九州ジムカーナ地区戦は、“シーサイド・サーキット” 恋の浦で2021シーズンが終了

レポート ジムカーナ

2021年12月1日

JAF九州ジムカーナ選手権は10月31日、今シーズンの最終戦が開催され、全7戦のシリーズが終了した。

2021年JAF九州ジムカーナ選手権第7戦
2021年JMRCオールスター選抜第7戦
CRMCジムカーナ2021

開催日: 2021年10月31日
開催場所: スピードパーク恋の浦ジムカーナコース(福岡県福津市)
主催: CRMC

CRMC AUTO TEST in 恋の浦 2021
開催日: 2021年10月31日
開催場所: スピードパーク恋の浦ジムカーナコース(福岡県福津市)
主催: CRMC

 今年のJAF九州ジムカーナ選手権は3月14日に開幕。全8戦のシリーズが予定されていたが、5月に開催予定だった第4戦が新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、中止を決定。6月に予定されていた第5戦は8月に延期となった。今回の第7戦も本来は8月29日の開催予定だったが、“第5波”下での開催は見送られ、約2か月遅れで事実上のシリーズ最終戦として開催された。

 結果的には8戦中7戦が成立したことで、今年のシリーズは有効5戦のポイントで競われることになった。最終戦を待たずしてシリーズチャンピオンが確定したクラスも多く、いくつかのクラスでは新チャンピオン達がエントリーをしなかったため、“鬼の居ぬ間”(!!)の1勝を狙うドライバー達のバトルが白熱した。

スピードパーク恋の浦のコース下段は、2本のストレートを繋ぐショートカットを使っての多彩なコースアレンジが可能だ。
上段部にはパイロンを置ける広場になっており、タイトなパイロンセクション等を最後にクリアしてゴールという設定が定番だ。
当日のコース図。スタート後、下段のコースジムカーナをクリアした後に、上段の広場を高速スラロームで抜けて再び下段に飛び込むという、スピード感のある設定が採られた。

 そうした中、チャンピオン争いが最終戦に持ち込まれたのは、PNR1クラスだ。開幕戦から3戦は松本博文選手が立て続けに優勝をさらって3連勝を決めたが、夏に入ると渡部峻佑選手が2連勝と反撃開始。9月26日に開催された前戦でも勝利を飾って、遂に松本選手に勝ち星で並んだ。

 迎えた今回の最終戦、注目の第1ヒートは先に走った渡部選手が0.7秒、松本選手に先行して暫定首位に立つ。勢いに乗る渡部選手は第2ヒートでも自らのタイムを0.4秒詰める1分37秒048でゴールし、松本選手のトライを待った。起死回生の逆転優勝を狙った松本選手もタイムアップを果たして1分37秒台に乗せてくるが、届かず2位止まり。渡部選手が圧巻の4連勝でシリーズを締め括った。

 初のシリーズチャンピオンを手に入れた渡部選手は、「1本目はパイロンから遠ざかってしまった所が何か所かありましたが、2本目はきっちり寄せられたので、ほぼ納得の走りはできました」と快心の走りを振り返った。「1戦でも落としたらチャンピオンが獲れないという状況がずっと続いていたので、負けられない、というプレッシャーには慣れてしまいました(笑)。今年はともかくよく練習したので、その成果が出せて嬉しいです。ただ今季は本番用のタイヤは1セットだけで、練習は使い古したタイヤでしか走らなかったので、本番の1本目は感覚が戻らなくてタイヤを使い切れないケースが多かったんですよ。これからは、その辺を課題にしていきたいと思います」と今後に向けた抱負を語った。

チャンピオン争いが持ち込まれたPNR1クラスは渡部峻佑選手が優勝を飾り、チャンピオンも確定させた。
PNR1クラス表彰の各選手。

 PN1クラスは現行のND5RCロードスターが5台参戦し、事実上のロードスターワンメイククラスとなった。このクラスはすでに4勝+2位1回と満点に近い成績を収めた衛藤雄介選手がタイトルを確定済み。前戦はこのクラスへの参戦は取り止めたため、チームメイトである馬場慎太郎選手が優勝した。今季唯一、衛藤選手に土を付けた高山敏和選手は、この一戦、ゴールタイムではトップタイムを奪いながらもベナルティに沈んだだけに、今回はリベンジを期したいところだ。

 しかし高山選手は今回も第1ヒートをトップタイムで終えながらペナルティで5秒、加算となり、馬場選手がトップに立つ。第2ヒートでは馬場選手が高山選手の第1ヒートのゴールタイムを上回るタイムを刻んでリードを拡大。逆転に賭けた高山選手だったが、0.5秒届かず、今季2勝目はならなかった。

 この8月に、それまで乗っていたBRZからロードスターに変えた馬場選手は、「まだクルマに慣れていないんです。運転もセッティングもこれからです」と言いながらも、これで2連勝。「2本目は、チームの先輩に指摘された1速に落とす所の走りを修正できたことと、自分のクセの、突っ込み過ぎを出さなかったことがタイムアップに繋がったと思います」と勝因を振り返った。

PN1クラスは第2ヒートでライバルを突き離した馬場慎太郎選手が、前戦に続いて優勝。
PN1クラス表彰の各選手。

 一方、PN2クラスも、すでに九州のRWDスペシャリストとして知られる奥薗圭介選手がシリーズ5戦目で早々にタイトルを確定、今回はチームのサポート役に回った。第1ヒートのトップタイムは、86を駆った後輩の黒水泰峻選手で1分35秒788という断トツのタイムを叩き出す。第2ヒートではタイムアップを果たせなかったものの、このタイムを脅かすドライバーは最後まで現れず、黒水選手が第1ヒートのタイムで逃げ切った。

 黒水選手は昨年の秋にジムカーナを始めたばかりの20歳。3歳から小学校3年生まではミニバイクの経験がある。その後は野球少年となったが、「免許を取ったら、またモータースポーツがやりたくなって」と、奥薗選手のショップの門を叩いた。そしてキャリア一年足らずで奥薗選手が欠場した前回、ジムカーナ初優勝を達成した大型新人だ。

「今日は、シリーズ3位を獲りたくて投入した新品タイヤが吉と出たと思います。ともかく脱輪とパイロンタッチだけは絶対しないように心掛けて走りました。ただ前回もそうだったんですが、今回も1本目の方がタイムがいい、というのが自分では課題ですね。2本目もしっかりタイヤのフィードバックを感じながら走れるドライバーになりたいです」と黒水選手。しかしこの勝利でしっかりと目標のシリーズ3位は確保した。来季の活躍が今から楽しみだ。

PN2クラスはジムカーナ一年生の20歳、黒水泰峻選手が第1ヒートのタイムで逃げ切った。
PN2クラス表彰の各選手。

 SA1クラスは、前戦からシリーズに復帰した“絶対王者”の井上洋選手が、第2ヒートで、今大会ただ一人、1分34秒台にタイムを入れて快勝した。季節外れと言っていいほど当日は気温が上がり、それに伴って路温も上昇したが、「決め込んで1セットしか持ってこなかったタイヤが、特に2本目の路温にドンピシャだったので運転に集中できました」と井上選手。

 今年は仕事の関係で地元を離れたため、並行して参戦する中国地区戦もスポット参戦に留めるなど活動縮小を余儀なくされたが、「86やBRZも乗ってみると、いいなぁと思いますけど、もう少しはインテグラで続けます。今日もフロントの仕様を変えてみたんですが、いい所もあれば悪い所もある。まだセッティングも詰めていけると思います」と来季を見据えていた。

SA1クラスは、井上洋選手が、RX-7勢の追撃を退けて優勝をさらった。
SA1クラス表彰の各選手。

 SA2クラスは5台がエントリーしたが、内2台はGRヤリスだ。第1ヒートのベストは中国地区戦を主戦場にしている根岸雅也選手のインプレッサ。ライバル勢がペナルティに沈んだこともあって大差で折り返す。さらなるタイムアップを狙った根岸選手だったが、第2ヒートは痛恨のタイムダウン。後続の選手達には絶好の逆転の機会到来となったが、地元九州勢はGRヤリスの井上直喜選手が0.7秒後方に迫ったのが最上位。根岸選手が今回同様、スポット参戦した第5戦に続いての勝利を飾った。

 広島在住だが、昨年は仕事で福岡住まいとなったこともあってシリーズを追った根岸選手。「恋の浦は、速度を乗せたまま先が見えない所に飛び込まなければならなかったりするので、久し振りに走るとやっぱり怖いコースですね。今日はちょっとソフト目のタイヤで走ったので、この高温はきつかったです。パイロンも、きつい設定があって難しかったですね」と当日の走りを振り返った。なおこのクラスは、GRヤリスを駆った松尾圭介選手が、今回は4位に終わり、ポイントの上乗せができなかったものの、序盤の2連勝が効いてチャンピオンを確定させている。

SA2クラスは今季2度目の参戦となった根岸雅也選手が前回の参戦に続いて優勝した。
SA2クラス表彰の各選手。
軽自動車勢が接戦を展開しているB1クラスは、宮本光隆選手が逆転で優勝を飾った。
B1クラス表彰の各選手。
OPクラスは衛藤雄介選手が逆転勝ちを収めた。
OPクラス表彰の各選手。

午後に開催されたオートテストは
ダブルガレージが勝負所の一戦に!

 スピードパーク恋の浦では、ジムカーナが開催された10月31日の午後に、オートテストが開催された。これはジムカーナコースの上段部、パイロンセクションが置かれる広場にオートテストのコースを設定して行うというもので、恋の浦のジムカーナコースで行われるオートテストでは、この広場を使用するのが定番となっている。

 当日のコースは、スタート後、8の字をクリアして、まず後退でガレージ(車庫入れ)に挑戦。次に直進でフロントからガレージに再びトライした後、一旦、バックして大きく左旋回してゴールという設定だ。最後は、前輪だけゴールラインを跨いで止まるライン跨ぎの設定となっている。競技は走行タイムを小数点以下2桁まで計測し、それをそのままポイントとし、ペナルティのポイントを加算したポイントが最も少ないドライバーが優勝、という方式を採用した。

 8台が参加したATクラスは、第1ヒートでも首位に立った日紫喜俊夫選手が、第2ヒートでも0.7秒近くもタイムを詰めて快勝した。MTクラスでは午前中のジムカーナで優勝を飾った渡部峻佑選手が、第2ヒートではタイムを落とすも、第1ヒートのタイムが今大会の総合でも一番時計をマーク。ジムカーナに続いて優勝を果たした。

オートテストはコース上段部の広場で行われた。
当日のコース図。コース中盤のダブルガレージと、ゴールに設定されたライン跨ぎが、大きな勝負所となった。
ATクラスは2本ともベストタイムを刻んだ日紫喜俊夫選手が快勝した。
ATクラス表彰の各選手。
MTクラスは渡部峻佑選手が午前中のジムカーナに続いて連勝(!!)を果たした。
MTクラス表彰の各選手。
モータースポーツ経験者が対象のEATクラスは寺田泰浩選手が優勝。
EATクラス表彰の各選手。

フォト&レポート/JAFスポーツ編集部

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