東と西のドライバーが雌雄を決する東西統一競技会。各部門のタイトル争いに決着!

レポート カート

2021年12月6日

全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門の2021シリーズを締めくくる東西統一競技会が、晩秋の栃木県・ツインリンクもてぎ北ショートコースで開催された。FS-125部門では中村仁選手(Formula Blue TKC)が初優勝を飾り、2位フィニッシュの堂園鷲選手(ENERGY JAPAN)がチャンピオンを確定。FP-3部門では村田悠磨選手(SPS川口)が3勝目を挙げてタイトルを確定させた。

2021年JAF全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門 東西統一競技会
2021年JAFジュニアカート選手権 FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門 東西統一競技会

開催日:2021年11月20~21日
開催地:ツインリンクもてぎ北ショートコース(栃木県茂木町)
主催:株式会社モビリティランド

 ここまで東西ふたつの地域に分かれて5戦ずつを消化してきたFS-125部門/FP-3部門。この東西統一競技会では、両地域のドライバーたちがひとつのサーキットに集まってシリーズ最後のレースを戦う。同時開催のジュニア選手権も含め、東西統一競技会では決勝に通常の1.5倍のシリーズポイントが与えられるため、最終ランキングに大きな影響を及ぼす一戦だ。

東/西地域でそれぞれシリーズを戦い抜いた選手が一堂に会する“東西統一競技会”。シリーズの総決算となるこの最終戦、選手ごとにさまざまな想いを秘めながら、上位ランキング獲得を目指しての戦いが始まった。
FP-Jr部門およびFP-Jr Cadets部門、FP-3部門の東西統一競技会にはJAFカートカップが用意された。これはカート競技の発展・普及を目的としたタイトルで、盾とは別にカップが贈呈される。

 FS-125部門では、西地域で2勝の加藤大翔選手(HRS JAPAN)が合計135点で暫定ランキング首位、東地域で2勝の堂園選手が合計133点で同2番手につけている。また、合計116点の酒井仁選手(LUCE MOTOR SPORTS)も、5戦有効のポイントシステムにおいてトップ2に近いタイトル射程圏内につけている。

 他にチャンピオン獲得の権利を有しているのは野澤勇翔選手(Formula Blue エッフェガーラ)、卜部和久選手(TEAM EMATY)、伊藤祐選手(ガレージC)の3名だ。この一戦に参加したのは、あと1台でコースの最大出走台数に到達する33台。その決勝は、息詰まる接戦となった。

 30周の戦いは、ポールから発進した中村選手のリードで開始。その真後ろには、3番グリッドからスタートを決めた伊藤選手が続いている。2番グリッドの堂園選手は、5番グリッドの卜部選手にも先行されて4番手を走っている。

 中村選手と伊藤選手のギャップは0.2~0.3秒程度。2台はこの間隔のままで延々とラップを消化していく。まだ勝利のない2020年FP-3部門王者の中村選手、このコースでの開幕戦を制したもてぎマイスターの伊藤選手。両者のヒリヒリするような消耗戦が折り返し点を過ぎると、そこに3番手へと上がった堂園選手と卜部選手も接近し、レースはさらに緊迫感を増した。

 この状況で、ルーキーイヤーの1勝に執念を燃やす中村選手は、ひたすら自分の走りに集中してトップを疾走。終盤に0.1秒差まで迫った伊藤選手にアタックのチャンスを与えることなく走り切り、初勝利を遂げた。車検場でヘルメットを脱いだ中村選手の顔は、うれし涙でくしゃくしゃだった。

 王座のかかった一戦を冷静に走った堂園選手は、最終ラップに伊藤選手をパスして2位でチェッカーを受けた。ポイントリーダーの加藤選手は9位、酒井選手は序盤にリタイア。これでチャンピオンは堂園選手のものとなることが確定した。シリーズ中盤の不振を脱した伊藤選手は、3位フィニッシュで3戦連続の表彰台をゲットした。

昨年のFP-3部門チャンピオンの中村選手は、今シーズン未勝利どころか表彰台も獲得していなかった。「電光掲示板を見ていたらずっとコンマ2~3秒差のままで、正直うしろとの間合いが気になっていたんですが、レース前に先輩から「後ろは気にせず自分の走りをしろ」と言われたことを思い出して、自分の走りに集中することができました。ここで勝たないとチャンスがないし、この体制で走れるのも最後なので、精神的にぎりぎりの状態で走っていました」とレース中の心境を吐露した。「ゴールした時はいろんな感情があふれ出てきました。今年はずっと苦しくて、ぜんぜん噛み合わないレースが続いていたんで、本当にうれしかったです」とチェッカー後にうれし涙を見せた。
FS-125部門の表彰式。左から2位の堂園鷲選手、1位の中村選手、3位の伊藤祐選手が登壇。
東地域のポイントリーダーとして東西統一競技会に臨んだ堂園選手は2位でゴールを果たし、タイトルを確定させた。
「すごくホッとしているというか、とにかくうれしいです。決勝では序盤にけっこう頑張っていたけれど、それほど前に近づけなくて……。でもこのまま行けばチャンピオンを確定できることは分かっていたので、無理しないで行こうと思っていました。今回のレースの目標はチャンピオンでしたから」と堂園選手。その反面、優勝でチャンピオン確定を飾りたかったと、悔しそうな表情も見せた。

 出走29台のFP-3部門では、東地域2勝の村田選手が、暫定ランキング2番手の中村海斗選手(Formula Blue Team Nagao)や同3番手の豊島里空斗選手(HRT with カローラ新茨城Jr)に大差をつけてポイントレースをリードしている。

 村田選手は、まず予選でバトルを制して決勝のポールを獲ると、決勝も1周目を先頭のままで終えた。ところが2周目に入るストレートエンドで、村田選手は後続集団の突進を許し、一気に7番手まで順位を下げてしまった。

 トップは大越武選手(BEMAX RACING)から豊島選手へ。その真後ろに川村慧選手(BEMAX RACING)も続き、この3台が先頭集団を形成。村田選手はそこからやや離れた大集団の中でもがいている。

 しかし、村田選手は追い上げ型のレースが目立った今シリーズを象徴するような走りで着実に順位を上げ、序盤でセカンドグループを抜け出すと、28周レースの折り返し点には先頭集団を捕捉、ホットな優勝争いの輪に加わった。

 25周目、村田選手が大越選手を抜いてトップに復帰。すると26周目、メインストレートで競り合うマシンがニアミスから姿勢を乱してスポンジバリアに追突し、ドライバーがストレートエンドでコースに振り落とされた。このため26周目に赤旗が提示されて、レースは中断。結局、このままレースは成立し、25周目終了時点の順位が最終結果となった。

 村田選手は混戦の中でサバイバルに成功して今季3勝目をものにし、新チャンピオン就任を確定させた。それに続いた大越選手は、今季3回のスポット参戦ですべて2位獲得という見事な成績だ。もっとも多くラップリーダーとなった豊島選手は、3位でレースを終えた。東高西低とも評されるこのコースで、7位までを東地域勢が占拠。西地域勢の最上位は8位の中村選手だった。

「今回はタイムトライアルから調子がよくて、決勝でも楽に優勝できると思っていたけれど……。ごちゃごちゃしたバトルに巻き込まれて順位を落としてしまいました。タイヤの空気圧を低めにしてスタートしたので、最初のうちに多少抜かれるのは想定内でしたが、4台くらいのバトルになると思っていたら全車が一列につながっていて、気づいたら一気に抜かれてしまいました」と序盤で7番手まで順位を落としてしまった村田選手。「でも、そこから何とか抜け出すことができてよかったです」と落ち着いたレースを展開し、そして着実にポジションを上げ、赤旗中断時点でトップに返り咲いて優勝を果たした。
FP-3部門の表彰式。左から2位の大越武選手、1位の村田選手、3位の豊島里空斗選手が登壇。
表彰式後、村田選手は「まだ(チャンピオンの)実感はないけれど、今年の目標にしていたことなのでうれしいです」とタイトル確定を喜んだ。

 同時開催のジュニアカート選手権・東西統一競技会。FP-Jr部門の決勝では、ポイントリーダーの鈴木恵武選手(RT-APEX)が3番グリッドから2周でトップに立ち、その後は3~5台一丸の熱い戦いの中で先頭の座を守り続けてフィニッシュ。力強いガッツポーズで今季4勝目を飾って、シリーズチャンピオンを確定させた。

 2位は5番グリッドからポジションアップを果たした、西地域ランキング首位の松土稟選手(LIFE・ROAD. RACING with Ash)。ポールスタートの春日龍之介選手(SPS川口)は3位でチェッカーをくぐった。

ポイントリーダーとして挑んだ東西統一競技会、鈴木恵武選手は「予選では最初のペースが上がらなくて苦しかったんですが、決勝では自分のペースが上がらず苦しくなる前に勝負にいって、後半は自分の方が周りよりペースがよかったので、そのアドバンテージを生かしつつ戦うことができたのがよかったです。春日選手が最後までついてくるとは考えていなくて焦ったけれど、1位になれてよかったです。第一目標はシリーズチャンピオンだったけれど、2番手の岡澤(圭吾)選手とは2点差しかなくて、前でゴールされたら負けという状況だったので、勝つこともチャンピオンも同じ場所にあると思っていました」とコメントした。
FP-Jr部門の表彰式。左から2位の松土稟選手、1位の鈴木選手、3位の春日龍之介選手が登壇。
鈴木選手は「チャンピオンを獲って翌年にFIAカーティングアカデミーに行くという目標があったので、まずは第一段階を達成できてうれしいです」と笑顔で語った。

 FP-Jr Cadets部門では4台一丸の先頭集団から、やがて遠藤新太選手(AAA motor sports)と酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)が抜け出し、マッチレースを繰り広げた。

 遠藤選手の真後ろでチャンスを待った酒井選手は、プランどおり残り2周で遠藤選手の前に出ると、最終ラップは各コーナーの入り口で強固にインを締めて走り抜き、喜びが弾けるようなガッツポーズでチェッカーを受けて今季3勝目を獲得。同時に、ヘルメットのバイザーに透かし文字で刻んだ「チャンピオン」を確定させた。

 遠藤選手は0.191秒差の2位。関口瞬選手(B-MAX Jr.brioly racing)がチェッカー間際にトップ争いに追いつき、3位でフィニッシュして開幕戦以来の表彰台登壇を果たした。

昨年は東西統一競技会で優勝を果たすも、チャンピオン獲得ならずで悔し涙を流した酒井龍太郎選手。「(FP-Jr Cadets部門に出場した)2年間の目標だったチャンピオンを獲れたことはまずよかったですし、勝ってチャンピオンになれたことは本当にうれしいです。2番手のままでもチャンピオンになれましたが、やはり勝った方がカッコいいかなと思って、レースでは勝負にいきました」と笑顔で有終の美を飾った。
FP-Jr Cadets部門の表彰式。左から3位の関口瞬選手、1位の酒井選手、2位の遠藤新太選手が登壇。
「チャンピオンになれたのは、この5年間チームみんなでミニフレームで努力してきたことが形になったんだと思います」と締めくくった酒井選手。
2021シリーズのチャンピオンを確定させた選手たち。左からFP-Jr Cadets部門の酒井選手、FP-Jr部門の鈴木選手、OK部門の佐々木選手、FP-3部門の村田選手、FS-125部門の堂園選手。

フォト/JAPANKART、長谷川拓司、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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