みちのくレースのファイナルラウンド、もてぎ・菅生ツーリングカー地方選手権のHIROBON選手は卒業レースを2位で二冠ゲット!

レポート レース

2021年11月30日

東北、そしてスポーツランドSUGOとして、2021年シーズン最後のレースになる「SUGOチャンピオンカップレースシリーズ」のRound 6が10月9〜10日に開催された。土曜日はあいにく終日ウェットコンディションのままだったが、日曜日は未明のうちに雨はやみ、決勝はドライコンディションで競われ、いずれもシーズンの締めくくりにふさわしいバトルを繰り広げた。

2021 SUGOチャンピオンカップレースシリーズ Rd.6
開催日:2021年10月9日~10日
開催地:スポーツランドSUGO(宮城県村田町)
主 催:株式会社菅生、SSC

 FIT 1.5チャレンジカップとのダブルタイトルのJAFもてぎ・菅生ツーリングカー地方選手権の第6戦は、10台がエントリーし、芳賀邦行選手、HIROBON選手、そして松尾充晃選手の3選手がチャンピオン候補として乗り込んだ。ちなみにFIT 1.5チャレンジカップは全戦有効で、さらにポールポジション(PP)獲得でも1ポイント獲得できるが、地方選手権の方は有効7割、つまり6戦中4戦の高ポイント合計でランキングが決まる。

 予選ではHIROBON選手が絶好調でコースレコードを更新。しかし、ファストレーン進入手順違反により、1グリッド降格のペナルティで“幻の”PPとなってしまう。繰り上がってPPを奪ったのは、前戦のもてぎで久々の優勝を飾っている窪田俊浩選手。

「今年いちばん楽しかった予選でした。もうちょっと欲張っていけば良かったって気もするんですが、ようやくこのへんまで上り詰めてきたので、決勝ではHIROBON選手と仲良く、楽しめたらいいんじゃないですか」と語っていた。一方、芳賀選手と松尾選手は、安井亮平選手にも先行を許し、タイトル争いの形勢はHIROBON選手に一歩リードの印象もあった。

窪田俊浩選手(J'S RACING☆FIT)は従来のコースレコードにはわずかに及ばなかったものの、第5戦で勝った良い流れが続いているのか、ポールポジションを獲得した。

 12周の決勝ではHIROBON選手が好スタートを決めてトップに浮上。しかし、窪田選手も予選後のコメントどおりピタリと食らいついて離れず、1周目のうちに後続を引き離して一騎討ちを繰り広げることとなる。一方、芳賀選手と松尾選手はスタートでのポジションアップを果たせず。それでも芳賀選手は安井選手に食らいついていた。この状況であれば、HIROBON選手の二冠確定となったのだが……。

「スタートは失敗したけど、後ろを走りながら、どこがウィークポイントか研究して。4コーナーのアプローチが全然違っていたので、3コーナーでスピード上げて、4コーナーで後ろに着いていれば、なんとかなるなって。あとはいつ仕掛けるか」と考えていた窪田選手が、7周目にアクションを起こしてトップに浮上。

 これを知った芳賀選手に欲が湧いたのは間違いない。前を行く安井選手をかわせば、FIT 1.5チャレンジカップの王座は獲得できるからだ。ファイナルラップの4コーナーで勝負をかけるも接触。安井選手はコース脇にマシンを止め、芳賀選手は3番手に躍り出た。

 結果、2位でゴールのHIROBON選手は地方選手権のチャンピオンが確定。芳賀選手とタイトルを分け合ったと思われたのだが、芳賀選手は件の接触に対して23秒加算のペナルティを受けて7位に降格。これにより、HIROBON選手の二冠獲得が確定した。

「まぁ……ねぇ(笑)。勝ってチャンピオンっていうのが良かったけど、まぁまぁ嬉しいですね。これでFITは卒業!この後、FIA-F4やTCRジャパンも残っているので、そっちも頑張ります」とHIROBON選手は卒業宣言とともに、同じくチャンピオンを争う次のレースに目を向けていた。

2番グリッドから飛び出したHIROBON選手(アンダーレNUTEC制動屋東野)がホールショットを決めたが、PPの窪田選手が7周目にトップを獲り返してポール・トゥ・ウィンを果たして2連勝を達成。
JAFもてぎ・菅生ツーリングカー選手権 第6戦の表彰台には左から、2位で二冠を確定させたHIROBON選手、2連勝でシーズンを締めくくった窪田選手、そしてチャンピオン候補のひとりだった松尾充晃選手が3位で登壇した。

 前戦でチャンピオンを確定させた佐藤樹選手が不在となった、もてぎ・菅生スーパーFJ地方選手権。FJ協会設定の全国転戦シリーズ「スーパーFJジャパン・チャレンジ」も併催とあって、鈴鹿の選手権2連覇を確定させている岡本大地選手が参戦。他にも鈴鹿からの遠征組が加わり、今季最多となる19台のエントリーを集めた。

 予選は岡本選手の独壇場。終了間際まで2番手に1秒以上も引き離していたほどだった。土壇場でもてぎ・菅生勢の伊藤慎之典選手がタイムを伸ばしてきたが、それでもコンマ9秒もの差をつけた。「ちょっと躍起になって走って、目標タイムが出たんで良かったです。決勝は先行逃げ切りで行こうと思っています」と岡本選手は決勝での作戦も明かしてくれた。

日本各地のサーキットでその速さを見せつけている岡本大地選手(FTK・レヴレーシングガレージ)がSUGOでも地元勢をさしおき、2番手に0.844秒差をつけてPP獲得と実力を発揮した。

 迎えた決勝、スタートを決めた岡本選手は宣言どおり早々に逃げの構え。後方では伊藤選手と渡会太一選手、そして髙口大将選手が激しく争うのを尻目に、6周目には後続にほぼ7秒の差をつけていた。その2番手争いは、7周目の2コーナーで髙口選手が3番手に躍り出る。そして、その直後にスピンした車両があり、なんとセーフティカーが出動。

 3周にわたる先導によって、せっかく築き上げたリードを奪われたかと思われた岡本選手だったが、リスタートを完璧に決めて後続の追随を許さず優勝。これでスーパーFJジャパン・チャレンジでは出場した4戦すべてを制し、2連覇を確定させた。

「ちょっとセーフティカー後のコンディションが違っていて、冷えたからかもしれませんが、滑っていました。追いつかれるかと思っていたんですが、逃げられたので良かったです。あとは年末の日本一決定戦だけになります、6回目の(笑)。今年こそ勝ちたいですね」と岡本選手は振り返った。そして、最後まで続いた髙口選手との接戦を制し、2位となった伊藤選手のもてぎ・菅生選手権のランキング2位が確定した。

地元勢とジャパン・チャレンジを狙う遠征組との対決となったこの1戦、フロントロー発進の伊藤慎之典選手(テイクファーストチャリ走10V)は地元勢の意地を見せて2位、もてぎ・菅生選手権2位の座も確定させた。
JAFもてぎ・菅生スーパーFJ選手権 第6戦の表彰台。左から2位の伊藤選手、ポール・トゥ・ウィンを果たした岡本選手、3位の髙口大将選手と、予選トップ3の選手たちが登壇した。
ジェントルマンクラスは遠征組のひとり、夕田大助選手(LAPS)が予選・決勝ともクラストップを獲得した。

 初日の9日に予選と決勝を開催した、JMRC東北Moty’s杯ロードスターカップはUnder1600クラスに2台、Over1600クラスに3台がエントリーした。U-1600クラスながらベテランの妙技が光る川﨑俊英選手を、一度は抑え抜いた経験を持ち、ここまでO-1600クラスで3戦3勝だった原優樹選手は欠場した。

 濡れた路面での予選は、「今イチでした。予想ではあと2秒速いつもりだったんですが、根性がなかったかもしれないです」と語るも川﨑選手が総合PPを獲得。続く総合2番手には「初めて雨のSUGOだったので、恐る恐る走っていたんですけど、最後の方、ペースを上げられたので良かったです」と語ってくれた、O-1600クラスの渡邉達也選手が付けた。

 路面がセミウェットに転じた決勝では渡邉選手が好スタートを切るも、川﨑選手は1コーナーでトップをキープすると、そのままポジションを最後まで守り抜いた。一方、渡邉選手は突然バックストレートで失速。最後尾まで後退してしまう。そして、追い上げ真っ最中の5周目にも再び失速が発生したこともあり総合3位、クラス2位まで取り返すことが精いっぱい。「センサーのトラブルで、燃料カットが出ちゃったようです」と渡邉選手は残念そうだった。

 代わって総合2番手につけたのは「雨降ると、私のクルマはブレーキングでどこ飛んでいくか分からなくなるんです」と、川﨑選手に予選で15秒近くも離されていたU-1600クラスの佐藤覚選手だったが、乾き始めた路面で本領発揮かと思われた。が、6周目の2コーナーでスピンを喫して万事休す。阿部剛選手が総合2位と、O-1600クラスの初優勝も飾った。「佐藤選手は目の前でスピンされたんですが、うまく避けられました。案外冷静でしたね」と阿部選手。

 そして総合とU-1600クラスの両方を制した川﨑選手は「今年は4戦4勝。今年は優しくなかったので。やっぱね、優しくすると後で言われるんですよ。これからも嫌な親父でい続けようと思ってます」と全勝できた理由を語ってくれた。

Under1600クラスとOver1600クラスが混走したJMRC東北ロードスターカップは、川﨑俊英選手(ケンオートMoty’s NA6)が排気量で劣るU-1600クラスながら、熟練のテクニックで予選・決勝ともにオーバーオールで制圧した。
JMRC東北Moty’s杯ロードスターカップ第4戦U-1600クラスは、左から2位の佐藤覚選手と、総合でもトップフィニッシュを果たした川﨑選手が表彰台に登壇した。
O-1600クラスは総合3番手、クラスでは2番手スタートだった阿部剛選手(佐栄アクロスクロムNB8)が今季最終戦で嬉しいクラス初優勝を果たした。
O-1600クラスの表彰台に登壇したのは、左から予選はクラストップだった渡邉達也選手、優勝した阿部選手、3位の樋口豊選手。

 54台が挑んだヤリスカップ東日本シリーズ第4戦は、「すごくいいスリップが使えましたが、けっこうミスもあったんです。でも、回ってきたら、すごくタイム良かったのでびっくりしました」と語った大森和也選手がPPを獲得。ヴィッツ時代からのスペシャリスト、咲川めり選手や松原亮二選手、渡辺圭介選手たちを従えた。

A組とB組、27台ずつに分かれて競われた予選のPPは、同じSUGOで開催された第2戦をポール・トゥ・ウィンで制している大森和也選手(GB CAMP Yaris)がまたしても獲得した。

 決勝でも好スタートを切り、大森選手はホールショットを決めるも、咲川選手がピタリと食らいついて離れず。やや間隔を置いて松原選手、渡辺選手、水野大選手らが連なって競う中、4周目の1コーナーで渡辺選手が3番手に浮上。すると、1秒近くあった差を一気に詰めて、咲川選手にも迫っていった。

 咲川選手と渡辺選手の2番手争いが激しくなったことで、一気に楽になったかと思われた大森選手ではあったが、「バランス的にアンダーになってきたのと、ブレーキも最後はきつくなってきた」ため、終盤にはふたりの接近を許すことに。

 それでも大森選手は辛くも逃げ切りを果たし、SUGOでは2連勝、そしてチャンピオン争いでもトップに躍り出ることとなった。「いや〜、危なかったです。でも、大きなミスはなかったし、ポイント抑えておけば、抜かれないだろうなと思っていました」と第2戦に続くSUGOでのポール・トゥ・ウィンを振り返った。

PPの大森選手がホールショットを獲った、ヤリスカップのスタート。SUGOのフルグリッド45台によるスタンディングスタートは壮観だ。
ヤリスカップ東日本シリーズ第4戦の表彰台には、左から86 / BRZレースにも参戦中の女性ドライバー、2位の咲川めり選手、今季2勝目を挙げた大森選手、ファステストラップを記録した3位の渡辺圭介選手が登壇した。

 混走のCVTクラスでは松谷昭男選手が大きくリードしていたが、7周目にリタイアを喫し、乙津竜馬選手が開幕戦以来の2勝目をマーク。予選46番手以下だったドライバーたちが競ったコンソレーションでは吉田正浩選手が、ファイナルラップの逆転で優勝を飾った。

CVTクラス2番手からスタートした乙津竜馬選手(Tモビリティ神奈川YarisCVT)が、開幕戦以来となるクラス優勝を果たした。
CVTクラスは左から、今季全戦で表彰台に上がっている飯田裕選手が2位、優勝した乙津選手、今季3度目の表彰台獲得となった3位の近藤希望選手が表彰台に登壇した。
決勝レースにひけをとらない熱戦を繰り広げたコンソレーションレースは、吉田正浩選手(アクシアスポーツ ノベライズYaris)が逆転で制した。
コンソレーションレースの表彰台には、左から2位の田中聡選手、優勝した吉田選手、3位の杉山英之選手が登壇した。

 2014年の開幕戦から数えて、この一戦が記念すべき100戦目となったN-ONEオーナーズカップの第14戦。フルグリッドとなる45台がエントリー、そのうち3台が出走を取り消してしまったが、大盛況だったことには間違いはない。

 予選アタックを一発で決めて計測時間を9分も残して走行を終了し、PPを獲得したのは阿久津敏寿選手。「うまくスリップに、最終コーナーで入れたので、それが結果的に。前回のSUGOでは横転しちゃっているので、今回はすっきり終わりたいですね」と、コースレコードも更新して満足そうに語っていた。

ヤリスカップに迫るエントリーを集めたN-ONEオーナーズカップの熾烈な予選を制したのは、新コースレコードを記録した阿久津敏寿選手(DLヌヴォラーリWMN-ONE)だった。

 だが、そうはさせてくれなかったのが、フロントローの吉田恭将選手だった。予選では0.02秒と僅差で阿久津選手に続いていただけに、決勝でもスタートから食らいついて離れず。そればかりか2周目のS字で早々と逆転に成功。その際に軽い接触があり、失速した阿久津選手は荒牧和敏選手の先行も許してしまった。

 トップに立ってからの吉田選手は、じわりじわりと後続を引き離していった。「自分でできる範囲で、常に全力で走れたので、100%出せた感じです。これで2勝目です。チャンピオン目指してファイナルも頑張ります」と吉田選手は残る2戦にも向けて意気込んでいた。

予選ではコースレコードを更新したものの、阿久津選手には0.014秒及ばなかった吉田恭将選手(N-ONE新潟中央栃尾)が、逆転優勝で予選のリベンジを果たした。
N-ONEオーナーズカップ第14戦は左から、予選3番手だった2位の荒巻和敬選手、今季2勝目を挙げた吉田選手、3位の阿久津選手と、予選トップ3が順位を入れ替えて登壇した。

 ポルシェのワンメイクレース、PCJ-CUPには5台がエントリー。総合PPを獲得したのは、岡山国際サーキットを主戦場とするS0クラスのMUSASHI選手だった。「SUGOは年に1回ぐらい来ていますよ。まだ路面が濡れていたので、ちょっとビビりましたが、最後の方でタイヤがコンディションに合ってきたので、タイムが出たという感じでした」と予選を振り返ってくれた。だが、決勝では痛恨のエンジンストールで最下位に後退してしまった。

S0クラスの3台が1秒以内にひしめく接戦となった予選は、MUSASHI選手(PCJ TARO racing)が総合PPを獲得した。

 代わってトップに立ったのはフロントロー発進、同じS0クラスの吉田雄作選手。一時は2番手以下に3秒半ほどの差をつけたが、「途中でABSが調子悪くなって、ブレーキにマージン持っていたら、どんどん追いつかれちゃいました」と、S0クラスの山本賢選手の接近を許す。

 ファイナルラップにはテール・トゥ・ノーズにまでなり、馬の背で吉田選手をかわした山本選手だったが、直後に痛恨のオーバーラン。なんとか順位を守り切った吉田選手が、総合とS0クラスの優勝を飾った。3位になったMUSASHI選手はフィニッシュ直前まで山本選手に迫ったが、コンマ4秒及ばず。一方、S1クラスは予選でもクラストップだった、やまだひろし選手がその順位を守り切り、フィニッシュした。

総合優勝も争ったS0クラスは吉田雄作選手(PCJファーストレンタカー!)がファイナルラップでの山本賢選手との接戦をしのいで制した。
PCJ-CUP第5戦、S0クラスの表彰台には左からアツい優勝争いを見せた2位の山本選手、優勝した吉田選手、3位のMUSASHI選手が登壇した。
S1クラスは予選でもクラストップだった、やまだひろし選手が圧勝した。
S1クラスは左から2位の八島明弘選手と優勝したやまだ選手が表彰台に登壇した。

フォト/石原康 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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