メディア向け「JAFモータースポーツミーティング」開催。各種関連団体の働きかけによる外国籍選手の入国実現など、国内モータースポーツの近況報告がなされる
2021年10月8日
9月30日、JAFモータースポーツ部による「JAFモータースポーツミーティング」と題した国内モータースポーツに関する近況報告・説明会が開催され、日本モータースポーツ記者会(JMS)所属記者らや報道機関に向けたオンライン形式による情報公開の場が設けられた。
「JAFモータースポーツミーティング」JMS日本モータースポーツ記者会はじめ報道機関への国内モータースポーツ近況報告・説明会
開催日:2021年9月30日
開催地:日本自動車会館10階JAF本部会議室およびオンライン
主催:一般社団法人日本自動車連盟(JAF)モータースポーツ部
新型コロナウイルス感染症は、新たな変異株の出現により、さらなる感染拡大が懸念される事態となった今年の夏。折しも「東京2020オリンピック・パラリンピック」の開催と重なった時期でもあり、全国の自治体からは緊急事態宣言などが発出され、全国的に感染拡大への警戒体制が強化された。
それを受けたJAFは、8月3日に「新型コロナウイルス感染症防止対策に係る対応について」を公示。競技会等の延期などに伴う手数料免除といった特例措置の継続などが明らかにされ、国内モータースポーツ開催にあたるコロナ対策ガイドラインとなっている「基本的な感染対策のあり方の例」も「Ver.5」へとアップデートされた。
このVer.5では、FIA国際モータースポーツ競技規則付則S項に準じて、イベント会場の高密度エリアに立ち入る必要のある参加者に96時間前、会場に到着して24時間以内のPCR検査を求めることを推奨する他、WHOが認定するワクチン接種後の有効期間の解釈などが追加され、より厳格な行動を求める内容へと刷新されていた。
国内レースのFIAシリーズや全日本選手権、全日本カート選手権については、大幅なカレンダー変更はなかったものの、全日本ラリー選手権では第8戦横手、全日本ジムカーナ選手権では第8戦鈴鹿南、全日本ダートトライアル選手権では第5戦切谷内と第6戦野沢が中止された。その一方で、スーパーフォーミュラやスーパーGTでは、日本政府による査証の新規発給停止が継続されていた影響により、来日できない外国籍ドライバーがおり、日本人ドライバーなどによる代役参戦などが続いていた。
そして、9月の富士スピードウェイのFIA世界耐久選手権(WEC)と10月の鈴鹿サーキットのFIAフォーミュラ1世界選手権(F1)、愛知・岐阜エリアで11月開催予定だったFIA世界ラリー選手権(WRC)の開催断念が主催団体から発表され、9月に北海道で行われたFIAアジア・パシフィックラリー選手権(APRC)日本ラウンドについても、今季はFIAタイトルを外して開催されることになった。
そんな折、9月30日にはJAFモータースポーツ部による「JAFモータースポーツミーティング」と題した、日本モータースポーツ記者会所属記者や推薦記者、モータースポーツ系報道機関を対象とした、国内モータースポーツに関するコロナ禍における近況報告・説明会がリモート形式で行われた。
JAFモータースポーツ部がメディアに対して直接情報発信することは近年では珍しい試みで、今回はJAFモータースポーツ部の村田浩一部長が、オンライン参加のメディアに対して近況の報告・説明を行った。
その内容は、新型コロナウイルス感染症感染拡大が続く状況において、国内モータースポーツ統轄団体として、どのような拡大防止対策を実施してきたのか、そして、カーボンニュートラルや脱炭素社会の実現に係る対応の現状報告、さらに、10月に予定されている「モータースポーツジャパン(MSJ)2021 in JAF鈴鹿グランプリ」の概要や、モータースポーツ振興委員会による「ドライバー・オブ・ザ・イヤー」の概要、そしてレンタル・レジャーカート愛好家向けに来年から導入する「ゴーカートライセンス」発給制度の概要などモータースポーツの振興に資する諸施策の実施状況などが明らかにされた。
そして、世界選手権三大会や外国籍選手の参加に係る対応の報告ということで、WEC富士ラウンドやF1日本グランプリ、WRC日本ラウンドが、今季も開催断念に至った経緯について詳細報告が行われた。
それによれば、まず2021年4月に所管省庁であるスポーツ庁に対して「特段の事情」による入国の相談が行われ、併せて、自由民主党モータースポーツ振興議員連盟総会における古屋圭司会長の助言などにより、GTアソシエイション(GTA)、日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ)、日本レースプロモーション(JRP)、KYOJO、WRC、ジェイアールシーエー(JRCA)、スーパー耐久機構(STO)からなるモータースポーツ連絡会から「2021年国内各シリーズの外国人選手・スタッフの入国制限に対する特例措置適用に関する要望書」が提出されている。
その際に、モータースポーツに関する要望は個々・個社ではなく組織・団体が一括すること、かつこれらの要望はスポーツ庁が窓口対応することが確認されている。
また、7月には関係20団体(日本自動車工業会、FIA、WEC・F1・WRC主催団体、トヨタ自動車、NISMO、本田技研工業など)の総意として「モータースポーツ競技会の開催・参加に伴う水際強化措置等の代替・特例措置適用」についての嘆願書がスポーツ庁に提出されることになった。
この際にスポーツ庁からは、14日間待機を始めとする水際対策強化に対する諸事項については個別に緩和措置を講じることは難しく、現在可能とされている範囲で、待機期間中に練習や大会への出場を可能とする代替措置を適用することへの支援はあり得る意向が確認されている。
また、要望・嘆願にあたっては、公益性を主張するための具体的な内容を記載する由の助言もあったことから、公益性という要素については、国際オリンピック委員会(IOC)承認のFIA並びに国内モータースポーツ統轄団体であるJAFが公認して開催されること、開催地域の活性化などを目的とした自治体などの施策に密接したスポーツイベントであり、単なる地域振興や観光集客事業の領域に留まらず、開催地域内外への投資効果や知名度向上など、有形無形かつ広範な産業分野に渡って経済効果が見込まれることなどを主張。
さらに、日本の重要戦略分野の一つでもある2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略に対する自動車産業の技術力を活かす場でもあり、自動車産業の発展に大いに貢献することなども唱えて、前述の嘆願書を提出することになった。
この嘆願によりスポーツ庁は、統轄・非営利団体であるJAFが、責任団体としてそれぞれの主催・所管団体と共に対応することを前提として、「特段の事情による公益性と緊急性があること」および「水際措置の代替措置を適用すること」などを主張しつつ、特定の国と地域の外国人の入国や代替措置を認める方向で関係省庁の説得や個別協議に対応するという段階へ進み、それを受けた三大会の主催・所管団体は、必要な入国や防疫措置などに関する計画を策定する流れとなっていったという。
併せて、外国籍選手の入国も9月30日に実現されたことも報告された。今回の報告により、東京五輪と同様に、モータースポーツも世界規模の大会が開催できる環境が短期間で整備されていたという事実が明らかになった。これは業界にとってかなり明るいニュースであり、来季以降に向けて、国内モータースポーツ界が大きく前進する契機を得たとも言えるだろう。
同じ9月30日には、緊急事態宣言の全解除が政府から発表されている。しかし、感染拡大が終焉したわけではないため、引き続き感染拡大防止策を徹底しながら競技会開催・参加に臨むことが求められている。
フォト/JAFスポーツ編集部、石原康 レポート/JAFスポーツ編集部