佐々木大樹選手と荒尾創大選手のTONYKART勢がSUGO大会の優勝を独占!

レポート カート

2021年10月22日

全日本カート選手権OK部門のシリーズ終盤戦に差し掛かる第7戦/第8戦がスポーツランドSUGO西コースで開催。第7戦では佐々木大樹選手(TONYKART RACING TEAM JAPAN)がウェットレースを独走して今季2勝目を挙げ、ドライコンディションに変わった第8戦では荒尾創大選手(TONYKART RACING TEAM JAPAN)が今季3勝目を遂げた。

2021年JAF全日本カート選手権OK部門 第7戦/第8戦
開催日:2021年10月16~17日
開催地:スポーツランドSUGO西コース(宮城県村田町)
主催:SSC

 全日本OK部門の2021シリーズは、この大会を含め残すところ2大会。チャンピオン争いはいよいよ大詰めだ。舞台はシリーズ最北端の地、スポーツランドSUGO西コース。参加台数は今季最少なのだが、それでも31台に達し、2021シリーズの活況ぶりを改めて印象づけた。

 大会1日目の土曜日は終日雨。予選ヒートのスターティンググリッドを決めるタイムトライアルでは、SUGOマイスターとして名高いベテラン佐々木選手が、フルウェットのコースで44秒778のトップタイムをマークした。2番手のチームメイト荒尾選手とは1000分の3秒差だ。3、4番手には金子修選手(TEAM WOLF)と平安山良馬選手(TEAM EMATY)が続き、ブリヂストン・ユーザーがトップ4を占めた。

 それに続く5、6番手は、ダンロップを履く野村勇斗選手(EXGEL with MASUDA RACING)と朝日ターボ選手(MASUDA RACING PROJECT)。トップの佐々木選手と野村選手のタイム差は0.141秒で、この日のウェットコンディションではブリヂストン勢とダンロップ勢の速さがほぼ拮抗していた。

 だが、第7戦の予選でダンロップ勢にいきなり苦難が降りかかる。17周の予選ヒートが始まると、オープニングラップの3コーナーで野村選手が、続く4コーナーで朝日選手がスピンを喫したのだ。このヒートは佐々木選手がトップで、やや離れて荒尾選手が2番手でゴール。

 11番グリッドから浮上の高橋悠之選手(BirelART Access Racing)と金子選手の3番手争いは、再々逆転で金子選手が先着した。高橋選手に続いて5番手でゴールしたのは、1周目に野村選手とともにスピンしながら、トップを上回るハイペースで挽回してきた鈴木斗輝哉選手(K.SPEED WIN)だった。

 一夜明けて大会2日目の日曜日。第7戦の決勝が始まる9時20分には、昨日からの雨がまだ降り続いていた。それに加えて風も強まり、手がかじかむような寒さだ。

 全車レインタイヤを履いての28周のレースは、オープニングラップから波乱の展開となった。スタート直後の1コーナーで鈴木選手が、直後の3コーナーで荒尾選手がスピンを喫し、ポイントランキングの暫定3位と暫定1位が下位に沈んだ。さらに金子選手もストップ。ポールの佐々木選手は1周目で約1秒のリードを手にして独走を始めた。

 3周目、3番手の遠藤照剛選手(Rosa Drago CORSE)がコースアウト。代わって7番グリッドから発進した洞地遼大選手(K.SPEED WIN)が3番手に上がってきた。洞地選手はこのヒートの最速ラップをマークしながら前を行く高橋選手を追い上げ、7周目に2番手へと浮上した。

 だが、この時点で4秒弱のアドバンテージを得ていた佐々木選手は、自分のペースを守ってスリッピーなコースを快走。右拳を握って最終ラップの最終コーナーを回り、勝利のチェッカーをくぐった。開幕戦以来の今季2勝目、復活の独走ウィンだ。

 ルーキーの洞地選手は開幕戦以来の2位獲得で自己最上位タイのフィニッシュ。3位の高橋選手は2戦連続の表彰台となった。ブリヂストン勢が表彰台を占拠した一方で、ダンロップ勢では朝日選手が7ポジションアップの4位を、野村選手が19ポジションアップの6位を獲得。

 苦戦を強いられていたヨコハマ勢も混迷の状況を突いて順位を上げ、渡会太一選手(Drago CORSE)が今季最上位の10位、三村壮太郎選手(Croc Promotion)が12位となってポイント獲得を果たした。

「一昨年のSUGOで惨敗してから、ブリヂストンさんがすごく頑張ってタイヤを開発してくれて、今回の寒くなったSUGOで優勝できたことはその進歩の証しです。雨量の変化も大きかったので、適正なタイヤの内圧を28周の中のどこに合わせるのかが難しかったけれど、昨日より気温が下がったことで高めの内圧でいって、狙いどおり前半から逃げ切ることができて良かったです。チャンピオンも意識しているので、低めの内圧でいって序盤に後ろからバシバシやられるよりは、序盤に逃げ切ってしまった方が後半に詰められてもリスクが少ないので、その点では作戦どおりでした。練習でも調子は良くなかったけど、TTトップから(予選も決勝も)フルにポイントを獲れたことは久しぶりだったので、運も向いていたのかなと思います」と語る佐々木大樹選手。
第7戦の表彰式。左から2位の洞地遼大選手、1位の佐々木選手、3位の髙橋悠之選手が登壇した。

 11時過ぎ、雨はほとんど止んだが路面はなかなか乾かず、第8戦の予選も全車レインタイヤ装着で行われた。このヒートでは佐々木選手と荒尾選手がチームメイト同士で接近戦を繰り広げ、荒尾選手が僅差で佐々木選手を下して決勝のポールを手に入れた。

 14時45分、この大会最後の戦いとなる第8戦の決勝が始まった。厳しい冷え込みは変わっていないが、コースは黒く湿った部分がいくらか残っているところまでコンディションが回復し、この大会で初めて全車スリックタイヤでのレースとなった。

 28周のレースの序盤戦で衝撃的なスピードを披露したのは金子選手だ。4番グリッドから2周で2番手に上がり、3周目に荒尾選手もパスして先頭に立つと、たちまち1秒のリードを築いた。

 ただし、金子選手のこの快進撃はタイヤライフ度外視での特攻だった。レース後に「僕は誰よりタイヤを使っていました。まだトップを走ったことがなかったので、あれこれ考えず、まずはトップに立ってみようと思いました」と語ったOK部門2年目の金子選手は、10周ほどでタイヤの性能低下が始まって一気にポジションダウン。最後はリタイアに終わったのだが、初めてトップの景色を目にしたことで得られたものは大きかったようだ。

 金子選手と入れ替わりにレースの主導権を握ったのは洞地選手だった。5番グリッドからハイペースで順位を上げてきた洞地選手は、レースの折り返し点で金子選手から先頭の座を引き継ぐと、そのままレースをリードしていった。

 しかし、1年先輩の荒尾選手は洞地選手の真後ろを走りながら相手の走りを焦らず観察。やがて洞地選手のタイヤが厳しくなってきたことを察知した。それでもすぐには勝負に行かず、洞地選手のタイヤの劣化が進むのをじっくりと待ってから残り8周でトップに復帰。そして一気に後続を突き離した。

 その姿は、いささか荒っぽい走りを見せていた2年前のFS-125部門時代とはまるで別人。ライバルたちの“瞬間最大風速”に惑わされることなく冷静なレース運びを終始貫いた荒尾選手が、今季最多勝となる3勝目を獲得だ。洞地選手は2戦連続の2位を得たのだが、初勝利にあと一歩届かない歯痒い結果に表情は曇りがちだった。

 ドラマはこれで終わりではなかった。8番グリッドからスタートしたダンロップ・ユーザーの井本大雅選手(CUORE)が、レース中盤からぐいぐいと順位を上げ、最終ラップに佐々木選手もかわして3位をゲット。優位に立っていたブリヂストン勢から表彰台の一角を奪ってみせたのだ。

 これは井本選手にとっては1年半ぶりの、新生チームのCUOREにとっては初めての表彰台。満面の笑顔でマシンを降りてきた井本選手には、チームの垣根を越えて次々と祝福の声が寄せられていた。

 佐々木選手は第7戦とは一転、優勝争いに絡むことはできなかったが、苦境の中で4位という最善の結果をつかみ取り、シリーズポイントを206点に伸ばしてポイントリーダーの座に返り咲いた。同2番手の荒尾選手は204点と、わずか2点差。残る今季ラストのもてぎ大会には、どんな結末が待ち受けているのだろう。

今シーズン3勝目を挙げた荒尾創大選手。「第7戦でスピンしてしまって勝てなかったことは悔しいけれど、なんとか第8戦で勝つことができて良かったです。決勝の前あたりにちょっと雨が降る天気予報になっていたので、予選は(リスクの少ない)トップになっておきたかった。金子選手は全力で走っていると思ったので、僕も全力で走れば追いついただろうけれど、路面が悪くて序盤でタイヤを荒れさせてしまったら後半までもたないので、無理には追いかけませんでした。洞地選手はちょっとずつタイヤがキツくなっていく感じだったので、自分は楽にレースすることができました。ポイントの面では有利な状況ではないけれど、次戦のもてぎは得意なコースなので、最終戦も全力で戦ってシリーズチャンピオンを獲得したいと思います」と抱負を語った。
第8戦の表彰式。左から2位の洞地選手、1位の荒尾選手、3位の井本大雅選手が登壇した。
チーム設立初年度となる『CUORE』は、第8戦3位獲得の井本選手が所属するチームだ。オーナーの伊沢拓也氏は、同日に開催の全日本スーパーフォーミュラ選手権でツインリンクもてぎへ行っており、そこではアドバイザーとして携わるRed Bull MUGEN Team Gohの大津弘樹選手が初優勝を遂げた。井本選手のチーム初表彰台獲得は、伊沢オーナーへのダブルの喜びをプレゼントするものとなった。

フォト/JAPANKART レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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