東日本ラリー選手権は長野で最終戦。嶋村徳之ランサーが今季2勝目をマーク

レポート ラリー

2021年11月25日

東北・関東地区のラリーストを対象としたJAF東日本ラリー選手権の今季の最終戦が10月23~24日、長野県で開催された。

2021年JAF東日本ラリー選手権第8戦
JMRC関東ラリーカップ長野県ラリーシリーズ第5戦
第40回 八子ヶ峰ラリー2021

開催日:2021年10月23~24日
開催場所:長野
主催:TR-8

 八子ヶ峰は、八ヶ岳の北側、白樺湖の南東に位置する尾根状の山だ。この山の名前を冠したラリーは、麓の八子ヶ峰ホテルを拠点として開催されるラリーとして、東日本のラリースト達に親しまれているが、ここ数年は、従来のフィールドから八子ヶ峰の北東に位置する佐久市と佐久穂町を中心としたエリアに移動して開催されている。今年はヘッドクォーターを佐久市内の千曲川スポーツ交流広場に置く形とした。

HQ、サービスが置かれたのは長野県佐久市の千曲川スポーツ交流広場。同会場は熱気球の大会である佐久バルーンフェスティバルの会場として知られている。

 今年も残念ながらコロナ禍の影響を受けたJAF東日本ラリー選手権は、今回の最終戦がシリーズ3戦目の開催。2戦目となったMSCCラリーから約5か月のインターバルを経ての開催となった。SSは1本の林道を8.4kmと2.0kmに分けて設定。セクション1では、それぞれ2本ずつを走行した後に30分のサービスを経て、セクション2は各1本のみ走行してフィニッシュというラリーとなった。JMRC長野県ラリーシリーズも併催され、エントリーは46台と賑わいを見せた。

 SSの林道は昨年も使われたステージ。昨年は最後の3ループ目を逆走とする設定としたが、今年は3ループとも同じ方向で走る。天候は朝から快晴の中でのスタートとなったが、前夜の雨が残って路面はセミウェット。落葉も敷かれ、しかも陽が届きにくい林間を縫うステージとあって、苔なども随所に待ち受けるリスキーなコンディションだ。

道の両側には落葉や苔などが敷かれているため、ちょっとしたコースオフでも大きなタイムロスに繋がりかねない難しい路面が待ち構えた。

 BC-1クラスは嶋村徳之/和氣嵩暁組のランサーがまずSS1のベストを奪うが、SS2では昨年の東日本チャンピオンの宇野学/原田直人組がベスト。そしてSS1の再走となるSS3では、今回からランサー・エボリューションⅦを新たに投入した上原利宏/佐瀬拓野組が、「まだクルマと会話しながら走っている段階です」と言いながらもベストを奪い、ラリーは序盤からシーソーゲームが展開される。SS4では宇野組が再びベストを獲ったが、4本を終えたセクション1は嶋村組が上原組を3.1秒、宇野組には8.6秒の差をつけてサービスに戻ってきた。

「1ループ目の路面がまだ濡れていて、泥が出ていたり、落葉があったりと難しい路面だったので苦しかったですが、SS3の前に減衰を変えたらフィーリングが良くなって安心して踏んで行けるようになりました」という嶋村組はSS5で上原組に8秒差をつける、圧巻のベストを奪取。最終のSS6は宇野組にベストを譲り、3番手に留まったが、首位の座をキープしてゴール。前戦の第4戦から2連勝を果たした。

 この大会の前週には、全日本のMCSCラリーハイランドマスターズにCUSCO RACINGのGRヤリスで参戦した嶋村選手は、「全日本では情けないタイムしか出せなかったので、今日は修業し直すつもりで走りました。1週間前と同じようなコンディションの路面もあったので、そこは特に攻め方を考えながら走りました。この経験を次に活かしていきたいですね」とラリーを振り返っていた。

BC-1クラスは、東日本のトップドライバーとして知られる嶋村徳之/和氣嵩暁組が、セクション2以降、ペースを上げてライバルを振り切った。
BC-1クラス表彰の各選手。

 BC-2クラスは開幕戦を制した踏みッパ/もそ組がSS1で前走車に追い付くアクシデントがありながらもベストを奪取。しかし続くSS2ではコースオフで禁断のバックギアを使ってしまい、このSSでベストを奪った期待の若手、小暮ひかる/田中直哉組に首位を譲ることに。しかし今度は小暮組がSS3で大きく遅れたため、踏みッパ組が再び、首位に浮上。そのまま逃げ切りかと思われた。

 しかしSS5では、「1ループ目では外したセッティングが、路面が良くなるにつれて合ってきました」という伊藤隆晃/大高徹也組の86が踏みッパ組を6.6秒差で下すスーパーベストをマーク。その差0.5秒まで迫り、最終のSS6での勝負に持ち込んだが、最後は踏みッパ組が総合4番手に入るタイムを叩き出して1.7秒差で伊藤組をかわしてフィニッシュ。シリーズ2勝目をさらった。

 最終SSの激闘を制した踏みッパ選手は、「今回のラリーは不意に泥が出ていたり、思わぬ所で滑ったりとリスキーな道だったので、SS5までは抑えた所もあったんですが、SS6は踏まないと勝てないと思ったので攻めました。ギリギリ道の上にいられた感じでしたね。群馬戦は伊藤選手にタイトルを持って行かれたので、地区戦でリベンジができて良かったです(笑)」と安堵の表情を見せた。

戦前の予想通り、三つ巴のバトルが展開されたBC-2クラスは、踏みッパ/もそ組が最終SSの攻防を制して今季2勝目をあげた。
BC-2クラス表彰の各選手。

 BC-3クラスでは優勝候補筆頭の細谷裕一/蔭山恵組が、SS1で「ちょっとでも間違えたら落ちちゃうような道だったので、ほとんどドリフト大会でしたが(笑)、何とか最後まで立て直せました」という攻めの走りで、2番手を15秒も引き離すスーパーベストをマーク。その後もSS6まですべてトップタイムを奪う速さを見せて優勝した。「今日は、2週間前のオールスターラリーで負けた鬱憤を晴らしに来ました(笑)。勝てて良かったです」とコメントした細谷選手は快心の笑顔でラリーを振り返っていた。

BC-3クラスでは、各地の地区戦の他、TGRラリーチャレンジにも参戦する細谷裕一/蔭山恵組が全SSベストの快走を見せて優勝した。
BC-3クラス表彰の各選手。
BC-4クラスはヴィッツCVTで硬軟選ばぬ速さを見せている室田仁/鎌田雅樹組が優勝。
BC-4クラス優勝の室田/鎌田組。

 併催された長野県ラリーシリーズも今季の最終戦を迎えた。昨年、開幕からの3戦がコロナ禍により中止を余儀なくされた同シリーズは、今年のシリーズに昨年の後半の2戦のポイントを加算することとし、年を跨いだ計6戦(今季は1戦のみ中止。4戦が成立)のシリーズとして成立する形となった。

 クラス1は、ともにこのシリーズのトップランカーである中村一朗/迫田雅子組、宮崎克己/石澤裕子組のランサー同士のバトルが白熱した。SS1のベストを獲ったのは宮崎組だったが、SS2では中村組がベストで応酬とコンマ差のトップ争いが序盤から展開された。勝負の分かれ目となったのはSS3。1ルーブ目のSS1から自身のタイムを5.3秒削り取った宮崎組に対して、中村組は逆に2.9秒のタイムダウン。このSSで8.9秒の大差をつけられた中村組は必死に巻き返すも、宮崎組も譲らず、SS5ではこの日、3度目のベストを奪取する。

 中村組も最終SS6で宮崎組を下すも、SS3のロスを埋めるには至らず、宮崎組が逃げ切って昨年に続いてこのラリーを制した。2年越しのシリーズチャンピオンも同時に確定した宮崎選手は、「去年のこのラリーでは勝ちましたけど、地区戦のクラスに出ていた中村さんにはタイムでは負けたんですよ。だから今回、中村さんと同じクラスで戦って初めて勝てたことは、本当に嬉しいです」と感激もひとしおの様子。

 「レッキしてみて、今回はかなり危ない道だと思ったので、1ループ目は様子見しましたが、2ループ目は路面条件が良くなったのでプッシュしました。ただいつも最後まで他人の結果は見ないようにしているんで、リードしていることは気が付きませんでした。今日は、スポンサーの方から新品のタイヤを提供して頂いたことが一番の勝因ですね」と笑顔でラリーを振り返っていた。

長野県シリーズクラス1は宮崎克己/石澤裕子組が昨年に続いて八子ヶ峰ラリーを制した。
クラス1優勝の宮崎/石澤組。

 クラス2では、全日本ラリーでも活躍中の本橋貴司選手がコ・ドライバーを務めた竹内輝仁選手のプジョー106が、SS1では出遅れるも、再走のSS3、SS5ではライバルを大きく引き離す快走を見せて逆転。そのまま逃げ切って、昨年に続いてこのラリーを制した。クラス3でも竹内組同様、昨年の八子ヶ峰のウィナーである田辺紘一/八巻慎太郎組が全SSベストの速さを見せて、ライバルを圧倒する今シリーズ4勝目を獲得し、有終の美を飾った。

クラス2はセクション2で一気にペースを上げた竹内輝仁/本橋貴司組のプジョーが優勝。
クラス2優勝の竹内/本橋組。
クラス3では、昨年のこのラリーでも速さを見せた田辺紘一/八巻慎太郎組が大差で優勝をさらった。
クラス3優勝の田辺/八巻組。
CH2クラスではMR-Sをドライブした川崎俊輔/鍋倉正彦組が優勝。
CH1クラスはAki HATANO/小坂典嵩組が優勝した。

フォト/佐久間健、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部

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