勝田範彦選手/木村裕介選手がタイトル獲得へ逆転王手! JN2クラスとJN4クラスのシリーズチャンピオンが確定

レポート ラリー

2021年10月29日

全日本ラリー選手権第10戦「第48回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ 2021」が、岐阜県高山市郊外の道の駅モンデウス飛騨位山を拠点に開催された。カレンダーの上ではシリーズ最終戦となる第10戦だが、第4戦の久万高原ラリーがこのラリーの2週間後となる10月29~31日に順延されているため、シリーズはこの第10戦を含めて残り2戦となり、いよいよ大詰めを迎える。

2021年JAF全日本ラリー選手権第10戦「第48回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ 2021」
開催日:2021年10月15~17日
開催場所:岐阜県内
主催:M.C.S.C.

 今年で48回目の開催という長い歴史を誇るM.C.S.C.ラリーハイランドマスターズは、かつては過酷なハードグラベルをひた走るカーブレイクラリーと呼ばれていたが、2008年にグラベルからターマックに移行してからは、0.1秒を争うスプリントラリーとして名勝負が繰り広げられている。

 今年も、初日はダウンヒルを主体とした6SS、2日目はヒルクライムを主体とした6SSの計12SSが設定され、クラスによっては最終SSまで目が離せない僅差の勝負が展開された。なおSS7はコースカーの状況報告により、キャンセルとなった。

サービスアウトのTCでは防護具に身を包んだオフィシャルによる検温などが実施され、新型コロナウイルス感染症対策が採られた。
予報通りレグ1深夜から雨が降り出した岐阜県高山市。レグ2ではいわゆる“ウェット宣言”が出された。

 福永修/齊田美早子組がシリーズトップに立つJN1クラスは、グラベル2連勝を飾って福永/齊田組を猛追する勝田範彦/木村裕介組がSS1でベストタイムを奪うが、福永/齊田組も0.8秒差のセカンドベストをマークし、早くもスプリント勝負の様相を呈した。

 ところが、続くSS2で福永/齊田組が痛恨のスピン。コース復帰にも手間取り、SS2でも連続ベストタイムを奪った勝田/木村組から23.4秒差のクラス8番手まで順位を落としてしまう。

 奴田原文雄/東駿吾組と柳澤宏至/保井隆宏組が激しい2番手争いを展開する中、福永/齊田組はSS3からSS6まで4連続ベストタイムをマークし、2番手まで浮上。初日トップの勝田/木村組とのタイム差を17.6秒差に縮める一方、3番手の柳澤/保井組とは0.1秒差、柳澤/保井組と4番手の奴田原/東組とのタイム差が0.5秒と、2番手の福永/齊田組から4番手の奴田原/東組までがコンマ1秒の僅差の勝負を展開するという、これまで以上にスプリント要素が強いラリー展開となった。

 初日とは一変してウェットコンディションとなった2日目は、オープニングのSS7が路面コンディション悪化のためにキャンセル。仕切り直しとなったSS8は福永/齊田組がベストタイムを奪い、追い上げを開始する。ところがSS9で福永/齊田組はまたもやスピン。16.4秒差まで縮めた勝田/木村組とのタイム差が23.1秒に開いてしまう。

 だが、福永/齊田組は最後まであきらめずにハードプッシュを続け、SS10とSS11を連取。この2本のSSだけで勝田/木村組とのタイム差を9.6秒差にまで縮めてくる。0.1秒を争う展開の中、脅威的な追い上げをみせる福永/齊田組だが、最終SSとなるSS12は勝田/木村組がベストタイムを奪取。トータル11.0秒差で3連勝を飾った。

 この結果、シリーズランキングは勝田選手が福永選手に3点差をつけてトップに浮上。シリーズチャンピオンに逆転王手をかけることとなった。また、3位にはウェットコンディションを味方につけた鎌田卓麻/松本優一組が入賞を果たした。

JN1クラス優勝は勝田範彦/木村裕介組(GR YARIS GR4 Rally)。
セレモニアルフィニッシュのゲートをくぐるJN1クラス1位の勝田/木村組。2位は福永修/齊田美早子組、3位は鎌田卓麻/松本優一組。

 ヘイキ・コバライネン/北川紗衣組がタイトルに王手をかけているJN2クラスは、そのコバライネン選手が初日に6SS中5本のSSでベストタイムをマーク。ウェットコンディションとなった2日目は、多くの選手がウェット用タイヤを選択する中、初日と同じくドライタイヤで挑んだコバライネン選手が、この日すべてのSSでベストタイムをマークし、今季4勝目を獲得。自身初となる全日本ラリーのチャンピオンを確定させた。

JN2クラス優勝はヘイキ・コバライネン/北川紗衣組(AICELLOラックDL速心GT86R3)。
セレモニアルフィニッシュのゲートをくぐるJN2クラス1位のコバライネン/北川組。2位は中平勝也/島津雅彦組、3位は上原淳/漆戸あゆみ組。
JN2クラスのドライバーチャンピオンをコバライネン選手が、コ・ドライバーチャンピオンを北川選手が確定させた。

 21歳の大竹直生/藤田めぐみ組がシリーズランキングトップに立つJN3クラスは、その大竹選手が初日から「思うようにクルマが曲がってくれない」とセッティングに悩み4位と低迷。一方、シリーズで大竹/藤田組を追う鈴木尚/山岸典将組と長﨑雅志/秋田典昭組は、快調に優勝争いを展開し、鈴木/山岸組が今季2勝目、長﨑/秋田組が2位でフィニッシュ。大竹選手とのポイント差を鈴木選手が12点、長﨑選手が14点差に縮め、最終戦となる久万高原ラリーを迎えることとなった。

JN3クラス優勝は鈴木尚/山岸典将組(スマッシュDL itzzコマツBRZ)。
セレモニアルフィニッシュのゲートをくぐるJN3クラス1位の鈴木/山岸組。2位は長﨑雅志/秋田典昭組、3位は山口清司/船木一祥組。

 西川真太郎/本橋貴司組がタイトルに王手をかけているJN4クラスは、その西川選手が得意のターマックラリーでSSベストタイムを連取。ライバル勢を寄せ付けず今季4勝目を獲得し、全日本ラリー挑戦4年目で念願のシリーズチャンピオンを確定することとなった。また2位には全日本ラリー初挑戦の奥村大地/大橋正典組が入賞。3位にはエンジン不調に悩まされながらもフィニッシュまでしっかりと走り切ったベテランの岡田孝一/河本拓哉組が入賞した。

JN4クラス優勝は西川真太郎/本橋貴司組(スマッシュDLモンスターitzzスイフト)。
セレモニアルフィニッシュのゲートをくぐるJN4クラス1位の西川/本橋組。2位は奥村大地/大橋正典組、3位は岡田孝一/河本拓哉組。
JN4クラスのドライバーチャンピオンを西川選手が、コ・ドライバーチャンピオンを本橋選手が確定させた。

 JN5クラスは、前戦のラリー北海道でチャンピオンを確定させた天野智之/井上裕紀子組が初日のトップを奪うが、ウェットコンディションの2日目に初日4番手の小川剛/梶山剛組が逆襲。SS10で天野/井上組を捉え、SS12でもベストタイムを奪取し、2.7秒差という僅差で今季初優勝を飾った。3位には、大倉聡/豊田耕司組の追撃をかわした渡部哲成/佐々木裕一組が入賞した。

JN5クラス優勝は小川剛/梶山剛組(itzz DL BRIDE AN Fit)。
セレモニアルフィニッシュのゲートをくぐるJN5クラス1位の小川/梶山組。2位は天野智之/井上裕紀子組、3位は渡部哲成/佐々木裕一組。

 JN6クラスは、前週に北海道で開催されたJMRCオールスターラリーフェスティバルでラリー初優勝を飾った山本雄紀/佐野元秀組が好タイムを連発。SS1からトップの座を一度も譲ることなく、全日本ラリーデビュー戦で全日本初優勝を飾った。また、最終SSまで2番手につけていた海老原孝敬/蔭山恵組が最終SSのSS12で痛恨のコースオフリタイア。粘りのラリーを展開した水原亜利沙選手/加勢直毅選手が2位、全日本初出場の南久松奈々選手/坂井智幸選手が3位を飾った。

JN6クラス優勝は山本雄紀/佐野元秀組(KYB DLアップガレージヤリス)。
セレモニアルフィニッシュのゲートをくぐるJN6クラス1位の山本/佐野組。2位は水原亜利沙/加勢直毅組、3位は南久松奈々/坂井智幸組。
エントリー公開時点でJN6クラスのコ・ドライバーチャンピオンが確定した佐野選手(左)。シリーズでコンビを組むチャンプ確定の吉原選手(右)は、自身のスキルアップのために今回はJN5クラスに挑戦した。

フォト/CINQ、中島正義、山口貴利、JAFスポーツ編集部 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部

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