勝田貴元選手、WRCの最終戦はデイ3のアクシデントを乗り越えた最後のSSで激走、7位入賞で2021年シーズンを締めくくる!

レポート ラリー

2021年12月10日

FIA世界ラリー選手権(WRC)の2021年シーズンを締めくくる第12戦「ラリー・モンツァ」が11月19日~21日、イタリア北部のモンツァ・サーキットを拠点に開催。現行WRカーで最後のWRCとなるこの一戦に、TOYOTA Gazoo Racing WRCチャレンジプログラムでヤリスWRCを駆る日本人ドライバーの勝田貴元選手が奮闘、7位入賞を果たした。

2021年FIA世界ラリー選手権(WRC)第12戦 ラリー・モンツァ
2021 FIA World Rally Championship Round 12 FORUM8 ACI Rally Monza

開催日:2021年11月19日~21日
開催地:イタリア・モンツァ・サーキット周辺

 デイ1の勝田選手は「路面が半乾きの難しいコンディションだったことに加えて、今回は事前テストもなかったので午前中はリズムが掴めませんでした」と語るように、ラリー初っ端のSS1で8番手に留まり、続くSS2、SS3でも8番手タイム、SS4のタイムは7番手とサーキットから東にある街、ベルガモ北側の山岳SSでは厳しい立ち上がりを強いられた。

 しかし、後半から勝田選手は尻上がりにペースアップ。サーキットを舞台にしたSS5、SS6で5番手タイムをマークすると、この日最後のステージとなるSS7では、セカンドベストをマークした。

「サーキットのステージはスタートからとても良い感触が得られました。山岳ステージはさらなる改善の必要性を感じましたが、どこでタイムを失っているのかわかりました」と振り返った勝田選手は、6番手でデイ1をフィニッシュした。

 翌20日のデイ2で勝田選手はSS8こそ8番手タイムに留まったものの、SS9で4番手タイム、SS11で5番手タイム、SS12で4番手タイムをマーク。

「区間タイムではトップと遜色ないペースで、山岳エリアでもペースが上がってきました。午後のサーキットでも小さなミスはありましたが、悪くないタイムでした」と、復調を果たした勝田選手。ナイトステージとして開催された、デイ2を締めるSS13で6番手タイムをマークした勝田選手はデイ1と同じ6番手で走り終えた。

初挑戦の昨シーズンは最終SSで初のSSウィンを勝ち取るものの、リタイヤに終わったラリー・モンツァ。今シーズンもアクシデントに遭うが乗り越え、得意の最終SSを2番手でフィニッシュ、7位入賞で成長した姿を見せた勝田貴元選手。

 徐々にリズムを取り戻した勝田選手は最終日のデイ3でも素晴らしい走りを披露した。この日のオープニングステージとなるSS14で4番手タイムをマーク。

 しかし「バンクのシケインで左フロントを擦ってしまって、その影響でアームが壊れて次のシケインでスピン。その時にバリアに当たってしまいました」と、語るようにSS15でスピンを喫した勝田選手は、コンクリートブロックに接触。車両前部を破損したままなんとかこのステージを走りきったものの、29番手タイムでフィニッシュすることになってしまった。しかし、チームはパワーステージとなる最終SS16に向けて、車両を懸命に修理して間に合わせた。

 その期待に応えるかのように、勝田選手はSS16でこのラリー2回目のセカンドベストをマークして、持ち前のスプリント能力を披露してフィニッシュ。残念ながらSS15のアクシデントをきっかけに、最終的な順位はデイ2からひとつ下げて7位に終わった。

「15分間しかリペアタイムがなかったので、リタイアも覚悟していただけに、最終ステージを走ることができるようにマシンを修理してくれたチームに感謝しています。最終のパワーステージはセーブするのか、プッシュするのか、悩みましたが、ラトバラ代表から“自分を信じて行ってこい”を言われたので、プッシュしました。その結果、最終のパワーステージでは2番手タイムを記録することができました」

 そして「ペース配分も勉強になりましたし、感触の良いステージでは区間タイムも良かったので自信にもつながりました。今回のラリーではいくつかポジティブな収穫があったと言えます」とこの一戦を振り返ってくれたように、勝田選手は今シーズン最後のSSとなったパワーステージで2番手タイム、という素晴らしい走りを見せて初のWRCフル参戦を締めくくった。

来る2022年シーズンもコ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手(右)とのクルーでWRC全戦に挑む勝田選手。第10戦で組んでから、徐々に高まっているジョンストン選手とのコンビネーションにより磨きをかけて、来シーズンの活躍に期待したい。

 日本人初のWRCフル参戦を果たした今シーズンの勝田選手は、開幕戦「ラリー・モンテカルロ」で6位入賞を果たすと、第5戦まで連続して入賞。上り調子で迎えた第6戦「サファリ・ラリー・ケニア」で2位、自身初、そして日本人としては久々のWRC最高峰クラスでの表彰台を獲得するなど、前半戦で著しい活躍を見せたのは記憶に新しい。

 第7戦「ラリー・エストニア」でリタイアを喫してからは、コ・ドライバーが代わったりと環境が変化した影響もあったか、残念ながら足踏み状態が続いた。それでもドライバーズランキング7位で2021年のWRCをフィニッシュしたことは称賛に値するリザルトだと言えるだろう。

 勝田選手の2022年シーズンは新車両、GRヤリス・ラリー1でTOYOTA Gazoo Racingワールドラリーチーム・ネクストジェネレーションからフル参戦することが発表されている。

「今年は中止になりましたが、来年はラリー・ジャパンもあって僕に対する期待も大きいと思います。ラリー・ジャパンではいい走りをして、リザルトに関しても表彰台に上がっているところを見せたい。もちろん、そのほかのラウンドでも活躍して、ラリー人気に貢献できるように頑張りたいと思います」と意気込んでいる勝田選手の来シーズンも要注目だ。

フォト/TOYOTA GAZOO Racing、Red Bull Content Pool レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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