開幕戦の奥伊吹で連敗した中村直樹選手が巻き返しを図り、ランキング首位を奪取!

レポート ドリフト

2021年10月13日

競技ドリフトの最高峰として広く認知されるようになってきたD1グランプリ。今年は5大会すべてが2戦連続で全10戦が予定されている。第3戦&第4戦のエビスラウンド連戦が新型コロナの影響で延期となる状況の中、奥伊吹モーターパークで第7戦&第8戦の連戦が予定通りに開催された。

2021 D1グランプリシリーズ第7戦&第8戦 2021 OKUIBUKI DRIFT
開催日:2021年10月2~3日
開催地:奥伊吹モーターパーク(滋賀県米原市)
主催:株式会社サンプロス

 第7戦&第8戦の会場となった奥伊吹モーターパークは、滋賀県米原市にあるグランスノー奥伊吹(旧称:奥伊吹スキー場)の駐車場でもある。この10月上旬には緊急事態宣言が解除されたこともあり、会場には多くの観客が訪れた。メーカー&ショップのブースも並び、走行時間外にも楽しめるイベントとなった。

 そして第1戦&第2戦の舞台でもあるこの特設コースは、今回も同じコースレイアウトが採られた。セクター切りやゾーンもほぼ同様の設定だ。エントリーは全30台で、注目はポイントランキングトップの横井昌志選手(NANKANG TIRE DRIFT TEAM D-MAX)と、D1ストリートリーガル時代からライバル関係にあった中村直樹選手(MUGEN PLUS team ALIVE VALINO)の戦いだろう。

入場者数の制限はあったものの、新型コロナウイルス感染予防対策を実施しながら有観客での開催となった第7戦&第8戦。2021年の開幕戦と同じ奥伊吹モーターパークで開催された。
ノボリ旗の部分が進入となるセクター1&2で、最高速度は予選通過レベルだと110~115km/hをマークしていた。右に大きく曲がる区間のアウトとインに「ゾーン」が指定され、そこを通過しないと大幅な減点となる。

 前戦からのインターバルが長かったために後半戦に向けた仕様変更を施したチームも多く、第1戦と同じコースでも苦戦するドライバーが目立った。そんな中、98.32点をマークして暫定トップとなった横井選手だが、まだ走行していないグループが半分残っているのに2本目をキャンセル。

 そして次のグループの蕎麦切広大選手(TEAM SHIBATA SAILUN TIRE)が唯一の99点台をマークし、初の単走優勝を遂げる。D1GP参戦2年目としては快挙だ。横井選手は単走優勝を狙うよりもタイヤ温存を優先する判断だったようだ。

今年のD1GPエントラント最年少である24歳の蕎麦切広大選手。昨シーズンからフルエントリーし、13戦目で初の単走優勝を獲得した。
蕎麦切選手のVR38DETT改を搭載するインフィニティQ60は、今回からGTウイングを装着。ステーの構造がユニークで、給油やメンテナンスのためにトランクを開けるときには後方に倒れる。見た目の美しさを追求しているのもドリフトマシンならでは。

 迎えた追走では、中村選手が奥伊吹の第2戦で負かされたシリーズランキングトップの横井選手、第3戦&第4戦で連敗を喫した小橋正典選手(LINGLONG TIRE DRIFT Team ORANGE)を相手に、リベンジを果たしてトーナメントを勝ち進む。

 そして決勝では、今年初参加にして早くも上位に食い込む実力を見せる目桑宏次郎選手(alpinestars LINGLONG G-MEISTER)との対戦となり、接近度を評価する「後追いポイント」で10を取られたあとに12の満点を出して撃破。まさに完全勝利と言っていいだろう。

 これまで何度も優勝を経験している中村選手だが、今回の勝利は格別だったと思われる。また、準決勝から完全にナイターとなった状況下での名バトル連続に観客は大いにわいた。

ヴァリノタイヤを履く選手はリアに高いグリップ力を発揮するペルギア08RSを選ぶ中、中村直樹選手は08RSのグリップを上回る08SPをチョイスしていた。
第7戦終了時点でのシリーズランキングはトップを横井昌志選手がキープし、中村選手が2番手に浮上した。優勝の中村選手には100万円、2位の目桑宏次郎選手には30万円が贈られる。
第7戦の優勝は中村選手、2位は目桑選手、3位は小橋正典選手、4位は齋藤太吾選手、5位は横井選手、6位は北岡裕輔選手、7位は高橋和己選手、8位は上野高広選手、9位は蕎麦切選手、10位は末永正雄選手。

 朝の練習走行でGRスープラの齋藤太吾選手が大クラッシュしてリタイアという幕開けとなった第8戦。前日の優勝で勢いに乗る中村選手は1本目で98.9を出して暫定トップに立つと、残り1グループがある中、2本目をキャンセル。追走に向けてタイヤを温存した。

 今回の2DAYで中村選手がライバルとした小橋選手がウォームアップ走行でトラブルを起こしてリタイアしていたこと、そして横井選手が自分の得点より低かったことも、2本目キャンセルの理由としてあったそうだ。

 それ以降のグループでも中村選手の得点を上回る選手が現れなかったため、第3戦の筑波ラウンドに続く今季2度目の単走優勝を奪取した。

単走での順位を気にしながらも追走優勝の方にウエイトを置いて戦っていたという中村選手。第8戦の単走優勝を素直に喜んだ。
トップチームの多くが2JZをベースに3.4Lや3.6Lに排気量アップするのに対し、中村シルビアは3.1Lにとどめている。この仕様はローコスト製作かつ高回転の特性を狙い、レブリミットのギリギリを使う走りに合っているのだろう。

 高次元での安定感を手に入れた中村選手に、ほか15名の追走進出者には「誰が中村選手を止めるのか?」の雰囲気が漂っていた。しかし、中村選手は最初の対戦でD1ストリート時代のライバルでありホームコース(名阪スポーツランド)が同じ田中省己選手(TEAM SAILUN TIRE)に圧勝すると、驚異のルーキー目桑選手、VR38改を搭載した86の完成度を高めてきた藤野秀之選手と続けて撃破。

 迎えた決勝ではライバル横井選手のチームメイト、末永正雄選手(NANKANG TIRE DRIFT TEAM D-MAX)と対戦。先に先行となった中村選手は持てるパワーをすべて生かして逃げ切り、末永正雄選手に詰め寄るスキを与えなかった。そして前後を入れ替えた2本目には圧倒的な後追いポイントを叩き出して勝利。一気にシリーズランキングトップの座を奪取したのだった。

 D1ライツとの共催、クラッシュ処理に時間がかかってナイターとなった第7戦と違い、第8戦は日のあるうちに終了。第4戦までランキング首位だった横井選手はこの連戦で中村選手に獲得ポイントを抜かれて2番手に転落。シリーズも残りあと4戦、今年は中村選手VS横井選手の対決がさらに激化するはずだ。

準決勝での中村選手VS藤野選手はともにD1ストリートリーガルの覇者同士ゆえに激しい接近戦となった。しかし中村選手の寄せはゼロクリアランス。圧倒的な後追い点が加算された中村選手が勝利した。
2日間で末永正雄選手と横井選手のふたりとも中村選手に敗れてしまったNANKANG TIRE DRIFT TEAM D-MAXは悔しいかぎり。しかし末永正雄選手はシリーズランキング4位に浮上、チームランキングでは首位だ。
第8戦の優勝は中村選手、2位は末永正雄選手、3位は横井選手、4位は藤野秀之選手、5位は高橋選手、6位は末永直登選手、7位は松山北斗選手、8位は目桑選手、9位は松井有紀夫選手、10位は村上満選手。

フォト/SKILLD川﨑隆介 レポート/SKILLD川﨑隆介、JAFスポーツ編集部

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