大量エントリーで活況を呈した丸和カップ最終戦。チャンピオンも続々決定!

レポート ダートトライアル

2021年12月10日

栃木県那須塩原市の丸和オートランド那須を舞台とする、丸和カップダートトライアルシリーズの今季最終戦が11月14日に開催された。

2021年丸和カップダートトライアルシリーズ第6戦
FSCダートトライアル

開催日: 2021年11月14日
開催場所: 丸和オートランド那須(栃木県那須塩原市)
主催: FSC

 今年の丸和カップダートトライアルシリーズは4月4日に開幕。今回の最終戦まで全6戦のシリーズが予定されていたが、6月6日に開催予定だった第3戦はコロナ禍のため、中止を余儀なくされた。しかし7月の第4戦は無事、開催の運びとなり、第5戦も約3か月のインターバルを経て10月に開催されたことで、今年のシリーズは1戦のみ中止の計5戦が成立という形で幕を閉じることになった。

 今回の最終戦には、新型コロナウイルス感染症に関して感染者数が顕著な減少傾向を見せ始めたことも良い方向に影響したか、今季、最大となる100名がエントリー。コロナ禍により強いられた長きにわたる停滞ムードを払拭する、活況を呈した大会となった。この勢いが来季以降も継続することを願いたいところだ。

 注目のコースレイアウトはいつものようにスタート後、S字状にコーナーをクリアしてコース最奥部へ。しかしそのまま“象の鼻”には入らず手前で左に入り、スタート側まで戻り、今度は途中で大きく右に回り込むという設定。象の鼻をフルに使わない分、低中速の折り返しセクションが多く設定されるレイアウトになった。ゴールタイムで見ると2WD勢で1分40~50秒台、4WD勢で1分30~40秒台と距離も十分。これを丸和カップの最大の特徴である決勝を3本トライすることになるので、走り応えのある設定となっている。

丸和オートランド那須のスタート区間は完全な舗装となっている。スタート後はこの舗装区間を直進するのが改修後の丸和の定番となっている。
丸和名物、コース最奥部の“象の鼻”よりコースを望む。この辺りは以前と同様にグラベルになる。
改修後は舗装区間を何か所か横切るレイアウトが多く採られている。大きくグリップの違うふたつの路面をどうクリアするか、がタイムに直結する形となっている。
今回のコース図。直線の舗装区間を走るのはスタート直後とゴール直前の短い区間のみで、グラベル区間の比重が高い設定となった。

 エントリーが何と32台を数え、今回、断トツの激戦区となったB1クラス。ビギナー対象のクラスということで学生のエントリーも少なくない。第1ヒートのベストを奪ったのは開幕戦を制した佐藤羽琉妃選手だったが、第2ヒートではただ一人、1分47秒台に入れた鷹尾一成選手がトップに立つ。勢いに勝る鷹尾選手は第3ヒートでも1分45秒台に叩き入れてトップを堅守。後続に1秒近い大差をつけて快勝した。

 大学院1年生の鷹尾選手は前戦で2年振りのダートラ復帰を果たしたが、結果は3位。そのリベンジを果たすべく今回の参戦に至ったという。「改修後の丸和の本番はまだ2回目で、前回は雨だったので、今日はドライの新しい丸和をどこまで攻められるかが分からず、走る度に限界を上げていった感じでしたね。ただ、改修前はよく走り込んでいたので、ダートの部分でもトリッキーな場所がありましたが、昔走っていた感覚が戻ってきて、何かちょっと懐かしかったです(笑)」と鷹尾選手。舗装系の競技にも今年から復帰を始めており、「来年は参戦したジムカーナでチャンピオンを獲りたいです」と抱負を語ってくれた。

参加30台と大激戦区となったB1クラスは鷹尾一成選手が制した。
B1クラス表彰の各選手。

 2,000ccを超える4WD車に乗るビギナー対象のB2クラスには7台がエントリー。このクラスも第2ヒート終了時にトップに立った梅原拓臣選手が、第3ヒートでさらにライバルを引き離して大差での優勝を飾った。梅原選手は今年からダートラを始めた新人ドライバー。しかしダートラデビューとなったこのシリーズの開幕戦で3位に入ると、第4戦で初優勝。今回の2勝目でシリーズランキングもトップから3ポイント差の2位まで躍り出た。

「3本目は前半のダートの部分では失敗しているので、後半は舗装の区間になるべくクルマを乗せて車速を上げようとしたのがタイムアップに繋がったと思います。ただ、欠場した第2戦を走っていればチャンピオンも獲れたと思うので、ちょっと悔しいですね」と振り返った梅原選手にとっては、ほろ苦い最終戦となったようだ。

B2クラスは今年、ダートラデビューの梅原拓臣選手がシリーズ2勝目をマーク。
B2クラス表彰の各選手。

 中級者対象のM1クラスも20台がエントリーと盛り上がった。このクラスは、第4戦で舟久保悟選手の開幕3連勝を阻止した、小林泰治選手のミラージュ・アスティが第1ヒートでトップに立つが、第2ヒートでは舟久保選手が逆転を果たして、トップ2台の完全なマッチレースと化した。注目の第3ヒートは、自らのタイムを2秒以上も削り取って1分43秒44までタイムを詰めた小林選手に対して、ラストゼッケンの舟久保選手は痛恨のタイムダウン。結果、再逆転を果たした小林選手がシーズン2勝目をさらった。

「今日はスタートして一旦、左のダートに出た後にまた舗装を通過してダートのS字に入る最初の区間がポイントだったと思います。あそこでリズムを崩すとその後に大きく影響するので、特に集中しました」と、新しい丸和では多くのドライバーを悩ます、路面の変わり目の走りを勝負所にあげた小林選手。「見た目が好きでアスティにしたんですが(笑)、実際に乗ってみるとリアが重い分、自分の好きな(リアを)振る走り方が最初はできなくて悩みました。3年目でようやくアスティに慣れてきたという感じです。最後の3本目は全体にアクセルをよく踏めたと思います」と激戦を振り返った。

M1クラスでは最後の第3ヒートで大きくタイムアップした小林泰治選手が優勝。
M1クラス表彰の各選手。

 M2クラスは3ヒートすべてを制した臼井達哉選手が優勝。第3ヒートでは1分39秒51までタイムを詰めたが、本人は「リードを広げようと気合いを入れましたが、空回りしてしまって、リアを振り過ぎてしまいました」と0.3秒のタイムアップは納得が行かなかった様子だ。しかし今季は1戦欠場したにも関わらず、今回の優勝で大量30ポイントを上乗せしたことで、昨年のB1クラスチャンピオンに続いて2年連続のチャンピオンを決めた。

 臼井選手は普段は関東地区戦にEK9シビックでエントリーしているドライバーだが、今回はB2クラスを制した梅原選手のインプレッサでダブルエントリーし、優勝をさらった。一台のインプレッサが2クラス制覇を果たしたことになる。臼井選手が中学の先輩である梅原選手をダートラに誘ったことがきっかけとなった今回のダブルエントリーだが、この最速コンビの走りは、今後、このシリーズでも注目を集めそうだ。

M2クラスでは昨年のB1クラスチャンピオンの臼井達哉選手が快勝した。
M2クラス表彰の各選手。

 このシリーズの最上級クラスのR(レギュラー)クラスは、全日本ドライバーもスポット参戦してくるハイレベルなクラスとして知られている。今回も2WD車が主たる対象となるR1クラスでは、元全日本チャンピオンの稲葉幸嗣選手が、関東を代表する改造車ドライバーとして知られる深田賢一選手の追撃を0.26秒差で退けて優勝した。なおこのクラスでは、テクニシャンとして知られた元全日本王者の柴田一洋選手が、復活を告げるシリーズチャンピオンを獲得している。

R1クラスでは、今季シーズン途中からボディを入れ替えた稲葉幸嗣選手がドライタイヤで臨んだ第3ヒートはタイムダウンするも、第2ヒートのタイムで優勝。「3本目は最後でミスってしまいました。まだ以前のクルマの感触に戻っていないので、もうちょっとドライタイヤでもタイムが出せるクルマにしたいですね」と、シーズンオフに向けた課題を語った。
R1クラス表彰の各選手。

 一方、R2クラスでは、1年振りのダートラ参戦となった地区戦ドライバーの大塚賢治選手が、「路面が荒れる3本目はタイムアップが厳しくなるので、2本目勝負と踏んで走りました」という作戦通りに第2ヒートでベストタイムを刻んで優勝。「でも自分のクルマはパワーで勝るD車両なので、こんなクルマで走って申し訳ない、と思いながら走ってました(笑)」と、オーバーオールウィンも果たした勝利にも恐縮の表情を浮かべていた。

R2クラスでは大塚賢治選手が優勝。朝、エンジントラブルに見舞われ、あわやの場面もあったが、優勝をさらった。
R2クラス表彰の各選手。
ATクラスは1番ゼッケンで走行した坂本光選手が優勝した。
ATクラス優勝の坂本選手。
接戦となったRVクラスでは磯田貞治選手が前戦に続いて優勝を決めた。
RVクラス優勝の磯田選手。

フォト&レポート/JAFスポーツ編集部

ページ
トップへ