OK部門の2021シリーズチャンピオンは“絶対王者”佐々木大樹選手に確定!

レポート カート

2021年12月6日

国内カートレースの最高峰、全日本カート選手権OK部門の2021シリーズを締めくくる第9戦/第10戦が、栃木県・ツインリンクもてぎ北ショートコースで開催。第9戦ではスポット参戦の佐藤蓮選手(Rosa Drago CORSE)が優勝、第10戦では洞地遼大選手(K.SPEED WIN)が初勝利を飾り、佐々木大樹選手(TONYKART RACING TEAM JAPAN)がシリーズチャンピオンを確定させた。

2021年JAF全日本カート選手権OK部門 第9戦/第10戦
開催日:2021年11月20~21日
開催地:ツインリンクもてぎ北ショートコース(栃木県茂木町)
主催:株式会社モビリティランド

 2021シリーズ最後の戦いとなる今大会は過去8戦と同様、1大会2レース制で開催。11月20日にタイムトライアルと第9戦の予選、21日に第9戦の決勝と第10戦の予選・決勝が行われる。大会期間は2日間とも曇りがちながら穏やかな気候で、まずまず良好なコンディションに恵まれた。

 今大会の主なトピックスとして、土曜日午前の有料スポーツ走行終了後には、2022年の全日本選手権規定のEV部門新設で注目が集まるEVカートのデモンストレーションランが、モビリティランドの主催で実施された。

 電動レーシングカートレースのERK Cup Japanに参戦しているミツバ製の電動カート他がピットレーンに用意され、まずチームメンバーが試走。その後に全日本FS-125部門ドライバーの中村仁選手と同FP-3部門ドライバーの富下李央菜選手が乗車してコースを走り、ピットサインレーンで見守るギャラリーたちにそのポテンシャルを披露した。

ここまで荒尾創大選手が3勝、佐々木大樹選手と鈴木斗輝哉選手がそれぞれ2勝、清水啓伸選手が1勝を挙げている2021シリーズ。タイトル争いの行方はこのツインリンクもてぎの2戦の順位が重要となった。
ツインリンクもてぎで10月31日に開催されたもてぎカートレース第6戦内でもEVカートのデモランはあったが、今回行われたデモランは、ジュニア/全日本選手権の大会参加者や関係者をはじめ、JAFモータースポーツ部やカート部会の委員にも注目された。
FS-125部門の中村仁選手とFP-3部門の富下李央菜選手が代表してEVカートの体験試乗を行った。中村選手は周回数を重ねていくうちにEVカートの走らせ方をつかんでいき、全日本カート選手権FP-3部門に匹敵するラップタイムを刻んだ。

 OK部門のエントリーは、あと1台でサーキットの最大出走台数に達する33台。ポイントスタンディングは、30歳のベテラン佐々木選手がここまで206点を獲得して首位に立ち、OK部門2年目の15歳・荒尾創大選手(TONYKART RACING TEAM JAPAN)がわずか2点差で2番手につけて、このふたりがほぼイーブンの条件でチャンピオン争いをリードしている。また、158点の鈴木斗輝哉選手(K.SPEED WIN)と洞地選手のルーキーふたりも、わずかながら戴冠の可能性を残している。

 この熾烈なチャンピオン争いに影響を及ぼしそうな存在が、今季2度目のスポット参戦を果たした2017・2018年の同部門王者たる佐藤選手だ。前回の茂原大会では、久々の全日本にも関わらず優勝まであと一歩に迫るレースを披露。過去のフル参戦時に使用したダンロップとヨコハマに続き、今回のブリヂストンでも優勝を飾れば、3社のタイヤで勝った初めてのドライバーとなるだけに、3年ぶりの勝利に並々ならぬ意欲を見せている。

タイヤ3メーカーが鎬を削る全日本カート選手権の2021シーズンは、ここまでブリヂストンが8戦8勝を挙げて強さを発揮。そしてチャンピオンの可能性を残すドライバーたちは全員ブリヂストン・ユーザーでもある。
今シーズンは全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権に参戦する佐藤蓮選手がもてぎのOK部門にスポット参戦。Rosa Drago CORSEのレーシングスーツを身にまとい、台風の目となってレースを盛り上げた。

 両レースの予選ヒートのスターティンググリッドを決めるタイムトライアルでは、洞地選手が35秒116のトップタイムをマークし、まずは今大会の主導権を握った。2番手は荒尾選手。それに半田昌宗選手(TEAM WOLF)と佐野雄城選手(BirelART Access Racing)が続き、佐々木選手は12番手、鈴木選手は14番手だ。

 続いて行われた第9戦の予選では、洞地選手が中盤から背後にギャップを築いて危なげなくトップで走り切り、第1戦以来2度目の決勝ポールを手に入れた。その背後では接近戦が繰り返され、佐野選手が2番手、佐藤選手が3番手でチェッカーを受けた。

 5番手ゴールの鈴木選手は、ここでタイトル争いから脱落。佐々木選手はやや苦戦気味ながら8番手に。荒尾選手は8番手でゴールしたが、スタート違反で10秒加算のペナルティを取られて27番手スタートとなった。

 一夜明けて、大会最終日の日曜日。30周の第9戦決勝は、佐藤選手の独壇場となった。3番グリッドからスタートを決めてトップに立った佐藤選手は、ぐいぐいとリードを広げて独走。終盤にはエンジンに異常をきたすピンチもあったが、無事ゴールまでマシンを導いた。4輪ドライバーとなった今も当代一のカート遣いであることを実証する圧勝劇。全日本の最高峰部門において3社のタイヤすべてで勝利を記録した、史上初のドライバーとなった。

 序盤にポジションを落とした洞地選手は、2位まで挽回してフィニッシュしたが、悲願の初優勝はならず。加えてチャンピオン獲得の可能性も潰え、自らに怒りをぶつけるような仕草でマシンを降りた。これでチャンピオン候補は、7位フィニッシュの荒尾選手と17位フィニッシュの佐々木選手に絞られた。

 3位は最終ラップに佐野選手をかわした鈴木選手。ルーキーの佐野選手は初表彰台こそならなかったが、自己最上位の4位でようやく非凡な速さを結果につなげた。

佐藤選手がガッツポーズでトップチェッカー。「予選まではすごくタイヤを温存していたので、マージンがあると思って、決勝は序盤からプッシュしました。スタートの混乱をうまく抜けて前に出られたので、あとは落ち着いて周回を重ねていくだけ……でしたが、実は最後の4、5周でエンジンに少し不調をきたして、かなりセーブした走りでした。追いつかれるかなと思ったんですが、後ろもかなり競り合っていたみたいで、最後まで順位を守ってゴールできました。3社のタイヤメーカーでの優勝は今までやった選手がいないことなので、誇りに思っています」と自ら成しえた偉業を喜んだ。
第9戦の表彰式。左から2位の洞地遼大選手、1位の佐藤選手、3位の鈴木選手、ファステストラップドライバーの金子修選手が登壇した。

 午前中最後のヒートとして行われた第10戦予選では、洞地・佐野・佐藤の3選手がトップ3でゴールして、決勝のグリッド上位3席は第9戦と同じ顔触れとなった。荒尾選手は5番手、佐々木選手は13番手のゴールだ。この結果、チャンピオン候補のふたりの“持ち点”がまったくの横一線に並ぶ前代未聞の事態となった。

 そして迎えた第10戦の決勝には、まさかのドラマが待っていた。ローリングスタートに向けて全車がダミーグリッドから発進すると、荒尾選手のエンジンがかからない。3コーナー手前まで懸命に押しがけを続けた荒尾選手だったが、ついにマシンをエスケープゾーンに退避させて万事休す。2021年OK部門のチャンピオン争いは、最後のレースを戦う前に佐々木選手の戴冠確定で幕を閉じた。

 その佐々木選手は、このヒートでも復調ならず中団を走り続け、最後はアクシデントでマシンを止めリタイアに。苦戦続きだった佐々木選手の2021シリーズを象徴するような幕切れだった。

 第10戦のウィナーは洞地選手。序盤から佐藤選手を0.3~0.4秒後方に引き連れての膠着戦を最後まで繰り広げたが、偉大な先輩に逆転を許すことなく走り切り、デビューイヤー最後の一戦でついに初優勝を果たした。佐藤選手は連勝ならずも、2位でフィニッシュして、今季4戦の参戦で3度の表彰台を獲得だ。

 4位に渡部智仁選手(XENON RT)、5位に山越陽悠選手(Formula K Japan)と今大会で速さが目を引いたルーキーふたりが続き、唯一の女性ドライバー斎藤愛未選手(Rosa Drago CORSE)が飛躍のレースで9位フィニッシュを果たした。

「タイヤはちょっと滑り始めていたんですが、最後までもたせて安定したタイムで走ることができました。今年は自分のミスとかで落としたレースが多くて、優勝するまで時間がかかったんですけれど、最終戦で勝つことができてすごくうれしいです。第9戦ではスタートのミスとかで追い上げのレースになってしまって、優勝できるペースだっただけに少し悔しいです。もし第9戦でも優勝していたらチャンピオンだったかもと考えると、結果的には自分にまだ足りないことがあったんだなと思います。来年またOK部門に出られたらチャンピオンを獲りたいです」と念願のOK部門初優勝を飾った洞地選手。
第10戦の表彰式。左から2位の佐藤選手、1位の洞地選手、3位の清水選手、ファステストラップドライバーの大宮賢人選手が登壇した。
佐々木選手はレースを終えて「まあいろんなチャンピオンの獲り方があるので。最終戦を迎えた時点ではあれだけ(鈴木選手、洞地選手と)ポイントが離れていたのに、なんだかんだと展開がもつれて、実際に洞地選手がチャンピオンになっていたかもしれないってくらいのレースになって。これだからレースは面白いと思いました」とコメント。また今シーズンを振り返ってもらうと「苦しい状況が続いていた中で、しぶとくレースをしてきたこと、とにかく諦めず腐らなかったことが、今につながっているんだと思います。荒尾選手も悔しいだろうけれど、絶対に諦めない力が自分の方が強かったのかな、チャンピオンを獲りたいって気持ちが強い方が最終的に獲るんだなって思います」と勝因を説いてシーズンを締めた。。続けて「僕は基本的に来年でカートを辞める可能性が高いですが、全勝とは言わないけれど勝利数にもこだわりたいし、やっぱり強かったなって言われるチャンピオンの獲り方をしたいので、来年も万全の態勢で参戦したいと思います」と来季の抱負を語った。

フォト/JAPANKART、長谷川拓司、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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