TGRラリーチャレンジの2021年最終戦が、愛知で開催
2021年12月3日

国内屈指の人気を誇るラリーシリーズであるTOYOTA GAZOO Racing Rally challenge(TGRラリーチャレンジ)の今季最終戦が11月7日、愛知県豊田市を拠点として開催された。
TOYOTA GAZOO Racing Rally challenge 2021 in 豊田
開催日: 2021年11月6~7日
開催場所: 愛知
主催: SHIROKIYA
今年のTGRラリーチャレンジは全12戦のシリーズが組まれていたが、新型コロナウイルス感染症拡大を受け、4月に開催予定だった第2戦、8月~9月に組まれていた第7戦~第9戦が中止を余儀なくされた。今回の大会は実質的には今季シリーズ8戦目となる最終戦としての開催となる。90台がエントリーし、8クラスに分かれて今年最後のバトルに臨んだ。
今回の一戦は豊田市民の憩いの場である鞍ヶ池公園にヘッドクォーター、サービスそしてスタート&ゴールを設置するラリーとして行われた。SSは「IMOJIGAWA」(2.15km。SS1・SS4)、「COUNTRY ROAD」(1.98km。SS2・SS5)、「PARK ROAD」(0.67km。SS3・SS6)の3本。45分のサービスを挟んで各ステージを2回ずつ走行する2セクション制が採られた。
「IMOJIGAWA」はタイトなコーナーが続く林道SS。「COUNTRY ROAD」はトヨタテクニカルセンター下山の中にあるテストコースを走る、高速の特設ステージだ。「PARK ROAD」は鞍ヶ池公園内の通行路を使用するショートステージで、公園の最上部まで一気に駆け上がる上りのステージ。ここはこの豊田ラウンドではすっかりお馴染みのステージとなっている。
この「PARK ROAD」は今回もギャラリーステージとなり、多くのラリーファンが観戦に訪れた。そしてそうしたファンの期待に応えるかのように、当日は、WRCで活躍する勝田貴元選手が、2週間後に最終戦を控えるという多忙なスケジュールの合い間を縫って来場、ワークススペックのトヨタ・ヤリスWRCで迫力のデモランを披露した。




当日の天候は朝から青空が広がる絶好のラリー日和となった。ただし前夜、不意に降った雨が路面に残り、特に林道SSであるIMOJIGAWAは微妙なコンディションのままSS1を迎えた。最初の出走クラスであるE-4(Expert-4)クラスは18台がエントリーと、今回最大の激戦区となったが、SS1ではAki HATANO/小坂典嵩組が、「道の上にいるだけでも精一杯だった」という攻めの走りが報われて、2番手に5秒以上の差をつけてトップに立つ。
SS2では前戦富士山すそのを制して今回も優勝候補の一角だった、レーシングドライバーの佐々木雅弘/加藤恵三組がHATANO組に続くセカンドベストをマーク。反撃ののろしを上げたと思われたが、SS3では、スタート直後にマシントラブルに見舞われてコースサイドにマシンをストップ。連勝の夢は潰えてしまう。一方、HATANO組はこのSS3も制すと、SS1の再走となるSS4でまたもスーパーベストをマーク。残るふたつのSSも制して、最後までライバルに隙を与えず、ラリーを完全制圧した。
第5戦渋川伊香保に続く今季2勝目をマークしたHATANO選手は、「セッティングを大きく変えたのが当たりました」と勝因をひとこと。「やればやるほど悪い方向に行っていたので、今日は純正に近い設定値まで戻してみたんですよ。SS1とSS4は難しい道で怖い思いもしましたが、基本の設定が良かったからタイムが出せたと思います。COUNTRY ROADはもう最高で(笑)、気持ちよく走れました。今までのセットだったら、こんなタイムは出せなかったと思います。GRヤリスの素性の良さを実感できたラリーでした」と振り返った。


E-3クラスは今季、参戦した大会はすべて優勝を飾り、チャンピオン確定済みの絶対王者、細谷裕一選手のNCP13ヴィッツが今回も速さを見せて、HATANO選手同様、全SSを制して優勝。コ・ドライバーの蔭山恵選手も、シリーズチャンピオンを手繰り寄せた。やはり林道のSS1、SS4の圧倒的な速さが光った細谷選手は、「特にSS1は凄く滑って難しかったですけど、途中から1速を多用する走りに変えたら、何とか走れました。SS4では乾いた感じはありましたが、それでもなかなかグリップが掴めなかったですね。ただ、ああいう道は大好きなので、タイムを出せたんだと思います(笑)。COUNTRY ROADは誰もセッティングを合わせられなかったと思うので、運転手の勝負だったと思いますね」と、有終の美を飾ったラリーを締め括った。


E-2クラスではSS1で大きなリードを築いた石川紗織/鶴巻駿介組の86が、SS4では2WDベスト、総合でも5番手となるタイムを叩き出して独走態勢に。SS5 COUNTRY ROADでは大村健太郎/北林大組が石川組を3.7秒差で下すも、セクション1での遅れは取り返せず、石川組を脅かすまでには至らなかった。前戦に続いて連勝の石川選手は、ドリフト界では知られたレディスドライバーだが、「今年はラリーで走り込んだ分、林道の走り方が少し分かってきました(笑)」とひとこと。「SS1とSS4は、マージンは取るけど攻める所は攻める、という走りができたと思います。でも、COUNTRY ROADは、もっと行けたな、というのが何か所かありましたね。アドバイスして頂いたラリーの先輩の方々に感謝したいです」と、ラリードライバーとしてのスキルアップを確認できた一戦を振り返った。


E-1クラスはSS2、SS3を連取した前島俊彦/新井祐一組がセクション1をトップで折り返し、3.7秒差で白洲剛/東山徹大組、SS1ベストの栗原拓也/魚井千尋組が4.2秒差でそれぞれ追いかける三つ巴の展開となる。セクション2に入ると、白洲組がSS4、SS5とベストを連取して0.4秒後方まで前島組に迫るが、栗原組はSS5で大きく後退。勝負はトップ2台の最終SSのバトルに持ち込まれた。
しかしSS6では前島組が踏ん張って、白洲組を0.5秒差で下すこの日3度目のベストタイムをマーク。接戦に決着をつけた。トータル0.9秒の僅差で逃げ切った前島選手は、「前半の貯金を切り崩して何とか勝てました。SS1の道は2ループ目も踏めませんでしたが、COUNTRY ROADはアクセルを踏んだモン勝ちだと思っていたので、チームの先輩の“迷ったら踏め”という言葉を信じて、アクセルを抜きませんでした。コ・ドライバーがペースノートをしっかり作れる人なので、連携がよくできたことも大きかったと思います」と相棒の新井選手に感謝していた。


ヤリスのワンメイククラスであるC-4(Challenge-4)クラスは7台がエントリー。「ヤリスで3戦目のラリーでしたが、やっとクルマに慣れてきました」という吉田貴弘/小島佑太組が全SSベストの快走を披露。特にCOUNTRY ROADでは群を抜く速さを見せて、前戦富士山すそのに続く勝利を獲得した。「SS1ではヒヤッとする場面もありましたが、何とか最後までまとめられました。ヤリスのコントロールのしやすさを実感したラリーでしたね」と、吉田選手は新兵器にしっかり手応えを感じた様子だった。


86のワンメイククラスとなっているC-3クラスでは、今季4戦4勝、しかもすべてのSSでベスト奪取という無敵の速さを見せてきた田邊大輝/鈴木彩乃組が、今回もSS1からベストを連取。2位の牧野達哉/別所雄治組を12.2秒差で抑えて優勝を遂げたが、最終のSS6は牧野組が田邊組を0.1秒かわしてベストタイムを獲得して意地を見せた。文句なしの成績で2021シーズンを終えた田邊選手は、「今日は実はちょっとぶつけちゃったんですけど、サービスでチームがすぐに直してくれて送り出してくれました。この結果はチームのサポートがあってこそだと思っています。普通に踏めば速く走れるクルマには仕立てられたとは思うので、今後はこのクルマをドライブする後輩をしっかり育てていきたいですね」と完璧な一年を振り返った。


2代目(NCP91)と3代目(NCP131)のヴィッツ限定のC-2クラスでは、貝原聖也/西﨑佳代子組が、セクション1で3連続ベストをマークして先行。そのまま逃げ切った。今年ははるばる九州まで遠征し、長距離のSSも体験したことがスキルアップに繋がったという貝原選手は、「今日は午前中の微妙な路面でどれだけ踏めるかの勝負だと思っていました。自分のNCP131はNCP91に比べると重いので、コンディションの悪さを味方につけるつもりで走ったのが良かったと思います。来季はエキスパートのクラスへのステップアップや、地区戦への参戦も考えたいと思います」と、来季に向けた抱負を語ってくれた。


アクアのワンメイククラスであるC-1クラスには12台がエントリーし、今回も活況を呈した。SS1では中島義智/田中和幸組がベストを奪うも、0.1秒差で井上拓哉/加藤聖也組も喰らいついて、まずはこの2台が抜け出す展開となる。2台はその後、コンマ差のバトルを続けるが、セクション1は井上組が0.8秒リードしてセクション2へ。井上組はエア圧を変えて臨んでSS4では1.1秒、中島組を下すとSS5、SS6でも、僅差ながら中島組を凌いでフィニッシュ。2.3秒差でホットバトルを制した。
「勝負所はやはりSS1の道だったと思うので、チームと攻め方をミーティングで詰めたのがSS4のタイムに繋がったと思います」と振り返った井上選手が所属する関東工業自動車大学校ラリー部は、今年の全日本ラリー選手権JN6クラスのチャンピオンに輝いたMATEX AQTECラリーチームの育成チーム的な役割を担う。「全日本チームのテストに同行して、全日本のドライバーさん達から多くのアドバイスを受けたことも勉強になりました」と、井上選手はチームの先輩達に感謝しきりだった。ハイブリッドラリーカーのワンメイクというユニークなこのクラス、今後の発展に期待していきたいところだ。


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