舞台、SUGOは走行経験が無いサーキットだそうだがどのような走りを見せるのか、最終戦の注目点のひとつになりそうだ。

憧れの佐々木大樹選手のようなドライバーを目指して、全日本カートにもひき続き参戦するという渡会太一選手(オートバックス ドラゴコルセ)。デビュー戦で光る速さを見せてまたひとり、期待の若手が登場した。

 FIT 1.5チャレンジカップこともてぎ・菅生ツーリングカー地方選手権の第5戦は、ここまで2勝を挙げているHIROBON選手がPPを獲得。しかし、窪田俊浩選手が僅差で続いて、決勝での激戦が期待された。しかし、スターティンググリッドに並んだ時、止んでいた雨がまた降ってきたのが、ひとつのポイントになった。

 というのも、近頃の通称“Sタイヤ”は雨に強いタイヤとそうでないタイヤが、明確に分かれているからだ。仮に晴れタイヤと雨タイヤとしよう。HIROBON選手は前後ともに雨タイヤ、窪田選手は前に雨タイヤ、そして後ろに晴れタイヤをグリッド上で交換。その後ろに並んだ、松尾充晃選手や相原誠司郎選手を含む、多くの車両が前後ともに晴れタイヤを装着したままだった。

 絶妙のスタートを決め、窪田選手がトップに浮上、しかしHIROBON選手も遅れず続いていく。その一方で、前後ともに晴れタイヤを選んだ車両は、ずるずると順位を落とす羽目に。激しい一騎討ちは中盤まで続き、終盤はスパートをかけた窪田選手が逃げ切りに成功。2017年以来の優勝を飾った。3位も雨タイヤで臨んでいた芳賀邦行選手が獲得した。

「自分でもびっくりするぐらい、スタートが決まりました。しつこく前のレースのシグナル見ていて、自分でリズム取る工夫をしていて、それを信じて行ったら、いつもストール気味になるんですけど、前に出られちゃって。これは行くしかないなって。タイヤチョイスも良かったです。今回、新しい気づきもあったし、こんなに一生懸命になったのはFJ1600やっていた、25年ぶりかもしれません」と会心の勝利に窪田選手は大喜びだった。

N-ONEオーナーズカップやスーパー耐久にも参戦する、経験豊富なHIROBON選手(アンダーレNUTEC制動屋東野)が流石の走りでPPを奪取したが、またもやホールショットを決めることは叶わなかった。
窪田俊浩選手(J’S RACING☆FIT)はスタート直前で決断して交換したタイヤチョイスも功を奏したのか、会心の逆転劇で今季初勝利を挙げた。
FIT 1.5チャレンジカップ第5戦の表彰台。左から2位のHIROBON選手、優勝した窪田選手、3位には5番手スタートの芳賀邦行選手が登壇した。

 日曜に行われたJAF-F4地方選手権の第7戦は、予選・決勝ともにドライタイヤでの走行が許された。徳升広平選手が第5戦以来となるPPを獲得。ランキングトップながら、今年まだ優勝はなく、「今回こそ、しっかりと普通に走るだけで、いいところに行けると思います。今日、行かないで、いつ行くんだって感じ(笑)。応援してくれる皆さんのために頑張ろうと思います」と語っていたのだが……。

 不運は突然訪れた。徳升選手はグリッド寸前でストップ。そして空回りするドライブシャフト。マシンはピットに戻され、リタイアを余儀なくされる。これで一気に楽になったのが、予選2番手のハンマー伊澤選手だった。すぐ後ろに続くチームメイトでフォーミュラ2戦目、19歳の三井優介選手とワンツーフィニッシュの期待がかかるも、そうはさせじと黒沼聖那選手と金井亮忠選手も背後に食らいついて離れず。

 だが、三井選手は足回りにトラブルを抱え、9周目の3コーナーでコースアウトしてリタイア。これで黒沼選手と金井選手が2番手、3番手に繰り上がるも、トップのハンマー選手はポジションを最後まで死守。総合優勝とジェントルマンクラス優勝を総なめにした。

「練習はずっと調子悪くて、感覚が掴みきれていなかったんですが、予選走っているうちにだんだん調子が戻ってきて、決勝では自信持って行けました」とハンマー選手。この優勝で徳升選手を逆転、総合でもランキングトップに躍り出た。

トラブルでポールシッターの徳升広平選手が不在となったJAF-F4第7戦は、ハンマー伊澤選手と三井優介選手、ハンマーレーシングのワン・ツー体制でスタートが切られた。
ジェントルマンクラスのハンマー選手(令和雪合戦ハンマーR☆ハヤテ)はファステストラップも叩き出して優勝、総合もGクラスもトップで第7戦を制圧した。
JAF-F4第7戦の表彰台。左から2位の黒沼聖那選手、優勝したハンマー選手、3位の金井亮忠選手が登壇。
JAF-F4第7戦Gクラスの表彰台には、左から2位の河野靖喜選手、総合も制したハンマー選手、クラス4番手スタートだった武居義隆選手が登壇した。

 もてぎVITAは第4戦で、これが最終戦。前回挙げた2勝目でチャンピオンを確定させた、いむらせいじ選手欠場の中、実に40年ぶりというPPを獲得したのが、イシカワヨシオ選手だった。「前はサバンナRX-7の頃。本当はヴィッツでも獲ったことあるんだけど、その時は雪で中止になってるんでね」と苦笑いしつつ語ってくれた。

 が、決勝のイシカワ選手は予選2番手の佐藤考洋選手の先行を許したばかりか「右コーナーばかり滑っちゃって」ペースが上がらず、次第に順位を落としてしまう。1周目の2コーナーで接触し、ストップした車両があったことから、2周にわたってセーフティカー(SC)が導入されるも、佐藤選手はリスタートも決めて早々に独走態勢に持ち込んでいった。「前半で稼いで、終盤は後ろを見ながらセーブもできて。ようやく勝てました。夢がかないました」とVITAでの初優勝を大いに喜んでいた。

 しかし、レース後には一波乱も。SC導入時に追い越しがあった2位、4位でゴールのドライバーに30秒加算のペナルティがあったからだ。これにより、イノウエケイイチ選手が2位に、そしておぎねぇ選手が3位に繰り上がることとなった。

佐藤考洋選手(TIPO FUCHS ETA)は2番手を獲得した予選での好調さを決勝でも発揮、独走で第1戦以来の表彰台を、VITA初優勝という最高のかたちで飾った。
もてぎVITA第4戦の暫定表彰台。左から2位の相馬充寿選手、優勝の佐藤考洋選手、3位のイノウエケイイチ選手。ペナルティにより相馬選手のレース結果に30秒が加算されたため、イノウエ選手が2位に、おぎねぇ選手が今季初のトップ3となる3位に繰り上がった。

 もてぎCIVIC第3戦、予選ではポイントリーダーの関直之選手を最後の1周で武田光司選手が逆転して、初めてのPPを獲得。「最後の1周だけなんですけど、アタックしてそれが決まりました」と武田選手。決勝でもホールショットを決めて、武田選手がトップでレースを開始するも、関選手は容赦なかった。3周目の3コーナーでトップに躍り出て、そのまま逃げ続けていった。

 しかし、セミウェットだった路面が徐々に乾いていったことで、中盤からペースを上げてきたのが林大輔選手。8周目の4コーナーで武田選手をかわし、その勢いで最後は関選手の真後ろまで迫ったが、コンマ4秒差で逆転ならず。「あと1周あれば」と林選手は悔しがった。優勝した関選手は「タイヤ選択が良くも悪くも。予選の1周目で飛び出して、今日は最後尾だな、なんて思っていたことを思えば、なんとか勝てて良かったです」と今季2勝目を振り返ってくれた。

初PPを獲得した武田光司選手(フラット137KRACシビック)は予選最後の6周目にアタックを敢行、0.032秒という僅差で関直之選手を下した。
関直之選手(MODE KRac DREG6)は林大輔選手の猛追をしのぎきり、今季2勝目。チャンピオンを大きく引き寄せる1勝となった。
もてぎシビック第3戦の表彰台。左から5番グリッドから追い上げた、2位の林選手、今季2勝目を挙げた関選手、3位はポールシッターの武田選手が登壇した。

 ロータスカップジャパンは、これが3戦目。予選はここまで2連勝中、クラス1の小林一景選手を抑えて同じクラスの清水友一選手がPPを獲得。「自分でもそんな狙っていたわけじゃなく、気楽に行った方が良かったようで。構えなかったのが良かったようですね」と清水選手。

 決勝でもトップ発進を果たし、1周目だけで小林選手に1秒4の差をつけた。しかし、まるでスイッチが入ったかのように猛追した小林選手は、次の周にコンマ2秒差にまで縮めると、3周目のV字コーナーでトップを奪取。その勢いのまま後続を引き離していき、見事開幕3連勝を達成することとなった。

「クルマは調子良くて、普通に安定して走っていったら、トップに立った後は後ろも離れていったので良かったです。予選はあんまりドライを走っていなくて、どこまでブレーキでいけるのかわからなかったので、ちょっと試しながらになっちゃったんですけど、決勝では合わせることができました」と小林選手。レース展開以上にクールに走っていたことを明かしてくれた。

ロータスカップジャパン第3戦のPPは、第1戦以来の参戦となったクラス1の清水友一選手(BluesyロータスEXIGE)が獲得した。
クラス1の小林一景選手(auto-moda EXIGE)はPPこそ清水選手に譲ったものの、決勝では連勝中の勢いそのままに逆転、3連勝を飾った。
ロータスカップジャパン第3戦の表彰台。左から2位の清水友一選手、3連勝を果たした小林一景選手、3位の郷田鉄夫選手と、クラス1の選手が占めた。

 一方、クラス1と混走のクラス2では飯田敏雄選手が予選で、2番手の篠原祐二選手をほぼ1秒半も引き離したものの、決勝では立場が一転。オープニングラップに激しい攻防を繰り広げた後、90度コーナーでトップに立った篠原選手が、徐々に引き離していったからだ。「前回、マシントラブルで6位まで落ちてしまったので、今回は本当に嬉しいですね」と開幕戦以来の2勝目を篠原選手は心から喜んでいた。

トヨタ製の直列4気筒エンジンを積むロータス車両で競われるクラス2の予選トップは、エキシージを駆る飯田敏雄選手(ロータス横浜センボクEXIGE)が獲得した。
クラス2の決勝は、富士スピードウェイでの開幕戦を制したエリーゼを駆る篠原祐二選手(クラブ・ウィザム 4CR-ELISE)が逆転、優勝という最高のかたちで、表彰台にも登れなかった第2戦の雪辱を果たした。
ロータスカップジャパン第3戦、クラス2の表彰台には左から、2位の飯田敏雄選手、優勝の篠原祐二選手、ひとつ順位を上げた3位のパパシュー選手が登壇した。

フォト/石原康、JAFスポーツ編集部 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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