ウィメンズラリーが今年も岐阜県恵那市を拠点に開催!

レポート ラリー

2021年12月29日

レディス・ラリーストが一堂に会して戦うウィメンズラリーが、12月4~5日の二日間、岐阜県恵那市をホームタウンとして、JAF中部近畿地区戦を併催して行われた。

2021年JAF中部・近畿ラリー選手権第3戦
2021年JMRC中部ラリーチャンピオンシリーズ第1戦
2021年JMRC中部ラリーチャレンジシリーズ第1戦
WOMEN IN MOTORSPORT L1
WOMEN’S RALLY in 恵那2021&MASC RALLY 2021

開催日: 2021年12月4~5日
開催場所: 岐阜
主催: MASC、Love drive

 シーズンエンドに女性ラリースト達が一年間磨き上げてきたドライビングの技術を競い合うウィメンズラリーは、今回で5回目を数える。開催地も岐阜県恵那市を中心としたエリアで継続して開催されており、今年も恵那市役所にラリーの主要施設が置かれるなど、恵那市の全面的なバックアップを受けての開催となった。

 SSについては、昨年も使用された3本のステージを踏襲。計22.3kmの7本のSSをふたつのセクションに分けて走り切る設定だ。このラリーではすっかりお馴染みとなった「根の上」はセンターラインのある幅の広い道をひたすら駆け上がる高速ステージ。一方、「望郷の森」は対照的に狭くテクニカルなコーナーが続く林道ステージで、こちらも大半が上りとなる。昨年、設定された「笠置山モーターパーク」のスーパーSSはジムカーナコースを走る。僅か500mのショートステージだが、ジムカーナには慣れていないラリーストが走ると、意外とタイム差が出るステージだ。

 例年、晩秋とも言える時期に開催されるとあって、寒さのためにグリップの得にくい路面と格闘を強いられるラリーであるが、特に今回は土曜から真冬並みの低温となり、ラリー当日も氷点下に近い状況の中でのスタートとなった。3ステージとも恵那市内から山間部に分け入った場所にあるため、早朝から冷え切った路面を攻める序盤のステージが大きな勝負所となった。

今回もラリーのヘッドクォーター、サービス等の主要施設は恵那市役所と関連の駐車場に置かれた。

 L1-1クラスでは、昨年のウィナーである石川紗織/川名賢組がSS1根の上で、2番手の中島紀子/山田訓義組に10秒以上の大差をつけるベストタイムをマークして、まずラリーをリードする。この2組は昨年もベストタイムを奪い合う熾烈なトップ争いを演じたが、今年は石川組がSS2以降も連続してベストを奪い、今回は中島組にまったく付け入る隙を与えない。石川組は笠置山モーターパークのSS3、SS5でも群を抜くタイムをマークして、終わってみれば全SSでベストを奪う快走を披露。圧倒的なタイム差でこのラリー2連覇を飾った。

 今年はTOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジ等にも参戦し、ラリーの経験を積んだ石川選手は、「今回のラリーはこの一年間の集大成として臨んだラリーだったので、そこでいい走りができて良かったです。去年はラリーを始めたばかりだったので、ラリー自体の取り組み方が分からないまま走ったラリーでしたが、今年は去年に比べたら深い取り組み方ができたと思います。一年間、色んな方に教えてもらってペースノートもしっかり作れるようになったので、去年よりも明らかに踏めた実感はありました」とラリーを振り返った。

L1-1クラスは、石川紗織/川名賢組が全SSベストという圧倒的な速さを見せて、2連覇を達成した。
2年連続でウィメンズラリーを制した石川選手。「今回は目標にしている地区戦の人達と同じラリーで走れるというので、実は意気込んで来たんですが、林道SSではついて行けなかったので、来年は詰めていきたいですし、グラベルのラリーも走りたいですね。また今回も(コ・ドライバーを務めた)川名さんから新たな課題をもらったので、来年さらに成長して、またここに戻ってきたいと思います」と、来たる2022シーズンを見据えていた。
L1-1クラス表彰の各選手。

 L1-2クラスは優勝候補の毛受広子/平石康仁組が期待に違わぬ速さを見せてSS1でベストタイムを奪取。このラリーは第1回から連続して出場している湯澤美幸/河西晴雄組が僅差で続いた。大波乱が起きたのはジムカーナステージのSS3。毛受組がミスで規定により3分という致命的なタイムを受けてしまい、大きく後退を余儀なくされてしまう。これでトップに立った湯澤組はSS2でベストを奪った阿部千織/木村悟士組に7.2秒差をつけてセクション1を折り返した。

 3本のSSを走るセクション2では、最初のSS5は湯澤組がベストを獲るが、SS6は阿部組が0.9秒凌いで最終のSS7へ。ここでも阿部組は4.3秒差で湯澤組を下すも、2.6秒届かず、湯澤組がセクション1のマージンを守り切ってトップでフィニッシュした。悲願のウィメンズラリー初制覇達成の湯澤選手は、「一番の勝因は苦手のジムカーナSSでエンストさせなかったことです(笑)。ジムカーナのSS6が終わるまではドキドキでした」と笑顔で振り返った。

「ラリー屋さんはパイロンが見えると曲がれる気になって、行き過ぎてしまうのでダメなんですよね。林道も道の端に落葉などがあって理想のアウトからの進入ができなくてイン・インで走らないといけなかったので、ちょっとモヤモヤしました。ただコ・ドラの河西さんからも“外にだけは膨らむな”と言われたので、その走りで正解だったと思います」と“我慢”のラリーが勝利を手繰り寄せた形だ。

L1-2クラスは湯澤美幸/河西晴雄組のスイフトスポーツが、阿部千織/木村悟士組の追撃を抑えて優勝。
L1-2クラス優勝の湯澤選手はこのラリーの常連の一人だが、悲願の初優勝を達成。ラリー歴はすでに12年を誇る中堅ラリーストだが、「今のスイフトは何とか手足に近い感じで動かせるようになりましたが、もっと行けるはずなので、まだまだ頑張ります」と闘志を新たにしていた。
L1-2クラス表彰の各選手。

 L1-3クラスでは、昨年のこのラリーを制している洪銘蔚/安藤裕一組がSS1でベストを奪い、幸先の良いスタートを切るが、望郷の森のSS2では南久松奈々/坂井智幸組がベストをマークして一気にトップに躍り出る。南久松組はSS3、SS4でもベストを奪い、洪組に5.8秒差をつけて首位のまま折り返したが、セクション2最初のステージ、2度目の望郷の森となるSS5では洪組がこの日、2度目のベストを奪って1.6秒差まで詰め寄った。

 昨年、洪組はヴィッツ、南久松組はアクアでこのラリーを走り切ったが、今年はともにヤリスに乗り換えての参戦。マシン同士の拮抗もあってバトルは白熱するが、SS6では南久松組が0.3秒差で洪組を下して盛り返し、最終SSへ。そのSS7では洪組がベストでゴールするも、南久松組も0.2秒差で喰らいついて2番手でゴール。首位の座を守り切ってヤリス対決を制し、ウィメンズラリー初優勝を達成した。

 このラリー参戦3回目で“三度目の正直”を果たした南久松選手は、「アクアもヤリスも一長一短あると思いますが、去年はアクアで置いて行かれた望郷の森のストレートで今年は勝負できたのが大きかったですね。一年間、色んなラリーに出てヤリスに慣れて特性を掴めたことも今回の結果に繋がったと思います」と勝因を自己分析。ラリーを始めて5年目で金星を獲得した南久松選手の今後の目標は、「来季はできれば地区戦を追って、上を目指したい」とのことだ。

L1-3クラスでは南久松奈々/坂井智幸組が、中部近畿地区戦でもライバルの関係にある洪銘蔚/安藤裕一組とのバトルを制した。同地区戦にもエントリーした南久松組は2クラス制覇の快挙を達成した。
今季は精力的にラリーに参戦した南久松選手。「去年の2位が悔しかったので、今年もまた参戦しました。リベンジが果たせて良かったです(笑)。同じ林道でも、路面の状況が去年から大きく変わっていたので、あまり去年の経験は活かすことができない難しいラリーでした」とラリーを振り返った。
L1-3クラス表彰の各選手。

 今回のウィメンズラリーには、JAF中部・近畿ラリー選手権第3戦として予定され、コロナ禍のため延期を強いられた「MASC RALLY」の一戦が併催された。今年は8戦が予定されていた中部近畿戦だが、結果的には1戦のみ中止を余儀なくされ、計7戦のシリーズとして成立することになった。また中部地区のラリーストを対象としたJMRC中部ラリーシリーズも、チャンピオンシリーズとチャレンジシリーズのふたつのタイトルが懸けられた。

 DE-1クラスは、今季スポット参戦して3位を得た第2戦以来の参戦となった三枝光博/兼松智志組が、SS1で2番手の上原利宏/和氣嵩暁組を6.5秒も引き離すスーパーベストをマークして首位に立つ。SS2望郷の森では三枝選手の次男である三枝聖弥/石田裕一組がベストを獲って反撃を開始するが、三枝光博組は2度目の根の上となったSS4でも再び圧倒的なベストをマークしてリードを広げる。三枝聖弥組はSS5望郷の森では三枝光博組を抑えるも、根の上でのビハインドを最後まで埋めることができず、2位。親子対決を制した三枝光博組が優勝をさらった。

 本業は全日本チャンピオンを獲得したことのあるダートトライアルドライバーの三枝光博選手は、「SS1は凄く滑ったけど踏んで行きました。そこはダートラをやっている経験の差が出たかもしれませんね。望郷の森も獲りたかったんですけど、息子に負けたのは悔しいですね(笑)。ちょっとギア比が合わない感じでした。ただ息子が速くなっていることも確認できたので、良かったです」と今季2度目のラリーを振り返りつつも、聖弥選手の成長に目を細めていた。

DE-1クラスは、今季2度目の参戦となった三枝光博/兼松智志組が、三枝聖弥/石田裕一組との親子対決を制して優勝。
DE-1クラス優勝の三枝光博/兼松智志組。「ダートラ屋さんだと道の狭いラリーは振り回せないから、ストレスが溜まると思われがちですけど、行けるか行けないかという狭い所をギリギリで攻めるラリーは、本当に楽しくて仕方ないですね(笑)。ちゃんとしたラリー仕様にすれば、もっとタイトコーナーも曲がれるようになるんでしょうけど、そうするとダートラに出られなくなっちゃいますから、やめときます(笑)」と三枝選手はラリーを満喫した様子だった。

 DE-2クラスは新星が現れた。大阪から遠征して来た24歳の山口航平選手と厚地保幸選手のコンビは、SS1で総合4番手のタイムを叩き出してトップに立つと、SS2でもすでにシリーズチャンピオンを確定済みの山田啓介選手の86を抑えて再びベストを奪う。山田組はSS4から反撃を開始し、SS5では山口組を5秒差で下して8.2秒後方まで詰め寄ったが、山口組は最後の勝負所となった最終のSS7では山口組を1秒差で下して首位を渡さず。中部近畿戦待望の初勝利を獲得した。

「特に朝の路面は1回滑ったら簡単にコースオフしてしまうような難しいコンディションだったので、リタイヤは絶対しないようにと思って走りました。根の上は3本とも同じペースで走りましたが、望郷の森の1本目は滑りましたが、それなりには攻めました。序盤の2本でベストが獲れたことで、その後ある程度ペースコントロールができたのが、やはり大きかったですね」と山口選手は初勝利の味を噛み締めていた。

DE-2クラスは近畿の若手、山口航平/厚地保幸組がスタートダッシュを決めて、そのまま逃げ切り、地区戦初優勝を獲得。
DE-2クラス優勝の山口/厚地組。「今年はシリーズを追いかけて、自分の走りの悪い所を潰せたことが良かったと思います」と、成長を遂げた一年の最後で出せた結果に満足していた。

 DE-5クラスはSS1を獲った冨本諒/里中謙太組が先行するが、SS2、SS3を連取した坂口進/坂口元弥組が逆転してトップに立つ。しかし冨本組はSS4根の上で1回目のSS1から10秒タイムを詰めるスーパーベストでライバルを突き離して首位を奪還。セクション2でも坂口組を終始、上回るタイムでリードを広げてゴールし、地区戦初の1勝をもぎ取った。

 TGRラリーチャレンジでは優勝経験のある冨本選手だが、参戦2年目で得た地区戦の初勝利については、「やっというか、嬉しいというよりホッとしたという感じです」と感想を述べた。今年は全日本も2戦経験し、「距離が長いラリーを走る集中力を身に付けられたことも大きかったですね」と振り返った。「前戦でコースアウトしてリタイヤしてしまったので、今日はその反省も踏まえて、ノート作りからラリーの戦い方まで見直したことが活かせました」と痛恨の一戦からのリベンジを見事に果たした。

 冨本選手の所属する、富山に拠点を置くARTAオートバックスラリーチームはウィメンズラリーでも南久松奈々/坂井智幸組が優勝。南久松組はさらにダブルでエントリーしていた中部近畿地区戦DE-6クラスでも優勝を飾ったため、同チームは3クラスを制するという快挙を達成することになった。来季の近畿地区戦では若さ漲る両クルーが、タイトルレースをかき回す存在になるだろう。

DE-5クラスでも若手コンビの冨本諒/里中謙太組が地区戦初優勝を達成した。「根の上は速度が乗る所はなるべくスピードを落とさないように、抑える所は抑えるというメリハリのある運転ができました。望郷の森は、レッキの段階からカットラインを意識したノート作りをしたのが良かったと思います。里中選手とのコンビネーションも、今までで一番良かったです」と冨本選手。
JMRC中部ラリーチャレンジシリーズでは鈴木海斗/小川悟志組が今回も快勝。今季は参戦したラリーは全勝という見事な成績でシリーズを終えた。

フォト&レポート/JAFスポーツ編集部

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